©ABC-A, Toei Animation

歴代プリキュアエンディングCGと同等のセルルック表現を Unreal Engine で実現

2021年5月12日
アニメーションというものは、いつも厳格な工程を必要としていました。ストーリーのための創造は、その大半が最終的なフレームが仕上がる前に確定していなければなりませんでした。しかし、リアルタイム テクノロジーが登場したことにより、このような状況は一変し始めています。アニメーターは、モデルをゲーム エンジンに持ち込むことによって、調整を行い、その結果を即座に確認しながら、作品全体の中で自分の作業がどのようにフィットしているか俯瞰できるようになったのです。

このような作業工程は、すでにファンを獲得し始めています。私たちは以前、漫画家が、アニメーション コンテンツを作成するために、リアルタイム ワークフローによってもたらされる柔軟性をどのように活用しているか注目したことがありました。
 

そして今回、日本のアニメーション スタジオである東映アニメーションとエンターテインメント テクノロジー グループの GUILD STUDIO が協力し、アニメ シリーズ「プリキュア」の最新シリーズ『ヒーリングっど プリキュア』のアニメーション シーケンスを作成しました。この「プリキュア」シリーズとは、邪悪な勢力と戦う魔法少女のグループが作品の中心となって展開するアニメーションです。

プリキュアシリーズは2004年スタートの「ふたりはプリキュア」から続く東映アニメーション制作の人気TVアニメシリーズで、「ヒーリングっど♥プリキュア!」が17作目。2009年放映の「フレッシュプリキュア!」からはフルCG表現のダンスムービーのエンディング映像となっており、それ以降のプリキュアシリーズでは恒例となっています。
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シリーズの共同制作者である東映アニメーションは、リアルタイム ワークフローを試してみることによって、従来のセル画アニメの感覚を 3D テクノロジーで実現できるのか見極めようとしました。GUILD STUDIO の協力を得て、その目標が実現できたばかりか、より速く、より直感的なアニメーションワークフローがもたらされることにも気がつきました。つまり、制作工程から障害となるものを取り除いたワークフローが実現したのです。

リアルタイム表現でプリキュアエンディングCGのルックを目指す

GUILD STUDIO のアートディレクター、角田氏はゲーム業界に入る以前、東映アニメーションに在籍していたことがあります。同社退職後も親交は続き、これまでに何度かリアルタイム映像の可能性を話し合ったこともありました。そういった経緯から今回、シリーズ初となるUE4での『ヒーリングっど ♥ プリキュア』のエンディング映像制作が実現しました。

「これまでのプリキュアのエンディングと同等の映像表現を UE4 で実現しつつ、将来的に横展開として VR やゲーム分野などマルチ プラットフォームで展開したいという狙いもありました」と角田氏。「まずはその前哨戦として、東映アニメさんが長年培って来たノウハウを UE4 で生かすことによって、セルルックの映像クオリティーをどこまで高められるかが今回の課題でした。」
「セルルック」とは、3D画像をシェーディングやポスト処理を駆使して3Dでありながら2Dで描かれたセル画のようにフラットな色面で塗り分けられたアートスタイルを指し、日本のCG業界ではよく使われる用語となっています。このプロジェクトでは、リアルタイムレンダリングで作られたシーンが従来のプリレンダー映像に並ぶクオリティーであることが求められました。「UE4 で作ったと言わない限りは、いつものプリキュアエンディングCG と思って頂けたら成功です」

今回のプリキュア ED 映像が GUILD STUDIO では初となる映像制作のプロジェクトとなりました。ゲーム開発が主体の GUILD STUDIO では Unreal Engine での開発実績も多くカットシーンも作り慣れているというメリットがありました。その経験を活かし、まずシーケンサーを用いたVコンテから制作をスタートしています。「シーケンサーを使用できることのメリットは非常に大きいと思います。V コンテの時点からマスターシーケンスとショットを作り分ける形で作っています。それ以降の工程でもVコンテのシーケンスを引き継ぎショット内のデータを更新して行くことができたので、確認も早く効率的だったと思います。」今回CG演出を担当した角田氏自身でVコンテ制作にシーケンサーを利用したと言います。
©ABC-A, Toei Animation
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ほぼ最終ルックの絵を見ながらアニメーションのブラッシュアップが可能

まず東映アニメーションからは、前期 ED で使用した3体のキャラと後期 ED で新登場のアースのキャラモデル、モーションキャプチャデータ、楽曲の提供がありました。その他、Maya のインハウスツール、セルルックに関する技術共有を受け、リアルタイム向けの下準備に入ります。提供されたデータ類を Unreal Engine に適したデータ形式に最適化して行く工程から GUILD STUDIO の仕事が始まります。具体的には UV 編集、テクスチャのパッキングを行い Unreal Engine 上で編集しやすいレベルにマテリアル数を削減して行く作業などです。
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アニメーションや背景チームでは、シーケンサーからエクスポートしたカメラを Maya に持ち込み調整を行った後、再び調整データを .uasset に上書きシーケンサー上でルックを確認しました。「シーケンサーのメリットとして、UE4上でシェーダー、アウトライン、ポスト処理済みのほぼ最終ルックの絵でアニメーションやカメラの調整ができることが大きいです。1つ1つの確認にコンポジット+レンダリングの工程が無いので、非常に効率的です。」

開発チーム内では、ブループリント ビジュアル スクリプティングシステムの恩恵も大きかったようです。通常はコーディングが必要な機能もノードベースのツールによって、アーティスト側でも拡張、編集が可能になります。「ブループリントは、ノードベースのツールやAPIが豊富です。ツール自体の安定性や機能面での完成度も高く、特にプロトタイピングに便利です。」とエンジニア視点でも有用性を実感しています。

リモート環境下での開発環境

意外にも開発チームが直面した最大の障害は、初めて Unreal Engine でアニメーション制作を手掛けたことではありませんでした。それは、COVID-19 でした。「本プロジェクトの本開発スタートとほぼ同時に最初の緊急事態宣言が発出されました。弊社初のアニメーション作品の制作、かつ初のリモートワークと困難が重なった挑戦ではありましたが、戸惑いはあったものの大きな問題も無く乗り切ることができました。」

東映アニメーション、GUILD STUDIO 双方の開発チーム内のコミュニケーションは Slack のチャットやビデオ会議を活用しました。Unreal Engine 側は、ソース コントロールで常に最新のプロジェクト ファイルを共有できたため、リモートワークでも支障はありませんでした。「UE4 プロジェクトの最新コンテンツ、場合によってはエンジンの更新があっても全員が常に同じ環境で作業ができる状況は非常に助かりました。この恩恵は、オフィス勤務、リモートワーク問わず平等に得られるものです。」と角田氏は当時を振り返ります。

Unreal Engine には、リモートでのコラボレーションを容易にするために設計されたツールが多数備わっています。たとえば、Collab Viewer テンプレートは、チームが VR およびデスクトップを使ってデザインをレビューすることが可能です。また、マルチ ユーザー編集は、異なるコンピュータが物理的にどのような場所にあっても、参加ユーザーは、共有された Unreal Engine のセッションに参加できます。それにより、ユーザーはライブで協力しながらコンテンツを一緒に作成することができるようになります。

GUILD STUDIO の開発チームは制作の過程で、リアルタイムレンダリングだからこそ得られる大きなメリットを感じています。「Unreal Engine のシーケンサーからのエクスポート機能は、レンダリング時間を劇的に削減してくれます。今回のプリキュアを例に挙げるとキャラ1体のカラーレイヤーのみであれば秒間4フレームでレンダリング可能です。これは、従来の映像制作の感覚からは考えられないスピードです。UE4 ではレンダリング待ちという工程が無いに等しい状態だったため、素材に不備があった際の対応も迅速に行うことができました。」
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この恩恵はショットの確認、アップデートの度に実感できます。「リテイク対応の際も修正作業からレンダリングまでの工程をスピーディーにこなせるだけで無く、その結果が即最終絵に反映されるのは非常に有難いです。これは、映像制作会社さんからすると驚異的なスピードだそうです。」

高速かつフレキシブルなリアルタイムワークフロー

GUILD STUDIO には主軸のゲーム開発で得た知見を Unreal Engine を通してノンゲーム分野にも活用して行くというミッションがあります。 角田氏は、リアルタイムテクノロジーのスピーディーなワークフロー、エンジン自体の柔軟性などが他分野からの注目が高まる昨今、特に映像分野が顕著であると感じています。 「今回のようなセル調のアニメーション表現に限らず、UE4であらゆる映像表現に挑戦して行きたい」と角田氏。

ここで、再びCGアニメーション制作におけるワークフローの話しに戻ります。リアルタイムテクノロジーには、シーン内で直接作業し、その場で調整した結果をリアルタイムに確認できるという柔軟性とスピード感があります。そこには、イテレーションの大幅な増加により従来のワークフローやクオリティーコントロールの概念をも変えて行く可能性があります。 かつて各工程が階段状に組まれていたワークフローとは異なり、ショットを起点に各工程は同時進行まつ流動的なフローに変わって行きます。それは、レンダリングの待ち時間から解放され、作業はより直感的に 、より楽しいものになるということを意味しています。
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