Image courtesy of Lorenzo Drago

環境アーティストに聞く、UE5 でのフォトリアルに近い駅の作成方法

3D 環境アーティスト、Lorenzo Drago 氏
私はイタリアの 3D アーティスト、Lorenzo Drago です。大学ではコミュニケーション デザインを学びました。十代のころ独学で Blender を使い始めてアーティストとなりました。過去 3 年間にわたって、大学の授業、フリーランスとしての仕事、Mod とインディーの開発、個人的なプロジェクトを通じてゲームのアートに取り組んできました。
私は 5 月に最新の作品をポートフォリオに加えました。Unreal Engine 5 を使って作成した、日本の富山県射水市にある越中大門駅を元にした環境です。公開後にこの作品についてたくさんの質問をいただきました。ここでは、シーンの昼夜のライティングのシナリオとカメラのモーションの作成方法と、環境のセットアップ方法について説明します。
 

越中大門駅のプロジェクトの初期段階

越中大門駅のプロジェクトは Unreal Engine 4 で始めて、途中で UE5 に切り替えました。これはアセットに Nanite を使わなかった理由の 1 つでもあります。プロジェクトの開始時点では古い PC 1 台で作業する必要があり、いくつかの点では UE5 のほうがパフォーマンスに優れていることがわかりました。特に Lumen によってライトマスのベイクにかかる時間が短縮され、ライティングについてイテレーションを高速に行うことができるようになりました。プロジェクトは UE5 へとスムーズに移行できました。プロジェクト設定で新しいレンダリング機能を有効にして、すべてのライティングをリアルタイムに切り替えるだけで済みました。私にとってはライティングの段階が難しかったので、Epic Games の ライティングの基礎概念とエフェクトのコースを主な学習教材として使用しました。

私の ArtStation のページに現在掲載しているほかのプロジェクトはいずれも依頼か課題として取り組み始めたもので、まったく個人的なプロジェクトとして真剣に取り組んだのはこれが初めてでした。そういった理由から、自分が美的に共感できるものを目指したいと考え、誰にでも関連のある日常的な美による堅実なフォトリアリズムを追求することにしました。また、そうすることによって、リファレンスの利用、プロポーション、マテリアルや、以前のプロジェクトで改善が必要だと考えていた領域について学ぶことができました。
 

数年前に日本を旅したとき、周囲に何もない地方の鉄道の駅をいくつか訪れる機会がありました。私はそういった場所には独特の懐かしい雰囲気があると思いました。また、城、寺、神社よりも人が住んでいるような気配があると感じました。

最近、オンラインでリファレンスを探していたときに、現実の越中大門駅の写真を見かけました。その写真から日本を訪れたときに感じた雰囲気を思い出し、次のプロジェクトの題材に選びました。
 

Lumen を使った昼夜のライティング シナリオの作成

このプロジェクトではライティングは比較的シンプルに行うことができましたが、それは少なからず Lumen のおかげと言えます。日中のシーンについては、まず現実の輝度の値を使うことにしました。これはインターネットでごく簡単に見つけることができます。大きな値だったので慣れるのに少し時間がかかりましたが、露出が適切になるよう調整できるとうまく機能しました。そこを出発点としてさらに調整を加え、リファレンスと自分が望むルックに近付けていきました。

日中のシーンでは、UE5 のデフォルトの指向性ライトとスカイ ライトのセットアップはとてもうまく機能しました。これはライトとスカイ ライトの色と強度を入射角に基づいて自動的に調整するからです。ただし、日の入りや日の出のシーンでは色が飽和してしまうため、さらに調整するとよいでしょう。

作成していた静的なシーンのために HDRI の背景を使うことにしました。これはシーンのスカイが動的ではないことを意味します。そのままでは背景に含まれる太陽がシーンの指向性ライトに加えて間接ライティングに影響してしまうので、背景がスカイライトに影響しないようにしました。こうした調整によって、Lumen がグローバル イルミネーションをごく自然になるように計算したのを嬉しく思いました。

一方、夜のシーンでは Lumen は少し扱いづらくなりました。現実のリファレンスと比べると私のシーンは暗く見えて、ライトが十分にバウンスしていないかのようでした。露出や輝度を高めようとすると、Lumen では半分影になっている領域の多くで問題を解決することが難しく、ノイズが増えたり不安定になったりしました。夜のシーンは若干スタイルを適用したように見える結果になりましたが、満足できるルックになりました。やや 1 人称のホラーのようなスタイルになりました。

懐中電灯は簡単にセットアップできました。シンプルな Light Function Material を適用したスポットライトを使いました。ライトの Emissive Color 入力に「cookie」テクスチャをプラグして利用しました。それから、正面からのライトに対して面白い反応が得られることを期待して、シーンのさまざまなマテリアルの湿り気を調整しました。

Unreal Engine 5 でのカメラのモーションと懐中電灯のアニメーションのセットアップ

カメラのモーションのセットアップは私にとってはまったく新しいことでわくわくしました。環境の探査に身体性を取り入れ、ロケーションに人が住んでいるような感じが得られるのを楽しみました。

最初はスマートフォンのトラッキングを検討していましたが、VR に落ち着きました。これは、撮影中にリアルタイムでシーンを完全にレンダリングできることがとても便利だったからで、特に夜間のバージョンでは反射が重要でした。

Unity で C# を使ってスクリプティングした経験がありましたが、ブループリントを使うのはこれが初めてでしたし、バーチャル プロダクションの経験もなかったので、セットアップを作るうえでいくつか課題に直面しました。Aiden Wilson 氏によるチュートリアルがとても便利でした。必要なステップすべてとそれ以上のことをカバーしていました。

私のソリューションは、高度さ、クリーンさ、パフォーマンス、ユーザー フレンドリーさの面で最高レベルとは言えませんが、自分の限られたニーズを十分に満たすことができました。
 

トラッキングしたモーションを記録するために Unreal Engine の Take Recorder を使い、カメラ オブジェクトを追跡するようセットアップしました。シーンはリアルタイムで十分よく実行でき、調整不要で再生できたので、再生を押して新しいテイクを始めるだけで済みました。
 

夜間のシーンでは、当初は懐中電灯の動きをセットアップしていませんでした。トラッカーを加えて各ショットを録画し直す代わりに、ブループリントを少し編集して既存のテイクに重ねて動きを記録しました。また、Take Recorder の機能を使って既存のテイクを録画しました。

懐中電灯の水平方向の向きはカメラから継承したため、たとえば片手ずつにコントローラを持って懐中電灯とカメラの動きを別々に録画した場合と比べると、でき上がりがやや人工的に感じられるものになりました。

カメラのモーションの録画が終わったら、その動きに合わせて現実のカメラで録画し、動画のためのメインのオーディオ トラックを取得しました。また、いくつかサウンド エフェクトを追加して、低品質のオーディオ圧縮と各ロケーションの反響に調和させようとしました。Adobe Premiere を使って、オーディオ ファイルをレンダリングしたシーケンスと組み合わせました。

プロジェクトはシーケンサーから高解像度の画像シーケンスとして直接的にレンダリングしました。1 つ触れておかなければならないのは、トラッキングしたカメラ ブループリントを無効にする必要があったことです。これはシーケンスをレンダリングする際に VR の入力が影響するためでした。

ポストプロセスの設定はデフォルトからあまり変えませんでしたが、露出、ブルーム、トーン マッピングのカーブを調整し、色にも少し手を加えました。

その後 After Effects でさらに色を調整し、シャープ エフェクトとビネットの調整も行いました。こうした調整はエンジン内で直接行うこともできたと思いますが、このほうが私にとっては扱いやすく、いろいろ試すこともできました。

私の作品は、YouTube のチャンネルArtStation でご確認ください。

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