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シン・ウルトラファイトでは、リアルタイム ツールによって 70 年代の怪獣 キャラクタースーツが変貌

2022年7月20日
欧米において最も有名な日本の kaiju は、おそらくゴジラでしょう。しかし、日本では、このジャンルには有名なキャラクターが多数存在します。その中には、様々な特殊能力を駆使する怪獣の巨大パワーに匹敵する非常に有名なキャラクターがいます。それはウルトラマンです。スーパーマンに比肩する (日本文化の至るところで言及されている点で) ウルトラマンは、 tokusatsu (特撮) ヒーローの中で最も有名なキャラクターの一つなのです。

ウルトラマンは、1966年から1967年にかけて放映された日本のテレビ番組シリーズのタイトル名であり、その中で活躍する正義と平和を守るスーパーヒーローを指します。ウルトラマンは、放送開始からすぐに大人から子供まで絶大な人気を博すようになり、ウルトラマン シリーズと呼ばれる多数のスピンオフ作品を世に送り出しました。

そのスピンオフ作品の一つが、『ウルトラファイト』です。この TV シリーズは、低予算で1970年に制作された 5 分間の短編作品です。かつてシリーズに熱狂し、そしてこの番組で新たに怪獣の魅力を知った子供たちはこの番組に夢中になって怪獣人気が沸騰、次の新たなウルトラマンシリーズの放送決定を後押しするつなぎ的な役割を担いました。

『ウルトラファイト』は、最初、オリジナルのウルトラマン作品のバトルシーンを抜き出して再構成したものでしたが、後に新規撮影によるエピソードも制作され、カルト的な人気を獲得するに至りました。

新規撮影のエピソードでは過去の番組やイベントで使われていた怪獣のキャラクタースーツを活用し、海辺や山の中、郊外の造成地などで怪獣たちの激しいバトルが展開されることになりました。派手な特殊効果は使われませんが、ひたすら戦い合う怪獣たちが独特の魅力を放っていたことは間違いありません。

『ウルトラファイト』が放映されたのは、1970年から 1971年までのたった 1年間という期間でした。しかし、その奇抜さとユルさも迫真さも同時に内包する独特の世界観に起因する魅力は、ウルトラマンのファンにとって特別な存在感を示したのです。

それから 50年。そのコンセプトが今復活しました。新たに公開される映画『シン・ウルトラマン』をバックアップするために、 円谷プロダクションが『ウルトラファイト』を復活させ、2022年に向けてこのスピンオフ シリーズの改編をスタジオブロスに依頼したのです。

そして生まれたのが『シン・ウルトラファイト』です。ただし今回、怪獣のキャラクタースーツは怪獣倉庫に置かれたままです。この新バージョンでは、キャラクターがリアルタイム テクノロジーで作られたのでした。
スタジオブロスの課題は、ビジュアル エフェクトに最新最高のリアルタイム テクノロジーを利用しながら、旧作において様々に躍動する怪獣たちの魅力や奇抜さをどのようにしたら保持できるかということでした。

映画制作のための Unreal Engine

金子元隆 (カネコ モトタカ) 氏は、スタジオブロスの創設者であり、代表を務めています。彼は、これまで 30年以上にわたってメディアとエンターテインメントの業界で活躍してきました。映画制作会社の制作進行からキャリアをスタートし、その後、テーマパークのアトラクションおよびテレビ制作を担当することになります。

彼が創設したスタジオは、リアルタイム CG コンテンツの制作に注力しています。コンテンツ制作を依頼する業界は映画、自動車、教育など多岐に渡ります。「学生時代にレイトレース レンダラーのプログラミングをしていました」と金子氏は振り返ります。「ですから、30年ぶりに CG の世界に戻ってきたかのようです」

スタジオブロスは、2014年以来 Autodesk Maya と Unreal Engine 中心の映像制作手法を取っています。「リアルタイムコンテンツ制作を採用してから、今年で 9 年になります」と金子氏。「おそらく継続的に Unreal Engine を映像コンテンツ制作に利用している制作会社の中ではアーリー アダプターの一社だと思います」

『シン・ウルトラマン』の前提条件そして最も重要な課題は、最新のテクノロジーを使って作成された新作映画のキャラクターを、原作の『ウルトラファイト』のもつレトロな雰囲気、独特なスタイルと融合させることだったと言います。
オリジナルのシリーズで特に魅力的だった要素に、キャラクターのユニークな動き方があります。

『ウルトラファイト』に登場した怪獣たちは、本編のテレビ シリーズとは異なり、動きが非常に柔軟でした。金子氏によると、番組に登場するキャラクタースーツはライブの怪獣ショーなどで使用されていたアトラクション用のスーツであることが多く、撮影用のものと異なり、比較的軽めに制作されていて、制限はあるものの可動域がかなり広くて動きやすいため、あの独特でユーモラスかつダイナミックな動きが可能になったのではないかとのこと。
「一番初めに考えたことは、劇場映画 『シン・ウルトラマン』用に作られた精度の高いキャラクターモデルを使い、『ウルトラファイト』のユーモラスな動きを再現することでした」と金子氏は語ってくれました。
そのために、およそ 2 ヶ月かけて 5 体のモーションリグが制作されました。チームは、できるだけ全ての制作工程を Unreal Engine 上で完成させることを目標にしました。ただし、キャラクター モデリング、アニメーション、背景制作、エフェクトの作業の一部については DCC ツールで制作されました。キャラクター アニメーションには Motion Builder、エフェクトの一部には Houdini、コントロール リグ作成には Maya が使われています。

高速な制作のためのリアルタイム レンダリング

このプロジェクトでは、Unreal Engine の Live LinkTake RecorderVirtual Camera が多用されました。「UE4.26 では Virtual Camera の機能をユーザー サイドで改造する必要がなく、そのままの形で使用することができたため、制作時間の大幅コストダウンが可能となりました」と金子氏は述べます。
金子氏によれば、スタジオブロスが担当したエピソードのほとんどのカットで、Virtual Camera によって作成されたカメラ データが使われています。「それによってカメラ データの作成作業が効率化され、その結果、1 日につき平均で 2 エピソード分の収録が可能になりました」とのこと。

監督を務めた樋口真嗣氏は、Virtual Camera で収録後にリアルタイムで、ファイナル イメージに近い状態の映像をチェックできました。リテイクしなければならない場合は、即座に再撮影することも可能でした。「Unreal Engine を利用すると、あらゆる工程が高速化されます。これが Unreal Engine の最も大きな利点の一つです」と金子氏。

このような Virtual Camera のワークフローを起用すると、モーション キャプチャのアクターの演技と相まって、ライブ アクション フィルムに特有な躍動感あるカメラワークを Unreal Engine 上で実現することができるようになります。爆破や、スパークなどのエフェクトはもちろん、クロス ディゾルブなどの撮影効果表現にも、Unreal Engine に同梱されているリアルタイム コンポジット機能 Composure が使われました。

ゲーム エンジンで CG の背景を制作する

ビジュアル エフェクトという言葉を聞くと、たいていの人は、火を吐くドラゴンや未来的なスペースシップを思い浮かべるはずです。しかし、CG はそれに留まりません。現実の世界と見分けがつかないほどリアルな背景を作り出す「インビジブル エフェクト」という繊細な技術で CG が用いられることが増えてきたのです。
この手法により『シン・ウルトラファイト』の背景の多くが作成されました。チームは、Epic の多様なクリエイティブ エコシステムの中から、 Quixel MegascansRealityCapture という 2 つのツールを選びました。「私たちは、2 種類の背景アセットを作成しました」と金子氏は教えてくれました。「1 つは Megascans ベースの背景アセットで、もう 1 つは RealityCapture で作成したフォトグラメトリ ベースの背景アセットです。エピソードに応じて使い分けていました」

リアルな背景を短期間で作るための手法としては、フォトグラメトリによるデータを活用するのがベストだとチームは判断しました。金子氏の解説によると、今回の背景の一つはオリジナル版の『ウルトラファイト』のロケ地である伊豆の下田海岸でフォトデータを収録、当時の背景をフォトグラメトリで再現しているとのこと。

もう一つの背景アセットとしては、特撮テレビ番組でよく使われる採石場のシーンが Megascans で再現されました。

リアルタイム ツールを基礎にしたスタジオ

金子氏がリアルタイム テクノロジーのエヴァンジェリスト的な存在となったのも、スタジオ全体の中心にリアルタイム テクノロジーを据えた人として必然のことなのでしょう。「レンダリングに必要な時間が従来のソフトウェアよりもはるかに短く、エフェクトもリアルタイムで確認が可能、さらにプロダクション クオリティでファイナル レンダリングが実現できることがゲーム エンジンを利用する最大の利点です」と金子氏は指摘します。

「プロダクション内ターンアラウンドが迅速に進むため、今回のように制作期間が短いプロジェクトでは圧倒的に有利です」

スタジオブロスは、AWS Thinkbox Deadline と Unreal Engine のパワーを組み合わせることによって、制作プロセスを大幅に向上させ、時間と費用の両方を節約しています。金子氏によれば、「現在、スタジオブロスでは 4K/32bit EXR ファイルを一晩で 200 秒程度 (約 6000 フレーム) 出力している」そうです。「従来の CPU レンダラーと比較するとはるかに高速です。さらに GPU レンダラーと比べても安価かつ高速に作業を進めることが可能なのです」

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