Courtesy of Avalanche Software & Warner Bros. Games
Avalanche が精魂を込めて
Hogwarts
を開発した理由とは
Brian Crecente
2023年8月8日
Avalanche Software
インタビュー
ゲーム
ホグワーツ・レガシー
1995年に米国ソルトレイク シティーでスタートした Avalanche Software は、20年の長きにわたり、世界最大フランチャイズのファンに向けてインタラクティブ エクスペリエンスを創り出してきました。
Hogwarts Legacy
はそのリリース前から記録を更新しており、早期アクセスの期間中は、Twitch でそれまで最も視聴されたシングルプレイヤー ゲームとなったほか、Steam ではシングルプレイヤー ゲームの同時接続プレイヤー数で 2 位を記録していました。
2月10日にリリースされた PC 版ではこれまでの記録をさらに更新し、リリースされた週末には、同時接続プレイヤー数をほぼ倍増させました。
Wizarding World of Harry Potter
™ によるほとんどのレビューでは、このアクション ロールプレイ ゲームの詳細度 (LOD)、洗練されたアトモスフィア、ビジュアル忠実度について評価しています。
当社では
Avalanche Software
の開発チームの方々にインタビューする機会を得て、どのようにしてこのチームが
Disney Infinity
や
25 to Life
といった幅広いゲームの開発から学んだことを、歩くだけでなく箒 (ほうき) に乗って飛び回れるこの大規模オープン ワールドの制作に活用したのかについてお話を伺いました。
また、このゲームの舞台を、よく知られているほとんどの「魔法ワールド」フィクションよりも前の 1800年代後期に設定した理由、「精魂を込めたゲーム」を開発しようとする理由、そして Avalanche がインハウスのゲーム エンジンから Unreal Engine に乗り換えた理由についてもお話を伺いました。
Avalanche Software には長年の間、オープン ワールドでのプレイを一新させる数々の魅力的な作品を開発してきた実績がありますが、これらの作品や他のプロジェクトからどういったことを学び、
Hogwarts Legacy
に取り入れたのでしょうか?
Kelly Murphy (
Hogwarts Legacy
のリード デザイナー):
私たちは、よりリニアなレベルベースのエクスペリエンスから距離を置いて、複数の重複した目標をプレイヤーに与えるという哲学を取り入れることにしました。こうすることで、プレイヤーがゲーム ワールド内を探求しているときに、さまざまな仕掛けやゲームプレイを提供しやすくなりました。こうして、私たちはゲームにおけるプレイヤーのモチベーションを特定し、そういったモチベーションを促進するための体系的な手法を考案しました。これは、システム間の依存関係を交差させることを意味します。
たとえば
Hogwarts Legacy
では、プレイヤーは装備品を売ったり破壊したりしなければ、あまり多くを所持することはできません。このため、プレイヤーにとって「インベントリのサイズを増やす」というモチベーションが生まれます。これは、ハイランドに点在する「マーリンの試練」を攻略することで達成できますが、マーリンの試練を解明するには十分な「ゼニアオイ」が必要になります。ゼニアオイは「必要の部屋」で栽培するか、購入する必要があります。また、特定の試練を解くには、その試練のためにアンロックされた正しい魔法も必要になります。
私たちは、プレイヤーのニーズや求めているものを特定し、そうしたモチベーションを満たすための方法を提供することで、プレイヤーが求めるゲームプレイをワールド内に設定する機会を得られるだけでなく、開発中のワールドに適切な量の関心イベントや仕掛けの設定に集中できることを発見しました。私たちは、ワールドでは少なくとも 30 秒ごとに関心イベントを発生させて、プレイヤーのエンゲージメントを維持したいと考えました。
魔法ワールドには多くのワールド ビルディングがなされ、伝承が存在しますが、作品の舞台となる時代設定と、それに続くストーリーラインをどのように決めましたか?
Murphy:
私たちが最も重視したのは、自らが「魔法ワールド」の一員であることを感じられること、そして、この時代のヒーローである魔法使いとしてプレイヤーがロールプレイを楽しめることでした。
このため、そのフランチャイズの他のヒーローたちとは重ならない、そして皆が知らないほどの昔ではない時代を見つける必要があり、結果的に 1890年代をゲームの舞台にすることを決めました。この時代には興味深い技術やファッションがあり、そこまで昔ではないので、本や映画ファンになじみのある当時の出来事や人物、名前などを利用できると思いました。
最後に、プレイヤーになじみのある本や映画からの魔法、ポーション、植物、ツールを演出するだけでなく、プレイヤーに何らかの関連性のある新しいものも用意しようと考えました。これが「古代魔術」です。伝承では触れていますが、今まで深くは語られていません。ですので、これを追求することで、革新的でありつつストーリーも継承することができます。
Courtesy of Avalanche Software & Warner Bros. Games
インタラクティブ環境やイースター エッグの存在といった面で、Hogwarts
の設定はさまざまな可能性につながるものですが、
Hogwarts Legacy
ではこのポテンシャルをどのように扱いましたか?
Murphy:
伝統を維持することも私たちが重視する要素です。つまり、ファンの期待に応え、伝承へのつながりもある Hogwarts を制作する必要があったのです。このため、私たちは本や映画、インターネットなどでリサーチを行い、執筆担当のチームには、舞台となる学校やその世界を可能な限り伝統に沿った形で描くように伝えました。
このゲームにさまざまな「イースター エッグ」、つまり裏技などが仕掛けられているのは、何よりもまず私たち自身がファンだからです。当社では、精魂を込めてゲームを開発することをモットーとしています。私たちの作品には私たちの情熱が反映されているのです。
私はゲームのリリース前にゲーム全体を何度かプレイしましたが、開発時には気付かなかったディテールを新たに発見することもありました。ゲームがリリースされてからもいくつかの動画を見ましたが、私でも気付かなかったちょっとした秘密がいくつもゲーム内に残されているのを見て、驚きながらもうれしく感じました。
Courtesy of Avalanche Software & Warner Bros. Games
本ゲームでは、Hogwarts
をさまざまな秘密が込められた舞台として捉えていますが、この重要な設定をこれだけ広大に再現できたのは、何のおかげだと思いますか?
Murphy:
端的に言えば、互いに尊重しあう私たちのチームです。当社では、メンバーがゲームの何らかの要素に対して持っている熱意をサポートすることを常に重視しています。私たちの経験では、ほとんどの場合、こうした行動はそれだけの価値を生み出し、何よりも、関心事に没頭できることでチームの士気が高まります。実際に、Hogwarts の作業を担当しているメンバーはチームの中でもとても熱狂的なポッター ファンであり、迷宮のような廊下や秘密の部屋、隠された通路、さらには学校の愛すべき特徴といったことを希望どおりに再現する学校の制作に関して妥協を許しませんでした。
プレイヤーは箒に乗って散策したりレースで競ったりできますが、箒による飛行のメカニクスは時間とともにどのように進化しましたか?
Mike Snow (
Hogwarts Legacy
の上級ゲーム デザイナー):
箒での飛行に関して技術面の主な検討事項は、パフォーマンス (フレームレート) とストリーミングでした。このオープン ワールドには箒での飛行を取り入れたいと以前から思っていましたが、これには技術面でのさまざまな壁があることがわかっていました。歩く場合とはまったく異なるワールド ビューをプレイヤーに提供すること、そして、走る場合よりも速いスピードで移動すること、つまりワールド内でのストリーミングの速さが問題でした。そのため、箒での飛行スピードと箒のアップグレードの進捗については工夫する必要がありました。カメラ、オーディオ、VFX に秘密の調整を施すことで、プレイヤーが実際よりも速いスピードで移動しているように感じられるようにしました。ブースティング方式で従来のカメラのプルバックを行う代わりに、カメラをプルインすることで、よりエキサイティングでシネマティックな感覚を実現しています。
さらに、箒に乗って飛行しているときでも、プレイヤーには地上のすべてのゲームプレイとの関連性を維持してもらいたいと考えました。地面に近い高度で飛行しないと激減するターボ メーターを実装することで、プレイヤーを地上でのゲームプレイに引き付けておくことができます。開発全体を通じて、繰り返し対処する必要のあった問題が制御性でした。ホバリング モードと前方飛行の制御を組み合わせる方法を見いだすのは簡単ではありませんでした。ホバリング モードでは、左スティックを使って地上での制御と一致させようとしますが、制御方法をあまり変えずに前方飛行にシームレスに切り替える方法が必要でした。
そのため、私たちは結果的に「デュアル スティック ステアリング」 (右スティックで上昇/下降を、左スティックで左/右を制御) を取り入れました。制御方法をより調整し、チームで実際の飛行プレイにより多くの時間を費やすにつれて、プレイヤーがシームレスに、そして迅速に箒の乗り降りをできることが重要であると判断しました。そのため、空中マウントといった機能を加えることで、プレイヤーが箒から落ちてダメージを受けないようにしたり、水から出て飛行する際の抵抗を改善するために、プレイヤーが水中から飛行できるようにしたりしています。
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Hogwarts Legacy
では魔法動物を飼いならして乗ることができますね。選択可能なさまざまなクリーチャーが存在しますが、どのようにゲームに取り入れるクリーチャーを選定し、プレイヤーの期待に合わせてそのデザインを調整しましたか?
Mekenzy Toner (
Hogwarts Legacy
のシステム デザイナー):
どういった動物を選ぶかは、すべてファンタジーのバランス、期待、そしてそのコスト (負荷) 次第でした。魔法ワールドに登場する動物はすべて不可思議で風変わりなところがあり、複雑です。つまり、リギングしてアニメートすることが簡単ではないのです。とても不可思議に感じられるものと、時間内に表現できるもののバランスをうまく取りたいと考えました。また、プレイヤーの共感を呼び、プレイヤーの好みにピッタリの多種多様な動物、たとえばクールな動物やかわいらしいもの、もしくはスライム状のものなどを取り入れたいとも考えました。
「セストラル」や「ニフラー」などの一部の動物については、伝承における重要な役割を考慮して以前から取り入れたいと思っていました。ほかの動物については、現実味を帯びたものにするための作業は困難でしたが、楽しむこともできました。たとえば、「パフスケイン」は手足を持たないため、そのデザインの際にはどのように移動させたらいいのか悩みました。結果的に、ふわふわした毛玉のように転がって移動することがとてもかわいらしいという決断に至りました。そうすることで、この動物の特徴である「たわいなさ」も演出されます。私たちは、それぞれの動物に独自の個性やスタイルを持たせて、さまざまなインタラクションを通じてプレイヤーにそうした特徴を発見してもらいたいと考えました。このゲームが魔法使いだけのストーリーではないことを強調するために、それぞれの動物を不可思議で面白味があり、このワールドの重要な一端を担うものとすることが私たちにとって重要でした。
Hogwarts Legacy
に Unreal Engine が適していると考えた理由は何ですか?
Jose Villeta (
Hogwarts Legacy
のソフトウェア エンジニアリング ディレクター):
Avalanche ではもともと当社独自のエンジンを使ってゲームを開発していましたが、
Hogwarts Legacy
のゲーム開発計画時に Unreal Engine への移行を決断しました。主な理由としては、Unreal Engine が優れたエディタ ツールのコレクションであるだけでなく、Epic によって確立済みの
オープン ワールド
および
レンダリング
テクノロジーを利用できた点が挙げられます。また、AAA ゲームの品質をさらに高めることが可能な、Niagara VFX システムや
Chaos 物理
モジュールといったゲーム開発の主要テクノロジーが搭載されていることも魅力的でした。
私たちは、Epic の関連リソースを活用することで、コア エンジン開発に費やす時間を削減できたので、ゲーム開発自体により集中することができました。また、柔軟性の高いエンジン プラグイン システムのおかげで、ゲームに必要な特殊システムや固有のシステムを拡張して追加できました。Unreal Engine では完全な
ソースコード
にもアクセスできるので、
Hogwarts Legacy
の成功に欠かせない領域を最適化したり、拡張したりすることができました。
Courtesy of Avalanche Software & Warner Bros. Games
特に
城の周辺の風景が季節によって変化する様子など、Hogwarts
にリアリズムを加えるうえで Unreal Engine はどのように役立ちましたか?
Villeta:
私たちは、エディタ ツールを使って優れたアートやエキサイティングなゲーム モーメントを創り出しただけでなく、すべての
ワールド コンポジション
ツールを駆使し、ワールドのすべての領域を必要に応じてストリーム入出力できるようにしました。歩くだけでなく、箒に乗って Hogwarts のすばらしい周辺地域を散策できます。季節については、ゲームのスケジュールや各目標に応じて、時の変化を感じてもらえるように変えています。城の周りを散策すると、活力あるオブジェクトやアニメートされた絵画などを多数見つけることができます。こうした要素によって Hogwarts に命が吹き込まれています。
難題を克服するために Unreal Engine が役立ったことはありましたか?もしあれば、それはどのような問題で、どのように解決しましたか?
Villeta:
優れた戦闘と魔法での戦いを演出するために、早期段階で Unreal Engine の新しい
Niagara ビジュアル エフェクト
システムの利用を決めていました。技術的な要件だけでなく、ビジュアル的なレベルも高めるために早いうちから採用して Epic と緊密に連携しました。
ゲーム内のすべての魔法や遭遇戦、シネマティクスなどに、ビジュアル エフェクトのライブラリを活用することができました。加えて、ジオメトリ破壊、キャラクター ラグドール、クロス ダイナミクスのレイヤーを加えるために、
Chaos 物理
への移行も決めました。Chaos 物理システムと Niagara VFX システムを組み合わせることで、最先端のアート ビジュアル エフェクトを実現し、リアルタイムの衣服をまとった現実味あふれるキャラクターに仕上げることができました。
Courtesy of Avalanche Software & Warner Bros. Games
Hogwarts Legacy
はさまざまなプラットフォームに対応する予定ですが、そういった多様な仕様のプラットフォームに対応するうえで、品質を維持することに関して Unreal Engine はどのように役立ちましたか?
Unreal Engine 5
と開発に関連するその新機能について、御社のチームはどのように捉えていますか?
Villeta:
Unreal Engine には、アセットを超高品質から低品質の設定へと調整可能なスケーラビリティ設定の概念が取り入れられています。これらの設定は PC プラットフォームに役立つだけでなく、アセットを複製することなく、あらゆる対象プラットフォームを調整できます。必要な場合には、開発したゲームに影響を及ぼすことなく、ジオメトリやビジュアル エフェクトの複雑さを低減することもできました。
私たちはすでに Unreal Engine を活用するための基盤を確立しているため、今後の開発プロジェクトでも Unreal Engine 5 の力に期待しています。私たちはすでに Niagara VFX システムと Chaos 物理システムという、UE5 の 2 つの主要機能を統合済みですが、そのほかにもプラットフォーム テクノロジー、リモート ワークに関する機能向上、レンダリング テクノロジー、シネマティクス向けのバーチャル プロダクション ツール、キャラクター開発などでの新たな進展に期待を寄せています。
お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
Hogwarts Legacy
と Avalanche Software の詳細や最新情報はどこで入手できますか?
Murphy:
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