No Straight Roads の革新的なデザインがリズム ベースのゲームプレイとダイナミックなアクションを融合

Jimmy Thang

Metronomik

Metronomik はマレーシアのクアラルンプールを拠点するゲーム会社です。従兄弟同士の Wan Hazmer 氏と Daim Dziauddin 氏によって創業されました。創業者の 2 人とも東京でゲーム業界の仕事に携わった経験があります。Hazmer 氏はスクウェア・エニックスで Final Fantasy XV のリード ゲーム デザイナーを務めました。Daim 氏はストリートファイターV のコンセプト アーティスト、ストリートファイターIV のイラストレーターを務めました。現在従業員数が 20 名の Metronomik は、音楽とゲームプレイをシームレスに結び付けるオリジナル ビデオ ゲーム IP の作成を目指しています。その最初の作品となったのが、マルチプラットフォームのアクション アドベンチャー、No Straight Roads です。また、地域のゲーム関連人材を育成し、マレーシアのゲーム業界を発展させようともしています。
最近リリースされた No Straight Roads は、リズム ゲームとプラットフォーマー ゲームのジャンルを融合したものです。Epic MegaGrants の資金提供を受けたこの作品は、ロック対 EDM という心をつかむモチーフを扱っていて、Metronomik の最初の作品です。

2 人の創業者とのインタビューでは、サウンドトラックのリズムとマッチする戦闘を作り出すことで、アクションと音楽をユニークな形で融合させたゲームをどのようにデザインしようとしたのかについて伺いました。また、アクション アドベンチャーのファンと音楽のファン、両方にとって魅力的なゲームの開発など、制作上の課題についても教えていただきました。
 

No Straight Roads は、アクション プラットフォーマーであると同時にリズム ゲームでもあるという、興味深い設定のゲームです。どうやってこのコンセプトを思い付いたのですか?
 
Metronomik の共同創業者兼 CCO、No Straight Roads のクリエイティブ ディレクター、Daim Dziauddin 氏:元々のコンセプトは Hazmer によるものです。以前、私たちは土曜日ごとに会って意見を交換していました。Hazmer は音楽が中心的な役割を果たしている世界を舞台にしたゲームを作りたいと考え、「すべてのボスが EDM をベースにしていたらいいんじゃないか」と言いました。ロック対 EDM というテーマが定まってから、私がその世界、キャラクター、ストーリーを生み出していきました。
 
Metronomik の共同創業者兼 CEO、No Straight Roads のゲーム ディレクター、Wan Hazmer 氏:単純な「悪い奴らが悪いことをする」という考えを Daim が変え、それぞれ音楽を演奏する人間らしい理由を持つユニークなキャラクターがいるという設定を作り出しました。最初から、音楽全体に敬意を表す必要があると自分たちに言い聞かせていました。また、音楽をベースにしたメカニクスを取り入れるというだけでなく、ミュージシャン同士の価値観とモチベーションがぶつかり合うというストーリーを伝えたいと思っていました。それが No Straight Roads の基盤となっています。
No Straight Roads のコンセプトは非常に幅広いものです。何か影響を受けたものはありますか?
 
Daim Dziauddin 氏:ビジュアル面では、私たちは 2000 年代前半のドリームキャストのゲームが好きです。スペースチャンネル5ジェットセットラジオはスタイルがあってカラフルです。そうした要素を自分たちのゲームに取り入れたいと考えました。ほかには、90 年代のティム・シェーファー氏によるアドベンチャー ゲームのとっぴなところやユーモアが大好きです。キャラクターにはそういうおかしいところを取り入れました。また、私はジョジョの奇妙な冒険の大ファンです。ジョジョのファンの方であれば、ゲームに散りばめられた奇抜なファッションやポーズに気が付くかもしれません。
 
ハックアンドスラッシュとリズム ゲームを組み合わせたゲームプレイになっていますが、No Straight Roads の戦闘システムのデザインについて詳しく教えていただけますか?
 
Wan Hazmer 氏:私は 90 年代からリズム ゲームを遊んできましたが、Daim を一緒にプレイさせることはできませんでした (笑い)。ゲームのメカニクスにおける音楽の役割は、プレイヤーがビートに合わせてボタンを押すという以上のものにできるというアイデアが浮かびました。ゲーム デザインと同様に、音楽には工夫の余地があるルールがいくつもあります。ビート、構成、ピッチ、リズムなどです。リズムに合わせることをプレイヤーに強いるのではなく、これらすべてを活用するゲームを作りたいと考えました。
 
平均的な人でも、同じ曲を何度か聞けば、いつからサビが始まるかわかります。それと同じ本能を利用することにしました。敵はビートに合わせて攻撃してきます。ボスと戦っていくと、視覚的な手がかりがだんだん減っていくので、初めのうちは難しいかもしれません。しかし、音楽と攻撃はループするので、敵を倒すには音楽と攻撃の関係について理解することが重要です。
プレイヤーの防御や回避の入力と曲のビートの関係が満足感を与えるものになるようにするために、多くのイテレーションが必要となりましたか?
 
Wan Hazmer 氏:もちろんです。とても長い時間がかかるプロセスでした。イテレーションの例の 1 つは、防御システムのデザインに関するものです。普通のリズム ゲームでは、音のバーやマークが線の上にきたときにボタンを押します。バーかマークは常に画面上を動き続けています。ボタンが入力されたタイミングで線との距離を測ることで、「パーフェクト」「バッド」などのヒット判定を下すことができます。
 
私のゲームでは、防御できる敵の攻撃はビートに合わせて、そのタイミングでのみ表示されます。ある時期には、攻撃が表示されている 0 ~ 0.5 秒の間隔でのみ防御できるようになっていました。攻撃が表示された時点から、プレイヤーが防御しようとしているか判定しようとしていたのですが、リズム ゲーマーとしては、これはとてもひどいエクスペリエンスでした。なぜなら、ヒットを正確に判定するには、ボタンをほんの少し早く押したかどうかも重要だからです。非常に忍耐強いプログラマーのおかげで、今ではビジュアルが表示される前から入力を検出するようになり、攻撃を防御できるのはプラスマイナス 0.3 秒の範囲となりました。
 
技術の問題に加えて、クリエイティブの問題もありました。すべての攻撃のタイミングを確実にとらえるには、試行錯誤と大量のテストが必要でした。難しさと満足感の間を行ったりきたりして、その両方を達成するために多くの微調整を行いました。
 
アクション アドベンチャーとリズム ゲームのファンにとって魅力的なゲームをデザインするのは難しかったですか?

Wan Hazmer 氏:そうですね。それが No Straight Roads の主な課題だったと言ってもいいでしょう。両方の面に役立つ要素もありましたが、相反することも出てきました。たとえば、アクション ゲームでは自由が求められ、リズム ゲームでは音楽とアクションの正確さが求められる傾向があります。ゲームのメカニクスとしては前者をとりました。間違いなく、No Straight Roads は本質的にはアクション アドベンチャー ゲームです。
 
ですが、私自身がリズム ゲーマーですので、ただ敵が音楽に合わせて攻撃してくるだけで、プレイヤーがリズムに関与する方法がないということでは満足できませんでした。そこで考えたのが防御システムです。アクション アドベンチャーのファンはこのシステムを使わなくても済むというのがいいところですが、試してみたくなる人もいるでしょう。実のところ、No Straight Roads では、自分にはリズム感があるのだとプレイヤーに認識してもらうことを密かな目標としています。それがうまくいくことを願っています。
キャラクターのデザインとアート スタイルは特徴的で、生き生きとしています。Metronomik はどのようにゲームのルックを構想したのですか?

Daim Dziauddin 氏:どのようなアート スタイルにするかについては、最初から明確な方向性を決めていました。激しく、活気があり、カラフルである必要がありました。最も重要なのは、エネルギーに満ちた音楽と釣り合うビジュアルが必要だったということです。キャラクター自体については、作品には少し遊び心を入れたいので、体形を少し変わった感じにして、全員をカラフルにしました。色が人間らしくない場合もあり、世界の異常さを際立たせています。

銀河のプラネタリウムや海の環境など、No Straight Roads のレベルはとてもシュールです。ゲームの世界はどのようにデザインしましたか?

Daim Dziauddin 氏:
ボスをデザインするときはシンプルなルールがありました。それぞれのボスがプライマリとセカンダリのテーマを持つようにしました。たとえば、最初のボス、DJ サブアトミック・スーパーノヴァのメインのテーマは DJ です。これだけでは世界を面白いものにするには十分ではありません。そこでセカンダリのテーマの出番です。これはプライマリのテーマとは関係がないものですが、プライマリのテーマを引き立てる役割があります。DJ サブアトミック・スーパーノヴァの場合は、セカンダリのテーマは宇宙でした。ビジュアルの要素が面白いものになるだけでなく、彼のストーリーにも完璧にフィットします。制作の初期段階で、ボスごとのセカンダリ テーマが異なるものになるようにしました。大きなキャンバスを用意したようなものです。
複数のステージがあるボスはゲームのハイライトの 1 つです。どのようなアプローチでデザインしましたか?

Daim Dziauddin 氏:
すべてのボス戦について、2 つの目標を掲げました。1 つは、戦闘のフェーズごとにゲームプレイを進化させることです。そして 2 つ目は、戦闘が続くなかでストーリーの進展を感じさせることです。ボス戦のそれぞれに自己完結するストーリーを与え、新しいフェーズが始まるところで新しいアリーナができるようなナラティブを設計しました。プレイヤーにはすべての戦闘が壮大なものであると感じて欲しかったので、そのデザインには力を注ぎました。
 
No Straight Roads のサウンドトラックはすばらしいですね。音楽がゲームプレイに貢献するように作曲されたのですか、それともゲームプレイを音楽にマッチさせたのですか?

Daim Dziauddin 氏:
面白いことに、特に決まったルールはありませんでした。たいていは完成前の音楽が先にできてきました。それがゲーム デザイナーに渡されて、ボスの攻撃についてアイデアが生み出されました。今度はそのアイデアがミュージシャンに伝えられ、ゲーム デザインに合うように音楽の特定の要素が引き上げられました。このようなやり取りのあるプロセスでした。
No Straight Roads はマレーシア発のゲームとして目立った存在になろうとしています。国を代表してゲームをリリースするのはどのような気持ちでしょうか?

Wan Hazmer 氏:
正直、ここまで来られるとは思ってもみませんでした。マレーシアに豊富な人材がいることはわかっていたので、それを実証するために、スクウェア・エニックスと日本を離れました。しかし、もちろん、本格的なビデオ ゲームをリリースできるかどうかは疑われていました。いろいろ問題はありましたが、Malaysia Digital Economy Corporation (MDEC) を通じて政府から支援を受けたほか、パブリッシャーの Sold Out や才能豊かなチーム メンバーの助けもあり、マレーシアが誇れるゲームを制作できたと考えています。
 
創業者であるお二人は、Final Fantasy XVストリートファイターV など、賞賛を受けた作品に携わっていらっしゃいました。No Straight Roads を制作するうえで、そういった経験はどう役立ちましたか?
 
Daim Dziauddin 氏:
そうした経験からわかった重要な点は、大きなプロジェクトは、多様な分野の多くの人を必要とするということです。自分たちがチームとして働いているということと、開発をスムーズにするために妥協が必要になることがよくあると理解しておくことが重要です。
 
Wan Hazmer 氏:Metronomik で物事を進めるにあたっては、スクウェア・エニックスに在籍していたころに知ったさまざまなワークフローやノウハウを適用しました。しかし、Final Fantasy XV での経験から得られた最大の教訓は、ユーザー エクスペリエンス (UX) に力を注ぐことです。FFXV は、感情的なコンテキストをゲームに加え、ゲームのほぼすべての面をそのコンテキストに支配させるということを教えてくれました。FFXV の UX はロード トリップの物語であり、それがゲームをユーザーにとって身近なものにしています。No Straight Roads の UX は「あなたの音楽が世界を変えることができる」というものです。それをストーリー、ゲームのメカニクス、ビジュアル、オーディオに適用するよう心がけました
このゲームに Unreal Engine が適していたのはなぜでしょうか?

Wan Hazmer 氏:
スクウェア・エニックスで Unreal を使っていたころのいい思い出があります。Unreal はすばらしいツールですし、Epic Games のすばらしい人たちはデベロッパーを献身的に支えてくれました。そのほかに、スクウェア・エニックスがキングダム ハーツFINAL FANTASY VII などの大きな IP で Unreal を信頼して使っていたということからも、グラフィックスの忠実度と開発フローの面でスクウェア・エニックスが Unreal をどれほど信頼できているかがわかります。その信頼が私にも定着したようです (笑い)。我ながら単純な理由だと思いますが、No Straight Roads に Unreal を使ったことに後悔はありません。完璧にフィットしていました。
 
御社のチームにとって、Epic MegaGrants の資金提供を受けたことはどのような意味がありましたか?

Wan Hazmer 氏:
誇張ではなく、会社にとってはかけがえのないものでした。ゲームの開発を進めるための資金を得られたというだけでなく、とても若いマレーシア人のチームに、自分たちの初めてのゲームがグローバルでどのように受け入れられているかを示すことができました。業界に初めて参入するときは、自分たちの方向性が正しいかどうか、なかなかわからないものです。そのようなときに Epic MegaGrants が「いいものができていますね、その調子で続けてください」と言ってくれたわけですから、これはチームにとって大きな自信となりました。

No Straight Roads は Metronomik にとって初めてのゲームです。スタジオを設立してどのようなことを学びましたか?

Wan Hazmer 氏:
チーム メンバーのほとんどはビデオ ゲーム業界での経験がありませんでしたが、それでも No Straight Roads はできました (笑い)。この経験からわかったのは、さまざまなバックグラウンドを持つ個人が集まっても、同じ方向を向いて協力し、情熱を目に見える成果に変えることを学ぶかぎり、ビデオ ゲームを制作できるということです。ゲームの一部について適切なワークフローがなかった点など、苦労して、もっとうまくできたはずのこともありますが、それでも、そこから学び、将来のプロジェクトの制作に活かそうとしています。
 
高い目標を持ったゲーム デザイナー向けにアドバイスをいただけますか?

Daim Dziauddin 氏:
若いアーティストの方は、自分のスタイルが見つかっていないと思っても、心配しすぎないようにしてください。世界に触れ、いろいろな場所を訪れ、人と話す。これを続けてください。あらゆる人生経験の積み重ねから、やがて自分のスタイルができていくでしょう。

Wan Hazmer 氏:Daim に完全に同意します。経験を渇望するということは、アートだけでなく、すべての分野の人に当てはまるでしょう。優れたゲーム デザイナーはただゲームをデザインし、偉大なゲーム デザイナーは世界に触れるために多くの時間を費やす。私はいつもそう思っています。その次の段階として、自分の経験を分析し、人間に関係があり扱いやすいまとまりとして組み立てます。人間がゲームを作り、人間がゲームをプレイするのです。Daim と私は、自分のすることすべてに人間性の側面を持たせるというのは、すべてのゲーム開発者にとって必須のことであると考えています。

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