Image courtesy of Scania CV AB / GEISTT AB

Scania における HMI の新しいコンセプトのリアルタイム シミュレーション

2020年11月6日
GEISTT AB は非常に専門的な企業です。コンサルティング サービスと実践的な方法やツールを提供し、ヒューマンシステムの全体的なパフォーマンスと安全性を向上させる応用の研究開発を行っています。GEISTT は、コンテキストを反映した人間の認知と行動についての実用的かつ科学的な知識と、高度なテクノロジーと組織的な効果に対する深い理解に基づいて、多くの学問分野にわたる、応用の研究を重視したアプローチをとっています。

2013 年から、GEISTT は大型車両メーカー Scania (スカニア) のインタラクション デザイン チームと協力しており、研究開発サービスを提供し、コンセプト開発とシミュレーションベースのテストに取り組んでいます。Scania はこれらのシミュレーションを利用して、新しい UI 機能から自動運転車とやり取りするための手続きまで、あらゆることにヒューマンマシン インターフェイス (HMI) のコンセプトがどのような影響を与えるかを分析しています。

未来のコンセプトについて、リソースの効率が良いイマーシブなテストを開発プロセスの早い段階で利用できるようにするために、GEISTT は Scania の人間参加型 (human-in-the-loop) シミュレーション機能に変更を加えました。以前は大量のリソースを必要とする専用のシミュレーターを使っていましたが、それを Unreal Engine に移行しました。 
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そのビジネス上の価値は計り知れないものになっています。「結局のところ、重要なのは、効果的なシミュレーション機能が会社にとってどれほど価値があるか定量化することです」と Jon Friström 氏は述べています。Friström 氏は GEISTT の UX リサーチャー兼コグニティブ デザイン エンジニアで、Scania の HMI シミュレーション チームに対してプロダクト オーナーとしてコンサルティングを提供しています。「改善された製品は会社にとってどれだけの価値があるのでしょうか?ユーザー エクスペリエンスの問題を開発プロセスの早い段階で発見することで、どれほどの金額を節約できるのでしょうか?ほかの手段を使うとしたらいくらかかるのでしょうか?」

リアルタイム シミュレーションを使ったイマーシブな HMI テスト

Scania のインタラクション デザインの開発は、多くの場合イテレーションを重ねて行われます。イテレーションの 1 つ 1 つを通じてコンセプトが開発され、最終的な製品に近づいていきます。コンセプトがテストされ、そのパフォーマンスについてフィードバックが提供されます。ほとんどの場合の目標は、コンセプトを展開したり将来の開発を提案したりする前に、意図された自然なコンテキストでコンセプトがどのように機能するかについて理解することです。こうすれば、開発チームが小さな問題を早期に解決したり、コンセプト全体を見直したりすることができます。問題を早期に発見すると、費用をかけず簡単に解決できます。

開発プロジェクトが進展するにつれて、コンセプトをテストするイテレーションのリアリズム、複雑さ、コストが増加していきます。Scania のインタラクション デザイン グループでは、通常は、早期のテストは紙のプロトタイプを使って行われます。後期のテストはより多くのリソースを使い、ドライビング シミュレーターで行われます。最新のリアルタイム テクノロジーを使うようになる前は、Scania の一般的な開発プロジェクトでは、数回の初期のユーザー テストでは紙に描かれたワイヤーフレームを使い、それから場合によってはコンピューター上のインタラクティブなプロトタイプを使い、最後にシミュレーターを使ってコンセプトを確認していました。

斬新なコンセプトはシミュレーター環境で一度テストされるだけで、デザイナーと開発者は、シミュレーターを使った調査でフィードバックを受け取ったあとにそのコンセプトを再度テストすることはできませんでした。Unreal Engine を使うようになった現在、チームは開発プロセスの早い段階でイマーシブなシミュレーションを使ってコンセプトをテストできるようになりました。Unreal Engine は C++ との結び付きが強く、オープンソースであるため、チームは特定のユース ケースのためにテクノロジーを簡単に適応させることができます。「たとえば、Unreal Engine をプラットフォームとして使うと、さまざまなプラグインやシステムと柔軟に接続しやすくなります」と Friström 氏は述べています。 

ドライバーによるインタラクションのシミュレーション

Scania のインタラクション デザイン チームが力を注いでいる主要な点の 1 つが、ドライバーによるインタラクションのシミュレーションです。そのためには、システムの一部としての HMI のコンセプトをテストする必要があります。テストには、ドライバーと車両に加えて、多くの場合でほかの自動車や歩行者も関わります。
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先進運転支援システム (ADAS) のプロトタイプのテストでは、チームは実際のドライバーを使ってプロトタイプ システムのバリエーションを比較します。テストの多くで、参加者は予想外の状況に繰り返しさらされます。もし、現実のテスト コースや実際に使われている道路でそのテストを実施したら、ドライバーや車両の周囲にいる人は極めて危険な状態におかれるでしょう。

テストによっては、特定のユーザー グループ向けの高度な機能を評価することもあります。たとえば、材木を運ぶドライバーや都市部を走る配送業者には多様かつ特殊なニーズがあります。チームはこうしたユーザー グループにとって役立つ機能を評価し、業務への効果や業務効率の上昇を測定します。

UI に関する新しいコンセプトも調査されます。UI に関する新しい方針を比較する場合、たとえば、インフォテインメント システムのさまざまな初期のコンセプトを実際のドライバーを使って比較し、インタラクションの方針として適したものを特定してから、コンセプトについての次のイテレーションでそれらを組み合わせます。

ほとんどのテストで、シミュレーション チームは、ブレーキを踏む力やレーンからの逸脱など、客観的なデータをトラッキングします。また、反応時間や目の動き、心拍数の変動など、生理学的なデータもトラッキングします。一方で、満足度や UX 調査での評価、エクスペリエンスへのフィードバックなどの主観的なデータは、テスターへのインタビューを通じて収集します。 

ヒューマンオートメーション インタラクションのシミュレーション

Scania のインタラクション デザイン チームは、ヒューマン オートメーション インタラクションをテストするためのシミュレーションも作成しています。これは 3 つのカテゴリに分類できます。

1 つ目は、車両の自動化とドライバーとの関係の調査です。このようなプロジェクトでは、長い休憩のあとや緊急時など、さまざまな状況で車両のコントロールを与えたり肩代わりしたりする方法を中心に調査します。
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テストでは、車両の自律性化が向上したときにドライバーの役割がどう変化するかを調査します。自動化に伴う疲労を防ぐための手順を設定し、ドライバーが目的について適切なメンタル モデルを持ち、自動化について正しく認識できるようにします。この種の調査は、VR とドライビング シミュレーターの両方で実施されています。

2 つ目は、さまざまな種類の自動運転車を管理するための管理環境の研究開発を重視したテストです。露天掘りを行うための特殊な車両や、公共交通システムの一部としてのバスなどがテストの対象となります。

3 つ目は、外部アクターとしての自動運転車の目的を制御し、認識するための調査です。これには、自動運転車をリモートで制御する方法の調査が伴います。たとえば鉱山では自動運転されるダンプをリモート制御します。あるいは、車両の状況と目的についてより良く理解するための、車両外部のヒューマンマシン インターフェイスの設計方法について調査します。この種のプロジェクトでは主に VR を使い、研究者やテストの参加者がシミュレーションに没入できるようにします。
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Friström 氏によると、Scania のインタラクション デザイン チームが実施しているような調査プロジェクトは着実に増加しています。「人間と高度に自動化されたシステムの関係について調査し、テストするプロジェクトは、さまざまな業界で増加する傾向にあります。システムの複雑さは向上し、多くの場合でますます高度な人工知能 (AI) が使われ、AI がさまざまなシナリオでインタラクションしているので、人間参加型のリアルタイム シミュレーションの利用は今後増加していくと予想しています」

Friström 氏のチームの場合は特に、リアルタイム プラットフォームとして Unreal Engine を選択したことで、投資対効果 (ROI) に大きな影響が生じています。Friström 氏は次のように述べています。「開発しているものの性質上、同様のリアルタイム エンジンではなく Unreal Engine を使用していることで、優れた費用対効果を実現できています。追加の料金を支払うことなくソース コードに直接アクセスでき、コミュニティのサポートは優れていて、Epic によるテクニカル サポートは価格に見合ったものです」

開発のためのオープンなプラットフォーム 

ゲーム エンジンのようなオープン プラットフォームを使用すると、HMI のさまざまなコンセプトをテストする人には大きなメリットがあります。「私たちにとっての最大のメリットは、Unreal Engine を柔軟性の高いプラットフォームとして使い、複数のクローズドなシステムを連携させることができる点です」と Friström 氏は述べています。

シミュレーターのビークル ダイナミクスは、外部のクローズドなモジュール、Mechanical Simulation による TruckSim と、Unreal Engine に組み込まれたビークル モデルの両方によって処理されています。 
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同様に、シミュレーションにおける車両のサウンドは、外部のクローズドなモジュール、Audiokinetic による Wwise と、Unreal Engine に組み込まれたオーディオ ツールの両方によって処理されています。クローズドな外部のソフトウェア Sumo によって交通の流れがランダムに生成されていますが、特定の状況下で周囲の交通の流れを作り出すために、Unreal Engine に組み込まれたツールも使用しています。Friström 氏は次のように述べています。「リアルタイム エンジンでこのように別のモジュールを取り入れて使うことができる柔軟性が、Unreal Engine の長所の 1 つです」

nDisplay もチームにとって不可欠な機能の 1 つです。このテクノロジーによって、Unreal Engine のシーンを複数のディスプレイ デバイスに同期してレンダリングできます。nDisplay を使用することで、GEISTT のシミュレーターは、1 台のコンピューターに依存するのではなく、ネットワーク内の多数のコンピューター ノードに処理をオフロードできています。「そうすることで、環境をレンダリングするプロジェクション画面をいくらでも増やすことができます」と Friström 氏は述べています。 

HMI シミュレーションの将来の課題への対処 

Friström 氏とそのチームは、HMI のコンセプトのテストを行う環境を完全に Unreal Engine に切り替えました。「以前使っていたシミュレーター プラットフォームと比べると、UE4 のコミュニティは幅広く、協力的です」と Friström 氏は述べています。

GEISTT がシミュレーターを使い始めるにあたっては、コミュニティのナレッジとサポートを活用できることが、非常に役立っています。Friström 氏は、将来的には、自動車のユーザー エクスペリエンスを最適化するうえでシミュレーションが果たす役割の重要性が増していくと予測しています。「すべての自動車企業がさまざまな形の UX シミュレーションを使っていて、その度合いは高まっています。ほかの業界でも同様のトレンドが見られます」
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HMI のコンセプト考案とそのテストのプラットフォームとして Unreal Engine を使うことで、GEISTT と Scania は将来の課題に対処する備えができています。

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