Image courtesy of Moment Factory

Moment Factory が Epic と協力してライブ イベントのプリビジュアライゼーションの DMX サンプル プロジェクトを作成:今すぐ入手可能

Sevan Dalkian
ライブ イベントの計画はますます複雑になっています。ライティング、ビデオ コンテンツ、舞台美術、自動化、特殊効果を組み合わせると、無限の可能性が生まれます。

Digital Multiplex (DMX) プロトコルは、照明を制御するために 30 年以上使われている業界標準です。しかし、既存のソリューションでは現実的で正確な結果をもたらす能力が十分でなかったため、ライティングのプログラムについて、DMX を使って制御される機器の実際のライブにおける効果について正確なプリビジュアライゼーションを作成することは困難でした。

Unreal Engine 4.25 で、DMX プロトコルを使う外部コントローラやデバイスと Unreal Engine の接続の初期サポートを導入しました。これによって、ライティングのプリビジュアライゼーションにリアルタイム レンダリングを使う新たな可能性が開かれました。また、将来的には、ライブ イベント中にユーザーが Unreal Engine から直接デバイスを制御したりトリガーしたりすることができるようになる見込みです。

それ以来、マルチメディア スタジオ Moment Factory と協力して、すべてのユーザーに共有するためのサンプル プロジェクトを制作してきました。このサンプル プロジェクトの制作を通じて、Moment Factory のチーム メンバーには経験を伝えていただきました。また、貴重なフィードバックをいただき、新しい DMX プラグインの開発プロセスに役立てることができています。

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モントリオールに本社を置く Moment Factory は、ビデオ、ライティング、建築、音声、特殊効果を組み合わせて、素晴らしいエクスペリエンスを作成しています。2001 年の創設以来、高い評価を受けた Lumina Night Walk シリーズなど、世界中で 450 以上のユニークなプロジェクトを手がけてきました。マドンナ、Jay-Z、ビリー・アイリッシュ、チャイルディッシュ・ガンビーノや、Disney、Microsoft、Sony などをクライアントとしています。また、空港、大聖堂、動物園など、さまざまな場所でインスタレーションを制作してきました。
過去のプロジェクトから Unreal Engine にすでに馴染みがあり、DMX を 20 年近く実際に使ってきた経験がある Moment Factory は、理想的なパートナーでした。サンプルの制作中、エンジニアリング面での開発をガイドしてもらうとともに、この機会を楽しんでいただきました。

Moment Factory のプロデューサー、Daniel Jean 氏は次のように述べています。「私たちライブ業界のデザイナーにとってはとても興味深い経験でした。自分たちのニーズを満たすツールを開発しただけでなく、Epic がライブ イベントの物理的な世界とデジタルの世界のギャップを埋めることができるように支援しました」 

Unreal Engine による DMX のサポートのプロダクションにおけるテスト

Moment Factory のチームは、ツールのポテンシャルについて理解するために、まず、Unreal Engine 4.25 で初めて導入されたプラグインについて時間をかけて調査し、テストを行いました。結果は期待が持てるものでした。

「マルチメディア ショーのデザイナーとして、Unreal のようなゲーム エンジンを使って仕事をするのは、まったく新しい世界を見つけたような気分でした。たくさんの新しい可能性をもたらすツールを与えられました。Unreal Engine は、コンテンツ制作、ライティング、舞台美術のワークフローを混ぜ合わせて、クリエイティブ プロセスを高度なものにすることができます。Unreal Engine によって、マルチメディアのプロダクション プロセスに対する見方が大きく変わりました」と Jean 氏は述べています。

それからサンプル プロジェクトについて計画を立て、Unreal Engine で作られた Quixel のリアルタイム映像作品、Rebirth からインスピレーションを得ました。仮想的なものと現実的なものが並列関係にある舞台設定で、Rebirth を思い起こさせる夢のような舞台美術が壮大なアリーナの中心に据えられています。そして、Unreal Engine のレンダリング能力を活用し、新しく開発された DMX プロキシ装置システムのデモとして、開けた空間全体を埋めるような複雑なライティング リグをデザインし作成しました。
最初の計画について合意してから、ライティング デザインのコンセプトの作成を開始しました。同時に、プラグインについて Unreal Engine の開発者にフィードバックを提供しました。この貴重なフィードバックは、4.26 リリースでのプラグインの変更と強化に反映されました。

Unreal Engine 4.26 の最初のプレビューがリリースされてから、Moment Factory は正確性について再度テストを行い、その結果4.26 の最終リリースでは多くの改善が加えられました。

現実世界での経験で Unreal Engine の開発をガイド

Moment Factory の知識と経験は、Unreal Engine の開発チームにとって貴重なものになっています。Moment Factory のチームからのフィードバックによって、プリビジュアライゼーションと、バーチャル イベントおよびライブ イベントのプロダクションに関する市場の期待について、深く理解することができました。Moment Factory のチームが作成したサンプル プロジェクトは、実際の制作環境で実現できる限界を押し広げるものになります。
Moment Factory のクリエイティブ ディレクター、Jean-Baptiste Hardoin 氏は次のように述べています。「このツールを Moment Factory のショー デザイナーが利用できるようにして、ショー プロダクション業界の具体的なニーズ、期待、例を活用し、Epic Games は DMX プラグインの開発のテストを行いました」

「私たちは、コンテンツ、ライティング、花火技術、レーザー、カメラの動き、現実的な風景の描写、オーディエンスを組み合わせる限界をテストするために、現実のショーのプロダクションに近い条件を整えました。最終的には、現実のプロダクションとプリビジュアライゼーションのワークフローにおける Unreal Engine の強力なユースケースとなりました。私たちの経験と専門知識を総合するものについて協力したことで、バーチャルなショーのデザインの水準を引き上げるツールを作成することができました」と Hardoin 氏は述べています。
Image courtesy of Moment Factory
Moment Factory のチームは、作成したサンプルが Unreal Engine のデザイナーにとって重要なツールになると確信しています。また、ユーザーとイベント業界全体に刺激を与え、クリエイティブの新しい可能性を探ることにつながると考えています。「ただソフトウェアを紹介するのではなく、感情を動かし、刺激を与えるものを作ることを目標にしました。バーチャルの分野でクリエイティビティを探求しようとしているさまざまなユーザーにとって役立つサンプルになったと考えています」と Hardoin 氏は述べています。
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ライティング技術者、Jean-Benoit Meunier 氏は次のように述べています。「私たちは Unreal のユーザー基盤に驚かされることになるでしょう。Unreal のユーザーたちがどのような凄いことを思いつくか楽しみです」

実世界のライブイベント用機器の反映と活用

DMX プラグインによって、このサンプルのプログラムで使用された GrandMA2 Light のような外部ライティング コンソールを使ってショーのデザインを行うことが可能になります。このプログラミングをシーケンサートラックに記録することが可能です。コンソールが接続されていない状態でも、自律的にリプレイすることができます。ショーを FOH(ロケーション正面)視点から体験することも、アニメーション付きのカメラショットを使って体験することも可能です。サンプルにはシーケンサーでの DMX トラック記録も同梱しました。ショーのファイルも含まれています。

Image courtesy of Moment Factory
ライブイベントのプリビジュアライゼーションを想定して、プロジェクトはできる限り実世界の技術的側面を反映するように 1 から作成されました。プロジェクト内のすべてのライト、機器、エフェクトは、シーケンサー DMX によって駆動され、音楽、その他のショー要素と同期しています。 

なお、実世界の機器をこのように Unreal Engine で制御できることは他の業界での可能性も広げます。例えば、バーチャルプロダクションではインカメラ VFX の LED ウォールを制御することを考えられます。 

15 個の DMX Art-Net ユニバース7,368 個の DMX チャンネルに渡るこのプロジェクトは、合計で 768 個の機器144 個のユニークなライティング キューで駆動します。カスタム LED ストリップ、シーニック ウォッシュ ライト、ストロボ、スポットライト、パーライト、トラストーナーなどを制御します。さらに、パイロテクニクス、花火、RGB レーザーなどのエフェクト機器でさらにインパクトを増大させています。 
Image courtesy of Moment Factory

Unreal Engine が単純なプリビジュアライゼーションだけではなく複雑な制作ワークフローで使用できることを示すために、プロジェクトには DMX を使って追加のバーチャルなクリエイティブ要素を駆動するサンプルも含まれています。

このサンプルの内容に加えて、Unreal Engine は OSCREST API もサポートしているため、さらに高度なショーのデザインと制御に使用することも可能です。

ライブ イベントの計画における新しい可能性の探求

自身もショーのプロデューサーである Moment Factory は、新しい機能による仕事の進め方の変化に期待を寄せています。

ライティング デザイナー、Marc Tétreault 氏は次のように述べています。「設計の初期段階でクリエイティブの意図を正確に視覚化できるツールがあるのは便利です。プロジェクトが進むなかで、同じプリビジュアライゼーション環境内で設計に磨きをかけ、ショーの各コンポーネントを取り入れていくことができます。クリエイティブ プロセス全体を通じてチームの効率と俊敏性が向上します」

「Moment Factory では、常に視覚的なイリュージョンをいろいろと試しています。さまざまな要素を組み合わせ、オーディエンスの記憶に残るエクスペリエンスを作ろうとしています。Unreal のようなフォトリアルなエンジンを使えば、完全に正確なプリビジュアライゼーションの実現に向けて一歩進むことができます。Unreal Engine は、クリエイティビティには制限はないということを示しています」と Tétreault 氏は述べています。
 
Meunier 氏はクライアントにとってのメリットも指摘します。「ライティングのアイデアや、自分たちの頭の中にあるものをクライアントに伝えるのは、いつも難しいものです。しかし、Unreal のようなツールがあれば、クライアントを創造のエクスペリエンスに近付けることができます。私たちが開発しているものにクライアントがリアルタイムで参加できるようになりました。私たちが何を届けようとしているのか、その全体像をクライアントが確認できます」

Moment Factory の共同創業者兼イノベーション責任者、Dominic Audet 氏は、将来に向けてより大きな影響を予測しています。「ライブ パフォーマンスとオンライン パフォーマンスが共存するようになっています。将来はリアルとバーチャルのショーの環境がハイブリッド化していくでしょう。Unreal Engine がバーチャルの世界と物理的な世界両方の制作で使われる共通のツールとなれば、オンライン、オフライン、ショーの前、最中、後にわたって一貫性のあるクリエイティブな世界をアーティストのために作ることができます」

「私たちはまだ Unreal Engine の可能性のごく一部しか把握していないと感じています。Unreal Engine は、ライティング、セット、ビデオのデザイナーたちが持っている古くからのニーズに応えています。それは、いくつもの最先端テクノロジーをシームレスにつなぎ合わせて、各自のビジョンを単一のコラボレーション ツールで融合することを可能にする、というニーズです。Unreal Engine は、ワークフローを一元化するだけではなく、新しい可能性をもたらし、次の革新的なステージ設計の着想を与えることになるでしょう」と Audet 氏は述べています。

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