フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 でバトルテストを実施した Unreal Engine 5.1 の新機能

12 月初旬にリリースされたフォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 シーズン 1 では、単なる世代の違いをはるかに上回るビジュアルの忠実度と詳細度の向上を実感することができます。本作の最新チャプターでは、Unreal Engine 5.1 でプロダクション対応になった Lumen、Nanite、仮想シャドウ マップ、テンポラル スーパー解像度など、Unreal Engine 5 の最新かつきわめて革新的な機能が活用されていますが、これらの機能は偶然活用されているわけではありません。

フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 では、Epic Games の「Eat your own dog food (ユーザーに提供するサービスは、提供者自身が使ってからリリースする)」という姿勢が実践されており、ライブ ゲーム開発に伴うプレッシャーにさらされる中、新機能のバトルテストを実施しました。このバトルテストにより、UE 5.0 で導入された一連の革新的な機能がさらに改善され、その改善された機能をフォートナイト チームが活用しているのです。

UE5 の機能テストは、これまでに The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience で実施されました。これは、最新世代のコンソールで 30fps で動作するフォトリアルな都市を紹介するプロジェクトです。フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 では、すべてのプラットフォームで 60 fps で確実に動作するだけでなく、今日のプレイヤーが期待する品質 (スタイル化されたグラフィック、詳細度の高いフォリッジ、昼夜のサイクル) を、建築と破壊の両方を特徴とする大規模でダイナミックなオープン ワールドですべて実現するという、さらに困難な課題に取り組みました。

このブログでは、チャプター 4 での機能試験を経て強化された機能について紹介します。また、Lumen、Nanite、仮想シャドウ マップの改善点の詳細を記載した記事へのリンクと、フォートナイト バトルロイヤルチャプター 4 での機能試験によって得られた、Unreal Engine 5 でより詳細度の高い、高速なオープン ワールド ゲームの制作に役立つ情報について説明します。
 

Lumen

Lumen は、Unreal Engine 5 で導入された新しいリアルタイム グローバル イルミネーションおよび反射のソリューションです。Lumen は、ハードウェア レイ トレーシングとソフトウェア レイ トレーシングを使用して、直接ライティングとジオメトリの変化に動的に反応してバウンスするリアルな間接ライティング、反射、およびシャドウを提供します。Lumen で表現できる例としては、青い壁があることで近くにあるすべてのオブジェクトやキャラクターがほのかに青みがかる様子、ゴールデン アワー (夜明け頃または日没前) の太陽光が 1 つの窓から差し込み、ローカル ライトなしで家全体を照らし出す様子、そして外側のドアが開いたときに部屋に光が差し込む様子などがあります。

フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 では、Unreal Engine 5.1 の幅広い領域で Lumen の改善に取り組みました。システム全体の最適化により、Lumen をサポートするプラットフォームで 60fps を達成すると同時に、間接ライティングと反射の両方の品質を大幅に向上させることができました。

フォートナイトのワールドには樹木や草がたくさん含まれています。そのため、チャプター 4 は、そういった環境での Lumen の間接ライティングの品質を向上させるうえで最適なテスト環境となりました。

Unreal Engine 5.1 における Lumen のすべての改善点の詳細については、こちらのブログ記事でレビューをご確認ください。

Nanite

Nanite は、アーティストやデザイナーが仮想ワールドをビルドする方法を刷新し、ジオメトリのディテールの境界を広げると同時に、作成プロセスを簡素化しました。アーティストは、最高のビジュアル品質とパフォーマンスを達成するために、メッシュの LOD や特定のオブジェクトの適切なポリゴン数について考える必要がなくなりました。

UE 5.0 では、Nanite は不透明のリジッド ジオメトリに対してきわめて効果的に機能していたため、フォートナイトでは都市環境全体に Nanite を取り入れています。レンガ、木材、窓のトリム (装飾) は、カメラとの距離にかかわらず、複雑なディテールを表示できるようにすべてモデリングされています。

UE 5.1 から Nanite でワールド位置オフセットとマスク付マテリアルがサポートされるようになりました。そのため、フォートナイトのアーティストが、きわめて詳細度の高いアニメートされた樹木や葉 (フォリッジ) に Nanite を活用できるようになりました。木の葉や草の葉が、すべてモデル化されたジオメトリになり、自然に風になびく様子を表現できます。また、Nanite でフォリッジのジオメトリの単純化を処理する新たな方法を導入し、オブジェクトがレンダリングされる距離を問わず、重要な青々としたディテールをすべて維持できるようになりました。

Unreal Engine 5.1 での Nanite の改善点については、こちらの Nanite に関するブログ記事を参照してください

仮想シャドウ マップ

仮想シャドウ マップ (VSM) は Nanite と連携して機能し、アーティストがフォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 で使用している複雑なジオメトリのディテールをすべて強調することができます。従来のカスケード シャドウ マップと比較した場合の VSM の最大のメリットは、プレイヤーの目の前にあるオブジェクトと地平線上にあるオブジェクトの両方で、ほぼピクセル単位の精度のディテールでシャドウを表現できることです。

新しいフォートナイトのジオメトリでは、フォリッジや動的な時間帯のシステムと適切に連携できるように VSM の改善に取り組みました。フォリッジや動的な時間帯のシステムはどちらも、これまでパフォーマンスのために活用していたシャドウ キャッシュ スキームの多くを妨げていたからです。当然ながら、これらすべてを 60fps のバジェットに収める必要がありました。

また、フォートナイトでは、ランプやシーリング ライトなどのインテリアに小さなローカル ライトを多く活用しています。この場合、VSM キャッシュはきわめて有効です。ローカル ライトを多用することで、UE 5.1 での VSM のパフォーマンスをさらに向上させることができました。「ワンパス プロジェクション」オプションにより、多数のライトのシャドウの更新を 1 回のパスでバッチ処理できるため、GPU 使用率も向上します。また、きわめて遠くにあるライトのシャドウの更新を複数のフレームに分散させるヒューリスティックも組み込みました。

Unreal Engine 5.1 での仮想シャドウ マップの改善点については、こちらの ブロク記事を参照してください

ローカル露出

Lumen ではコントラストがきわめて強いシーンを作成することができます。たとえば、かなり暗い部屋の窓から見える明るい光に満ちた屋外や、同じビュー内にある明るい空や太陽に照らされたサーフェスとほぼ真っ暗な屋内などです。こういったビューで単一の露出値を設定するとうまく機能しません。具体的には、明るい部分は露出が過剰になり、暗い部分はほぼ黒になり、何も判別できなくなります。

UE5 の露出システムは、フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 向けに改善され、アーティストが希望のアート ディレクションを実現するツールが追加され、パフォーマンスも向上しました。アーティストがローカル露出をハイライトとシャドウに適用する方法を個別にコントロールできるようになり、ハイ ダイナミック レンジのライティング条件でディテールを保持できるようになりました。さらに、ローカル露出は、その他のポストプロセス パイプライン (特にブルームとレンズ フレア) とより緊密に統合され、より一貫した結果を得ることができるようになりました。

また、マテリアルのプロパティではなく、輝度に基づいた自動露出計算のサポートも追加されました。これにより、異なるライティング条件においても、マテリアルが一定の外観を保つことができるため、ゲームプレイ中の画像の安定性が向上します。
UE 5.0 の新機能、ローカル露出でハイライトとシャドウのディテールが保持されています。Lumen を使用する際は、必ずローカル露出を設定してください!

テンポラル スーパー解像度

テンポラル スーパー解像度 (TSR) では、高い負荷のかかるレンダリングの演算処理を複数フレームに分散することで、少ない負荷で美しい 4K 画像をレンダリングすることができます。60 fps をターゲットとするフォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 では、TSR でのパフォーマンスと品質の最適化を多数実施する必要がありました。その結果、UE 5.1 の TSR は、UE 5.0 に搭載されていたバージョンよりはるかに性能が向上し、高速になりました。また、使用するプロファイル (Low、Medium、High、Epic) に応じて TSR のパフォーマンスと品質のスケーリングを改善しました。

これらの改善点の技術的な詳細については、今後のブログ記事で紹介します。
 

Unreal Engine 5.1 では、フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 のビジュアルの忠実度の大幅な向上に合わせて、雲のレンダリング品質が向上しています。UE5 の雲は、厳しいパフォーマンス バジェットを満たすために、内部的に低解像度でレンダリングされ、アップサンプリングされます。これまでは、フォアグラウンドのメッシュの周囲の不完全なエッジがバックグラウンドの雲を遮り、エッジの周りに明るい空の色が漏れしてしまうことがありました。UE 5.1 では、このような色漏れを発生させることなく、フル解像度での雲のアップサンプリングをより適切に解決できるようになりました。また、雲の前を横切るメッシュからのテンポラルな雲の再構築を改善し、オクルージョン解除からのトレイルを効果的に低減しました。

Niagara

フォートナイトでは、アーティスト主導のプロシージャルな破壊エフェクトを作成するために Niagara VFX システムを活用しています。Niagara は、ゲームプレイに反応して、武器が命中するたびに、飛び散る一連の瓦礫をスポーンし、正確にシミュレートします。

フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 の新しい High Fidelity Fire は、ボクセルベースの伝播メカニズムを使用して、サーフェスやランドスケープ全体に広がる炎をより忠実に表現するだけでなく、車両や物理オブジェクトでの炎の伝搬もサポートしています。このシステムでは、エンジンでベイクされた Niagara の流体シミュレーションを、ファイア ゲームプレイ システムからデータを読み取る Niagara パーティクルに適用し、燃焼面に適切に配置し、整列させます。

ワールドのビルドのサポート

チャプター 4 のリリースで、フォートナイト バトルロイヤルは、すべてのプラットフォームで最新の UE5 のワールド ビルドおよび自動ストリーミング ソリューションを使用するようになりました。これには、World Partitionデータ レイヤーレベル インスタンス自動 HLODOne File Per Actor が含まれます。このツールセットにより、連携によるワークフローが促進され、レベル デザイナーやアーティストがより効率的にワールドを構築できます。

フォートナイトの以前のリリースで使用されていたカスタム ストリーミング ソリューションとの大きな違いの 1 つは、新しい World Partition システムは自動化されているため、デベロッパーの作業時間が大幅に短縮されると同時に、HLOD のトランジションが大幅に安定しており、全体的なゲーム体験が向上しているところです。

チャプター 4 には 100,000 を超えるアクタ ファイルが含まれています。これほど多くのファイルを効率的に処理するため、新しい UX、新しい制御されていないチェンジリスト タイプ、シーン アウトライナーやメイン ビューポートとのより緊密な統合など、チェンジリスト ウィンドウが改善されました。

チャプター 4 をサポートするために行われたその他の機能強化は、Navmesh の生成 (スタティックおよびダイナミック) での World Partition のサポートです。つまり、1 つのワールド セルをロードし、そのナビメッシュを生成してシリアライズし、そのセルをアンロードして、次のセルに移動できるようになりました。

UE 5.1 では、すべてのデベロッパーの皆様が、改善された機能をご利用いただけます。フォートナイト チームでは、これらの機能のバトルテストを引き続き実施するため、今後のリリースでさらに機能が強化される予定です。

スマート オブジェクトと State Tree

スマート オブジェクトは、レベル上のオブジェクトやエリアを選択し、動的に動作を挿入する AI の機能を公開します。アニメーションなどの関連データやコンフィギュレーションは、エージェントではなくオブジェクトに格納されるため、多くのエージェントで共有でき、より効率的なメモリの活用とパフォーマンスの向上につながります。また、コアの動作を編集することなく、デフォルトの動作をより柔軟に拡張することができます。

State Tree は、スケーラブルで汎用的なステート マシンです。ステート マシンは、柔軟なデシジョン ツリー構造内に従来のステート マシン機構を組み込み、直感的でコンパクトな UI とともに、高いパフォーマンスを維持します。

これらの技術はいずれも UE 5.0 リリースで実験的な機能として公開されましたが、フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 でのデプロイに成功した後、5.1 でプロダクション対応の機能に移行しました。チャプター 4 より前では、スマート オブジェクトは、単純なアニメーションやエモートを再生する AI にのみ使用されていました。スマート オブジェクトのフローに State Tree を統合することで、ボットに対してより複雑で充実した動作 (フォートナイトのキャンプ ファイヤーとインタラクションする方法など) を実現することができました。

デベロッパーの効率性が向上

Epic Games では、デベロッパーがクリエイティブ プロセスに集中できるよう、効率性を高める方法を常に模索しています。フォートナイトが Nanite などの新しいグラフィック テクノロジーを採用してディスクの使用量が増大したため、Epic Games では、チームがゲームをロードしたり Perforce からコンテンツを取得したりする時間を短縮する方法を見つける必要がありました。

大規模で各地に分散している フォートナイト チームは、新しい Unreal Cloud DDC を活用することで大きなメリットを得ることができました。Unreal Cloud DDC は、テクスチャやメッシュなどのコンテンツの最適化されたバージョンへの高速アクセスを提供し、ローカルでの処理の必要性をなくす、派生データ キャッシュのためのグローバルに効率的なモデルです。その結果、フォートナイトでのエディタのロード時間が 2 倍以上短縮されました。

仮想化アセットにより、コンテンツのディスクの使用量が削減された結果、フォートナイトの単一のワークスペースでの同期時間が 4 分の 1 以下に短縮されました。複数のワークスペースに共通するあらゆるデータの重複を排除することによって、さらに節約することができます。生のテクスチャ ピクセルなどの容量の大きいバルク データを、テクスチャ解像度や形式など、Unreal のアセットのはるかに小さなクラス プロパティから分離し、個別に格納します。仮想化アセットは、一見、通常の Unreal のアセットと区別できませんが、容量は数分の 1 に縮小されています。デベロッパーのワークフローはほとんど変わらず、クライアントは Perforce の同期を待機する時間が大幅に短縮され、エディタで実際に使用するデータのみを必要なときにダウンロードすることができます。
 

機械学習

Unreal Engine の機械学習 (ML) デフォーマーは、複雑な独自のリグ、または任意の変形の忠実度の高い近似を作成できます。これは、カスタムの Maya プラグインを使用して機械学習モデルをトレーニングし、そのモデルを Unreal Engine でリアルタイムで実行することで可能になります。

チャプター 4 では、フォートナイト チームは ML デフォーマーを使用して、筋肉やクロス上でより高品質のキャラクターの変形を実現しました。Hulk と Sunlit は、この機能を活用した最初のキャラクターです。チームは、外部の DCC から複雑な変形とシミュレーションを取り込み、そのジオメトリの結果をゲームプレイ用リグに挿入することができました。このバトルテストの結果、ML デフォーマーは UE 5.1 で実験段階の機能からベータ機能に移行しました。さらに、チームは ML デフォーマーのエンジニアと緊密に連携し、UE 5.2 で予定されている新機能と安定性の修正に向けて、このテクノロジーの向上に引き続き取り組んでいます。
 

MetaHuman フレームワーク

チャプター 4 では、フォートナイト チームが 3Lateral および MetaHuman チームのデベロッパーと緊密に協力し、フォートナイトのキャラクターのフェイシャル アニメーション機能をアップグレードしました。これには、新しいキャラクターの表情やジョイントの数を増やすなど、キャラクターの品質に関するいくつかのアップデートが含まれます。またフェイシャル アニメーションをレベル アップさせる新しいリギングやアニメーション ツールも作成されました。

その結果、Unreal Engine 5.1 では、パフォーマンスの制約に対応するためにリグ ロジックのランタイム機能が改善され、さらにフォートナイトにおける MetaHuman テクノロジーの前方互換性と後方互換性をサポートするために特別に作成されたリマッピング ノードが追加されています。

フォートナイト バトルロイヤル チャプター 4 の開発中に Unreal Engine 5.1 で行われたすべての改善点を実際にご利用いただき、ご自身のタイトルのビジュアル忠実度をレベル アップさせるためにご活用いただければ幸いです。皆さんが制作した作品を見るのが楽しみです!

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