Courtesy of Adam Valdez

ライオン・キングから妖精の国へ:Brave Creatures の美しい世界の舞台裏

2023年3月15日
散歩のときに何を見ていますか?それは映画の題材になりますか?

ライオン・キングマレフィセントなどで VFX を何年も指揮してきた Adam Valdez 氏は、不思議な世界には慣れ親しんでいます。けれども、彼が自身の映画制作に乗り出したときに、その題材として目を向けたのは、イギリスの森であり、そこに住んでいるかもしれないし、住んでいないかもしれない者たちでした。
Courtesy of Adam Valdez
「イギリスの風景は想像力を掻き立てる場所で、その中のいたるところに小さな生き物が住んでいるところを想像できます」と、原作兼監督の Adam Valdez 氏は語ります。「このような妖精の世界で何かを作りたいというアイデアはずっと前からありましたが、それはミニチュアの世界が好きだからです。ミニチュアの世界は、もしそんな風に小さくなってその視点から世界を体験したらどうなるかを考えさせてくれます。物語を展開させるためには格好の舞台です」

その結果生まれたのが Brave Creatures という新作短編映画ですが、これはもっと大きな物語の序章であることを感じさせます。この短編映画では、視聴者は迫りくる戦争を防ごうとしている若い妖精の行動を追うことになります。頭上を鳥が旋回する中を、魔法の石からの声に導かれる彼女にとって、一瞬一瞬が可能性と危険の間の綱渡りであるかのようです。そして、それは冒頭のたった数分からそうなのです。
 

Epic では、ツールやサービス、マーケットプレイスが連携するオープンなエコシステムを構築しており、それが Adam 氏のようなクリエイターにより多くの創造的な選択肢を提供しています。Brave Creatures の緊張感を生み出すために、Adam 氏は Unreal Engine のエコシステム深くに入り込んで、Megascansカスタム MetaHumansUE5 を組み合わせた強力なシステムを実現しましたが、それは主人公の冒険譚に視聴者をすばやく引き込むために役立ちました。その緊張感はあまりに効果的なので、視聴者は「引き」の部分に来ると次に何が起こるかを気にせずにはいられません。
 

心の中の探検家

また Adam 氏は、Unreal Engine を利用することで、MPC でビジュアル エフェクト スーパーバイザーとして採用していたバーチャル プロダクションのワークフローを拡張する機会に恵まれました。撮影現場における長年の経験は、彼の中に探検家の精神を育てました。彼の場合、頭の中で構図が決まる前に、レンズやファインダーを覗きながら構図に悩むことも珍しくありませんでした。しかしながら、アニメーションになると、このフィードバック ループが変わってくることもわかっていました。アニメーションになると、フィードバックはすぐにではなく、遅れてきます。しかし、Unreal Engine や MetaHumans を利用すると、他の制作段階でも撮影現場と同じようなすばやいフィードバックが得られる方法があることに Adam 氏は気付きました。
 

「この仕事をしていると、直観でいろいろ試したくなることがあります。でも、すぐにフィードバックが得られないと、そういうことはとても難しくなります」と Adam 氏は語ります。「このエンジンがすばらしいのは、実際に撮影したのと同じような映像が見られることです。そこにはライティングや被写界深度や空気感もありますし、見るたびに新しい発見があります。そして、監督の視点や編集の視点やカメラの視点など、いろんな視点から見れば見るほど、自分のやっていることに自信が出てきます」
Courtesy of Adam Valdez
しかし、Adam 氏がそのような試行錯誤をするためには、彼のチームは、彼が頭の中に思い描いているようなイギリスの田舎の本質的な要素をできるだけ取り入れた世界を構築する必要がありました。そのような要素は、3D スキャンされたアセットの進化し続けるライブラリである Megascans の中にありました。Adam 氏は、ジャングル・ブックの制作中に既にこのライブラリに詳しくなっていました。

アニメーション/VFX を専門とするスタジオである MPC は、Megascans を利用してリアルな 3D 環境をすばやく構築する方法を確立していました。Megascans はロバストなので、デザイン済みの他の要素と組み合わせる際にも、シェーダーを多少調整するだけで済みました。たった数回クリックするだけ表示されるランドスケープでは、VR 用のバーチャル スカウティングが可能であり、これは Adam 氏のやり方にとって欠かせないステップとなりました。

「私はストーリーボードを書くタイプではありません。どこで演技が行われるべきで、どのカメラ アングルがいいか、実際の撮影現場で探したいのです」と Adam 氏は語ります。「ですから、私はまずバーチャル スカウティングを入念に行います。そうすることによって、どこから撮影を行い、どこでアニメーターに演技のブロッキングをさせるかを決めるのです。そこまで決めてから撮影を始めれば、実写とだいたい同じように扱えます」
 
Courtesy of Adam Valdez

Adam 氏は、選んだアングルから長回しで撮影するのが好みです。撮影した動画から抽出されたカットは、彼が仮編集に使っている従来のオフライン エディタに取り込まれることが多いです。そして足りないところがあれば、エンジンに戻って追加の撮影が行われます。このようにすれば、Adam 氏はカットを絶えず進化させながら、自分のアイデアを視覚的にまとめられるし、アニメーターがイテレートする具体的なシーケンスを提供することもできます。

Adam 氏はタイムラインをシーケンサーの中でも管理していて、それは 3D による新たな映像を編集の観点から絶えず評価する手段を与えてくれます。Adam 氏も多くの映画製作者と同じく、映像が出来上がってくると、その時々で適切だと思われるツールを組み合わせて利用しながら、映像のニュアンスをどんどんと変えていきます。

「UE5 を使うと、演技の変更に基づいて被写界深度や焦点面を設定し直すことがとても簡単になります。また、ちょっと光の加減を調節したいときにも便利です。そういう修正点はすべて、ラッシュの編集中に出てきます。そのときは、従来の編集ソフトウェアに戻って、音や最終的な色だけに集中します」
 

画竜点睛

プロジェクトが終わりに近づいたころ、Adam 氏の頭にはあるアイデアが浮かんできました。それまでは、プロジェクトはリアルタイム処理が中心で、大多数の要素がエンジンの中でデザインされていました。けれども Adam 氏は、特にキャラクターの肌や髪や半透明の羽根について、彼の VFX のキャリアで慣れ親しんできたものと同じ高みを目指したいと思い、UE5 に組み込まれたパス トレーサーを制作に使えないだろうかと考え始めました。
 
Courtesy of Adam Valdez

Adam 氏から Epic Games へのメッセージから始まる有意義な会話のおかげで、Adam 氏はベータ版にも実装されていない新機能 (すべて UE 5.1 に実装済み) や MegaGrant の恩恵を早くから受けることができました。とは言え、パス トレーサーへの移行はそんなに簡単なのでしょうか。

レンダラの変更は災難の元だと思っている人もいます。けれども、特にムービー レンダー キューを利用して高忠実度のシーケンスを仕上げようとしていた Adam 氏にとって、パス トレーサーへの移行は完全にやる価値があることでした。

「このプロジェクトは小さい生き物の物語なので、被写界深度の極端に浅い映像に頼っています」と Adam 氏は語ります。「使わなくてもそれなりのものはできたでしょうが、パス トレーサーを使うことによって、ディテールで標準以上のクオリティを実現することができました。パス トレーサーによって実現されたカメラ内の空気感や被写界深度やモーション ブラーはすばらしく、それを組み合わせた結果は美しいものでした」
 
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さらに、パス トレーサーはキャラクターの見た目や表情をよりリアルにする道を開きました。そのおかげで、演技が説得力を増したばかりか、デジタル ヒューマンの古典的な欠点を排除することもできました。 

「キャラクターの見栄えやどのような感情が顔からうかがえるかは、すべてライティング次第です」と Adam 氏は指摘しています。「このような作業を全部済ませた後に、パス トレーサーによるレンダリング結果を見て、何かを変更しなくてはならないことに気付くこともあります。パス トレーサーによる恩恵は、単に映像を美しくしただけではありませんでした」

このようなキャラクターを作成するため、Adam 氏と彼のチームは、オンラインで見たアイデアを採用して、フェイシャル リグに MetaHuman の規格を採用することにより処理を加速することにしました。キャラクターのデザインは既に決まっていたため、彼らはまず妖精のような顔のトポロジを Epic に送ることから始めました。すると Epic は、そのデザインを取り入れてキャリブレーションした MetaHuman のリグを送り返し、短編映画に必要なあらゆる表情が得られました。

「アニメーション屋は、顔や感情の言語を学びます。この言語においては、正確さというのは単なる皮膚の運動だけのことではなく、感情を明快に表現できるかどうかなのです」と Adam 氏は語ります。「MetaHuman のリグは、その点で優れています。単にディテールが精密なだけではなく、物語を語り、表現できる顔を生成することができるのです。主役級のキャラクターにとってはそれがすべてであると言っても過言ではありません」
 
Courtesy of Adam Valdez

中小から大手まで

今日 Brave Creatures をリリースしたことで、既に Adam 氏には追い風が吹いているようです。Adam 氏が MPC 内の友人と制作したサイド プロジェクトは、目ぼしい作品を探しているスタジオから引く手あまたです。

しかし、3D 映画製作者の未来は、中小、大手を問わず約束されていることを Adam 氏は知っています。
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「今、Unreal Engine の周辺にはいろんな技術が集まりつつあります。それはバーチャル プロダクション、アセット ライブラリ、キャラクターのリギングなどの統合されるべきツール群であり、その背後にある技術はとても印象的です」と Adam 氏は語ります。「物語を構成するために必要なあらゆる要素が、最初の週末にはもう揃っているのです。始めるために必要なのは、それをダウンロードすることだけです。自分のコンピュータ内に映画スタジオがあるようなもので、とてもすばらしいことです」

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