Unreal Engine のストランドベースのヘア、ファー システムが 2019 年に初めてリリースされてから、Weta Digital は Epic Games と緊密に協力し、その制作と改善を支援してきました。Unreal Engine 4.26 では、このツールセットを実制作でリアルタイムのシミュレーションとレンダリングに使用できるようになりました。その過程では、Weta Digital のチームの経験と知識、それに Meerkat の制作を通じて得られた知見が貢献しています。
Weta Digital のこれまでの作品と、国際的に高く評価されてきた独自の高度なツールのことをよくご存知の方は、Weta Digital のチームがこのような優れた作品を制作したからといって驚きはしないでしょう。しかし、このプロジェクトの特筆すべき点は、少数のアーティストが、すぐに使えるツールを利用して作成したというところです。Meerkat は、十分な才能を持つストーリーテラーと十分な才能を持つデジタル アーティストが集まれば、誰でも同じような作品を作れるということを示しています。
それでは、Meerkat の制作の舞台裏を紹介しましょう。
過去 4 〜 5 年にわたり、Weta Digital は、インタラクティブかつリアルタイムのイマーシブな空間と Unreal Engine でのコンテンツ制作に取り組んできました。Weta Digital では、バーチャル プロダクションの研究でも Unreal Engine を使っていますが、この短編映像では、チームがリニア コンテンツを制作するために最新の Unreal Engine の標準ツールをどの程度うまく使えるかテストすることが目的でした。
Weta Digital の特別プロジェクト チームでクリエイティブ ディレクター兼ビジュアル エフェクト スーパーバイザーを務める Keith Miller 氏は、次のように述べています。「これを大規模な制作とするつもりはありませんでした。背後にあるワークフローとプロセスに重点を置き、どうなるか試してみるつもりでした」
Weta Digital は、ヘアとグルームについて革新的な仕事を多数成し遂げ、従来の方法で制作された世界で最も先進的な長編映画のいくつかで、ヘアとファーのアセットを開発してきました。このプロジェクトでは、スタジオ独自のパイプラインを使うのではなく Unreal Engine の標準のツールについて調査することに加えて、リアルタイムのワークフローを重視しました。Weta Digital のチームは、ファーが付いた状態でキャラクターについての作業を進めることができ、直ちにフィードバックが得られる状態でショットについてのイテレーションを重ねられることがアニメーターにとってどのような意味を持つかを探ろうとしました。
最初のテストの成功を受け、チームは新しい短編作品のストーリーの作成に移り、Molly という名前を付けたミーアキャットと、その敵となるワシを登場させることを決めました。正確な参考資料を得るために、特別プロジェクトのチームは、Weta Digital と緊密な協力関係にあるウェリントン動物園を訪れ、実際のミーアキャットについて研究しました。
Cabezas 氏は次のように述べています。「Unreal Engine で、まず物理的なリアリティから取り組みました。Weta Digital ではいつもそうしています。たとえば、フォトメトリック ライティングの特性が正確であること、太陽の明るさが 10 万ルクスほどであること、カメラの露出が現実的であることなどを確認します」
Weta Digital のチームは、リアリティを確保してから、「映画のライティング」と呼ぶものを取り入れていきます。たとえば、ワシに襲われた Molly が巣穴に隠れて、後ろを向いたところをカメラがとらえる場面があります。Cabezas 氏にとっては、これはライティングが最も難しいショットとなりました。Unreal Engine では、極めて現実的で物理的に正確なライティングを作成できますが、この場合は現実的ではないエフェクトを適用することになりました。現実であれば暗すぎて Molly の表情は見えないはずだからです。
そのような映画的なライティングをリアルに見せるのは、Weta Digital のような企業を特別な存在にする芸術的な技です。先ほどのミーアキャットの場合は、赤みを帯びた間接の反射光をあて、わずかに目を動かすことで、Molly の気持ちと反応を伝えました。「巣穴の内部のショットはとても難しいものでした。いつも、誰も気にかけていなかったようなシンプルなショットが最も難しいものになります」と Cabezas 氏は述べています。
最終的な作品を作成するにあたっては、Unreal Engine の 3D ノンリニア編集ツール、シーケンサーのアニメーションの機能を使用しました。最後に、ムービー レンダー キュー を使用して出力しました。この機能を使うと、蓄積したアンチエイリアスとモーション ブラーを使い、最高品質でレンダリングできます。リアルタイムよりは少し時間がかかりますが (それでも従来のオフライン レンダリングよりははるかに高速で)、リニア出力に適しています。映像はオンラインで試聴されることを意図したものだったので、1920 x 1080 でマスタリングされました。しかし、チームでいくつかテスト ショットを 4K で出力してみたところ、非常に美しい出力が得られました。
小さなチームが証明したとおり、適切な人の手にかかれば、Unreal Engine 4.26 の新しい標準のツールで Weta Digital のような最高レベルの作品を作ることができます。Weta Digital のチーム自体も、プロジェクトの開始当初にそこまで高いレベルを期待していたわけではありませんでした。プロセスを通じて、Weta Digital のチームは、作成したキャラクターと、リアルタイム ワークフローがもたらす自由の両方をとても気に入りました。