Another Fisherman's Tale ©2023 InnerSpace France VR. Published by Vertigo Games. Developed by InnerSpace France VR.

2019 年に賞を受賞した VR パズル ゲーム、Another Fisherman's Tale が限界を押し上げる

2014 年の設立以来、INNERSPACEVR は VR 業界の主要なクリエイティブ スタジオの 1 つとして地位を確立しています。同スタジオは特に、その革新性と芸術性が評価されています。INNERSPACEVR は、複数の賞を受賞した Firebird - La Péri The Unfinished など、いくつかの没入型体験を生み出しました。A Fisherman's Tale は VR ナラティブ パズル ゲームで、大好評を博し年間最優秀ゲーム賞を受賞しています。PC と PSVR では2019年1月、Oculus Quest では2019年11月にリリースされました。
INNERSPACEVR は、2019年に A Fisherman's Tale をリリースして世界中に大きな衝撃を与えました。同ゲームは VR パズル アドベンチャーで、プレイヤーは主人公の Bob を操作します。彼の部屋には、自身が住む灯台を模したミニチュアが置かれており、これを操作して世界を探索します。ミニチュア内と彼がいる世界でアイテムを動かすことでパズルを解き、灯台の頂上を目指します。このユニークなコンセプトと心温まるストーリーにより、A Fisherman’s Tale 2019 VR Awards の「VR Game of The Year」や Game Connection America 2019 の「Best Story/Storytelling」といった著名な賞を受賞しました。

そして今回、同スタジオから続編のリリースがアナウンスされました。Another Fisherman’s Tale では、操り人形の Bob が灯台から新しいユニークな世界に飛び出し、新しい冒険に向かいます。同ゲームでは、Bob を分解して再組み立てすることで、彼にパズルを解くための新しい能力を付与できるようになりました。

INNERSPACEVR チームのメンバーに、A Fisherman’s Tale の世界観についてと、どのように「世界の中にある世界」という仕組みのゲームを拡張し、主人公のストーリーを作成することにしたのか、話を伺いました。
 

Another Fisherman’s Tale は、受賞歴のある VR パズル ゲーム A Fisherman’s Tale の続編です。今作を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

INNERSPACEVR のクリエイティブ ディレクター、Balthazar Auxietre 氏:
Alexis が「VR アバターで主人公の体のパーツを解体して再構築できるような仕組みを持つパズルゲーム」というアイデアを思いつきましたが、「これを A Fisherman’s Tale の続編に入れると面白いな」と考えたからです。この続編では、Bob が [A Fisherman’s Tale] のラストで灯台を脱出した後、彼がその後の旅の道中で自分自身についてどのように考え直したのかについてのストーリーが語られます。

Another Fisherman’s Tale のゲーム ディレクター、Alexis Moroz 氏:INNERSPACEVR は、意味のある体験や、VR だからこそできる素晴らしいものを制作するということを常に目的としています。最初の Fisherman’s Tale と同様、この続編のコンセプトもこの原則に基づいて設計されています。

すでにリリースされている 2 作品、A Fisherman’s TaleMaskmaker での経験から、Another Fisherman’s Tale に活かしたことはありますか?

Balthazar 氏:
以前のゲーム Maskmaker の開発では多くの経験を積みました。このゲームで扱ったことは、A Fisherman's Tale よりも幅広いものでした。2 時間ではなく 6 時間かかるストーリー中心のゲームを、限られた予算でパンデミックの最中に作成するのは大変でした。このような大規模なゲームを開発する中で、プロダクションの管理方法とゲームのデザイン方法の両方について多くのことを学びました。

学んだすべての教訓をこの続編 A Fisherman’s Tale で応用することにしました。くわえて、より革新的なことや新しいことにも挑戦したいと考えてました。VR の限界を押し広げられないか挑戦するのは、とても胸が高鳴りますからね。こうした姿勢で開発すると、技術的なハードルにぶつかることはわかっていました。それでも、このゲームの主人公のようにハードルに挑戦して自分自身をより成長させたかったのです。
A Fisherman’s Tale のコアは、ユニークなパズルというシステムと関連している「世界の中の世界」というコンセプトでした。Another Fisherman’s Tale でそのコンセプトをどのように拡張したのか、教えていただけませんか?

Alexis 氏:
2 つのゲームの共通点は、操り人形の Bob が住んでいるこれらミニチュアのファンタジーの世界です。つまり、スケールの違いや、何が現実で何がそうでないのかを楽しめる世界です。前作 A Fisherman’s Tale のメイン テーマは、ストーリー的には「逃げること」でした。具体的には、主人公を縛り付ける恐怖、強迫観念、伝統から逃れ、最終的に自分の心から自由を得るための内面の旅です。 

そういうわけで、ストーリーは「世界の中の世界」というコンセプトとシンクロしました。この続編のストーリーにおける開発テーマは「変化」です。これは新しいゲームプレイとも共鳴しています。灯台を離れて自由を求めている Bob は、一進一退を繰り返して成長し、変化しなければなりません。比喩的にも文字通りにも、彼が本当になりたい自分に変わるのです。

前作の舞台は灯台とその周辺でした。今作では、どのような場所が舞台になるか教えていただけませんか?

Balthazar 氏:
Another Fisherman’s Tale では、より多様な舞台を用意しています。本当の冒険となるのです。各章には際だった特徴があり、ゲームプレイの進行と Bob の旅の物語の両方をサポートするように慎重に設計されています。プレイヤーの皆さんも、各段階できっと驚くと思います。

Alexis 氏:私もそう思います。とうとう灯台から出られた Bob は、旅をしたくてうずうずしています。とはいえ、前作の居心地の良い暖かい雰囲気も維持したいと考えていました。したがって、新しい舞台のそれぞれは、Bob が話す新しいおとぎ話からストーリーを再構築するスタイルになっています。全体的には、Bob は神秘的なリバタリア島を目指して遠くまで行きます。しかし、道中では彼が小さなミュージカルに出演することもあります。

Another Fisherman’s Tale では、再び Bob を操り人形として操作して世界を探索することになりますが、今回はそれだけではなく、彼を分解して組み立て直すこともできます。この新しいスタイルのゲームプレイを採用することになった経緯について、教えていただけませんか?

Alexis 氏:
私は通常、極めて「ボトムアップ」型の設計を行っています。私が主に考えていたのは、「独特かつ新しいゲームプレイを体験したい」と熱望しているプレイヤーを驚かせ、夢中にさせるようなものを作ることです。また、多くの異なる種類のパズルを遊べるほど豊富なゲームプレイ体験を得られること、および最初のゲームよりも大幅に長くプレイできることも非常に重要でした。

今作では、「体のパーツを組み合わせてパズルを解いたり手や頭を投げたりしながら、同時に体の部分も動かす」といったようなプレイが可能です。A Fisherman’s Tale では、巨大な主人公と小さな主人公を動かすことができましたが、それと同じです。状況によっては、レベル自体が進行することさえあります。結局のところ、おもちゃで遊ぶのと同じ感覚ですね。
前作では手を伸ばすことができましたが、今作では アダムス・ファミリー のように操り人形にすることもできます。離した手を楽しく直感的に操作できるようにするために、どのような機能を追加しましたか?

Alexis 氏:
どんな要素がパズルや状況を面白くするのかに焦点を当てて、手を離すギミックでできるようになることをいろいろ調べました。プレイ時に手首を痛めないようにするための手の動きを補助するギミックと、離れた物体をつかんだり登ったりするための自動照準システムを開発しました。また、手はどこにでも飛ばせるので、それにまつわる複雑なコリジョンの問題にも対処しました。当然ながら、このゲームプレイでは tomato presence を使用できませんでした (つまり、オブジェクトをつかんでいるときに手が消えます)。したがって、手とすべてのオブジェクトとの接続は、できるだけ簡単で見栄えがよくなるようにする必要がありました。

プレイヤーは主人公の頭を抱えたり、投げたりすることもできます。このギミックにより、プレイ時に環境内やパズルでどのような違いが生まれますか?

Alexis 氏:
頭が体から離れているというのは、なかなか奇妙で楽しい仕組みです。このゲームで探求したかったのは、こうした VR だからこそできる体験です。「自宅で気軽に頭を取り外して、それで可能となることを試す」なんてことは、現実だとできませんからね。背の高い壁の向こう側を見たり、状況を上から俯瞰したり、小さなちょっとしたスペースをのぞき見したり、と色んな利点があります。さらに、あらゆる種類の秘密の通路を開ける特別な鍵を首部分に隠すこともできます。

Bob の手を新しいパーツに交換してパズルを解くことも可能です。このコンセプトに影響を与えたものは何ですか?

Alexis 氏:
HTC Vive の登場以来、VR では仮想ワールドに没入できることと同じくらい、自分の手で仮想ワールド内のものをつかめるようになることが重要になりました。VR 内では、手は唯一不変のものであり、ほとんど自身の本当のアバターと見なすことができます。したがって、さまざまな環境で外観が変化したりプロパティが付与されたりしても、プレイヤーは自分自身の感覚を維持しながら現実とは違う世界を楽しむことができます。
前作には、2 つのストーリーがありました。1 つは操り人形の Bob に関するもので、もう 1 つは本物の漁師である Bob に焦点を当てたものでした。新作では、このコンセプトをどのように広げましたか?

Balthazar 氏:
家族間の世代とその変遷というコンセプトは、前作の [Fisherman’s Tale] と Maskmaker にもすでに存在していました。「閉ざされた過去や近しい人から離れ、自分らしく生きるにはどうすれば良いのか」というコンセプトです。Another Fisherman’s Tale のゲームプレイは長いので、同じテーマを採用しつつもより複雑で深いストーリーも提供したいと考えていました。ゲームのストーリーはまるで最初の作品のようですが、伝えたいことはたくさんあるのです。

Alexis 氏:今作は Bob の娘である Nina というキャラクターも登場します。プレイ中は、父親の信じられない話を聞く子供のころの彼女の姿と、世話している年老いた母親のいる地下室でこうした古いストーリー、ミニチュアのほこり、幽霊の間を歩く疲れ切った 40 歳の女性としての彼女の姿を見ることになります。

この新しい冒険のコアとなるストーリーテリングに、テーマはありますか?

Alexis 氏:
前作が現実に戻る方法を見つけるストーリーと定義するなら、今作は自分の自信を再び取り戻すことによる変化と、その変化を実現し続けるストーリーであると言えます。そして、Nina とともに醜くつまらない真実を発見していき、それを浄化していくストーリーでもあります。

Another Fisherman’s Tale を開発した際の最大の課題は何でしたか?

Balthazar 氏:
手が離れた状態でそれをリモートで操作したり、頭を離れた状態で三人称視点によって体を操作したりといった、コアとなるゲームプレイの実装です。プレイヤーが快適にプレイできる操作感を実現しながら、革新的なコントロール スキームの開発や、既存の VR ゲームを超える動きを作る必要がありました。開発の最後までコントロールを微調整し、何百ものプレイテストを行ってさまざまなソリューションを試しました。当然ながら、これらの機能を可能な限り使いやすく VR に適したものにするまでに、多くの問題にぶつかりました。
ゲームの開発において、何か大きな目標はありましたか?

Alexis 氏:
ゲーム内のすべてのパズルと新しい世界を楽しく素晴らしいものに仕上げて、コアのゲームプレイと結びつけ、それをストーリーラインに不可欠なものにしたいと考えていました。そして、それを実現するには非常にバランスが大事であることがわかりました。Innerspace と弊社のパブリッシャーである Vertigo Games の両方のチームのすべてのメンバーからの洞察が必要だったためです。

2015 年に最初のゲームをリリースして以来、INNERSPACEVR の VR に対するアプローチはどのように変化しましたか?

Balthazar 氏:
根本にある考え方 はそれほど変わっていません。私たちの目標は、常にメディアを試し、物事を先に進めることでした。技術が進化するにつれて、素晴らしい新しい可能性が生まれるものの、その採用には克服しなければならない課題も付随するので、よく検討する必要があります。ここ数年で大きく変わったのは、インタラクティブなプロジェクトのストーリーテリングへのアプローチ方法です。つまり、プレイヤーに対して自分の操作するキャラクターに強く共感させるための方法、アドベンチャーやパズルのゲームプレイを通じて感情を高めさせる方法、ゲームプレイへのプレイヤーの関わりを壊すことなく複数の物語を回して進めていく方法です。これらは、次なるプロジェクトのために引き続き探求し、深めていく予定です。

前作は、非常に滑稽なスタイルのアートが特徴でした。Another Fisherman’s Tale では、これを視覚的にどのように踏襲したいと考えていますか?

Balthazar 氏:
ゲームには、2 つのビジュアルが存在します。漁師の娘である Nina の世界は、郊外の家にある非常にリアルな地下室が舞台です。一方、Bob の世界は完全なファンタジーが舞台で、プレイヤーは彼のミニチュアを介して冒険することになります。後者は、前作の Fisherman で使用したミニチュアのファンタジー世界と完全に同じです。この 2 つの舞台により、両方の視覚的アプローチの間に興味深い対比が発生し、おとぎ話の背後に隠された父親の本当の過去を発見する娘のストーリーがより深いものになります。

なぜ Unreal Engine が「Another Fisherman’s Tale」に適していたのですか?

Balthazar 氏:
私たちは 2015 年から Unreal Engine を使用しています。以来、別のフレームワークへの移行を検討したことはありません。私たちには低レベルのツールを構築するためのリソースがありません。Unreal がエンジンの一部として提供するすべての開発ツールも、信じられないほど強力で堅実でした。Unreal Engine で、多くのリソースを節約したり、すぐに使える優れたツールを作成したりできます。そのため、タイトルをより良いものに仕上げられます。くわえて、このゲーム用に特別にカスタム アドオンをいくつか作りました。それを活用することで、より開発に集中してさらに質を高められるようになりました。
Unreal Engine ツールの中で、Another Fisherman’s Tale の開発にとりわけ役立ったものはありますか?

Balthazar 氏:
Unreal Engine のすべてのツールが役に立ちました。最終的なゲームでは実際には使用しないものの、Metahuman など、Epic が提供する最近機能も試してみたいと考えていました。私たちが最も便利だと感じたのは、エンジンの高い柔軟性です。私たちはさまざまな VR システムを扱っており、ゲームは多くのプラットフォームでシッピングされます。すべてのプラットフォームで固有の技術要件があります。しかし、Unreal のおかげでそうした要件への対応が楽でした。Unreal は私たちにとって本当に不可欠のツールです。Unreal Engine がなければ、ゲームの質の向上に集中して取り組むことはできなかったでしょう。

Another Fisherman’s Tale はどの VR プラットフォームでプレイできますか?

Balthazar 氏:
Meta Quest 2 と PlayStation VR2 の 2 つが主要なプラットフォームです。また、PC プレイヤー向けに Rift、Steam、Viveport でもシッピングされています。

お時間をいただきありがとうございました。Another Fisherman’s Tale の詳細はどこでアナウンスしていますか?
ゲームの詳細については、公式サイト をご確認ください。また、TwitterInstagramFacebook で Vertigo Games もフォローしてください。

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