Image courtesy of Treehouse Digital LTD

MetaHuman が主演を務める Treehouse Digital のアニメーション短編ホラー The Well

2022年3月2日
Treehouse Digital という名前は適当に付けられたものではありません。イギリス南部の海岸沿いにある町、ボーンマスの近くに拠点を構えるこの企業は、子どものころからの友人 6 人で構成されています。かつてこの 6 人はツリーハウスで一緒に遊び、映画やテレビのお気に入りのキャラクターのまねをして過ごしていました。

この一団の想像力を育む環境としては申し分のないものだったと言えるでしょう。大人になっても連絡を取り続けていた 6 人は、2017 年に Treehouse Digital を創業し、最初の作品として、従来型の実写映像 Treaters を制作しました。これは彼らが ScaryTale と呼ぶ短編ホラー作品群の第 1 作でした。

それからまもなく、6 人は台頭しつつあったバーチャル プロダクションの世界に惹きつけられていきました。2019 年に初めてのインカメラ VFX のテストを行ってから、今では映画業界とテレビ業界向けにバーチャル プロダクション全体のサービスを提供するようになりました。オリジナルのコンテンツの制作にも引き続き取り組んでいます。

2021 年 10 月に公開した The Well は短編ホラー作品です。作品全体が Unreal Engine で制作され、Treehouse Digital にとって初めてのフル CG 作品となりました。
 

実写からフル CG アニメーションへ

The Well のライターの 1 人であり、同作品で監督を務めた Peter Stanley-Ward 氏によると、Treehouse Digital は、Unreal Engine の映像制作ツールセットが進化したことを受けてアニメーション コンテンツの作成に参入しました。 

Stanley-Ward 氏は次のように述べています。「私たちは常にアニメーションから大きな影響を受けてきました。実写では、アート ディレクション、ロケーション、映像面での選択など、映像制作のいくつかの側面を慎重に選んで特徴的なルックを作り上げてきました。アニメーションと実写を合流させ、2 つの世界を 1 つにすることをずっと夢見てきました。Unreal の発展を気にかけてきたのはそのためです。Unreal こそ 2 つの世界がぶつかる場所になるとわかっていました」

実際、The Well は、当初は実写の短編作品として考えられていました。ライターの Natalie Conway 氏は次のように述べています。「私たちは、子どもたちが互いに語り合う気味の悪い話が大好きです。キャンプファイアーのシナリオは伝統であり、物語の始まりにつながるものです。この伝統は当分なくなりそうにありません。その原則を取り入れて、いくつかのビジュアルを加えました。Treaters は実写でしたが、ルックとスタイルを完全に制御したかったので、作品全体をデジタルのバックグラウンドを持つスタジオで撮影しました。それは楽しい訓練となりました。また、視覚的なスタイルに沿った短編作品を作る初めての試みでした。The Well は明らかに次の ScaryTale にふさわしいものでした」
 

その先に起きたことについて、プロデューサーの Chris Musselwhite 氏は次のように述べています。「検討を進めるうちに、この作品を制作する唯一の方法は、作品全体を Unreal Engine で作成することだと明らかになっていきました。Unreal Engine のテクノロジーにぴったりの作品でした。実現するために Unreal Engine のテクノロジーが適しているストーリーを見つけることができたのは幸いでした。ストーリーをテクノロジーに合わせようとする必要はありませんでした」

バーチャル プロダクション スーパーバイザーの Paul Hamblin 氏にとっては、Unreal Engine を採用すると決めるのは簡単なことでした。「Unreal は当社の小さなチームにとってはとてもユーザー フレンドリーで、初めてのフル CG コンテンツに取り組むためのメイン プラットフォームには間違いなく最適でした。Unreal に惹きつけられたきっかけは、その映像制作ツールへのアクセスのしやすさでした」

「また、映像制作者のことがよく考えられている点も気に入っています。たとえば、シーケンサーについて理解し、その強力さを知ってからは、夢中になっています」と Hamblin 氏は述べています。シーケンサーとは、Unreal Engine に組み込まれたシネマティック ノンリニア エディタです。
 

優れた物語の作成

満足のいくスクリプトができたところで、チームはロケーションと衣装についてのムード ボードをまとめ始めました。コンセプト アーティストの Steve Trumble 氏は環境と井戸のルックを具体的なものにしました。また、作品に登場する 4 人のキャラクターについて、以前の実写のプロジェクトで仕事をしたことがある俳優をキャスティングしました。 
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同時に、スクリプトをアニマティックに変える作業を始めました。アニマティックとは大まかに作られたアニメーションで、映像制作の第一歩です。 

Stanley-Ward 氏は次のように述べています。「そうすることで、ストーリーが視覚的にうまくいくことがわかりました。また、その段階でスクリプトにいくらか変更を加えました。いくつかうまくいかないところがあるとわかったからです。脚本の新しい版を作ったようなことになりました」
 

MetaHuman Creator の登場

そのころ、MetaHuman Creator の無料のアーリー アクセス プログラムが開始されました。これによって、完全にリグが設定されたフォトリアルなデジタル ヒューマンを誰でもすぐ簡単に作成できるようになりました。それまで、Treehouse Digital のチームでは、キャラクターを作成するための既存の方法をいくつか調べていました。

The Well のアニメーション ディレクター兼編集者の Tom Saville 氏は次のように述べています。「調査を通じていい結果を得ていました。また、当時は、よりスタイルを適用したものにしようとしていました。しかし、MetaHuman が登場して、その見た目のすばらしさを無視することはできませんでした。Unreal 向けに作られていたということももちろんあります。よりフォトリアルなものを作ることができるという確信を急に得ることができました。これほどすばやくできるとは夢にも思っていませんでした」
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Stanley-Ward 氏もその意見に同意しています。「MetaHuman は私たちにとって革新的なものでした。最高のタイミングで登場してくれました。キャラクターをどうやって現実のものとするか、ちょうど考えていたところだったからです。キャラクターはどのように動くのか、キャラクターをどのようにアニメーションさせるのかを考えていました。MetaHuman が現れて、間違いなくこれだとわかりました」

MetaHuman Creator を使うと、高品質のスキャンデータから得られた多様なプリセットに基づいてスカルプトとブレンドを行い、新しいキャラクターを作成できます。直感的なインターフェイスを通じて、誰でも数分で現実的なカスタムのキャラクターを作成でき、数時間あれば要件に合わせて改良できます。 

Saville 氏は次のように述べています。「キャラクターを非常に高速に作成できるので、まるで俳優をキャスティングしているかのようなプロセスになりました。主に実写のバックグラウンドを持つ私たちにとっては、馴染みのあるプロセスのように感じられました」 
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キャラクターの改良

MetaHuman Creator で 4 体のキャラクターを満足のいくものにしてから、カスタムの衣服と髪を作成できるように Maya にエクスポートしました。

衣服は Marvelous Designer でデザインして作成し、キャラクターに重ね合わせてシミュレーションして自然に見える立体裁断を可能にしました。それから折り目や肩パッドなどの詳細を ZBrush でスカルプトしました。次に、Maya で衣服を MetaHuman のスケルトンにバインドする必要がありました。
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CG リードの Doriana Re 氏は次のように述べています。「衣服に近いところだったので、理に適った特定のジョイントを選択しました。それから MetaHuman のボディのスキン ウェイトを衣服にコピーして、ウェイト ペイントを調整しました」

次に、衣服を Unreal Engine にインポートして、Unreal Engine に組み込まれた物理エンジンを使用してシミュレーションを必要に応じて追加しました。

衣服のテクスチャ、井戸などの重要なプロップ、メイクアップや肌の詳細などについては Substance Painter を使いました。Substance Painter は、Trish の爪の下に泥を付けるところにまで使われました。一方で、キャラクターの髪のグルームや Trish のウールの帽子は、Maya に付属するプラグインの XGen で作成されました。
 

リアルタイムパイプラインでのイテレーション

プロセスの終盤、キャラクターが完成して Unreal Engine にインポートされ、ライティングが設定された時点で、Stanley-Ward 氏は、主役の Trish に何かが欠けているような感じを抱きました。そこで、Substance Painter でフェイス ペイントを施した状態で Trish がどう見えるかを確認することにしました。
Stanley-Ward 氏は次のように述べています。「フェイス ペイントによって、Trish が Trish らしくなりました。これは、リアルタイムのパイプラインによって絶え間ない進化が可能になった一例です。作業を進めるなかで常にクリエイティブな判断を下すことができ、キャラクターとストーリーが進化していくのです」
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Musselwhite 氏は次のように説明します。「リアルタイムのプロセスは、私たちの創作スタイルとぴったり合っています。最終的な映像がどう見えるかに基づいてクリエイティブ面での意思決定を適切に行うことができています。また、実写のプロジェクトで行っていたような意思決定を完全にバーチャルな世界で行うことができます」 

「その一例として、私たちは公開の 24 時間前にオープニングの 30 秒を事実上書き換えました。すでにオープニングはできていたのですが、作品全体のコンテキストを考えたとき、ストーリーテラーとしてもっとうまくやれると考え、シーケンサーに向かいました。それは非常にすばやいプロセスでした。その段階ではとても自信を持っていたので、まるで物理的なカメラですばやく撮影するような感じでした。リアルタイムでなかったら、そのようなことはしようとも思わなかったでしょう」 
 

モーションのキャプチャと調整

俳優がキャスティングされ、キャラクターにアニメーションを付ける準備が整ったところで、モーション キャプチャの撮影スケジュールを決めました。ボディ パフォーマンスのキャプチャには Xsens スーツ、表情のキャプチャには Faceware が使われました。Musselwhite 氏は次のように述べています。「スーツのデータはすべて各自のシステムに記録され、バックアップされていましたが、すべてのデータを Unreal にストリーミングして、俳優がキャラクターの姿でどのように受け取られるかよく確認できるようにする必要がありました」

プレビューとセットに置かれたカメラを組み合わせて使い、チームは演技のなかから採用するものを決め、編集中の映像に適用し始めました。それから指のアニメーションを改良するために StretchSense のグローブを使い、複雑な動きを記録しました。その動きは、シーケンサー内で元のアニメーションに適用されました。

Xsens アプリケーションでの処理を終えると、モーション キャプチャ データの精度がかなり高いことがわかりました。キャプチャされたボリュームそのままでも良い状態になっていて、調整は手足や身体の位置に対して数か所行うだけで済みました。表情のデータについても同様に、精度の高いキャプチャ データを得ることができました。
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「全体としてはとても優れた基盤になりましたが、唇の動きや表情を本当に良いものにするために、キーフレーミングをさらに少しだけ調整する必要がありました」と Musselwhite 氏は述べ、そのために Unreal Engine の Facial Control Board を使ったと説明します。「テイクをコントロール ボードにベイクしてから作業を始め、データをクリーンアップできただけでなく、俳優の演技の表情に関わる微妙な部分を引き出すことができました」

Saville 氏は次のように述べています。「アニメーションのクリーン アップや調整を外部プログラムではなくエンジン内で行うことができるので、とても自由を感じることができます。ショットを改善するために、あらゆるものに微調整を加え続けていました。たとえば、自然に見えるようにするために、視線をリターゲットすることが重要でした」
 

最終的な仕上げ

最終的な演技とカメラのアングルが作られていくと同時に、環境も作っていく必要がありました。主なロケーションは 3 つで、オープニングの線路の跡、地上の井戸、井戸の下がありました。
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セットと環境を作るために、チームはキットバッシングを行いました。Unreal Engine で無料で利用できる Quixel Megascansマーケットプレイスのアセットを使い、樹木や根などのオブジェクトを配置しました。目立つ樹木や根など、特定の要素については、ゼロからデザインしてモデリングするか、ほかのアセットに手を加えました。 

井戸の水には Waterline PRO を使いました。カメラのすぐ外で球体を落とし、狙い通りの波を作りました。気味の悪い、湿っぽい雰囲気を出すために、調整したさまざまライトを追加して壁やメインのキャラクターの上に偽のコースティクス ライティングを作り出しました。
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次に、Unreal Engine のボリュメトリック クラウドSky Atmosphere を使って各ロケーションの雰囲気を制御しました。Hamblin 氏は次のように述べています。「これによって、雲の密度、高さ、動きを正確に制御することで、場面のトーンをうまく調整できるようになりました。スカイドームやマット ペイントとは異なり、現実の雲のように振る舞うので、映像に自然な感じを与えることができました」
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画像を完成させるために、Unreal Engine に組み込みのパーティクル VFX システム Niagara が使われ、落葉や塵のパーティクルが追加されました。 

Unreal Engine での最終的なレンダリング

すべての準備が整ったところで、Unreal Engine での作業のスピードを活かし、最終的なレンダリングのプロセスを撮影のように扱うことができました。 

Musselwhite 氏は次のように述べています。「ショットのテイクを 1 つ取り出して、ライティングやアングルに調整が必要かどうか Adobe Premiere で確認して、また別のバージョンを試します。満足行くものが得られたら次に進みます。これは実写のセットでの仕事の進め方にとてもよく似ています。実写のセットでは、ブロッキングを行い、モニターで確認して、ライティングを調整し、俳優がセットに入って撮影をします」
 
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最後の段階は、カラーグレーディング セッションでの映像のルックの最終化でした。Adobe Premiere で Lumetri を使い、フィルム グレイン、エッジのブラー、自然なブルームを追加しました。また、Red Giant を使って、レンズの歪みの除去やディフュージョンなど、いくつかのポストプロセス エフェクトを適用しました。「そうすることで最終的なルックが固まりました。ロスレス画像シーケンスを Unreal からレンダリングしていたため、映像を自由にできる裁量がありました」と Saville 氏は述べています。 
 

Treehouse Digital が次に目指すもの

初めてのフル CG 制作を終えた Treehouse Digital のチームは、休むつもりはありません。すでに次の ScaryTale のプリプロダクションに入っており、こちらは 2022 年のハロウィンのリリースを予定しています。ほかのプロジェクトも積極的に探しています。

Stanley-Ward 氏は次のように述べています。「このテクノロジーによって新しいビジュアル ストーリーテリングの形が開かれつつあることは明らかです。志を一つにする少数のアーティストが集まり、信頼できる美しいストーリーを作って、世界中の人々の共感を呼ぶことができるようになるでしょう。私たちは以前のやり方に戻りたくはありません。このテクノロジーを使って世界やキャラクターを現実のものにするさまざまな新しく楽しい方法を目にしてきました。そのやり方は Treehouse にとてもよく合うものでもあります」

The Well はほかのプロジェクトとは異なるものでした。わくわくするような楽しいもので、自由を感じることができ、やりがいのあるものでした。厳しい試練ではありましたが、ハロウィンが終わると、Unreal に戻ってまた制作を始めるのが待ちきれなくなっていました」
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