Image courtesy of Locus Corporation

リアルタイム アニメーションで思考をビジュアライズした『ユミの細胞たち』

2022年4月21日
ユミの細胞たちは、人気の Web 漫画を原作とする韓国の TV ドラマです。この作品を制作し、期待に応えるために、LOCUS は多くのことを求められました。原作の魅力を維持するために、このプロジェクトではアニメーションに特別の課題がありました。それは、ユミの感情や直感を擬人化する細胞を的確に描写することでした。細胞たちは原作の読者に愛されていたので、番組の成否はその描写にかかっていました。

ユミの細胞たちは、人間の感情と、感情がどのように行動に表れるのかをテーマとして取り上げ、人間の脳の神秘を探っています。LOCUS は実写の演技と 3D アニメーションをシームレスにうまく組み合わせ、このプロジェクトを成功に導きました。人間の思考をこのようなユニークな形で描くという課題にどのように挑んだのか、TV シリーズを手がけたアーティストに話を伺いました。
 

ユミの細胞たちについて教えてください。このプロジェクトにはどのように取り組みましたか?

ユミの細胞たちは、Web 漫画を原作とする TVING オリジナルの番組です。このプロジェクトでは、実写の俳優と、ユミの脳内の 3D の細胞たちが共演します。

アニメーションで最も重要だったことは、ユニークな細胞を鮮やかに描き、実写のシーンと完全に融合させることでした。幸い、それをうまくこなすことができ、番組はヒットしました。ヨーロッパ、北米、東南アジアなど、世界 160 か国で全年齢層に受け入れられました。

制作に Unreal Engine を使うことになったのはなぜですか?

LOCUS では、高品質のコンテンツを効率的に制作するために、常に新しい技術を調査し、取り入れています。Unreal Engine は、制作の効率を向上させ、イノベーションを促進するための新しいソリューションとして提示されました。それを受けて、スタジオで導入に向けて調査を行いました。私たちはユミの細胞たちをより良いものにしたいと考えていました。その気持ちは制作スタッフも同じだったので、このプロジェクトで Unreal Engine を広く使うことにしました。

Unreal Engine は数年前から内部の小さなプロジェクトで使っていました。プロモーション ビデオ、VR ゲームのプロトタイプ、リアルタイム アニメーション パイプラインの研究開発などが対象でした。ユミの細胞たちは Unreal Engine を大規模な制作で利用するよい機会だと考えました。

具体的にはどこでどのように Unreal Engine を使ったのですか?

アセットのルックの開発段階から、撮影のライティングの段階、最終的なレンダリングまで、Unreal Engine は多くの領域で使われました。いずれについても高品質な成果を迅速に上げることができました。
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キャラクターについては、スケルタル メッシュ、Alembic キャッシュ、Dikel などのコンポーネントを 1 つのアクタ クラスとしてグループ化しました。マスターのブループリント アクタができたら、子のアクタを派生させて各キャラクターを作りました。それからブループリント内で必要なスクリプトを追加して使用しました。これにはシンプルで動的なマテリアル インスタンスの操作から複雑な機能まであり、バックグラウンドのアクタとのやり取りに使われました。

背景はテレインとフォリッジを使って合成しました。そのために、Unreal Engine のランドスケープと Maya で作成したスタティックメッシュの両方を利用しました。特に、ユミの脳内にある村の周囲の砂漠は、これらのランドスケープを使って 1 つの空間として設計されました。また、村にあるそれぞれの建物が 1 つのモジュールとして生成され、それぞれの背景は Unreal Engine 内でレベルとして合成されました。

背景のアセットを状況に応じて調整し、ブループリント アクタとして設定しました。ライティングについては、雲と空のメッシュ、ライト、フォグなどのコンポーネントをグループ化してブループリント アクタを作成しました。ライティングの状況に応じて、ここでも子のブループリントを使用しました。
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フォトリアルなシーンとアニメーションのシーンを融合させるために、さまざまなライティングの条件を探りました。たとえば、ユミの脳内にある村のライティングを適切なものにするために、時間枠ごとにライトのブループリントを作成し、各シーンのシーケンサーに適切なブループリントをスポーンしました。

必要なエフェクトは、キャラクターとプロップのブループリントにコンポーネントとして埋め込まれるか、ブループリント アクタの形式で独立してシーンに挿入されました。Niagara も使用しました。Niagara によって、ライティング アーティストがブループリント アクタのパラメーターを調整するだけでエフェクトを実装できるようになりました。Niagara のシステムについて学習する必要なく、高品質なエフェクトを簡単に使い、制御できました。また、雪、雨、塵、霧などのエフェクトを前もって準備して、いつでも使えるようにしました。これによってリード ライティング アーティストのプロセスが簡素化され、コンセプトの計画や必要なショットの合成を行いやすくなりました。
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ユミの細胞たちのプロジェクトに Unreal Engine を導入してから、制作のパイプラインにはどのような変化がありましたか?

最も重要なステップは、ライティング ソリューションを直ちに確立することでした。そのために、Maya から Unreal Engine に大量のアセットまたはショットのアニメーション データを送りました。

多数の長編作品やテレビ向けアニメーションを制作するなかで、LOCUS はモデリングから合成まですべての情報を収集するデータベース ツールを社内で開発しました。これによって、作業の全プロセスで生成されたデータを取得し、各種のデジタル コンテンツ クリエーション (DCC) ツールで利用できるようになっています。その結果、Unreal Engine の FBX コンテンツ パイプラインにデータを簡単に適用できました。

最初にアセットを移植した段階で、Maya で制作した各種のアセット コンポーネントを Unreal Engine と互換性がある形式でエクスポートしていました。どの DCC パイプラインでも、アセットの開発履歴を保存するためにバージョン管理が重要です。このプロジェクトではバージョン管理の機能を活用してアセットを最新の状態に保ち続けました。Unreal Engine にある各アセット コンポーネントの最新バージョンをチェックし、再インポートが必要かどうかを判断しました。

ショットの開発の段階では、スポーン可能なアクタをレベル シーケンス アセット内に作成し、ショットのすべてのコンポーネントを 1 か所で管理できるようにしました。このシーケンサー ベースのアプローチを Sequencer Scripting プラグインと組み合わせることで、アセットのバインドやさまざまなショットへのアニメーション アセットの追加などのタスクの自動化を改善し、効率を向上させることができました。
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Unreal Engine にはどのようなメリットがありましたか?

Unreal Engine を使うとさまざまなメリットがありますが、最も役立つのはリアルタイム機能です。以前のライティング パイプラインではリアルタイムの実装や調整をサポートしていなかったので、デザイナーがライティングについて予想する必要がありました。Unreal Engine のライティングはリアルタイムで反映されるため、デザイナーが直ちに調整できます。また、ライブ環境で合成について確認し、議論できたので、チーム全体にとって大きな価値がありました。予期しないサンプルのエラーや長いレンダリング時間などの問題をその場で解決できました。
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レンダリング品質は高速なオフライン レンダラに匹敵するものでした。ユミの細胞たちのプロジェクトにリアルタイム レンダリングではなく従来のアプローチで挑んでいたら、レンダリング時間は 20 倍になっていたでしょう。しかし、Unreal Engine のおかげで、処理時間が大幅に伸びる心配はなかったので、ショットの品質向上に努めることができました。

Python との互換性も大きなメリットでした。Python はクロスプラットフォーム言語で、さまざまな DCC ツールでサポートされています。Unreal Engine のコマンドは Python で実行できるので、カスタマイズをすぐ簡単に行うことができます。特に、シーケンサーや Movie Render Queue など、アニメーションのパイプラインに必要な機能で Python がサポートされているので、大量のデータの処理を自動化し、既存の DCC 制作パイプライン戦略に組み込むことができました。

マテリアル インスタンスも新たなメリットとなりました。これは以前のツールでは見たことのない機能でした。1 つのマテリアルをさまざまな方向に広げることができ、大量のマテリアルを一度に変更できます。この機能は、見た目が似ている大量のキャラクターや多数のアセットのマテリアルを管理するときには極めて便利でした。このプロジェクトにはどちらも欠くことができませんでした。

ブループリントも重要な機能でした。ブループリントを使えば、エンジニアではないアーティストが技術的な側面にアクセスしやすくなります。ブループリントは多くの領域で有効活用できます。アクタ クラスの設定とシーンの要素 (レベル スクリプトを含む) を技術的に操作するだけでなく、作業プロセスに必要なユーティリティ ツールを作成できます。

たとえば、雪の中を足跡を残しながらキャラクターが歩くシーンを作成する場合、従来の Maya ベースのプロセスでは、アニメーションが変更されるたびに足跡のエフェクトを変更する必要があります。足跡をできあがった歩行のアニメーションに合わせる必要があるからです。しかし Unreal Engine では、キャラクターが雪の上を歩くたびに足跡を自動的に作成するように設定できます。
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Unreal Engine を使ううえで最大の課題となったのは何ですか? どうやってそれを解決しましたか?

最終的な仕上がりについて心配していました。まず、ユミの細胞たちは放送のスケジュールが厳しくなっていました。また、フォトリアリズムとアニメーションを組み合わせた新しい形式を採用したため、大量のアセットと撮影の作業が必要になっていました。そして、LOCUS のアーティストの多くは Unreal Engine を使った経験がありませんでした。

克服した課題の 1 つは、複雑なリグによって制御され、多くの変形処理が必要になるアニメーションを Unreal Engine を使って作成する方法について理解することでした。この問題を解決するために、Alembic を使ってセル キャラクターの顔を作り、FBX を使ってほかのパーツを作りました。セル キャラクターの目はカートゥーン スタイルで表現する必要があったので、ブループリント アクタにジオメトリ コンポーネントを追加して、スクリプティングによって準備を行いました。それから Alembic の顔データをシーケンサーでつなげました。

成功の背景にあるノウハウを教えていただけますか? 制作プロセスを通じてどのようなことを学びましたか?

過去の経験から、プロジェクトの開始時に内部用ツールを開発し、パイプラインやアーティストのチームに混乱が生じないようにしていました。ユミの細胞たちには各話 200 から 300 のカットがあったことを考えると、この Python ベースの内部用ツールがなかったら期限に間に合わせることはできなかったでしょう。はじめのうちはブループリントとシーケンサーでのアセットのレンダリングについて問題がありましたが、LOCUS と Unreal Engine のチームが解決策を積極的に探りました。Epic Games Korea がいろいろと支援してくれました。

アニメーション スタジオである当社が最も懸念していたのは、Unreal Engine のようなリアルタイム 3D ツールを導入し、スタッフに早く慣れてもらう点でした。そのために、トレーニングの内容と範囲を定め、パイプラインやブループリントで自動化する必要がある部分を明らかにしました。それから、確立されたプロセスを実行しつつ、改善が必要な点を明らかにしていきました。
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主要な制作を開始する前に Unreal Engine についての授業を行い、アーティストに Unreal Engine の基本を教えました。1 対 1 の講義や、ガイド付きの実習によるトレーニング セッションも実施しました。それ以降は、Unreal Engine の使用中に問題が発生したら、原因と解決策を文書化し、問題が再発した際に簡単に参照できるようにしました。カメラの設定のエラーなど、よくある問題についてはプラグインを開発して自動化して対処しました。

また、フィールド マニュアルを作成してアセットの特性と使用方法を説明し、ワークフローを詳細に把握できるようにする必要がありました。オプションの数値とワークフローの各段階でのエディタの使用方法を示し、アーティストがアセットの操作を統一して一貫性を保てるようにしました。

LOCUS の今後について教えてください。

ユミの細胞たちのシーズン 1 の人気を受けて、シーズン 2 とフル 3D の長編アニメーションを制作しています。ドラマとアニメーション映画で、ユミの細胞たちのキャラクターにまた会えます。ほかにも、韓国語でナンバー ワンのベストセラー小説であり、韓国で最も有名なファンタジー小説でもある退魔録を原作とするアニメーションを制作中です。オカルトのジャンルに分類されるこのアニメーションでは、原作の魅力的なストーリーをスタイリッシュかつモダンなアニメーションで描きます。フィクションや Web 漫画に基づくアニメーションで計画中や制作中のものが多数あります。ランニングマン (子ども向けの人気アニメーション シリーズ) の長編アニメーション作品 2 本、グローバルのオーディエンスを意識したオリジナルの家族向けアニメーション Red Shoes などを予定しています。

また、LOCUS は、クールでおもしろいアニメーションによって世界のすべての人に喜びを届けるために、さまざまな技術やデザインを開発しています。LOCUS の詳細情報については、Web サイトYouTubeInstagram をご覧ください。

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