そうやって印象的なものができあがりましたが、それからロサンゼルスを拠点とするクリエイティブ エージェンシー、All of it Now がキャンペーンに参加し、Coldplay のクリエイティブ チームと協力してコンセプトをさらに発展させていきました。
All of it Now の CEO 兼共同創業者、Danny Firpo 氏は次のように述べています。「ホログラムを現実の世界に持ってきたいと考えていたのですが、それにはイベントが必要でした。調査した結果、NBC の The Voice なら、2 つのグループのパフォーマンスを完全に同期させるために必要なインフラストラクチャがすべてそろっていることがわかりました」
Image courtesy of All of it Now
従来のホログラムとボリューメトリック ビデオの比較
そのような野心的なアイデアを実現するための第一歩は、リアルタイム プロダクションをパイプラインに組み込むことでした。All of it Now のエグゼクティブ プロデューサー、Nicole Plaza 氏は次のように述べています。「Digital Domain が角度を付けたガラスを使って作った有名な Tupac のホログラムのように、従来のプロジェクションで BTS をステージに登場させることもできましたが、今回は従来のアプローチではうまくいかないとわかっていました。実装の時間とコスト、そして見る角度が限られていたので、従来の方法では Unreal Engine を使う場合と比べて柔軟性に乏しく魅力的でなくなったはずです」
Dimension Studio のボリューメトリック キャプチャ データを Unreal Engine に送ることで、物理的なステージの制約に応じて AR のパフォーマーの位置とタイミングをすぐ簡単に調整できました。このスピードと俊敏性がプロダクションのために不可欠でした。このように、ほぼ瞬時に変更を加えることは、Hologauze のスクリーンとペッパーズ ゴースト メソッドではほとんど不可能です。
All of it Now のバーチャル プロダクション スーパーバイザー、Berto Mora 氏は次のように述べています。「元々はカメラを 4 台使う予定でしたが、リアルタイムで実現できる品質のレベルを確認するとすぐに、The Voice と Coldplay のチームは、7 台のカメラを使うことで全体的なプロダクション バリューをさらに向上させることができるという点に合意しました」
次に、Stype の Stypeland プラグインを使って、カメラのトラッキングとレンズの歪みのデータが取り込まれました。これは Live Link で記録されたので、各パフォーマーのソロの部分について選択したセグメントを再レンダリングし、ポスト プロセスでフレーム レベルの調整を行い、特定のパフォーマーの口の動きを合わせることができました。一方、ステージでは、All of it Now のチームが受賞歴のあるデザイナー Sooner Routhier 氏と協力し、特別なフロア ライトを使って、どの AR のパフォーマーがいつステージに立っているのか Coldplay のメンバーにわかるようにしました。
リアルタイム テクノロジーのメリット
革新的なワークフローならどれでもそうであるように、ボリューメトリック ビデオを使用するにはいくつか課題もありました。ある時点では、All of it Now のチームは Microsoft と協力してプラグインのコードを書き換えたことすらありました。それは、Microsoft の SVF プラグインを使って特殊な MP4 としてエクスポートされた BTS のパフォーマーのアセットを Coldplay と完全に同期させ続けるためでした。
All of it Now のリード UE アーティスト、Jeffrey Hepburn 氏は次のように述べています。「このやり方で、同期の軽微な問題を解決したり、グリッチのキーフレームを修正して各ショットのグリッチ エフェクトを増やしたり減らしたりすることができました。また、カスタムのパイプライン ツールも使っていました。そのツールでタイムコードの範囲を読み取り、記録されたトラッキング データを含むテイクを探して、ポスト プロセスで修正する各ショットに必要なトラッキング データだけを含む新しいシーケンスを作成しました。適切なフレーム範囲のテイクを手作業で特定するのに比べると時間を節約でき、ポスト プロセスで求められる処理時間の短縮に役立ちました」
The Voice が放送されるまでに、All of it Now のチームは成果にとても満足しました。現在は、Arcturus Holosuite を使ったボリューメトリック ビデオのその他の用途に対する同様のパイプラインについて調査しています。Arcturus Holosuite は、トラッキング対象の特定のカメラを追うようにパフォーマーの頭の位置を変えることができます。話を聞くかぎりでは、何をするにしても Unreal Engine を使い続けることになりそうです。