週刊少年ジャンプの読切作品『キルアオハル』はUnreal Engineを漫画制作にどのように活かしたか

Osamu Saito, Kazuya Okada |
2022年1月31日
藤巻忠俊氏は、週刊少年ジャンプで数々の漫画を掲載してきた日本の漫画家です。
累計発行部数3000万部を超える『黒子のバスケ』や『ROBOT×LASERBEAM』の著者であり、好きな映画はターミネーター2とゾンビランドです。
昨今のマンガ業界はデジタル化が進み、制作に3Dコンテンツを利用することも多くなってきています。そんな中、累計発行部数3000万部を超える『黒子のバスケ』や『ROBOT×LASERBEAM』の作者、藤巻忠俊氏は、週刊少年ジャンプにおける新作読み切り「キルアオハル」にてUnreal Engineを活用しました。そして、この読み切りでは エピック ゲームズ ジャパン のテクニカルアーティストである斎藤 修(@shiba_zushi)が元漫画家という経験を活かして、Unreal Engine の導入や作業の手伝いを行っていました。

今回は弊社の斎藤がインタビュアーとなり、藤巻忠俊氏に「キルアオハル」にてUnreal Engineを導入した経緯やマンガ制作で Unreal Engine を使うメリットなどについてお聞きしました。
 
画像提供:Tadatoshi Fujimaki
斎藤 修:本日はお時間をいただきありがとうございます。早速ですが「キルアオハル」にて Unreal Engine を導入したきっかけは何ですか?

藤巻忠俊氏:これまでは基本的にアナログでマンガ制作をしていて、デジタルはちょっとしたイラストを書く時に使う程度だったのですが、できれば3Dも活用したフルデジタルで1作品書いてみようと考えていました。そんな所に新人漫画家の頃からの友人である斎藤さんからオススメされたのがきっかけです。

Unreal Engine はイラストやマンガ制作に使用する場合は完全に無料な上に、Megascans やマーケットプレイスなどの豊富なコンテンツがあり、エディタも非常に洗練されています。私も以前からマンガ制作に利用していたこともあり、今回初めて3Dを触られるのならということでオススメさせて頂きました。

実際にそういった強みは今回のマンガ制作にて非常に役に立ちました。例えば、学校、化学実験室、敵のアジトのシーンなどでマーケットプレイスを活用しています。戦闘後の場面なので物を散らしたり見栄えが良くなるようにレイアウトを調整したりしましたが、それ以上は大きく変えることはなく各アセットを使用しました。アシスタントさんに間取りを提示してアセットを購入し並べてもらいましたが、自由にレイアウトを調整できるところはやはり3Dの強みだと思います。

参考までに、どのアセットを使用したかお伺いしてもいいですか?

教室にはJapanese School Collection、化学実験室にはRealistic Lab. Laboratory Equipment、敵のアジトにはVirtual Palace InteriorOld Cabinet Furniture を使いました。マーケットプレイスではイメージに合うクォリティの高いモデルを気軽に入手できるのは便利でした。この他にも様々なアセットがあったので、色んなジャンルのマンガにて活用できそうに感じました。
 
画像提供:Tadatoshi Fujimaki
ただ今回お手伝い頂いた車好きなアシスタントさんが「車のアセットに実際のモデルなどがなくて少し残念」と話していました。権利的な問題で難しいかとは思いますが、こだわりのある方は実際のものに近いアセットが欲しくなるかもしれません。

そこは悩ましい問題ですね。Megascansやマーケットプレイスのアセットは改変自由であったり、非常に使いやすいライセンス形式となっていることもあり、適切に権利を有していないコンテンツを販売することはできません。決して全ての保証をエピックが行うものではないのですが、そういう意味では大量の無料アセットも含め初心者の方でも安心して3Dアセットをご使用頂きやすいかとも思います。
Unreal Engine は各種モデルデータやLiDARデータの読み込みにも対応していますので、iPhoneなどで簡易的にスキャンして利用するというのも一つの手段になるかもしれませんね。


それはとても便利ですね。取材に行った際に3Dスキャンをしておけば安全なアセットを作れますし、写真だと別アングルの絵が欲しくなったら再度取材に行く必要がありますが3Dだとその問題が解決しそうです。または、色んなシーンで使うアセットの場合は発注して作ってもらうのも良いのかなと思いました。
画像提供:Tadatoshi Fujimaki
実際に Unreal Engine を制作に使ってみてどんなメリットを感じましたか?

Unreal Engine の素晴らしいところは、リアルタイムでカメラを自由に操作できるところですね。広角、望遠関わらず、実際に写真に撮ることさえ難しいアングルでも自在に確認できる為、普段では中々使用するのが難しい構図も気軽に採用することが出来ました。特に魚眼効果に関しては、魚眼の状態でカメラを自由に動かせる点が素晴らしいと思いました。これは他のアプリケーションでは中々出来ないことではないかと思います。

あと個人的には Unreal Engine を使用している時に思ったのは、週刊連載、特に黒子のバスケを連載中に欲しかった…ということですね(笑)今回も教室のシーンなどで活躍しましたが、試合中のバスケットコートなど、同一シーンが様々なアングルで出てくる時にUnreal Engine は本当に強力だと思います。

また、自由に画角やアングルを調整できる事は、実際の作画作業だけではなく、パースの理解にも役立つと思いました。リアルタイムで正しく絵が変化する為、背景を描き慣れない人にもどういう風にパースが変化するかを伝えやすいです。
画像提供:Tadatoshi Fujimaki
導入のハードルが非常に低いことにもメリットを感じました。私だけでなくアシスタントの方も3DCGソフトの経験が殆どなかったのですが、斎藤さんからの2,3時間のレクチャー後は10時間ほど学習したら制作に移れるようになりました。今回は様々な機能を実際に触りながら学ぶ方法を取りましたが、漫画家に特化したドキュメントやマニュアルがあれば更に短縮出来るかもしれません。

ぜひ今後対応していきたいと思います!次は Unreal Engine を使ったマンガ制作のフローを教えていただけますでしょうか?

それでは主人公の鰐淵一郎が教室に飛び込む場面を元に説明します。まずは一般的なマンガ制作と同様にネームから下書きを行い、背景などのアタリを入れます。この作業の間にアシスタントの方に場面に合うアセットを探してもらったりもしました。
次にキャラクターのペン入れをある程度進めつつ、Unreal Engine を使った背景制作を始めます。アタリに合わせたレイアウトやアングルが決まったらスクリーンショットを撮り、クリップスタジオで線画抽出を行ったり、背景のペン入れを行います。その後は効果線やトーンの追加などをして整えていきます。
最後にキャラ側の作画と合わせつつ仕上げて完成です。見開きを使った重要なシーンでしたが、Unreal Engine のおかげで今までより迫力があるだけでなく説得力のある背景・アングルを作ることができたんじゃないかなと思います。
画像提供:Tadatoshi Fujimaki
また、ヒロインが捕まっているこちらのカットではモブキャラのアタリにも Unreal Engine を使ったりしました。メインのキャラに使うのは正直な所まだ難しく感じますが、こういった複数人のモブキャラを配置するなどには相性がいいと感じました。
これらのシーンは私が実際にお手伝いさせて頂いた場面なのですが描いていて非常に楽しかったです。逆に Unreal Engine を使っていて困ったことなどはありましたか?

Unreal Engine を活用し、読切作品を一本作ってみて感じたことは、非常に便利な半面、便利すぎて選択肢が広がり、逆に時間がかかってしまうこともあるなと思いました。今回ですと、カメラを動かすことが簡単な故に構図がなかなか決まらないという時がありました。まだ慣れていないというのもありますが、特に週刊連載ではとにかく制作スピードが求められるため、これは自分の中で課題になっています。

また、3D特有の"正しすぎる"絵にイメージが引っ張られることも懸念としてあります。マンガはあえてパースをおかしくしたりウソをついて描いたりすることがあるのですが、デジタル・3Dは正確すぎるので絵が固くなりすぎるかなと。ですので、個人的にはすべての絵で Unreal Engine を活用するのではなく、半分くらいで、得意な場面で活かしていくのが良いのではないかと思っています。


貴重なお話をありがとうございました。最後になりましたが、何か伝えたいことはありますか?

初めてのフルデジタル かつ Unreal Engine を使うというのは実験でしたが、無事完成した上に読者からの反響も色々あってとても良かったです。Unreal Engine は非常に強力で良かったのですが、できることが多すぎて大変な部分もありました。今後は距離感をもう少し詰めていければと思います。

さきほど半分だけ使うのがいいと話しましたが、たかが半分されど半分です。覚えておいた方がいいとは感じました。実際にどれぐらい使うかは本人次第です。自分はまだこれからですが、今後勉強してより使いこなしていければと思います。

今回はこのような機会をいただき、ありがとうございました。
画像提供:Tadatoshi Fujimaki
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