Image courtesy of Volvo Cars

衝突ゼロへの道:Volvo Cars の新しい電気自動車向け HMI プログラムの舞台裏

アメリカでは毎年約 600 万件の自動車事故が発生しています。その数を大幅に減らし、ゼロにすることができたらどうでしょうか。Volvo Cars はまさにその衝突ゼロを目指しています。しかしそのためには物事を総合的に考える必要があり、その対象は自動化からダッシュボードにまでおよびます。

最近 Volvo Cars が力を注いでいるのはダッシュボードのほうで、新しい完全電気自動車向けのヒューマン マシン インターフェイス (HMI) を構築してきました。このインターフェイスは、周囲の状況についてドライバーに情報を提供し、これまで通り運転中に安全を感じられるようにすると同時に、スマートな意思決定も可能にすることを目指しています。
 

安全性についての実績

安全性は Volvo Cars にとって新しい概念ではありません。1927 年の生産開始以来、同社は安全性を設計の指針としてきたことがよく知られています。Volvo Cars はサイド エアバッグを標準装備とした初めての自動車メーカーであり、現代の 3 点式シートベルトを発明した会社でもあります。3 点式シートベルトについては、ほかのメーカーが使えるように特許を無償で公開しました。

改善された新しい HMI により、安全の向上につながる多様な機能がサポートされ、ドライバーは周囲の状況をより詳しく把握できるようになります。Volvo Cars の UX 責任者、Thomas Stovicek 氏は次のように述べています。「HMI とは、人とテクノロジー、この場合は自動車とのインタラクションです。長い間、その役割を担ってきたのは、ハンドル、ブレーキ、アクセルでした」
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Volvo Cars では、近く登場する予定の新しい完全電気自動車向けにエンジニアが外部センサーについてさまざまな実験を行い、盲点を見えるようにしたり、自動運転を試したりしました。「ほかにも、LiDAR などのテクノロジーについて調査しました。こうしたテクノロジーによって多くのことが見えるようになり、何が起きるのか自動車が予測できるようになります」と Stovicek 氏は述べています。これらのソリューションを組み合わせることで、多くの人命を救うことができる可能性があります。そのために重要なのはドライバーに情報を与え続けることです。1 つでも過剰に複雑な図があると、運転中のドライバーの気を散らしてしまい、事故の増加につながるおそれがあります。

そのソリューションの一部となっているのが Unreal Engine です。Stovicek 氏は次のように述べています。「Unreal Engine を使うことにしたのは、忠実度が高いビジュアライゼーションをリアルタイムで作成するために役立つテクノロジーが必要だったからです。大量の情報があり、それを文脈を考慮してユーザーに理解しやすい形で届ける必要がありました。現実の表現のほうがわかりやすいものであり、このテクノロジーは物事をリアルに表現できます。また、大量の情報を積み重ねることができます」

タイミングがすべて

Volvo Cars のチームが安全性を向上させるうえでは、情報に富んだビジュアルを作成する能力に加えて、Unreal Engine のリアルタイム機能も重要です。「こうしたシステムでは、応答性が極めて重要です」と Stovicek 氏は述べ、反応速度は人それぞれであると常に心がけることが重要だと付け加えます。「システムがユーザーに速く情報を伝えることができれば、それだけユーザーの反応も速くなります。横から近付いてくる自動車への対応であれ、路上にある何かへの対応であれ同じです。そのスピードによって、私たちの最終的な目標である安全なエクスペリエンスが実現されます」
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HMI の最適化をさらに進めるために、Volvo Cars のユーザー エクスペリエンス チームは Unreal Insights も活用しています。これによって、エンジニアとデザイナーがコンピューターと車輌のプロトタイプの両方で HMI の見た目をプレビューできるようになりました。デザインを生産モデルに移す前にボトルネックを特定し、スムーズで応答性に優れたユーザー エクスペリエンスを実現できます。Stovicek 氏は次のように述べています。「以前は、デザイン チームがコンセプトを考案し、それを開発チームに送っていました。アイデアを実際に確認して評価できるようになるまで長い時間がかかっていました」
Image courtesy of Volvo Cars
Unreal Engine のおかげで、グラフィックスを数か月ではなく数時間で更新できるようになりました。ブループリントを使うと、デザイナーとエンジニアが協力してコンセプトを練り上げることができます。データをグラフィックスにつなげるために C++ を学ぶ必要はなく、ほかのチームの対応を待たずに変更を加えることができます。

Stovicek 氏は次のように述べています。「時間のかかるイテレーションのプロセスを経て HMI 機能を開発する必要はもうありません。こうしたツールを使って、学習、テスト、コンテキストに応じたテストに加え、プロトタイプ作成まで行うことができます。これによって開発スピードが向上し、最終的には製品全体の改善につながります」
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運転の未来

Volvo Cars が 2030 年までに完全な電気自動車ブランドへと変わろうとするなか、同社が設計する HMI エクスペリエンスは、運転の仕方と自動車の設計を永久に変えてしまおうとしています。「HMI については非常にクリエイティブになる余地があります」と Stovicek 氏は述べています。そのシステムはワイヤレス通信でいつでもアップデートでき、HMI エクスペリエンスをより強力なものにし続けることになるでしょう。

「私たちのチームが最も得意なことは、ドライバーにとって安全なユーザー エクスペリエンスを作ることです。次世代の電気自動車向けに Unreal Engine を使った結果、そのビジュアルの品質によって私たちが目指しているエクスペリエンスを実現できるだけでなく、応答性とスピードの面でも優れたものにできることがわかりました。このセットアップで何ができるか探るメーカーが増えるなか、今後数年で多くのクリエイティビティが発揮される様子を目にすることになるでしょう。それに参加し、この新しい時代に作られる新しい物事を見られることを楽しみにしています」

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