Aerial view of EDGE Liverpool Street digital twin
Image courtesy of SpaceForm
スポットライト
2025年5月8日

SpaceForm、EDGE Liverpool Street の没入型デジタル ツインを制作

EDGE Liverpool StreetSpaceFormデジタルツイン不動産建築
建築プロジェクトには常に一つのジレンマが存在します。 

何年にもわたって時間、労力、資金を投じなければならない一方で、プロジェクトに関わる誰一人として、完成した建物の中に足を踏み入れたときにどのような気持ちになるのかを、事前に知ることはできないという点です。

金銭的なリスクが非常に大きいため、最終的な完成形が設計者の意図どおりになると信じて進めるのはリスクが高いと言えるでしょう。 

こうした不確実さを解消するため、建築家たちはさまざまな手段で未来を「可視化」しようと努めてきました。設計意図を伝えるためかつてはペンと紙による図面、そして 3D レンダリングが用いられてきました。 
3D レンダリングは、静止画像から、リアルタイム環境で自由に探索できる完全にインタラクティブなデジタル モデルへと進化しています。まるで完成した建物の中に実際に立っているかのように感じることができます。 

不動産業界では、まだ建設されていない物件のビジョンを利害関係者や潜在的な購入者に伝える手段として、こうしたデジタル ツインの力に徐々に気づき始めています。しかし、業界に関わる多くの人々は、ゲーム エンジン テクノロジーの活用により、これほど高度なデジタル ツインを構築できることをまだ知りません。  

そこで登場するのが、SpaceForm です。 

SpaceForm は、技術に詳しくない不動産チームでも、建築設計を魅力的なインタラクティブ環境へと変換し、設計データと完全な没入型デジタル ツインをつなぐ、Unreal Engine を搭載したプラットフォームを提供しています。

巨額の予算や大規模なチームがなくても、ビジュアライゼーションをより複雑かつ高度なレベルへと引き上げ、ハイエンドで没入感のあるエクスペリエンスを提供できることを SpaceForm は実証しようとしています。

SpaceForm のチームは、高級不動産から公共の公園に至るまで、高度なデジタル ツインを作成できるよう世界中の開発者を支援してきました。こうした実績をもとに、最近取り組んだ注目プロジェクトの一つが、ロンドンの「EDGE Liverpool Street」です。この記事では、その詳細をご紹介します。 
 
Aerial view of EDGE Liverpool Street digital twin
Courtesy of SpaceForm
Plaza in EDGE Liverpool Street digital twin.
Courtesy of SpaceForm
Lobby seating in EDGE Liverpool Street digital twin.
Courtesy of SpaceForm
Lobby in EDGE Liverpool Street digital twin
Courtesy of SpaceForm
Patio for high-rise building.
Courtesy of SpaceForm
Street view of EDGE Liverpool Street digital twin.
Courtesy of SpaceForm
Aerial view of EDGE Liverpool Street digital twin.
Courtesy of SpaceForm

EDGE Liverpool Street:商業用不動産のデジタル ツイン

EDGE Liverpool Street は、ロンドン中心部のリバプール ストリート駅から徒歩数分の場所に位置する、先駆的なゼロ カーボン オフィス ビルです。2029年の完成を予定しています。 

国際的なデベロッパーである EDGE と、そのジョイント ベンチャー パートナーである三井不動産は、設計の進行に応じて随時更新可能な、完全に探索可能でインタラクティブなデジタル ツインを求めていました。

目的は、投資家向けのプレゼンテーションと、対面ミーティング用に設けられた専用マーケティング スイートの 20 フロアの事前リースを促進することにありました。デジタル ツインは、Pixel Streaming を通じてリモートでの営業にも活用でき、オンライン上で体験することが可能です。

建物のデジタル レプリカを用意することで、訪問者は現地にいても遠隔地からでもプロジェクトのバーチャル ツアーを行い、クライアントが特に見たいと思う主要なビューやエリアを強調できます。

ツアーは、順路に沿って進むタイプと、自由に探索できるタイプがあり、直感的で使いやすいインターフェースを通じてプロジェクトを体験できます。没入型の現地販売センターでは、ツアー参加者は Xbox コントローラーを操作して進んでいきます。「Xbox コントローラーが、技術に詳しくない人でもすぐに使える、最もシンプルな操作方法だとわかりました」と、SpaceForm の共同創設者兼 CEO である Jan Maarten Heuff 氏は説明します。

プレゼンターはいつでも、時刻や季節、さらには天気まで調整可能です。こうした機能は、特定のスペースを借りる際の判断材料として、またさまざまな時間帯や気象条件下での利用イメージを明確にするために不可欠です。

EDGE Liverpool Street に拠点を置いたときのエクスペリエンスをより正確に伝える上で、周辺環境 (近隣のショップ、交通機関の接続、アメニティなど) は重要な要素となります。

このため、EDGE Liverpool Street のデジタル ツインでは Cesium を介して Google Earth のデータを統合し、リアルな都市スケールの背景を構築し、建物の立地に関するコンテキストを強化しています。さらに、敷地周辺にある主要な建物の高解像度モデルも統合しました。
Courtesy of SpaceForm
「これにより、近隣の駅、バス停、コーヒー ショップ、ジム、学校などの関連施設を、徒歩での時間や距離とともに表示できます」と、Heuff 氏は語ります。

つまり、ユーザーは 20 階のどのフロアにでも行くことができ、窓からはフォトリアルで正確な眺望を楽しみながらその場にいるかのように周囲の街並みを感じることができます。

コンテキストに応じたカスタマイズ可能なビジュアライゼーション

Plant-filled atrium in EDGE Liverpool Street digital twin.
Courtesy of SpaceForm
未開発の商業用不動産を売り出す際、クライアントが自分のデスクに座っている姿をリアルに想像できることは、非常に強力な武器となります。 

EDGE Liverpool Street のデジタル ツインは、入居予定企業のブランドに合わせて簡単にカスタマイズできるため、その空間でのビジネスシーンを具体的に思い描くことができます。 

「必要なシーンが準備できれば、わずか数時間でカスタム アニメーションを出力できます」と、Heuff 氏は語ります。 「従来のビジュアライゼーション ワークフローであれば、レンダリングに数日、あるいは数週間かかっていたはずです」
Courtesy of SpaceForm
こうした迅速な変更が可能なことが、リアルタイム テクノロジーが建築ビジュアライゼーションにもたらす大きな利点の 1 つです。 

ただし、すべてのリアルタイム ツールが同じように作られているわけではありません。Heuff 氏は、このレベルの品質を備えたデジタル ツインを開発するには、Unreal Engine が最適だと断言しています。 

「Unreal Engine なら他を寄せ付けないレベルでリアルタイムにフォトリアルなシーンを作成できます。この種のプロジェクトを実現できる唯一の選択肢です」と彼は言います。「Unreal だけで、オフライン レンダリングと同等のディテールと複雑さを備えたシーンを処理し、レンダリングできます」

また、Datasmith が設計データを Unreal Engine に取り込むプロセスを高速かつ簡便にするための重要なツールであると述べています。さらに Unreal Engine の仮想化ジオメトリ システムである Nanite にも言及しています。

「大量の 3D 設計データを扱う際には、Nanite が不可欠です。ポリゴン数をあまり気にせずに作業できるのです」と Heuff 氏は説明します。

ライティングもまた、Unreal Engine の力が発揮される領域のひとつです。「Lumen は、複雑なシーンに素早くライティングを適用できる点が画期的です。とりわけこのプロジェクトのように、自然光を多用して建物全体の内部を照らす場合、何日分もの作業時間を削減できます」と Heuff 氏は言います。

Lumen は、Unreal Engine 5 に搭載された、完全に動的なグローバル イルミネーションおよび反射システムです。Lumen を使用すると、無制限のディフューズ バウンスを実現できます。これは、オフィス ビルに多く見られる白いペイントのような、明るく拡散性の高いマテリアルが使用されたシーンで特に効果を発揮します。
 

SpaceForm の Unreal Engine を使ったデジタル ツインの作成方法

SpaceForm におけるデジタル ツインの作成プロセスは、Unreal Engine で構築されたカスタム プラグインを通じて、Revit または Rhino から Unreal Engine にジオメトリ、マテリアル、BIM データ (ある場合) をエクスポートすることから始まります。

このプラグインは、Revit / Rhino または Datasmith ファイルを変換および最適化し、ジオメトリを整理した上で再保存し、Unreal Engine にプッシュします。

その後、プロジェクトをパッケージ化して Amazon S3 にアップロードし、クライアントとリンクを共有します。

モデルが関係者によって承認されると、アーティストは最適化されたファイルを、選択した DCC にインポートし、家具レイアウトの調整や必要な部分のモデル化 / リモデル化を開始します。

次に、Datasmith を使って、すべての関係者の作業内容を Unreal Engine プロジェクトに統合します。ここでは、Dataprep または Unreal Engine のツールを用いて、アセットの最適化やマテリアルの置き換えを行うことが可能です。

SpaceForm では、クライアントが建物を取り巻く独自のストーリーを構築できるシーン システムも開発しています。あらゆるビュー、任意の時刻、モーション タイプ (飛行、歩行、またはオービット) を保存し、名前を付けてシーン選択から呼び出せるようにしています。 

この仕組みにより、技術に詳しくないユーザーでも、シンプルな「次へ/戻る」形式のコントロール インターフェースで簡単に操作できます。また、選択画面を開いて他のシーンに直接ジャンプすることも可能です。
 

不動産におけるデジタル ツインの幕開け

 
Spacious foyer in EDGE Liverpool Street digital twin.
Courtesy of SpaceForm
Heuff 氏によれば、これまでのところ、潜在的顧客のテナントから EDGE Liverpool Street のデジタル ツインに対して圧倒的に好意的な反応が寄せられているとのことです。「今、ロンドン市内にある企業と 3 回目の打ち合わせをしているところです。その企業は、移転とかなりのフロアの借り受けを検討しています」と彼は語ります。 

同社が EDGE Liverpool Street でさまざまなブランディングの選択肢を検討するなかで、このデジタル ツインは重要な役割を担っています。「正確な階数、眺望、時間帯を示すことができ、またブランディングの選択肢を即座に提示できるという点が非常に革新的です」と Heuff 氏は説明します。 

EDGE Liverpool Street がデジタル ツインの売上にどのような影響を与えるのかは、現時点ではまだプロジェクト開始から日が浅いことから、明確に評価できる段階には至っておりません。とはいえ、過去の類似プロジェクトでは大きな成果が見られており、今回も同様の効果が期待されます。 

「ロンドン中心部で手がけた別の商業プロジェクトでは、仮想空間でテナントを敷地内に案内できるようにしたことで、クライアントの売上が 50% 増加しました」と Heuff 氏は話します。

現在、没入型のデジタル ツインを積極的に導入しているのは、主にアーリー アダプターの不動産関係者です。そして、その活用はより大規模なプロジェクトにも広がりつつあります。

ただし、マスマーケットの不動産でも十分に活用できることは明らかです。既存のプロジェクトにおけるデジタル ツインの人気は、こうした手法で建物の設計を体験できることが、最終顧客にとって非常に魅力的であることを証明しています。 

「これは大きなチャンスである上、業界はこの変化に対応せざるを得なくなると考えています。「市場は今後、あらゆる方向に広がっていくと考えています。代理店が特定のユース ケース向けにカスタム ツインを構築したり、建築家が Twinmotion を使ってデザインを可視化してクライアントと共有したり、不動産開発業者が Unreal の力を活用して新たな顧客とつながったりと、SpaceForm の活躍の場は今後さらに広がっていくでしょう」と Heuff 氏は言います。
 

デジタル ツインについて、さらに詳しく知りたいですか?

不動産、都市計画、都市整備といった分野が大きく変化する中で、デジタル ツインのメリットは、今やより広く認識されるようになってきています。Unreal Engine が果たす役割については、こちらのリンクをご覧ください。
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