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FIFA ワールド カップでリアルタイム技術を採用:放送界の秘密の 1 つを探る
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2023年4月12日
FIFA
FIFA ワールド カップ
スポットライト
ワールド カップ
32 か国から選りすぐりの選手が集結する 2022 FIFA ワールド カップは、世界最高峰のサッカーの試合です。FIFA は、カタールでの試合に参加した 340 万人の観客に加えて、15 億人がアルゼンチンとフランスの決勝戦を視聴し、約 60 億人がソーシャル メディア上でトーナメントについて言及したと
推定
しています。
ニューヨークを拠点とするクリエイティブ スタジオ
KéexFrame
のチームも、この試合を視聴していました。ワールド カップは彼らの中でも特別なイベントでした。そのため、そのような権威あるイベントの精神を取り入れたブロードキャスト シネマティクスを作成するという機会を得た際、断るという選択肢はありませんでした。
このプロジェクトは当初、テレビ ネットワークからの委託ではありませんでした。したがって、チームはアニメーション キャラクターや映画のようなストーリーテリングなど、生放送では一般的に使用されない新しいツールやコンセプトをこの機会に使用することにしました。その後、NBCUniversal Telemundo が FIFA ワールド カップ カタール 2022 の中継に
ブロードキャスト シネマティクス
の使用を決定したことから、そうした彼らの新しい試みが実現しました。
この記事では、チームがコンセプトから完成までどのようにプロジェクトを進めたのかをご紹介します。
ブロードキャスト シネマティクスのコンセプト
KéexFrame にとって、ワールド カップの興奮を伝えることとあらゆる国籍を表現できるキャラクターを作成することは、等しく重要でした。同チームは、巨大なコロッセオのアリーナに入るギリシャの戦士から着想を得て、プレイヤーが時代を超えて戦いを繰り広げる現代のグラディエーターとして描かれています。
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ムード ボードとスタイル フレーミング
コンセプトが固まったので、KéexFrame は、ムード ボードとスタイル フレーミングを行う段階に進みました。好きな他のアニメーションから多数のリファレンスを調査して編集し、作品で再現したいムードを反映するのに十分な大まかなフレームができるまで、何度かスケッチを繰り返しました。
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生放送の制作時間は通常短いため、チームは Unreal Engine で直接スタイル フレーミングを行い、ライティングと雰囲気を同時に定義できるようにしました。そのため、その後にエンジン外で行わないといけない作業は最終的な外観のフレームの作成のみでした。
KéexFrame はまずトロフィーのモデルに取り組みました。それがオープナーの重要な部分になることを知っていたためです。まずライブラリから購入したモデルをレトポロジし、Substance Painter でゼロから PBR テクスチャを作成しました。マテリアルのエミッシブ属性に接続したフレネル ノードを使用してシェーダーを作成し、トロフィーの角と機能に輝きを追加しました。
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チームは、Unreal Engine でライティングと環境をリアルタイムで調整しながらトロフィー モデルも作成しました。ブロッキング ステージを一斉に行ったことから、KéexFrame は、達成しようとしていた概念実証となるスタイル フレームの定義に成功しました。Photoshop で少し色を修正してこれらのスタイル フレームを作成すると、Unreal Engine で目的の外観を実現できることがわかりました。
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ブロッキングとアニメーション
ファンで埋め尽くされた巨大なスタジアムの雰囲気と、世界の舞台でプレイする選手が感じるであろう興奮を伝えるために、KéexFrame はアル ジャヌーブ スタジアムのユニークな建築物と、選手がピッチに近づく姿と歓声を上げる観客の撮影を行っています。
「
シーケンサー
」により、チームはいくつかのバージョンをすばやく反復し、追加のカメラ ショットを作成して、適切なペースでストーリーを伝えることができました。「Unreal Fellowship の Storytelling クラスから多くのことを学んだので、その知識の多くをプロセスのこの部分に活かしました」と、KéexFrame の CEO である Arturo Brena 氏は言います。
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ブロッキング段階でこのレベルの柔軟性があったので、
Unreal Engine のマネキン
を使用して早い段階でプレイヤーにアニメーションを追加できるようになりました。これは後ほど
カスタムの MetaHuman
に置き換えています。これにより、アニメーションの統合中にカメラのより正確なブロックがしやすくなります。
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プレイヤーを作成する
キャラクターに関しては、KéexFrame はトーナメントのゴールデン トロフィーの不完全で触覚的な外観からインスピレーションを得ました。
「頭部のモデルの作成から始めました。ギリシャの彫刻の特徴に似ているものの、それより人間的だと感じられるようなものにしたいと考えました」と Arturo 氏は言います。「その後、それを別の基本モデルと組み合わせ、両方の機能を組み合わせて最終バージョンを作成しました」
満足のいく頭部ができたら、
Mesh to MetaHuman
ツールでモデルから MetaHuman を作成しました。
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ゴールドに手彫り感を出すために、
Adobe Substance 3D
でボディとクロスに詳細なシェーディングの追加も行っています。すべてのゴールド要素に単一のマスター マテリアルを使用し、アートを完全に演出できる十分な機能を付与しています。それにより、ゴールドの強調したい点に応じてショットに特定の改良を加えることができました。
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アニメーションをリターゲティングする
アニマティックが承認されると、チームはカスタムの MetaHumans に適用できるアニメーションの作成を開始しました。MetaHuman コントロール リグのおかげで、リターゲット後のアニメーションの微調整が簡単に行えるようになりました。それにより、チームはさまざまなレベルの強さ、意図、タイミングで複数のモーションの反復を生成しやすくなりました。
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MetaHumans の変更は、すべてのメッシュを同じスケルトンで操作していたことからすばやく行えました。そのため、さまざまなサッカー シューズや靴下をエッセンスとして追加することもできました。それぞれにバリエーションを持たせることで、キャラクターに独自性を与えることができました。その作業が完了した後は、正しいライティングとシェーディングの評価をリアルタイムで行いました。それにより、承認プロセスも迅速になりました。
クロス シミュレーション
サッカーの試合で旗を振ったことがある人なら、チームや国を応援している際に旗の布が波打っていたらとても爽快感があることをご存じだと思います。KéexFrame は、
Autodesk Maya
を使用してその結果を Alembic キャッシュとして Unreal Engine にインポートして、独自の旗の動きをシミュレートし、際立たせました。シーケンサーを使用するとキャッシュのタイミングを変更して可変タイミングを実現できるため、ショットがよりドラマチックになりました。
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クロス シミュレーションを通じて、プレイヤーの衣服もよりリアルに表現できました。チームは、MetaHuman のベース キャラクターを Marvelous Designer に追加して、各モデルに独自の衣服を着させることから始めました。次に、独立したアニメーション クリップを FBX モデルとしてエクスポートし、クロス シミュレーション プロセス向けに準備しました。それが終わると、モデルを Unreal Engine で使用可能な Alembic キャッシュとしてエクスポートしました。この Alembic を用いた方法は便利でしたが、現在彼らはネイティブの Unreal Engine のクロス ツールに移行中です。
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ライティングおよびレンダリング
剣闘士のコンセプトの実現には、アクション満載のコロッセオにいるような感覚を呼び起こすライティング スタイルと雰囲気が必要でした。「ライティングによってシーンが大きく左右すると考えています。そのため、構図はスマートでクリエイティブなものにする必要がありました」と Arturo 氏は言います。
「
Lumen
」のダイナミックなグローバル イルミネーションは、リアルなムードと、詳細な指向性ライト、長方形ライト、スポットライトを用いたライティングの構築に最適でした。霧のような外観には、「
Exponential Height Fog
」と「
Sky Atmosphere
」を使用しています。すべての光源に対して特定のボリュメトリック インフルエンス値を設定することで、スタジアム ライティングにおける典型的な外観をシミュレートしています。
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これらすべての美しく輝く金色の再現には、Unreal Engine のリアルタイムな「
ハードウェアのレイ トレーシング
」反射が大きく貢献しています。「レイ トレーシング反射を使用すると、パフォーマンスにかなりのコストがかかることがあります。ただ、精度が高いのでよく使っていました」と Arturo 氏は言います。
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最終的に出力する高品質なレンダリング設定のパフォーマンスと品質のバランスの決定には、「
コンソール変数
」を用いています。強力な「
ポストプロセス ボリューム
」エフェクトを採用して、すべての光源のグローとレンズ フレアの強化も行っています。
リアルタイム プロダクションとインタラクティビティ
このプロジェクトの主な目標の 1 つは、シネマティクスな外観でライブ プロダクション向けに機能が編集可能な状態を維持するブロードキャスト アニメーションを作成することでした。これにより、ネットワーク グラフィック部門がチーム名などのデータ/情報要素を現場で調整したり、オープナーの複数のオンデマンド バージョンを作成したりすることが可能になるため、重要でした。
KéexFrame は、各チームがすべてのビジュアル要素をドロップダウン メニューから変更できるシステムを考案しました。これにはシングル コントロールのブループリントを利用しています。「チームを選択してレンダリングに送るだけの簡単な操作にしたかったのです。必要に応じてライブで演奏することもできます」と Arturo 氏は言います。「そのため、データ テーブルを使用して、各チームのテクスチャや色など変更可能なすべての値を参照できるブループリントを作成しました」
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KéexFrame はまた、プロデューサーが Unreal Engine やグラフィックス操作全般に関する知識がなくても、ネットワーク内のどこからでもオープナーを変更できるようにしたいと考えていました。これを実現するため、チームは Unreal Engine 用の
Remote Control
プラグインを使用しました。これにより、Web ベースでチームの変更やレンダリング プロセスの開始がしやすくなりました。
「編集上、どのような変更が必要か予測できないニュースやスポーツといったライブ制作環境では、リモート コントロールが欠かせません」と Arturo 氏は言います。「これにより、グラフィック チームではなくプロダクション スタッフが編集の管理を行えるようになるため、生放送中の効率が大幅に向上します」と彼は続けます。
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NBCUniversal Telemundo の FIFA ワールド カップ カタール 2022 の中継では、試合のライブ配信数時間前に多くのチームを選択する必要があったため、この機能が不可欠であることがわかりました。
ブロードキャスト シネマティクスの次
KéexFrame の作品はストーリーテリングのレベルで成功を収めました。そしてこれは、放送プロダクションにおける新しい道も示唆しています。視聴者はスポーツ グラフィックスに馴染みがある一方で、多くのプロダクション チームはリアルタイム レンダリングを行えないことから、視覚的な妥協を余儀なくされてきました。
しかし、Unreal Engine などのツールを使用すると、レイ トレーシング、モーション ブラー、グローバル イルミネーションなどを用いた品質向上をより自由に行えるので、シネマティクスな外観を視聴者に提供できるようになります。KéexFrame は、「こうしたツールの使用でクライアントにとってさらに価値のあるものを提供できるのではないか」と考えています。
「ハイエンドのブロードキャスト シネマティクスの場合、特にストーリーテリングに重点を置いていることから、今後の私たちの戦略における重要な部分になりつつあります。これからの展開が本当に楽しみです」と、Arturo 氏は言います。
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