Infinity Nikki の開発の舞台裏:Unreal を活用したオープン ワールドへの華麗な転換までの軌跡

2024年8月23日
Weibo Xie 氏は、Infold Games でテクノロジー担当副社長を務め、UE 関連のエンジン、テクニカル アート、人工知能テクノロジーの開発を監督しています。彼は、Infinity Nikki で導入された、複数の革新的なテクノロジーを開発しました。それ以前は、Tencent でシニア エキスパート エンジニアとして勤務し、Moonlight Blade や、リアルタイムのデジタル キャラクターである「Siren」などのプロジェクトに貢献しています。  
多数存在するビデオ ゲームのジャンルの中でも、最近はオープンワールドのタイトルの人気が大幅に高まっています。オープンワールドのタイトルはその初期から進化を遂げ、世界的に大きな支持を得るようになりました。現在、オープンワールドのゲームを語る上で避けて通れない問題があります。それは、このようなゲームにおいて、探索や冒険の他にどのようなユニークな特徴を加え、異なる体験を提供できるかという問題です。

プレイヤーにとって幸いなことに、Infold Games は極めて独自性の高いオープンワールド ゲームを提供しています。Infold Games と聞いて、すぐ思い浮かぶのは、Nikki シリーズでしょう。初作品の 2D ゲーム Nikki UP2U: A Dressing Story が 2012年にリリースされて以来、2013年の NikkiUp2U: World Traveller、2016年の Love Nikki-Dress UP Queen、2019年の 3D バージョン Shining Nikki-Fashion Makeover などの作品によって、シリーズの拡大が行われてきました。こうしたリリースを通じて、Infold Games は新しいテクノロジーやゲームプレイのメカニックを統合し、継続的にプレイヤーの体験や全体的なゲームの品質を強化することで、一貫してゲームの新境地を開拓してきました。
Infold Games は、Papergames によって世界的拡大を目指して創立された新しい国際的ビジネス ブランドです。2022年8月に創立された Infold Games は、Love シリーズ最新作として2024年1月18日に正式にリリースされた Love and Deep Space により、複数の国や地域で目覚ましい成功を収めています。
2024年4月24日まで話を進めると、Infold Games は Nikki シリーズの最新作となる Infinity Nikki の公式 Whim プレイテストを行うことを発表しました。この発表は、特にデベロッパーにとっては、他のエンジンから Unreal Engine への切り替え後の初プロジェクトということもあり、嬉しいサプライズとなりました。 

この移行により、Infold Games は以前の作品の制限されたスペースから抜け出し、Unreal Engine 5 を活用してオープンワールドの体験を開発することが可能になりました。これによってニキとモモは、Unreal で制作された信じられないほど巨大なワールドで、新しいファンタジックな冒険に旅立つこととなります。この概要を読むだけで、花々が咲く終わりのないフィールドに日光が差し込み、ニキが美しい春の装いで絵画のような街や城を歩くイメージが湧いてきます。 

しかし、よく考えてみましょう。従来の Nikki シリーズは、小規模なスタジオのような設定で複雑なディテールを捉え、表現することを得意としてきました。優れたライティングやディテール豊かなテクスチャにより、ニキのコーデを驚くほど美しく表現することで評価を得ていました。Infinity Nikki でのオープン ワールドへの移行は、シーンのプロダクションと多数の技術的ディテールの統合をより大規模なスケールに適応させることを意味し、Unreal Engine 5 の利用が必要となりました。 

以前の狙いであった「小規模でありながら洗練されている」環境は、比較的容易に達成できるものでした。今回の取り組みにあたっては「大規模かつ包括的」を目指すのであれば妥当なところでしょう。しかし、「大規模かつ洗練されている」を目指せば、それは大きな挑戦となります。 

Infinity Nikki は、従来の作品で実現された詳細度や高い水準をオープンワールドの舞台で維持できるのでしょうか。スタジオからオープン ワールドへと飛び出したニキは、目の肥えたプレイヤーにも感動を与えることができるのでしょうか。また、最も重要なこととして、ゲームのスローガンである「どんなときでも華やかに登場」は、ニキのカジュアルなスナップショット撮影にも同じように反映され、魅力的なものとなるのでしょうか。
その答えは、上で紹介されているゲーム内の映像で明らかになります。Infinity Nikki は、驚くほど美しいビジュアルと、ユニークで魅力的なゲームプレイ体験を実現し、オープンワールド ゲームに不可欠な要素を捉え、それ以前に抱いた多くの疑問を解消してくれる作品です。しかし、プロジェクトの開発や技術的側面に関するさまざまな疑問で興味がピークに達し、私たちは Infinity Nikki 開発チームに問い合わせ、ゲーム制作の裏側に関する独占インタビューを依頼することになりました。
Infinity Nikki をオープンワールドのアドベンチャー ゲームにすると決定したのはなぜですか?

Weibo Xie 氏 (Infold Games、テクノロジー担当副社長)
Nikki シリーズを 12 年間開発してきて、当スタジオでは製品の品質を継続的に改善すると同時に、不可能に思える挑戦を楽しみながら、テクノロジーやスケールの新境地を開拓しようと取り組みを続けてきました。着せ替えゲームの制作を開始した当初は、スタートアップ企業にはニッチすぎて持続不可能になると思われ、多くの人に理解されませんでした。 

しかし、複数回のイテレーションにより、着せ替えゲームには大きなマーケットがあることを証明しました。技術的な能力と規模を強化することで、当スタジオは 3D 着せ替えゲームのパイオニアとなり、着せ替えゲームを小規模な製品から産業規模の 3D ゲームへと高めました。3D 着せ替えゲームを AAA 品質の水準で制作するという提案に対して、多くの人は不可能だと考えましたが、当スタジオは実現する方法を見い出したのです。

Nikki シリーズのアート スタイルを、どのようにしてオープンワールドのアドベンチャー ゲームで実現しましたか?

Xie 氏:
奇想天外なアイデアが詰まった、心温まる、美しくファンタジックなワールドをプレイヤーに届けることを目標にしました。

アート スタイルについては、アート チームとテクニカル アーティスト (TA) の両方によって多数の試験や検証が行われました。プロデューサーは、カートゥーン的なファンタジーとリアリズムの間に存在する適切なバランスを見い出そうとしていました。Unreal Engine のライティング モデルは Disney の PBR (Physically Based Rendering) モデルに由来するものであるため、カートゥーン要素の比率が高いにもかかわらず、ライティングの計算は PBR の標準に従っています。これにより、モデルはリアルなテクスチャを備えたユニークなスタイルになっています。

アーティストがさまざまな基準を提供し、TA の方はこうした基準にできるだけ近づける具体的な効果を実装しました。毎週アート ベンチマークに関するミーティングを開催してアート スタイルに関する足並みを揃え、アート ディレクション全体で統一されたトーンを確立しました。

当初、プロジェクトは UE4 で開発を開始しましたが、すぐに UE5 へとアップグレードしました。そのプロセスはどのように進められましたか?

Xie 氏:
プロジェクトは UE4.23 を使用して開始しましたが、その後、主要なバージョン アップグレードに従って UE4.25 にアップグレードしました。UE5 が初めてリリースされた当初は、UE5 で制作やリリースが行われたゲームがなく、移行は時期尚早と考え、アップグレードを躊躇していました。しかし、その後行った評価により、UE5 はより優れたライティング品質を提供することについて、全員が賛成しました。多数のエンジン最適化機能を備え、極めてアーティストに配慮したものとなっており、ライティングの効率も大幅に強化されています。そこで、UE5 を試す計画を立てました。偶然にも、その 2 週間後には Epic から UE5 を使用した新バージョンのフォートナイトが発表されたため、それがエンジンの有効性を強力に裏付け、5.0 へのアップグレードする意思決定を固めることととなりました。

アップグレードには課題が伴い、エンジンへの大規模な変更が必要となったことで、社内ではリスクとリワードに関する議論が巻き起こりました。最終的にプロデューサーは、特にアーティストの利便性とパフォーマンス改善の点でアップグレードには大きな意義があると納得し、意思決定を行いました。Unreal Engine を利用した他のプロジェクトも複数あるため、このアップグレードにより、そうしたプロジェクトにもメリットがもたらされるでしょう。これは、企業の技術に関する戦略的な意思決定となりました。プロデューサーは、2023年3月時点では UE4 の利用がまだ競争力を持つものの、Infinity Nikki がリリースされる頃には古いバージョンになっている点を強調していました。そのため、多数の課題があるとしても、弊社にとって UE5 へのアップグレードは不可欠だったのです。発生する課題は、すべて乗り越えられると全員が信じていました。

アップグレードのプロセスでは問題が発生しましたが、最終的に移行を完了しました。  これは最初の一歩にすぎませんでした。その次に、デザイナーとアーティストで構成する 2 つのグループによってクローズド評価 (CE) を 2 回行い、フィードバックを集める必要があります。技術チームは、同じ環境で UE5 と UE4 の厳しい比較を行いました。メモリ、CPU、GPU、パッケージ サイズ、ワークフローを評価した結果、あらゆる側面で UE5 の方が優れているという意見に全員が賛成しました。 

その最初のステップは、別のブランチで行うことで、マスター プロジェクトへの影響を回避しました。最終ステップでは、マスター ブランチとのマージを行います。このプロセスでは、データのアップロードが許可されないものの、デベロッパーは作業を進めることができます。極めてスムーズな移行でした。この機会を利用して、私たちの作業を信頼してくれたプロデューサーに感謝を伝えたいと思います!
着せ替えは、常に Nikki シリーズの中核となってきました。以前のゲームと比較して、Infinity Nikki ではこの側面がどのように異なっていますか?

Xie 氏:
Infinity Nikki での最も大きな違いは、ニキがディスプレイ ウィンドウから広大な想像の世界に出て、世界中の美しさと巡り会う冒険に出発することです。この新しい世界では、マーベル大陸のあらゆるディテールがリアルに描かれ、着せ替えゲームの新たな視点をプレイヤーに提供します。

全体として、Infinity Nikki では、オープン ワールドと着せ替えゲームを単に統合するだけでなく、ニキの物語をかつてないほどリアルに味わえる、他にはない体験の提供を目指しています。プレイヤーは、ゲームの中で探索して楽しみながら、さまざまなコーデの裏側にあるストーリーや文化的要素の中へと入っていきます。

1. ワールドの探索との統合:

浮遊、浄化、クリーニング、昆虫採集など、オープン ワールドでのニキの主な能力は、コーデとリンクしています。プレイヤーはマテリアルを集めたり、スキル コーデを作成したり、謎を解いたり、よりグレードが高いマテリアルを獲得したりして、新しいスキル コーデを作成します。このように、このオープン ワールドを探索する旅は、継続的なサイクルで着せ替え要素とシームレスに統合されています。

2. 没入感の高い着せ替え体験:

オープンワールドの着せ替えの没入感を高めるため、衣服、サウンド エフェクト、ビジュアル表現には大きな重点を置いています。たとえば、バブリー ボヤージュの浮遊するコーデは、クラゲの軽さを模倣した、幻想的な要素を取り込んだものです。 

サウンド デザインの点では、ニキが移動したり能力を使ったりすると、異なるコーデ、靴、アクセサリ、バックパックが環境に対してインタラクションを行い、テレインに応じた固有のサウンドが生成されます。たとえば、ハイ ヒールとフラット シューズでは、芝生、セメント、タイルなどでの足音が異なります。ニキのアクションにもディテールを加えました。ニキがドレスを着てオープン ワールドを走る際には、スカートの裾を持ちます。さらに、コーデも日中と夜のライティングの変化に基づいて異なるエフェクトで表示されます。
クロスの作成や、使用されているエンジン機能の技術的なプロセスについて説明していただけますか?さまざまなクロスのデザインやテクスチャに対して静的または動的な効果を作成する際に、どのような課題がありましたか?

Xie 氏:
UE5 では、クロスの作成ワークフローはエンジンに直接統合されていて、クロスの作成、ウェイトのペイント、プロパティの調整をリアルタイムで行うことができるため、プロダクション効率が大幅に向上しています。これは、DCC ソフトウェアからの面倒なエクスポートやインポート プロセスを伴う UE4 からの大きなアップグレードです。

Infinity Nikki では、ニキが広大なワールドに足を踏み入れたことで、デザインとマテリアルの両方でより高水準のエフェクトを実現する必要が生じ、アート チームとテクノロジー チームの両方に大きな課題をもたらしました。

主な課題は、多様なマスター マテリアルを開発し、さまざまなファブリックのエフェクトを実現すると同時にアーティストにとっても使いやすいものにすることでした。こうしたマテリアルは、複数のファブリック テクスチャを効率的にマージし、マテリアルのバリエーションを少なくして、異なるプラットフォームでのパフォーマンスを向上するものでなければなりません。これを実現するため、テクノロジー チームはビジュアル エフェクトとパフォーマンスの最適化を維持する必要があります。

もう 1 つの課題は、コーデの半透明要素です。ニキのコーデは、多数の半透明要素を特徴としています。たとえば、妖精白鳥のコーデは、テストではさまざまな透けて見えるファブリックとシルクで構成されています。透明性の並び替えの問題に対処するため、テクノロジー チームは Order-Independent Transparency (OIT) を再開発し、こうした課題を完全に解決しました。
多様なコーデのスタイルに合わせて動的かつリアルなクロスの動きを生み出すことは、もう 1 つの大きな課題でした。クロス テクスチャを分類し、スケルタル物理と ChaosCloth シミュレーションを組み合わせて適用しました。たとえば、クリノリンを使ったコーデであれば、通常の生地よりも柔軟性が低いものの、リアルで物理的にダイナミックなものにする必要があります。このソリューションによってエフェクトとパフォーマンスのバランスを取り、プラットフォーム全体の一貫性を確保できました。
オープン テレインの構築や実装に関する経験や手法について教えていただけますか?

Xie 氏:
オープン テレインの構築および実装では、複数の最適化手法を採用することで Virtual Heightfield Mesh (VHM) とバーチャル テクスチャリング (VT) を強化しました。テッセレーションと同様に、VHM を利用すると詳細なテレインが実現できますが、トライアングルが過剰に生成されます。より洗練されたクラスタリング手法を利用することで、テレインのトライアングルの大部分をカリングし、パフォーマンスを最適化しました。 

VT については、モバイル デバイスで ASTC 形式を活用し、ETC2 よりも高い品質を実現しています。しかし、これにはランタイム時に GPU で RVT を ASTC に圧縮する必要があったため、難しい課題でした。最終的な ASTC VT の品質は未圧縮の品質にほぼ匹敵するものとなり、VT 上でシームレスにデカールや道路を描画できるようになりました。
ゲーム内のキャラクターやシーンへのライティングの実装について説明していただけますか?どのような課題があったのでしょうか?

Xie 氏:
キャラクターについてもシーンについても、美しいワールドを制作することに取り組んでいますが、これには高水準のライティングの実装が必要になります。

キャラクターのライティングについては、キャラクターに特化した高品質なシャドウを開発し、詳細なセルフシャドウを実現しました。ユニークなグローバル イルミネーション (GI) 調整を行ってキャラクターの暗い領域のライティングを強化し、スポットライトを連携してキャラクターの透明部分のシャドウに対応することで、透明なセクションと不透明なセクションで光の漏れに差が出る問題を効果的に管理しています。
シーンのライティングについては、テクニカル チームとアート チームが協力してトーン マッピング エフェクトを開発し、Nikki 作品の広がりあるワールドにユニークなアート スタイルを確立しています。オクルージョンおよび GI トラッキングにおいて GI パラメータの調整と変更を行い、イメージの一貫性を維持すると同時に独自の GI の特徴を確立することで、このゲームのユニークなビジュアル スタイルが実現されています。

また、ポスト プロセスや色補正については慎重に行っており、自然なライティングやフォグ エフェクトを活用してシーンの雰囲気を作ることで写真フィルタやその後のシーンのスタイライズ エフェクトを適用する余地を残しています。
ニキのドレスの多くは、反射が多いアクセサリを特徴としています。テクスチャやディテールを向上するために、どのような手法を活用されましたか?

Xie 氏:
こうしたアクセサリの美しさを表現するため、高反射のエフェクトを実現する専用のジュエリー マテリアルを開発しました。このマテリアルは、不透明ではあるものの、キューブマップなどのアルゴリズムを利用して固有の屈折、反射、サブサーフェス散乱 (3S)、さまざまなジュエリー マテリアルのハイライトを実現します。このアプローチによって、アクセサリの光沢、繊細さ、および視覚的な深みが強化され、よりリアルかつ優美な外見になりました。
動的なリアルタイムのライティング環境や変化する天候の中で、さまざまなコーデやマテリアルの一貫性を UE5 を活用してどのように維持していますか?

Xie 氏:
動的なライティングの変更を伴うシーンでは、マテリアル用の標準化された PBR 入力に従い、レンダリング時の複雑さを軽減しています。こうした対策にもかかわらず、アート面で行った選択により、特に、Lumen 利用時には不透明なマテリアルと同様のレンダリングが行われず、多数の調整を行うこととなりました。変更したアンビエント ボックスを利用してさまざまなスケーリング パラメータを調整することで、アーティスティックな外見をさらに洗練し、半透明のレンダリングの問題にも対処できました。これによって、高い忠実度のビジュアルと、一貫性あるスタイルを実現しています。
ゲーム内の魔法のエフェクトの多くは、Niagara を活用して開発されているのですか?

Xie 氏:
はい。Niagara のパーティクル単位のプログラミング機能とパーティクル間のやりとりによって、以前のエフェクト エディタと比較してエフェクトが一段と柔軟かつ動的になりました。プログラム可能な Niagara を活用することで、多数のモジュールを作成し、パフォーマンスを最適化してビジュアル エフェクトを強化しています。さらに、パーティクルのコリジョン システムを一から再構築しました。

Niagara を活用し、キャラクターとパーティクルのインタラクションを可能にしたのです。ニキが歩くことで風の流れが起こり、植物の葉に影響するなどの現象が発生します。また、ゲームに登場する動物の丸まった尾は、アーティスティックなデザインによって生き生きと柔軟にアニメートされています。これは、従来のパーティクルでは不可能だったことです。
シーン内の浮遊や、重力、折り鶴のバランスのエフェクトなど、物理シミュレーションへの技術的な応用について説明していただけますか?

Xie 氏:
オープン ワールドの探索時には、風になびく旗や、道端のボトル、破壊可能なボックスなど、多数のインタラクティブなオブジェクトがあります。単純なインタラクションは、World Position Offset (WPO) を使用して実装していますが、正確さが要求されるインタラクションについては、Chaos システムを使用して計算しています。アセットの最適化とアルゴリズムの調整により、与えられているバジェット内に収まっています。これにより、オブジェクトとのリアルタイムのインタラクションが可能になり、極めてリアルなゲームプレイ体験を実現しています。
ゲームの特定の要件を満たすために、チームが開発した追加機能はありますか?

Xie 氏:
はい。ゲーム内の特別な効果を実現するため、次のような複数の新機能を開発しました。


 

1. ファー テクノロジー:

ニキのコーデやあらゆる動物のファーは、当スタジオのエンジン チームが開発した独自の ShellFur ベースのシステムを利用して制作しました。PC、コンソール、およびモバイル プラットフォームで互換性が確保されており、アーティストはスプラインを使用してエディタでファーの方向を編集できます。ランタイム時には、ファー レイヤーはインスタンスとして動的にレンダリングされます。インスタンスによるレンダリングのメリットは、オブジェクトの画面サイズに基づいて多数のファー レイヤーをリアルタイムで調整でき、それによってパフォーマンスを最適化できることです。
2. GPU 駆動のテクノロジー

複雑なオープン ワールドや植生のレンダリングに対処するため、PC、コンソール、およびモバイル プラットフォームに適切な GPU 駆動のレンダリング ソリューションを開発しました。このシステムは GPU の同時処理能力を活用し、インスタンスのカリングと詳細度 (LOD) の計算を処理します。当スタジオ独自の手法では、ComputeShader とラスタライズ カリングを組み合わせ、各インスタンスを正確にオクルードしてから DrawIndirect と MultiDrawIndirect を使用して一括レンダリングを行います。さらに、GPU フィードバック結果が CPU に送信され、ドローコールのカリングやメッシュ LOD のストリーミングを行い、Infinity Nikki の数百万もの植生インスタンスの画面上でのレンダリングが可能になります。
3. スケルタル チェーン テクノロジー

コリジョンの処理は、特に大きな動きがあり、高いパフォーマンス要件がある場合、クロスのシミュレーションにおいて大きな課題となります。当スタジオ独自のスケルタル チェーン アルゴリズムと改善されたクロス アルゴリズムを使用し、時間がかかる不安定な従来のコリジョン手法を、安定した制御可能なコンストレイント アルゴリズムに置き換えました。 

たとえば、プリプロセス時には柔軟かつソフトな駆動コンストレイントを追加して、大きな動きを行う際にクロスとボディの間に深刻なクリッピングが発生するのを防いでいます。クロスの解決時には、剛体のコリジョン コンストレイント アルゴリズムによって、比較的高速な場合も厳密にクリッピングが防止されます。複数レイヤーのクロス コリジョンも実装しました。こうしたアルゴリズムにより、動きが高速な場合にも高品質のクロス コリジョン エフェクトが可能になることに加え、計算コストが低く維持されます。
4. リアルタイム クリッピング テクノロジー (着せ替えルームの組み合わせ):

さまざまなコーデを組み合わせると、避けることができないモデルのクリッピングがよく発生します。当スタジオでは、独自のジオメトリ アルゴリズムを開発し、リアルタイムのクリッピングの問題に対処しています。このアルゴリズムは、キャラクターのボディのすべてのパーツ間の相互の貫通関係を検出し、影響を受ける領域を、設定された規則に従ってデフォームまたは非表示にします。 

剛体の変更や追跡、メッシュのスムージング、領域のリンクの処理など、カスタム処理規則もサポートしています。モデルの複雑さを増大させる交差の計算負荷に基づき、事前計算システムを利用して時間がかかる計算データを格納し、ランタイム時の計算負荷を軽減しています。これにより、コーデの変更時にスムーズなパフォーマンスが確保され、髪や帽子のクリッピング、アウターやシャツの可視性、パンツやシャツに合わせたウェストの調整などの問題が解決します。
こうしたテクノロジーの発展に加え、オープン ワールドのリアルさや没入感を強化するための取り組みも継続的に行っており、こうした技術的なアップグレードによって実現される豊かな体験をプレイヤーが楽しめるようにしています。
モモのカメラのデザインとユーザー体験は、とても興味深いものです。UE5 をどのように活用して、このカメラを制作しましたか?

Xie 氏:
オープンワールドを冒険する際に、プレイヤーはいつでもモモのカメラを使用して撮影し、旅の思い出を残すことができます。快適で便利でありながら、強力な写真のシステムを提供することを目指しました。

カメラのコントロールでは、さまざまな UE のカメラ機能を利用して本物のカメラの動作をシミュレートしました。露出や焦点距離などの調整により、プレイヤーは被写界深度 (DOF) の効果をコントロールできます。焦点距離の調整により、プレイヤーはイメージのサイズや歪みを変更できます。レンズの回転により、プレイヤーは従来とは違った写真を撮影できます。
写真のエフェクトについては、ビネット効果など、UE のネイティブ ポストプロセス エフェクトを活用して写真の雰囲気を強化しました。ポストプロセス段階では、写真に色合いや芸術性を加えるためにさまざまなフィルタも追加されています。

さらに、モモがニキの写真を撮影する際に、プレイヤーはニキのさまざまなポーズを選択し、詳細オプションを使用してカメラで直接見栄えを確認できます。Aim Offsetコントロール リグブレンド スペースなどの UE のアニメーション機能を組み合わせて使用しました。また、一部のノードをカスタマイズし、ニキのポーズの滑らかさや表現を強化しました。
インタビューさせていただきありがとうございました。このゲームがとても楽しみです。最新ニュースを受け取ることができる、公式チャンネルをお勧めしていただけますか?

Xie 氏:
こちらこそ、インタビューしていただきありがとうございました!

当スタジオの公式ウェブサイトYouTubeチャンネルInfinity Nikki の詳細をぜひご覧ください。

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