Image courtesy of Automobili Lamborghini S.P.A

Lamborghini、デジタルファーストの時代に合わせてギアチェンジ

Stefan Wenz
カー コンフィギュレーターの出始めの頃、その目的はただ 1 つ、見込み客が自動車を購入する前にパーソナライズできるようにすることでした。

初期の頃は、ディーラーで販売員がコンピューターを使ってこのプロセスを進めていました。その後、Web コンフィギュレーターが登場し、人々は内装、シート、ホイールなどを自宅で変えられるようになりました。

販売前のパーソナライズが、今も CG カー コンフィギュレーションの最大の目的であることに変わりはありませんが、これは氷山の一角でしかありません。コンフィギュレーターは高性能のリアルタイム プラットフォーム上に構築されることが多いため、自動車メーカーにとって、まったく新しいマーケティングの可能性が開かれます。

Lamborghini などの大手自動車メーカーでは、これが顧客や得意先に感動や興奮をもたらす方法を新たに生み出す力となっています。
 

デジタル パイプライン全体の自動化

Lamborghini は、VW Group の傘下にあり、有名な姉妹ブランドには、Audi、Bentley、Bugatti、Porsche、SEAT/Cupra、Škoda、Volkswagen などがあります。

Audi で始まったイノベーションがグループ全体でのビジュアライゼーションの変革につながったことについては以前に紹介しました。Automotive Visualization Platform (AVP) は Unreal Engine を利用したデータ変換パイプラインであり、全面的なコンフィギュレーションが可能な車両の製造用 CAD データを取り込み、マーケティング資料で使える状態にします。

VW Group は、デジタル パイプライン全体を自動化し、車両やコンテンツをボタン 1 つで更新できるようになりました。このため、カー コンフィギュレーターからマーケティング用パンフレットの画像、ソーシャル メディア向けのおしゃれな動画に至るまで、あらゆるものをわずか数分で作成できます。
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AVP は Lamborghini の新しいコンフィギュレーターの根幹となっています。Automobili Lamborghini でカー コンフィギュレーター開発戦略の責任者を務めるのは、デジタル プロダクト マネージャーの Lorenzo Bonora 氏です。Bonora 氏によると、カー コンフィギュレーターのアップデートが必要だと認識されたのは、ここ数年で自動車業界においてデジタルのビジュアルの質が大幅に向上し、商品との整合性が高まったことがきっかけでした。

それと同時に、顧客の購入プロセスにおけるデジタル エクスペリエンスの役割がますます重要になっています。オンライン ショッピングで Lamborghini の自動車をカートに追加するようなことはまだ当分なさそうですが、調査、構成の検討、広告露出は Web 上で行われることが増えています。Lamborghini はこのことを認識し、この機に乗じたいと考えています。

Bonora 氏は次のように説明します。「高級車の一流ブランドとして、お客様に最高水準のビジュアライゼーションを提供することで、当社の商品がもたらす高い価値を伝え、優れたカスタマー エクスペリエンスを提供したいと考えています」
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そのために求められる質を実現するには、既存のコンフィギュレーターをアップグレードする必要がありました。AVP をベースとするソリューションに切り換えることで、Lamborghini は、マテリアル、ペイント、ライティングなどのビジュアルの質と、システムの性能の両方を高めることができました。

「結果的に、より短時間で、より良い商品を提供できるようになりました。Unreal テクノロジーによる変換プロセスを活用することで、デジタル車両を短期間で市場に展開できるようになりました」と Bonora 氏は述べています。

Lamborghini のファンや顧客は、任意のデバイスからコンフィギュレーターの Web バージョンにアクセスし、憧れの車のコンフィギュレーションを行ったり、パンフレットを生成したり、独自のコンフィギュレーション コードを取得したりすることができます。顧客がこのコードをディーラーで提示すれば、同じ構成を取得できます。
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一方で、販売員は、コンフィギュレーターのディーラー専用バージョンにアクセスできます。このバージョンは、マーケティングや営業用のツールを備え、3D ストリーミング、動画、高解像度画像、その他のメディアなど、顧客がディーラーを訪れないとできない体験が用意されています。「こうしたツールにより、Lamborghini の世界観の重要な一部分として、ディーラーのイメージ、認知度、評価が高まります」と Bonora 氏は述べています。

ただし、AVP は単なるカー コンフィギュレーターではなく、カスタマイズしたマーケティング資料を瞬時に量産できるエンジンでもあります。このため、販売時に使用できるだけでなく、車の高品質のレンダリングをリアルタイムで作成し、購入プロセスのさまざまな段階で顧客に対して使用することもできます。
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デジタル タッチ ポイントのエコシステム 

顧客は、車を購入するまでに、購入のジャーニーに沿って複数のタッチ ポイントで企業と接触します。インターネットが登場するまでは、タッチ ポイントとなっていたのは、ディーラーを訪れる前に目にする雑誌やテレビの広告でした。2021 年現在、こうしたタッチ ポイントはデジタル化が進んでいます。

マーケターが使えるツールには、ソーシャル メディア広告、YouTube 動画、オンライン記事、Web の検索広告、Snapchat のフィルター、さらにはビデオ ゲーム内のプロモーションなどがあります。

車の購入プロセスでは、こうしたタッチ ポイントを大局的に評価することが効果的だと Bonora 氏は説明します。「デジタル エクスペリエンスは、複数のマルチデバイス タッチ ポイントから構成される 1 つのエコシステムとして考える必要があります。各タッチ ポイントにはそれぞれ特定の目的があります。第 1 段階として、コンフィギュレーションのプロセスを複数のフェーズ、目的に分け、さまざまなタッチ ポイントのグループを特定し、これらを相互に結びつけてから、シームレスで完全に統合されたプロセスを組み立てます」
 
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Bonora 氏は、この目標を達成するには AVP が最適なプラットフォームだと考えています。このプラットフォームは「エコシステム重視」であるからです。AVP は高度に統合されたビジュアライゼーション エンジンであり、前述のデジタル タッチ ポイントすべてを対象とするコンテンツを作成できます。また、超高速のクラウド レンダリングが可能であるだけでなく、Lamborghini の販売店ネットワーク向けのハイエンド ソリューションともなります。

AVP を使用することで、毎年、数百万種のマーケティング資料を、従来のマーケティング コストの数分の一で作成できます。たとえば、顧客がショールームで見ていた車とまったく同じものをパンフレットにすることも、リリース前のモデルを細部までリアルに再現した動画を作成することもできます。動画の背景、風景、車両の仕様は瞬時に変更が可能です。
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業界最高水準のリアルタイム ビジュアライゼーション

Lamborghini のような高級ブランドにとっては、ワールドクラスのコンフィギュレーターを保有していることが重要です。Lamborghini は、品質、信頼、技術的卓越の代名詞となっているブランドです。購入プロセスのかなりの部分がオンライン化している現在、このような高級品をどのようにデジタル化して、実際に触れているように感じられるほどリアルに表現するかということが課題となっています。

「カスタマー ジャーニー全体を通して、カー コンフィギュレーターが重要な役割を果たします」と Bonora 氏は言います。「カー コンフィギュレーターは、お客様の心の中で感情、欲望を生み出し、Lamborghini を早く自分のものにし、運転したいと思わせる必要があります」

このような気持ちを引き出すのは容易ではありません。高級車の威厳を十分に表す高精度のビジュアルとリアリティが必要です。「Unreal Engine のビジュアライゼーションは最高水準です」と Bonora 氏は言います。「使われるメモリやリソースが少ないため性能も高く、また、Unreal への変換処理にかかる時間は以前の数日間から数時間まで大幅に短縮されました。こうした改善は、車種のアップデートの面で大きな利点となるだけでなく、さまざまなアイデアを試し、短時間で繰り返し改善を加えることを可能にします」
 
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新たなマーケティングの可能性 

AVP のツールやテクノロジーも印象的ですが、最も優れているのは、その背後にある考え方です。そのシステムは、カスタマー ジャーニーがデジタルにシフトしたことを理解した上で設計されています。

それが理解できれば、新たな可能性が開かれます。これまで試したことのなかった新たなチャネルや新たなマーケティング手法の検討を開始できます。

代表例として、人気の自動車サッカー ゲーム Rocket League があります。Lamborghini は最近、Rocket League とのコラボレーションにより、ゲームの中で Lamborghini Huracán STO を運転できるようにしました。その結果、最新の公道仕様モデルの認知度が高まり、これまで未開拓だった膨大な潜在顧客にアピールできました。ビデオ ゲームは世界中に数百万人のプレーヤーがいるため、自動車メーカーが新たな顧客にアプローチし、新たなファンを獲得できる革新的な方法の好例といえます。
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メタバースの実現が近づくにつれ、ファッション、自動車、ゲームなどの業界の連携が強化されるはずです。Fortnite でアバターに Nike を履かせたり、Rocket League でレーサーが Huracán を運転したりといったクロスマーケティングの機会が増えます。Lamborghini のように、最先端のデジタル ソリューションや、高性能のリアルタイム テクノロジーを活用したプラットフォームにすでに投資している企業は、その成果を手にすることができます。 

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