Squirrel with a Gun が奇抜なテスト動画から、Unreal Engine を活用した愉快なアクション ゲームへと進化

Images courtesy of Maximum Entertainment and Dee Dee Creations
2024年6月18日
Dee Dee Creations はニューヨークを拠点とする新しいスタジオです。ゲームに強い思い入れがあり、きわめて献身的なデベロッパーで構成される小さなチームで、Unreal Engine と一連のコンピューター グラフィック プログラムを駆使して、リアルなビジュアルを実現しています。
ディテールまでリアルに再現された茶色とグレーのフサフサした尻尾のリスの動画は、2 年前にソーシャル メディアで大きな注目を集めました。注目を集めたのは、単にこの作品がすべて Unreal Engine で制作されたものであるというだけでなく、このリスが 22 秒間で行っていたこと、つまりリスが銃を手にしていたからです。

小さな前足でピストルをかかえたリスが、ほとんど何もない環境を走り回った後、ウージー (小型マシンガン) に持ち替え、コントロールされた弾丸を打ちながら空中に飛び上がります。

Squirrel with a Gun のゲーム ディレクターであり、Dee Dee Creations のオーナーでもある Dan DeEntremont 氏は次のように述べています。「Twitter をはじめ、多くのソーシャル メディアで大きな反響がありました。そのときに、このコンセプトでゲーム本編を制作しようということになりました」

こうして、その名も Squirrel with a Gun (銃を持ったリス) が誕生したのです。

DeEntremont 氏に、このコンセプトの背景にある Eddie Izzard (英国のコメディアン) から得たインスピレーション、時間をかけて行ったリスの歩様の研究、そしてブループリントや Lumen といった Unreal Engine の強力な機能の数々が、この愉快なアクション ゲーム (ちなみに、ホラー要素も含まれているとのことです) に、どのように軽快な生命を吹き込んだのかについてお話を伺いました。
視覚効果やビデオ ゲームに興味を持ったきっかけについて教えてください。

Dee Dee Creations のオーナー兼 Squirrel with A Gun のゲーム ディレクター Dan DeEntremont 氏:私は子供の頃からビデオ ゲームに夢中でした。実際、オーランドにある DAVE スクールに通って、ゲームに関係するスキルを学びました。当時は、プリレンダリングによる視覚効果に焦点を絞ったカリキュラムであったため、ハリウッドでの初仕事として携わったのは Infestation というモンスター コメディ映画でした。以来、10 年半にわたり、主に映画やテレビの仕事に携わってきましたが、ゲーム開発への意欲は失っていませんでした。余暇に、Unity のいろいろな機能を使い、Super Mario Galaxy の動きや重力をエミュレートしてみたりしていました。最終的には Unreal にも手を広げ、風変わりな Alembic グルームを持つシンプルなキャラクターを作ったところ、バズったというわけです。

Muse VFX で勤務していた 3D アーティストから、愉快でありながら、暴力的でもあるリスが主人公のビデオ ゲームのデベロッパーへと転身を果たした感想をお聞かせください。

DeEntremont 氏:興味深いことに、テレビ/映画の VFX の世界とゲーム業界は多くの関連性があります。とはいえ、大きく異なる部分もあります。モデリング、リギング、アニメートなど、私の主要なスキルの多くはそのまま活用することができました。ただし、ゲーム ロジックのコーディングやリアルタイムの最適化には、本当に苦戦しました。 

Squirrel with a Gun のアイデアは何をきっかけに思い付いたのでしょうか?

DeEntremont 氏:普通の大きさの銃を操るリスというのは、私の頭の中に浮かんでいたたくさんのおばかなアイデアの 1 つです。これは以前も話したことがあるのですが、Eddie Izzard の「ダイヤモンドかシャーベット、そうでなければ銃を持ったリスが欲しかったんだ!」というギャグがきっかけです。SWAG は、Unreal で自分のスケルタルメッシュとキャラクター コントローラーのスキルをアップする手段として作り始めました。リスがサブマシン ガンを操る動画を投稿したところ、Twitter をはじめとする多くのソーシャル メディアで爆発的に拡散されました。そのときに、このコンセプトでゲーム本編を制作しようということになりました。

現在、本作には何人のメンバーが携わっていらっしゃるのですか?

DeEntremont 氏:Dee Dee Creations では 3 人で SWAG に取り組んでいます。私は、3D と Unreal を中心とした部分を担当しています。Scott DeEntremont はサウンドトラックを担当しています。Kensika Moolnoy-DeEntremont は、マーケティングと広報を担当しています。また、当スタジオのパブリッシャーである Maximum Entertainment でも、プロダクション管理、移植、動画制作など、大勢の方が SWAG の制作に携わってくださっています。クレジット リストはかなり長くなりました。クレジットもミニゲームになっているので、これは素晴らしいことです!

Unity を使用して開発を行ってきた中で、Unreal Engine に切り替えることにした理由を教えてください。

DeEntremont 氏:Unreal に切り替えたおそらく一番の理由は、ビジュアル スクリプティング用のブループリントです。ラピッド プロトタイピングに最適で、イベント グラフのおかげで、コーディングするよりも「全体像」を頭の中で把握しやすかったですね。UE そのものを使いこなせるようになると、ゲーム開発モジュールの宝庫でした。そのため、集中力を維持するのが難しいかもしれません。たとえ開発中のゲームに関係なくても、多くのシステムの 1 つを学習するのに夢中になってしまうからです。
 
他にゲームの開発に大きく影響した Unreal Engine の特定の機能はありましたか?あれば教えてください。

DeEntremont 氏:お察しのとおり、グルーム は、リアルなリスの制作に役立ちました。また、Lumen も、特に暗くて閉ざされた場所でのライティングのリアリズムに大きな効果がありました。しかもダイナミックなので、通常はベイク済みライティングを使用できない動くオブジェクト上でも、素晴らしいライティングを実現できます。さらに、<a href="https://dev.epicgames.com/documentation/ja-jp/unreal-engine/vehicles-in-unreal-engine" target="_self">Chaos Vehicle</a> クラスを使用して、リスの物理ベースの乗り物も作成できました。

レベル デザインに役立てるため、Epic Games の無料アセットを多用されたそうですね。そういった要素を、本作のビジョンに合わせて本作ならではの要素にした方法を教えてください。

DeEntremont 氏:もちろんです。 「本格的な」ゲーム制作に乗り出す前は、私は、SWAG は「知識に基づいたアセット交換だ」といつも冗談を言っていました。Unreal Engine マーケットプレイスで入手できる毎月の無料アセットは、小規模の開発チームがコア メカニクスとワールドのレイアウトに集中するために最適だったのです。無料アセットは、通常、人間サイズの主人公向けなので、私たちはほとんどのモデルをより忠実度の高いコリジョンで調整しています。

リスの動きとゲームの物理が相まって、楽しい瞬間が生みだされていますね。本作のテーマであるコメディを強調しつつ、リアルなビジュアルを実現するために、あのはちゃめちゃな動きをどのように表現したのでしょうか?

DeEntremont 氏:アニメーションは私にとって常に興味の対象です。また、動物について学ぶのが大好きなので、リスの歩様を調べたり、リスにリアルなバウンディング アニメーション (つまり、前方に飛び跳ねるアニメーション) を適用したりするのは、とても楽しかったです。また、アニメーション ブループリントを使って、リスが回転する方向に応じて「曲がる」ポーズを追加しました。これは、細長い動物が回転するときの「ぎこちない」感じを防ぐのに非常に役立ちました。また、リスが木の上や水面をリアルに移動できるように、リスの登り方や泳ぎ方も研究しました。このゲームに興味を持ってくださる方の中には、リスの愛好家や飼い主も多かったので、できる限り本物のリスに近い動きにしたかったのです。 

銃については、リアリズムの限界を自由に広げることができました。銃種ごとにリスが走ったり、構えたりするアニメーションを適用しましたし、空中に飛び上がるときのクールな反動エフェクトもつけました。また、ヤクザ シリーズのシネマティック Heat Actions にインスパイアされ、銃種ごとに固有の「テイクダウン」アニメーションを作りました。
 
ゲームのコンセプトには、当初からコメディ的なアプローチが盛り込まれていたのですか、それともシリアスなトーンで始めた後にコメディに行きついたのでしょうか?

DeEntremont 氏:そうですね、SWAG は常におちゃらけていて、ちょっとシュールであることを意図していました。私は Adult Swim で放送されているような、時には本当に奇妙な番組の大ファンなんです。そういった番組のエッセンスを SWAG に盛り込みたいと考えました。愉快な雰囲気ですが、壮大なアクション シーンがいくつか含まれています。また、信じられないかもしれませんが、ほんの少しのホラーの要素も含まれています。

ゲームの射撃メカニズムをどのように設計し、それをゲームの動作システムにどのように組み込んだのでしょうか?

DeEntremont 氏:当初から、銃を持ったリスが強烈な反動を受けるのはギャグだと考えていました。その後、下向きに撃つとさらに空中に飛び上がるようにしたら面白いと考えました。ですが、それは面白いけれども、厳密には「正確」ではないので、信頼できるプラットフォーミング ツールにはなりませんでした。そこで最終的には、ダブルジャンプを「真下に撃つ」アクションに変更しました。銃種に応じて、さまざまな方法で空中に飛び上がることができます。また、リスが高所に登れるようにポールや樹木を利用していますが、登るためには前足が自由でなければならないので、銃を持たせることはできませんでした。

制作の際に本作ならではの課題を克服するうえで役立った Unreal Engine の特定の機能はありますか?

DeEntremont 氏:最適化されたシステムを効率的に処理できるあらゆるツールで、UE は常に私の役に立ってくれます。 テレインのダイナミック LOD、ナビゲーション メッシュの生成、ディスタンス フィールドの生成などの細かな機能を処理する必要がなく、シンプルに機能するところが気に入っています。

このインタビューで最も重要な質問は、リスの素晴らしい毛並みについてでしょう。こういった本物そっくりのフワフワの尻尾をどのようにして作り上げたのでしょうか?明らかに「モフモフ」のレベルに達しています。

DeEntremont 氏:リスのモフモフのボトルブラシ型の尻尾は、何千本もの 1 本 1 本のストランドで構成されていて、すべてが皮膚表面からまっすぐに伸びています。というのも、ほとんどすべての 3D ヘアデザインの場面で、デフォルトの状態は「毛が皮膚表面からまっすぐに伸びている」状態であり、アーティストはそれを適切な方向に梳かす必要があるからです。ですが、私が尻尾で行う必要があったのは、少しノイズを加えることだけだったので、ストランドは完全かつ完璧にまっすぐであるわけはありません。ボトルブラシ型の尻尾は、「フィン法やシェル法」などの毛並みの手法で再現するのが特に難しいエフェクトであるため、リアルさを出すにはストランドが最良の選択肢でした。 
もう 1 つ重要な質問ですが、主人公のリスには名前があるのでしょうか?それとも単に「リス」なのでしょうか?ない場合、名前を考えたことはありますか? 

DeEntremont 氏:私個人は、プロジェクトを通じて主人公のことを「リス」と呼んでいます。もちろん、何かご提案があれば大歓迎です。募集すべきかもしれませんが、そうすると「Squirrely McSquirrelface」のような名前になってしまうかもしれませんね。

既存のジャンルにとらわれないゲームを制作したいと考えている他のインディー デベロッパーの皆さんにアドバイスをお願いします。

DeEntremont 氏:そういったゲームを制作しているインディー デベロッパーへのアドバイスとしては、たくさんの実験とプレイテストを重ねて、プレイヤー ベースに確実に合わせましょう。たとえあなたのゲームがジャンルのトレンドセッターになるとしても、1 つか 2 つのすでに確立されているジャンル (ホラー/ステルスなど) としてゲームを記載することをお勧めします。よほどの冒険好きでない限り、プレイヤーは通常、自分がこれからプレイしようとしている内容を少しは知っておきたいと考えるものです。Maximum Entertainment が編成してくれたプレイテストのおかげで、SWAG ならではのアイデンティティを保ちつつ、プレイヤーの期待に沿う良い感触を得ることができ、多くの有益なフィードバックを得ることができました。

お話しいただきありがとうございました。Squirrely McSquirrelface の詳細は、どこで確認できるでしょうか?

SWAG の最新情報は、https://twitter.com/QuiteDan または SWAG 専用の YouTube チャンネル https://www.youtube.com/@QuiteDan でご覧いただけます。

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