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防衛からヘルスケアのトレーニングまで、共通のフレームワークで VR を開発

Sébastien Lozé
軍事や防衛の新しいシステムについてのトレーニングには膨大なコストがかかる場合があります。トレーニングの対象者が実物を使って学習する場合は特にそうです。そこで、VR が時間と費用の節約に役立ちます。アメリカ国防総省 (DoD) と 17 年以上の取引がある企業、Torch Technologies, Inc. は、Unreal Engine を使った VR がこうした複雑なシステムについてのトレーニングの将来像であると考えています。

3 年半前、Torch Technologies は社内に Advanced Viz Lab (AVL) を設立し、国防総省の顧客基盤全体を対象に、バーチャル ソリューションを提供する方法を改善しようとしました。対象の 1 つに、国防総省の大規模な武器プログラムがありました。AVL は初めに、VR ベースのトレーニング システムのデモを Unreal Engine で開発しました。クライアントはそのデモをすぐに気に入りました。

Torch Technologies の Advanced Visualization Lab のシニア マネージャー、Darryl Trousdale 氏は次のように述べています。「大規模な軍事システムのコストは、数十億ドル単位になります。そのようなシステムの一部のために従来のトレーニング デバイスを開発すると、数千万ドル単位の費用がかかります。それと比べてほんのわずかの費用でトレーニング デバイスを開発できるとしたら、多くの注目を集めることになります」
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AVL は 40 人を超えるアーティスト、デザイナー、デベロッパーを擁する強力なゲーミング ラボへと成長し、トレーニング製品を世界中へと出荷してきました。

Unreal Engine を使ったコアの開発

Torch Technologies のトレーニング ソリューションはすべて共通のコアの上に構築されています。コアとなっているのは、バックエンド システム、データベース、学習管理システムなどで、その中心にあるのが Unreal Engine です。Torch Technologies のシニア システム エンジニア兼 AVL のソフトウェア ディレクター、Jeff Morgan 氏は次のように述べています。「チームも私自身も、Unreal Engine のエンジニアリング面を重視しています。すべての顧客のために使えるコアを持とうとしています。そのコアの要素を使い、私たちが追い求めているさまざまなトレーニング デバイスを開発します」

そのようなアプローチをとると、それぞれのシミュレーションを Unreal Engine で一から開発する必要はありません。AVL は適切なブループリント スクリプトに基づいて開発を行い、必要な 3D モデルをインポートし、トレーニング ソリューションを作ることができます。一から開発する場合に比べれば、かかる時間はごくわずかで済みます。
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「私たちの製品は、Unreal Engine を中心としたペースの速い短納期のソリューションです。この形はとても気に入っています。同様の製品を欲しいと考えている多くの顧客の獲得にもつながっています」と Trousdale 氏は述べています。

医療シミュレーションでプラットフォームを実証

AVL のチームは最近、その Unreal Engine のコアをミサイル システムとはかけ離れた製品で試す機会を得ました。その対象となったのは、Certified Registered Nurse Anesthetist (麻酔看護師) のトレーニングです。
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Trousdale 氏の近所に住んでいた Peter Stallo 氏は、医療業界で長い間働いてきた一方で、プログラミングとアニメーションに興味を持っています。実際、21 年前に書かれた Stallo 氏の卒業論文は VR とヘルスケアについてのものでした。この論文が書かれたのは、それを立証するためのテクノロジーができるずっと前のことでした。

その後、Stallo 氏はオンライン教育企業 Prodigy Anesthesia を創業しました。1 年ほど前、Unreal Engine をダウンロードした Stallo 氏は、トレーニングに使えるモデルを簡単に組み立てることができるか確認しようとしました。2 週間後には手術室の基本的なモックアップができました。「それを Darryl に見せて、そこから 2 つの会社の関係が始まりました」と Stallo 氏は述べています。
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Torch Technologies のコア テクノロジーを使い、AVL のプロジェクトは Simvana となりました。これは VR トレーニング シミュレーターであり、麻酔をかける人が複雑で困難なシチュエーションに没入できます。

Torch Technologies の AVL の研究開発リード、Alex Engelmann 氏は次のように述べています。「当社のデベロッパーは、Stallo 氏のプロトタイプをもとに詳細なフレームワークを作っていくことができました。そのために、軍事トレーニング用に開発したテクノロジーを応用しました」

Simvana の開発とリリースによって、Torch Technologies は、ほぼあらゆる種類のトレーニングを開発するために使用できる、基盤となるフレームワークを持っていることがわかりました。「麻酔を扱うというのは大きな挑戦でした。なにしろ国防総省とは遠く離れた世界です。しかし、Simvana を開発してわかったことがあります。それは、どれほど高度なシステムであっても、その専門家を紹介してもらえれば、私たちは 3D 空間内にそれを作り、動かすことができるということです」と Trousdale 氏は述べています。
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Unreal Engine でブループリントから C++ に移行

Torch Technologies の AVL のチームは、VR のトレーニングとシミュレーションに初めて取り組むとき、いくつか選択肢があったなかから、ビジュアルの忠実度とプログラムのしやすさを評価し、Unreal Engine を選択しました。

Engelmann 氏は次のように述べています。「ビジュアルの忠実度については、それほど苦労せずに実現でき、当初の私たちにとってとてもプラスに働きました。ブループリントについては、すばやくアイデアのプロトタイプを作り、イテレーションを行うことができ、良い点と悪い点を確認できました。これは私たちにとって決定的に重要な機能でした」

これまで開発のためには Unreal Engine のビジュアル スクリプティング システム ブループリントを主に使ってきた AVL のチームは、最近になって、コア プロセスの C++ への移行を開始しました。これは、一部の顧客のために膨大な規模のデータセットを扱う必要があり、その場合にもシミュレーションのスピードを維持するためでした。しかし、ブループリントの構造をモジュール式のクラスを使うものにしていたおかげで、AVL のチームは C++ へとかなり簡単に移行できています。

Engelmann 氏は次のように述べています。「物事を整理しておいたので、直接的な移行となっています。場合によってはネイティブ化機能を使うことができ、Unreal 自身に処理を行わせて作業量を最小限に抑えることもできました」また、Engelmann 氏によると、AVL のチームは一部のプロセスについてはブループリントのままにして「柔軟性を維持」しています。
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Morgan 氏は、AVL の長期的なビジョンは、C++ で構築されたコアと、外部で稼動しているシミュレーションと連携する一連のサービスを持つようすることだと説明しています。「顧客のニーズに合わせて開発されたスタンドアローンのシミュレーションがある場合に、サービス レイヤーを通じてそれを私たちの Unreal プロジェクトと連携させるという方向性を目指しています」と Morgan 氏は述べています。

AVL が Unreal Engine のエキスパートになろうと取り組み、投資を行っているきっかけの 1 つとして、Morgan 氏は Epic が Unreal Engine プラットフォームの開発に力を注いでいることを挙げています。「Pixel Streaming などのテクノロジーがプラットフォームに取り入れられたので、私たちは製品を今のような分野に送り出せるようになりました。Unreal Engine のおかげで、私たちは製品で VR や AR の新しいテクノロジーを速やかに利用できています。Unreal Engine を使っていなければ、もっと時間がかかっていたでしょう」

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