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二ノ国:Cross Worlds により拡がるモバイル MMORPG の可能性
Jimmy Thang
2022年7月6日
Netmarble
アニメーション
アート
インタビュー
ゲーム
ブループリント
世界最大手のオンライン ゲーム制作会社 Netmarble は、トップクラスの開発スタジオとタッグを組み、世界的なゲーム企業として知られるようになりました。
Netmarble
、レベルファイブがタッグを組んで開発した
二ノ国:Cross Worlds
はモバイルゲームの可能性を拡げる MMORPG です。多くの人気を集めるアニメーション会社、スタジオジブリの作画をベースにした最先端のグラフィックを使って生み出された本作は、ファンタジックなキャラクターと数々の生物が住む多様な環境、そして最上級のグラフィックを活かしたすばらしいアニメーションが特徴です。
このようなすばらしい特徴を実現するために、シーケンサー、アニメーション、ブループリント、マテリアル エディタ、ライブ コーディングなど、Unreal Engine に搭載された各種ツールをどのようにゲーム開発に活かしたのかを Netmarble のチームに伺いました。また、ストーリー重視の MMORPG 体験をデザインし、スムーズなネット コードを実装した方法についても語っていただきました。
よくご存じでない方のために、二ノ国:Cross Worlds について簡単に紹介していただけますか?
クリエイティブ ディレクター、Yong Tack Oh:
二ノ国:Cross Worlds は、レベルファイブとスタジオジブリのコラボレーションで制作されたゲームシリーズ「二ノ国」をベースにしています。本作は「二ノ国」に描かれた美しいファンタジーの世界で多数のプレイヤーが冒険する MMORPG です。それだけでなく、プレイヤーはゲームの中でも外でも印象深い体験をすることができます。
チームはプロジェクトの参加に何か影響を持っていましたか?
Oh:
エンターテイメント業界で働く人間なら、誰もがスタジオジブリの壮大なアニメーション映画を知っています。スタジオジブリのレガシーをベースとしたゲームの制作に携われることは、ゲーム デベロッパーとして、大変光栄なことです。そのうえ、レベルファイブと積極的に関わり合いながらプロジェクトに従事した経験はとても印象深いものでした。
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本作はスタジオジブリの定評あるアート スタイルを見事に活かし、史上最も美しいモバイル ゲームに仕上がっていると評価されています。ビジュアル面でどのような工夫をされたか教えてください。
ジェネラル アート ディレクター、Nam Ho Choi:
私たちは温かく豊かな色彩を使い、プレイヤーがそこで体験する出来事に心を躍らせるような世界を描くことを目指しました。また、キャラクターの表情の変化や個性を生み出してアニメ的な雰囲気を大切にするよう心がけました。そのため、本作には単なるゲームではなくアニメーション映画として取り組み、背景からキャラクターに至るまでゲームの世界全体を生き生きと表現することに力を入れました。
シニア キャラクター コンセプト アーティスト、Hwan Kwon:
ビジュアルに磨きをかけていく作業は、ビジュアルを生み出す作業そのものでした。イメージしたシーンのデザイン、レンダリング、修正、作成にあたり、さまざまな分野のエキスパートが力を尽くしました。完成前にも、本当にこれ以上改善できないかどうかを再確認しました。骨の折れる作業でしたが、私たちの努力は実を結んだと思います。
「Cross Worlds」は表情豊かな動きと滑らかなカット シーンを駆使し、世界最高峰の作画を活かしたアニメーションに仕上げています。その点でどのような努力をされたのか教えてください。
シニア アニメーション アーティスト、Ki Beom Lee:
キャラクターの感情がはっきり伝わるような表情にするために、ポーズ アセットの構築の際にそれぞれの個性に合った顔の表情を作ってカットシーンやダイアログで使い、クオリティの一貫性を保ちました。
カットシーンの作成には、Unreal Engine の
シーケンサー
と
アニメーション ブループリント
を活用しました。これらのツールを基本として、さらにゲーム内
アニメーション シーケンス
や、ボーン コントロールなど他のツールも活用し、各種の重要なリソースを編集しました。そのおかげで、カットシーン専用のアニメーション作成に打ち込むことができました。
ビデオ プロダクション マネージャー、Kyo Jin Lee:
さまざまな二次アニメーション (ダイナミック アニメーションやトレイルなど) の質を高めるため、ボーン コントロール ノードを使用し、制作過程で出来上がったアニメーション間が滑らかにつながるようにしました。豊富な二次アニメーションを各種オブジェクトに追加する際にも、それを使用しました。
ストーリー上、重要なカットシーンに関しては、プランニング チームに渡されたキー ポイントをチェックしてストーリーを強調するようにしました。完成後のシーンの雰囲気を想像しつつ、適切なカット構成と心に響く風景を使い、ストーリーに合ったシーンを作成しました。
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本作では、のどかな草原から雪原まで、多様で精細な風景が広がっています。こうした多様な環境をどのようにデザインしたのかを教えてください。
シニア ゲーム コンセプト デザイナー、Myung Sin Koo:
モバイル MMORPG ゲームの特性上、風景のスケールを表現することは困難です。そこで、私たちはマット ペイントやビューポイント スペースをプレイ空間から切り離すことにしました。そうすることで、小さいアセットの品質にとらわれずに広いフィールドの環境的な要素、レベル、地平線に力を入れることができました。
Unreal Engine に搭載された各種ライティングやフォグ エフェクトを使い、豊かな表情を持つ環境を構築することができました。また、フィールドごとに別のメイン カラー ライトを設定することで、その土地の個性を強調するようにしました。環境がプレイヤーよりも目立たないよう、彩度と輝度のバランスを取るのに苦労しました。
Unreal Engine はこういった細かいタスクをリアルタイムで表示できるので、直感的かつ効率的に作業を進められます。
「Cross Worlds」は直感的にゲームが楽しめる点が評価されています。どのような考え方でゲームをデザインしたのかを教えてください。
Oh:
MMORPG ではプレイヤー同士が一緒に楽しめる点が重視されるため、世界を形作るストーリー要素がなおざりにされがちです。
二ノ国:Cross Worlds は MMORPG ですが、伝統的な JRPG のようにストーリーを大事にしたいと考えました。
最近は競争を中心としてプレイヤー同士の交流を促す MMORPG が主流ですが、本作のゲーム システムとコンテンツはプレイヤーの協力関係を促すデザインになっています。
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本作の戦闘システムに対する考え方を詳しく教えてください。
Oh:
戦闘システムの開発で最も重要なことは、ヒットの感じさせかたでした。MMORPG ではサーバーから判定結果を受け取り、それをクライアント側で表示します。その情報のやり取りにタイムラグが発生するのは避けられません。そうした環境下で正確なアクションの戦闘を作成するため、私たちはこれまでに培ってきたさまざまなテクニックを適用しました。さらに、ターゲットのない戦闘を取り入れ、ハック&スラッシュに似た斬新な感覚のゲームにしました。
このシリーズを初めてプレイする人のために、二ノ国:Cross Worlds ではウィッチ、ローグ、エンジニアなどからクラスを選択できるようになっています。そのようなゲーム デザインへのアプローチについて教えてください。
Oh:
二ノ国:Cross Worlds の 5 つのクラスをデザインするにあたり、「二ノ国:Revenant Kingdom」のメイン キャラクターを参考にしました。それぞれのキャラクターに独特の外見と個性を持たせようと考えました。難易度の高い二ノ国:Cross Worlds のコンテンツでは、タンクやヒーラーなどの特別な役割を持つクラスは必要とされません。せっかくカジュアル ゲーマーが 二ノ国:Cross Worlds のビジュアルに魅力を感じてプレイし始めても、選んだクラスが自分のプレイスタイルに合わなかったらがっかりするでしょう。それを避けたかったのです。
プレイヤーが傍観者としてではなく、ゲームの主人公になりきってプレイできるよう細心の注意を払いました。たとえば、本作をプレイするとメイン キャラクターの台詞が非常に短いのに気がつくはずです。メイン キャラクターがプレイヤーの意志と異なる言動をすると、プレイヤーは気持ちが冷めて傍観者になってしまうからです。
とはいえ、メイン キャラクターに多くの台詞をしゃべらせないのは、ストーリー重視の従来型 JRPG を開発する上で、大きな制約となります。この問題を解決するためには、プレイヤーの代わりにストーリーを進めてくれる存在が必要でした。そこで、チャーミングなキャラクターのクウを登場させました。ある程度妥協して開発を進めることもできましたが、私たちは妥協したくなかったのです。
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「Cross Worlds」ではクラスを選べるだけでなく、キャラクターの身長、衣装、ヘアスタイルを変更したり、右目と左目で違った色で設定したりできる充実したキャラクター メイク機能が搭載されています。この機能をどのように実現したのか教えてください。
シニア 3D モデリング マネージャー、Kyung Hwan Han:
体型のカスタマイズは、スキン リグに使ったボーンのスケールを調整することで実現しています。また、髪の毛のアセットも追加し、プレイヤーの選択肢を増やしました。瞳と衣装の色も変更可能です。特定の UV セクションではモノトーンにすることもできます。色変更可能なマテリアルでできた、さまざまなテクスチャ マスク マップが追加されているので、事前定義されたカラー パレットの中から好きな色に変更できます。
Unreal Engine のどんな点が本作の開発にうってつけでしたか?
リード クライアント プログラマー、Tae Woo Kim:
「二ノ国」のレンダリングは従来のカートゥーン セルシェーディングを使用しています。さらに、ゲームの雰囲気は心温まるジブリのビジュアルから生み出されています。
Unreal Engine の マテリアル エディタ ツール
は強力で直感的な UI を備えており、高速なイテレーションが可能なため、現在のビジュアルにすばやく到達することができました。
数百ものキャラクターが密集している広大な戦場を処理できるエンジンは他にありません。
エンジンを調整しなくても、ツールを使うことで大幅なパフォーマンス向上を実現できます。ソースコードがすべて提供されているので、誰でも最適化の仕組みを正確に理解し、それをすぐに適用することが可能です。
他にも、マルチプラットフォームのサポートや強力な UDN サポート、プラグイン機能の利便性など、Unreal Engine を使うメリットはたくさんあります。
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チームが好んで使用した UE ツールや機能はありますか?
リード クライアント プログラマー、Tae Woo Kim:
ブループリント エディタ
、シーケンサー
、アニメーション エディタ
、
BehaviorTree
、マテリアル エディタ
、Unreal Insights
はすべて使いやすいと感じました。
各ツールにはプレビュー機能が備わっているので、開発がはかどりました。
それに加えて、多くのデバッグ ツールも本当に役に立ちます。特に
ブループリント デバッグ
、コリジョン アナライザー、
ビジュアル ロガー
は、どれも有用でした。
プラグインやコマンドレット、
エディタ ユーティリティ ウィジェット
を使えば、それぞれのゲーム用に特定機能を簡単に拡張できます。たとえば、本作ではイマージェン探検用に編集ツールのプラグインを作成しました。
ライブ コーディング
のおかげで、高速なイテレーションを実現できました。修正後のコードをチェックできるので、生産性が大幅に向上しました。
Netmarble は Unreal Engine をリネージュ 2レボリューションの開発に使用しました。二ノ国:Cross Worlds の開発では、その経験が生きましたか?
Tae Woo Kim:
リネージュ 2 レボリューションでも Unreal Engine を使用したので、ほぼすべてのツールを知っていました。
エンジンを新しいバージョンにアップグレードするだけで、Epic Games から提供された追加機能を入手できました。
二ノ国:Cross Worlds の開発はリネージュ 2 レボリューションの経験が活かされています。そのときに機能を実装した方法を振り返ることで、時間を大幅に節約できました。そのため、「二ノ国」の機能を短期間で拡張、強化することに専念できました。
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二ノ国:Cross Worlds はとてもスムーズに動作します。モバイルゲームとしてどのように最適化したのか教えてください。
Tae Woo Kim:
基本的な最適化手法に加え、
Significance Manager
と URO (更新レートの最適化) という Unreal Engine に搭載されている機能を多用しました。
Significance Manager は各オブジェクトの重要度を設定するのに使用しました。適切なアクションを見きわめるのに有用でした。以下を重点的に最適化しました。
不要なティックの無視
視野角と距離による詳細表示の違い
視野角の外にスポーンされた特定のアニメーションとパーティクルの無視
視野角の外にある特定のマテリアルは保存せずに即座に変更
ミニマップ オブジェクトのグループ化
キャッシュにより、アクタの頻繁なスポーンとデスポーンを回避
キャッシュによるファイルのチェックと検査
重複するアウトライン コンポーネントは作成せず、オンデマンドでのみ作成
二ノ国:Cross Worlds はスムーズなネット コードが高く評価されています。どのようにそれを実現したか教えてください。
リード サーバー プログラマー、Hyun Koo Kim:
サーバーにも Unreal Engine のパスファインダー モジュールを使用。
NPC が動くとき、クライアントとサーバーでパスファインダーのロジックが異なると、その動きが歪んでしまいます。
この問題を解決するため、サーバーも Unreal Engine のパスファインダー モジュールをインポートし、使用します。
ユーザー数に応じて動きの同期サイクルを調整する Adaptive Sync Control Manager。
当初、パフォーマンスの低下を懸念して、動くパケットの収集と送信を毎フレーム行っていました。
その後、開発を進めながら PVP における動きの同期を高速化する方法を検討しました。
最終的に、パフォーマンスに影響を与えないようにユーザー数が少ないときはパケットを即座に送信する案に落ち着きました。ユーザー数が多いときは、パケットをいったん収集してから送信し、パフォーマンスへの影響を避けることにしました。
パブリック ワールド/インスタンス ワールド遷移中のオブジェクト接続システム。
パブリック ワールド内の NPC がインスタンス ワールドでも使われている場合、前のオブジェクトを再生成する必要があったのでスポーン遷移が粗くなっていました。
この問題を解決するため、サーバーが情報を再度提供し、クライアントがその情報にもとづいてオブジェクトをリサイクルするようにした結果、遷移がスムーズになりました。
出力パケット専用のスレッド プール。
MMORPG の性質上、多数のユーザーが 1 つのスペースに集まります。そのため、サーバーは動きのパケットをブロードキャストしなければならず、多数のユーザーを同期させるのが難しい状態でした。
サーバーから見ると、受信よりも送信が多い状態といえます。この問題を解決するため、私たちは送信専用のスレッド プールを作成し、それによって大量のパケットを送信することにしました。
事前設定のスキルシステム
モバイルゲームは、ネットワークに不安定な状態に悩まされ、レイテンシーに大きな影響を受けます。
開発中、PC 環境ではこの問題が発生しませんでした。ところが、モバイル環境で試したところ、戦闘システムに不満が残りました。
この問題を解決するため、スキルを使おうとしたときにサーバーがあらかじめダメージを算出し、その結果のパケットをクライアントに送ることにしました。クライアントはその結果をヒット フレームで反映します。
貴重なお話をありがとうございました。二ノ国:Cross Worlds の情報はどこで手に入れられますか?
Oh:
詳細は
https://ninokuni.netmarble.com/
でご覧いただけます。
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