VR Perspectives が VR トレーニングを通じてインクルージョンとダイバーシティをもたらす

By Sébastien Lozé |
2020年8月11日

Myra LalDin 氏

パキスタンとタイで育ち、国際的な教育を受けた LalDin 氏は、世界の多くの文化に対する多面的な見方の持ち主です。VR Perspectives の創業者である LalDin 氏は、文化の違い、想定、偏見についての理解を VR を通じて深めることができる、ユニークな立場にあります。
職場におけるダイバーシティとインクルージョンは、長い間にわたって社会的議論になっています。多数の大企業が、セミナー、ビデオ、ロールプレイを利用して、ジェンダーや人種に関わる偏見についてのトレーニングを義務付けています。

しかし、どれほどの成果を上げられているのでしょうか。行動を管理することはできても、その背後にある意識を変えるのは難しいものです。いくつかの研究から明らかになっているとおり、周辺的な地位に追いやられている人々の雇用と処遇についてのルールや規制は、役に立つというよりはむしろ害になっています。

オハイオに拠点を置く企業、VR Perspectives は、リーダー向けのインクルージョン研修を専門としています。イマーシブな VR エクスペリエンスによって、トレーニングを個人的かつ効果的なものにしようとしています。VR Perspectives の世界は、オフィスにおけるシナリオを舞台としています。参加者は特定の人物となり、その人として働きます。
私たちがどのように世界を見て世界と関わるのかを決める、根源的な構造について、新しい理解を得られるようなエクスペリエンスを作りたいと考えています。そのような新しい理解が得られる気付きの瞬間に立ち会えると、最高の気分です。
- Myra LalDin
VR Perspectives の創業者兼最高ビジョナリー責任者 (CVO)、Myra LalDin 氏は次のように述べています。「VR は共感を生み出すための優れたツールだと考えました。他人の立場になり、新しい物の見方を手に入れることができます。ほかの手段ではできないことです。人から話を聞くのではなく、身をもって知ることができます」
VR 内では、ほかのキャラクターのボディ ランゲージ、アイ コンタクト (あるいはその欠如)、その他の微細な合図に、ジェンダーや人種のグループが報告した総合的な体験が反映されています。参加者はそれを自分のことであるかのように体験できます。LalDin 氏は次のように述べています。「多くの場合、参加者は、自分がその人としてどのように扱われたかについて、強い感情を抱くようです。これは自分のこととして記憶され、とても強い記憶となります。外側から見るよりもはるかに強力な影響があります」

多文化に関わる出発点から VR へ

LalDin 氏はパキスタンで生まれ育ちましたが、世界中からの子どもが集まる、インターナショナル スクールに通っていたため、若いうちから異文化交流に関心を抱いていました。大学で異文化ビジネス マネジメントを学んでから、ハーバード大学の大学院で認知科学と行動理論を学びました。

「複数の国で育ったおかげで、さまざまな文化、人、言語と触れ合う機会に恵まれ、さまざまな見方を持つことができました。こうした違いについて、文章を読んだり動画を観たりするだけでは、体験した場合ほどには理解できません」と LalDin 氏は述べています。
同じく LalDin 氏が CEO を務める親会社、VECTRE は、General Electric や Procter & Gamble などの顧客向けにカスタム エンタープライズ ソリューションを開発しています。LalDin 氏が VR の分野に参入したのは、社会的、感情的な面でのリーダーシップ トレーニングのツールとしての可能性を見出だしたからでした。「私の好きなことわざに、魚は空中に出るまで水のことを知らない、というものがあります。これは私たちの規範や文化にも当てはまることです。あるということにすら気付いていないのです。私は、人々が日々その中を泳いでいる水について疑いを持つことができるように、手助けしたいと考えています」と LalDin 氏は述べています。

そのために、VR Perspectives は、参加者に「そこにいる」感覚をもたらす VR エクスペリエンスの作成を専門とする企業として独立しました。ユーザーは、VR 機器の使用法以外にはあまり指示を受けずに、VR 内で別の誰かになります。

LalDin 氏は次のように述べています。「このトレーニングはすべての人が対象です。特定のジェンダーや人種向けのものではありません」また、LalDin 氏は、偏見に関する従来のトレーニングは懲罰的であると述べています。従来のトレーニングでは、参加者は、特定の振る舞いが「正しくない」あるいは「悪い」ことであると教えられます。VR Perspectives のトレーニングではそのような解説はありません。
「どう考えるか伝えるのではなく、参加者に探ってもらうようなものを作りたいと考えました。参加して自分で学び、自分で結論にたどり着く、というものです。学習のツールを使い、議論を促進することで、お互いから学べるようにします。そして、体験したことに基づいて、自分が望むような文化を作れるようにします」

脚本とシナリオは、主に、対面のインタビューとアンケートを通じた LalDin 氏の研究に基づくもので、あわせて、Deloitte や McKinsey & Company などの主要なコンサルティング ファームの調査も活用しています。

「この分野ではすでに多くの研究がなされていますが、対面でインタビューしてフィードバックを得ることが重要だとわかりました。そうすれば、日々繰り返されるちょっとした排除の振る舞いを経験したことによる感情や痛みを伝えることができます。その感情をユーザーに味わってもらいたいのです」と LalDin 氏は述べています。

VR での学習エクスペリエンスの開発

どのリアルタイム エクスペリエンスにとっても課題のなることの 1 つが、高いフレーム レートを維持しながら説得力のある環境を提供することです。VR Perspectives は、そのために、オフィスのシーンを慎重にデザインしました。

VR Perspectives のリード アーティスト、Mickey Stewart 氏は次のように述べています。「VR 環境に入ったユーザーは、まず周囲を見回します。そこで、オフィスの環境には、説得力をもたらす程度に物を置き、かつ気が散るほど複雑にはならないようにしました。オフィスを見たあとには、ほかのキャラクターとシナリオの内容に集中して欲しいと考えています」
また、VR Perspectives のチームは、環境をできるだけインタラクティブにすることにも力を注ぎました。VR Perspectives のリード プログラマー、Parth Naik 氏は次のように述べています。「ホチキス、ペン、メモ帳などが置いてあり、ユーザーはそれらを拾ったり、動かしたり、放り投げたりすることができます」

リアルタイム エクスペリエンスを Stewart 氏が高く評価している点の 1 つは、ユーザーの行動と VR ヘッドセットで見られる内容が直接つながることです。「たとえば、あなたの方を見ると、画面内であなたを見つめることになります。もし、自分とアイ コンタクトを取ろうとしない人がいたら、この環境がどのようなものかすぐわかるでしょう」
 

それぞれのエクスペリエンスでは、自分が操るキャラクターがシナリオにどう反応するか選択できます。ところどころで、自分を不快にさせた振る舞いについて指摘するか、咎めないでおくかを選択できます。指摘せずシナリオの内容をそのまま受け入れる場合も、問題を取り上げて、繊細すぎるとはねつけられるリスクを負う場合も、この選択によって感情に深みが加えられます。

プラットフォームとしての Unreal Engine の選択

チームがリアルタイム プロダクションに取り組むにあたって、エンジンを選択することになり、出力する画像の品質から、Unreal Engine が選ばれました。VECTRE のリード テクニカルアーティスト、Michael Ballentine 氏は次のように述べています。「Unreal Engine のビジュアルは圧倒的で、明らかに優れていました」

Naik 氏は、ビジュアル スクリプティング システム、ブループリントを使用して、プロトタイプをすばやく作成しています。1 つのシナリオについて複数の関係者がイテレーションを行う場合、プロトタイプをすばやく作成することは特に重要です。Naik 氏は次のように述べています。「何かを 10 分で作って、ほかの人に体験してもらうことができます。提案して、テストして、それに基づいて構築していきます。これは Unreal を使う大きなメリットです。Unreal はパフォーマンスとメモリの面では最高です」
VR Perspectives のチームは、キャラクターの表情で特定の感情を伝えるために、当初はフェイシャル キャプチャを使用しました。しかし、最終的には、すべてのキャラクターで共通のスケルトンを使い、キーフレーム アニメーションを利用することにしました。そうしてできた表情のライブラリを使って、VR Perspectives は Unreal Engine のシーケンサーでパイプラインを開発し、シナリオの迅速なプロトタイプ作成を可能にしました。「表情をパラメータ化しました。真剣な感情を選択して、それにアニメーションを与えると、キャラクターは予測したとおりに動きます。なかなかクールです」と Stewart 氏は述べています。

VR Perspectives は、ハリウッド レベルのグラフィックスを目指しているのではありません。参加者の意欲と関心をかき立てることができれば十分です。目標はそのように控え目であっても、多くを物語る結果が得られています。LalDin 氏は次のように述べています。「ユーザーはすべてを身をもって経験します。たとえば、話に割り込まれたり、上司が自分に見向きもしなかったりすると、ユーザーは感情をあらわにして反応します。いらだち、物を投げ、涙目になり、ときにはキャラクターを殴ろうとする人もいます」
VR Perspectives は VR のインクルージョン エクスペリエンスを主に Oculus Quest 向けに開発しましたが、COVID-19 によるロックダウン期間中にほかのプラットフォームへと拡大し、デスクトップ バージョンとモバイル バージョンをリリースして、このテクノロジーをより利用しやすくしました。

VR トレーニングの受け入れ促進

ダイバーシティとインクルージョンについての VR トレーニングに多くの企業が興味を示しているものの、VR トレーニングが広く受け入れられるにはまだ時間がかかると LalDin 氏は考えています。「とても新しいテクノロジーなので、導入はなかなか進んでいませんが、それでも多くの企業から関心を寄せていただいています。たとえば、GE、Procter & Gamble、Nielsen は当社の顧客であり、最新では Amazon、Google、NFL から連絡をいただきました」

そこで、VR シリーズの開発を続け、マネタイズについて投資家に懸念を抱かれることがなくて済むように、VR Perspectives は Epic MegaGrants に申し込みました。

LalDin 氏は、VR テクノロジーの未来に自信を持っており、ダイバーシティだけではなく、自身がよく知る多文化の領域にも拡大できると考えています。「もっとグローバルに考えています。リーダーシップ トレーニングに利用できるでしょう。ソーシャル インテリジェンスの向上、つまり、自分の周りで置きていることへの意識を高めることができるでしょう」

「Unreal は、本当にイマーシブなエクスペリエンスを開発するためのツールを提供してくれました。文化、環境、メンタル ヘルス、経済格差など、幅広いトピックに対処できます。可能性は無限です」

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