Image courtesy of SimCentric Technologies
SimCentric が Unreal Engine で軍事業界の戦術シミュレーション トレーニングを拡充
Sėbastien Lozė
2020年11月17日
Sim Centric
VR
シミュレーション
スポットライト
軍事訓練
オーストラリア陸軍の退役軍人である Dr. Adam Easton 氏は、実際の環境での軍事訓練には危険が伴うことを理解しています。軍隊に最高の訓練を最も安全な状況で提供することを目標に、Easton 氏は 2008 年に
SimCentric Technologies
を創業しました。SimCentric Technologies は、費用対効果に優れているだけでなく、人命を救うことにもつながるシミュレーションベースの軍事訓練を提供します。
イギリス、スリランカ、オーストラリアに拠点を構える SimCentric は、世界中の軍隊にサービスを提供しています。数年前に、SimCentric はすべてのシミュレーションの基盤を Unreal Engine に切り替えました。この変更によって、幅広い製品を迅速に提供できるようになりました。
CEO の Easton 氏は次のように述べています。「企業として初めて、ほかのテクノロジーに頼ることなく完全なソリューションを顧客に提供できるようになりました。Unreal Engine は当社が事業を進めるうえで非常な重要なものとなっています」
Image courtesy of SimCentric Technologies
Unreal Engine での訓練の開発
創業当初、SimCentric は軍事業界で長く受け入れられていたシミュレーション プラットフォームを使って戦術トレーニング ソリューションを開発していました。しかし、そのシステムでは不十分であることがやがてわかりました。「レガシー システムでは、技術的なパフォーマンスに関するベンチマークで目標を達成し、限界に挑むのが非常に難しいことがわかってきました。別の何かを探す必要がありました」と Easton 氏は述べています。
一方、現在 SimCentric でイノベーション担当バイス プレジデントを務める Tom Constable 氏は、軍事シミュレーション プロバイダーのスタートアップ企業、P-TAC Interactive を創業していました。Constable 氏は、創業当初からすべての製品の基盤として Unreal Engine を使用していました。
退役軍人であり、熱心なゲーマーでもある Constable 氏は、自身が訓練を受けていた際に、シミュレーションのビジュアルの品質について重要なことに気が付きました。「軍隊の訓練で使っていたプラットフォームでは、ビジュアルが特定のスタイルになっていました。しかし、夜になって FPS ゲームを遊んでいると、ゲームのビジュアルは忠実でリアルなものになっていたのです。これはおかしいと思って、Unreal Engine について調べ始めました」
SimCentric はその後 P-TAC Interactive を買収しました。Constable 氏が参加して以来、SimCentric は、Unreal Engine を利用したアプリケーションで、汎用とカスタム、両方のソリューションを拡大してきました。その多くが認定を受けています。たとえば、SimCentric の製品の 1 つ、
SAF-FIRES
は、標準に従った、拡張性のあるトレーニング シミュレーションです。そのシミュレーションは、統合末端攻撃統制官 (JTAC) の認定を受けることができるトレーニング シミュレーターに展開できます。
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「Unreal Engine には魅力的なテクノロジーのセットがあります。また、より重要な点として、Epic Games は、シミュレーション業界へのサービス提供に深い関心を持っていました」と Easton 氏は述べています。また、Epic Games によるサポートによって、SimCentric はトレーニング製品を短期間で迅速に拡大できたとも述べています。
SimCentric の最初のトレーニング プログラムは、火力支援と近接航空支援に特化したものでした。しかし、柔軟な基盤である Unreal Engine を使うようになってからは、射場安全、スマート ウェアラブル、生活パターン分析、人工知能、そして直近では仮想現実とイマーシブな訓練へと分野を拡大しています。
Easton 氏は次のように述べています。「このようにさまざまな分野に対応するうえでの課題の 1 つは、市場における複数の特殊な分野の専門家になることです。さまざまな要素に対応できる共通のベースラインを提供できるというのが Unreal Engine の魅力です」
レガシー プラットフォームの制限の克服
Easton 氏によると、レガシー シミュレーション プラットフォームの欠点の 1 つは、VR、モバイル、デスクトップなどの提供方法に対応するためにエクスポートできるようになっておらず、その機能を追加するには全面的な再設計が必要になることです。一方で、Unreal Engine などのゲーム エンジンは最新テクノロジーを活用するために頻繁にアップデートされています。つまり、Unreal Engine を使えば、シミュレーションが 1 つのプラットフォームに限定されることはなく、SimCentric は顧客の希望する形式で出力できます。
Easton 氏と Constable 氏は、Unreal Engine が開発のこうした側面にすぐ対応できることを評価しています。「ユーザーが技術的な面に自分で対処しなくて済むというのが Unreal Engine の本当の長所の 1 つです。私たちは自分が得意なことに力を注ぎたいと考えています。それは、訓練のユースケースの特定の部分について理解し、その部分で最高のユーザー エクスペリエンスを提供することです。その基盤となる技術面での課題のすべてについては考えたくありません」と Easton 氏は述べています。
Easton 氏は
Unreal Engine マーケットプレイス
のことも評価しています。SimCentric は Unreal Engine マーケットプレイスで既製の環境、武器、キャラクターを入手して、概念実証 (PoC) をすばやくまとめることができています。Easton 氏は次のように述べています。「マーケットプレイスのコンテンツには手を加えて適応させていますが、十分に開発速度を上げ、時間を節約できています。マーケットプレイスがなければ、過去数年で上げたほどの成果を実現することはできなかったでしょう」
研究を通じたイノベーション
SimCentric のシミュレーションの多くでは、実在の場所を正確に再現するテレインが重要です。「Unreal Engine がテレインを美しくレンダリングできることを確認してきました。目標は、場所特有のデータを入力して、道路、建物、樹木、フォリッジを含むテレインを Unreal Engine によって自動的に生成できるようになることです。最適化されたシーンを生成し、高い品質のビジュアルをすばやくレンダリングできるようにしたいと考えています」と Easton 氏は述べています。
Image courtesy of SimCentric Technologies
そのために、SimCentric は Unreal Engine 内でツールを開発しました。このツールで、シェープファイル、高さマップ、衛星画像を処理し、モジュール式の建物とプロシージャル フォリッジを含む、最適化されたシーンを作成します。Easton 氏は、そのようなツールによって SimCentric にもたらされる可能性に期待を寄せています。
「世界の一部を取り込んで、迅速かつ自動的に、ボタンを 1 回押すくらいで広い範囲の美しいテレインを作成できるという状態を目指しています。もう少しでそれを実現できそうです」
SimCentric は、戦術訓練の拡張性についても研究しています。現在、SimCentric はイギリス空軍と協力して VR ベースの訓練を提供しています。「班単位で演習を行い、ターゲットの指示、班による攻撃、伏兵による攻撃などのスキルを磨いています」と Easton 氏は述べています。
訓練は VR の外部と内部、2 つのパートに分かれています。VR の外部でシナリオを計画してから、仮想的な世界に入り、そのシナリオを同じ場所で複数回実施します。
Easton 氏は次のように述べています。「こうすることで、手順、戦術、指揮統制を見直してから、何をすべきかチームが理解しているという確信を持った状態で、実地訓練や空砲を使った訓練に移行できます」
Image courtesy of SimCentric Technologies
次の段階では、プロセスを評価し、拡張性を確保します。「最終段階では小隊単位で VR 訓練を行います。小隊のメンバー、25 〜 30 人が仮想環境に入ります。Unreal Engine の性能を調べ、訓練、特に仮想環境からどのような価値を小隊や指揮官が得られるかを確認していきます」と Easton 氏は述べています。
ゲーム エンジンの軍事訓練への利用
軍事業界は伝統的にリスクを回避する傾向があります。ゲーム エンジンは軍事業界が望むような精度を実現できるのでしょうか。このように問いかけられた場合、Easton 氏は、SimCentric のスタッフは軍隊で長年にわたる経験を持っていることを指摘し、SimCentric がこれまでに開発した製品を紹介します。そうすれば顧客の疑念をすべて解消できると Easton 氏は述べています。
Image courtesy of SimCentric Technologies
「精度」に関する同じ質問に対して、Constable 氏は Unreal Engine の使用における現実的な側面を指摘します。例として挙げるのは弾道の軌道です。「弾道の軌道については、モデルの精度を左右する要因は 2 つあります。1 つはモデルの背後にある数学、もう 1 つは分析する時間の間隔です。これはフレームレートに関係します。Unreal Engine の大きなメリットの 1 つとして、シミュレーション業界のほかのソフトウェアよりも大幅に高いフレームレートを実現できることが挙げられます。これは、ほかのソフトウェアよりも弾道の軌道の計算精度が高くなることを意味します」
Constable 氏は、Unreal Engine で作成したトレーニング ソリューションは若い新兵に受け入れられやすいという点も指摘します。「階級が低い兵士からはただちに支持を得ることができます。なぜなら、若い新兵たちは余暇の時間に Unreal Engine に触れているからです。Unreal Engine のことを知っていて、そのグラフィックスを知っていて、環境内で移動する方法を知っています」
将来に向けては、Easton 氏は Unreal Engine がもたらす可能性を楽しみにしています。特に、コンテンツの作成方法を変革するであろう
Unreal Engine 5
の新機能に期待を寄せています。「それだけでも軍隊のコストを大幅に削減できるでしょう。ゲーム エンジンによって何ができるか、私たちはまだトレンドを目にし始めたばかりです」
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