画像提供:Danny Park

1 人の学生開発者が Unreal Engine で作成するボクセルベースのオープンワールド ゲーム、Rōnin Trail

80 Level
多くの人びとには devpachi として知られている Danny Park 氏は、ヴァージニア州マクリーンに在住のソロ ゲーム開発者です。彼はミシガン大学でコンピュータ サイエンスを勉強しながら 次回作であるオープンワールドのボクセル ゲーム、Rōnin Trail を開発しています。このゲームでは、プレイヤーは日本の田舎をさすらう浪人となり、生きる目的を探す旅に出ます。Rōnin Trail は devpachi にとって初めてのゲームのため、ボクセル グラフィックの設定が可能な使いやすいソフトウェアを必要としていました。そこで、今回の冒険におけるメインの駆動力として Unreal Engine が選ばれました。
Rōnin Trail の開発プロセスを詳しく知るために、開発者から Unreal Engine を使用してボクセル グラフィックを設定した方法、すでに設定が済んでいるゲームプレイ メカニクス、また、この作品の戦闘システムを作成した方法について伺いました。

Rōnin Trail の制作はどのように始まったのですか?

スタート時点での Rōnin Trail は、現在のものとは大きく違っていました。最初は、初めての大きなゲーム開発プロジェクトとして大規模なオープンワールドの MMORPG を作るという野望を掲げて制作を開始しました。昔、よく Realm of the Mad God という 2D MMO ゲームをプレイしていたため、最新のグラフィックでその 3D バージョンを制作したいと考えていたのです。もちろん、それを実現するためには大きなゲーム スタジオと莫大な費用が必要になるということはわかっていましたが、大きなプロジェクトを開始するにはそれが良い動機になりました。
 

ところが、Twitter をスクロールしていてボクセル アートによる美しい建物や自然の風景を見たとき、ゲームに対する考えが変わりました。Niklas Mäckle 氏のようなアーティストによる日本をテーマにした作品が特に気に入ったのです。ゲーム内にインタラクト可能なボクセル フォリッジを作ったらクールだと考え、背の高いボクセルの草を使用して最初のシーンを作成しました。

自然を楽しむ者として、ゲーム エンジンでリアルな自然の風景を作成していると満足感でいっぱいになり、心が休まりました。それを被写界深度 (DOF) エフェクトと組み合わせると、プレイヤー キャラクターで歩き回ることを楽しめる快適で居心地のよい雰囲気が出来上がりました。そこから、このゲームでは特に環境アートに力を入れることにしました。
画像提供:Danny Park
ゲームのストーリーと、その進み方について教えてください。

Rōnin Trail は、主君を失った侍が、生きる目的を持たない浪人となって放浪するゲームです。彼は生きていくために小さな仕事をこなして報酬を受け取ります。ゲームの舞台は、大きな戦いが終わり、国を統一する新しい幕府が開かれたときです。戦いの爪痕が残る谷を犯罪集団や盗賊が支配し、住民たちを脅かしています。プレイヤーの目標は、谷の平和を取り戻し、新たに生きる意味を見つけることです。

プレイヤーがメイン ストーリーを進めていくというスタイルではなく、Rōnin Trail のストーリーは緩いサイド クエストばかりにしようと思っていました。基本的に、プレイの目標は新しい生きる意味を求めて谷を旅することです。それは剣のスキルを磨いたり、村人の問題を解決してあげたり、あるいは昆虫のコレクション用に新しいカブトムシを捕まえるようなシンプルなことだったりします。主人公は放浪者ですから、このプロット構成は最適だと思いました。全体的なプロットやバックストーリーが垣間見えるような伝承のかけらを、探索や NPC との会話中に発見できるように追加する予定です。

設定に武家政治時代の日本を選んだのは、子どものころからラスト サムライのような映画や黒澤映画、サムライチャンプルーのようなテレビ番組を通じて侍に興味を持っていたからです。このゲームは一連の環境アートのシーンから開始したため、笠をかぶった孤独な侍のキャラクターを追加することがその美学に合う気がしました。
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このユニークなボクセル アート スタイルを思いついた経緯を教えてください。

多くの人びとがそう感じてくれているように、ボクセルとキューブは見て満足できるものだと思います。ボクセル モデルは、従来のモデリングとテクスチャリングとは対照的に MagicaVoxel で素早く簡単に作成することができます。それが理由で、メインのアート スタイルとしてこれを選択しました。3D モデリングの経験が浅いソロ開発者が制作を進めるには、素早く簡単な方法でモデルを作成してテクスチャリングできることが不可欠でした。

しかし、MagicaVoxel からエクスポートしたボクセル モデルはゲーム用に最適化されていないため、それらを Blender にインポートして低ポリゴン バージョンを作成する必要がありました。また、ソフト シェーディング法線マップを使用して、ゲーム内のキャラクターや植物に表示する「ソフト ボクセル」の外観を作成しました。これは私にとって大きな発見で、「ソフト ボクセル」の外観により、モデルのシャープなエッジが取り除かれ、シーンが落ち着いて見えるようになったのです。ゲーム内に表示される葉と木のほとんどは、アート スタイルのわずかな変更に基づいています。
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なぜ、そしていつ、ゲームに Unreal Engine を使用することを決めたのですか?

2 年前にプロジェクトを開始したとき、Unreal Engine を選択しました。理由は、簡単に習得でき、他のエンジンと比べると最高のライティング機能とグラフィック機能が備わっていたからです。Unreal Engine には、見事な環境をすばやく作成するために必要なツールがすべて揃っています。それはまさしく、このゲームの環境アートに必要なものでした。

エンジンの エディタ には使い勝手のいいツールが揃っており、ワークフローを最適化し、生産性を向上できます。ソロ開発者が大きなプロジェクトを開発するには欠かせないことです。私はプログラマーですが、Unreal Engine のブループリントでビジュアル コーディングも使えるようになったことで開発スピードが大幅に向上しました。

ゲームの開発において、私がマップ設計からインベントリ システムのプログラミングまで幅広い役割を担っていますが、Unreal Engine に対して何かが足りないと感じることはまったくありませんでした。すべてが最適化され、開発者がアクセスできるように作られていますし、大量のサポートやドキュメントも用意されているため、何でもできるように感じられます。本当に自由に使えるため、とても気に入っています。

このゲームのために設計したゲームプレイ メカニクスがあれば教えてください。

Rōnin Trail は新しい場所をさまよい、探索するゲームです。そのため、ゲームのワールド内を旅することが面白くなければなりません。探索を楽しくするために、魚釣り、虫取り、料理、キャンプ設営などのサバイバル技術や、ワールドに生息する独自の動植物を多数追加しました。どうぶつの森をプレイしていて、画面の端に珍しい昆虫を見つけるとなんだかうれしくなりますよね。そんな些細なことが歩き回ることを面白くします。

仕事のない浪人として、プレイヤーは食料や通行料、船代などを支払うためにお金を稼ぐ必要があります。そこで、報酬システムやランダムなサイド クエストなど、クエスト関連のメカニクスをたくさん追加しました。クエストは人びととの会話や、掲示板の仕事のリストから見つけることができます。
 
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ゲームの戦闘システムについて、詳しく教えてください。

Rōnin Trail の戦闘は、本格的でリアルになるように設計しました。敵を倒すのも倒されるのも、一瞬です。私は体力が設定されている巨大なスポンジを叩き続けるようなアーケードスタイルのゲームが好きではなく、このゲームのスタイルには合わないと考えていました。勝者が数秒で決定する現実世界のような戦闘を望んでいたのです。常に死と隣り合わせであることが、戦いに激しさと緊張感を与えると思います。

できるかぎり戦闘を流動的でリアルにすることで、没入感を損なわないようにしたかったのです。そのためにさまざまなパーツをまとめてアニメートし、ブレンドすることを何百回も繰り返して、ようやく満足できる状態にたどり着きました。剣を振るうとき、自由に回転したり移動したりして剣の軌道を制御することができるため、細やかな立ち回りや攻撃の受け流しを行うことができます。また、攻撃の合間にスタンスを切り替えて状況に対応したり、派手なコンボを繰り出すこともできます。

一般的な侍は長い刀と脇差しと呼ばれる短い剣の大小 2 本を持ち歩いているため、Rōnin Trail でもさまざまな状況に応じて剣を切り替えることができます。長い刀は通常の戦闘に適していますが、その長さにより、振り回すときに障害物に当たる可能性があります。短い剣は接近戦や奇襲攻撃に使用されます。

可能な限り戦闘が満足できるものになるように攻撃が敵の物理特性と相互作用するようにしたため、すべての攻撃には実際のウェイトを設定しました。また、周囲に飛び散り、水に拡散するリアルな血のエフェクトや、剣で敵の体を切り落とすことでリアルさや生々しさを感じることができます。
画像提供:Danny Park
ゲームのワールドと美しい環境には、どのようにアプローチされましたか?

ゲームのワールドを適切なものにしようと数えきれないほどの作業を繰り返しました。もっと質を上げるために、今でも毎日作業しています。私のアプローチは、見た目がよくなくてもとりあえず開始し、コンスタントに最新のモデルと入れ替えていきます。1 つの木におそらく 100 時間ほど費やし、納得できるまでさまざまな木のモデルをテストしたり、葉のテクスチャを変更したり、幹のメッシュを交換したりしました。最終的に形が決まると、それをゲームの残りの部分に適用することができます。私も木のモデルの葉と幹はすべてそのようにしました。

Rōnin Trail では、ドラマチックに風が吹き荒れる草原での決闘に勝利したときの壮大な気分や、霧が立ち込める森を奥深くまで探索するときの緊張感とミステリアスな空気など、さまざまなムードや雰囲気を伝えたいと思っています。これらのムードは Unreal Engine の豊富なライティング設定やボリュメトリック フォグ設定を調整し、シーンに合うアセットをモデリングして作成します。

サウンド デザインは、雰囲気作りに重要な役割を果たします。たとえば、夕暮れ時のひぐらしの鳴き声はノスタルジックで物悲しい雰囲気を醸し出し、静かな冬の嵐の中で雪がきしむ音は、孤独で静寂な世界を伝えます。音楽もまた雰囲気に多くのものを加えるため、今回の Zhao Shen 氏とのコラボレーションを嬉しく思っています。

とはいえ、それぞれの場所の雰囲気が定まっているわけではありません。真昼の強い日差しから陰うつな雷雨まで、その日の天候や時間により、場所の雰囲気は大きく変わる可能性があります。
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このような大きなプロジェクトをソロ開発者として開発する際の苦労には、どのようなものがありますか?

ソロ開発者としてオープンワールドのゲームを開発することは大変です。開発で特に時間がかかるのは、ゲーム独自のアート スタイルに合わせてアセットをゼロから作成することです。また、何百ものストーリー クエストやサイド クエストをゲームに加えることにも苦労しています。私はゲームプレイやアートをデザインすることは好きですが、ストーリーやセリフは得意ではないためです。ゲームのサポーターたちから、オープンワールドに登場するクエストや NPC のアイディアをもらえないかと考えています。

ソロ開発は難しいものですが、楽しんでいます。たとえば、アニメーションがゲームプレイ プログラミングやバランスと緊密に連動する流動的な戦闘システムなど、このプロジェクトには 1 人で開発しているからこそ可能になることもあると感じます。アニメーションに小さな修正を加えてすぐにアニメーションを更新し、どのように再生されるかをテストすることができます。また、ソロ開発では常に楽しく、興味深いものに取り組み続けることができます。インベントリ システムのプログラミングなどで燃え尽きてしまったときは、攻撃アニメーションや建物のモデリングに取り掛かることができます。
画像提供:Danny Park
Unreal Engine 5 は試されましたか?

Unreal Engine 5 のベータ版が最初にリリースされたときに使ってみましたが、NaniteLumen のテクノロジーは素晴らしいと思いました!このゲームのボクセル アートは、特に建物で非常に高いポリゴンになるため、最適化をせずにゲームで直接使用することは無理でした。しかし UE5 を使用すると、パフォーマンスにほぼ影響を与えることなく 1 つのシーンに何千ものボクセル モデルを設置することができました。Rōnin Trail に Nanite を使用すれば、アセットの最適化について心配する必要がなくなるため、開発は大幅にスピードアップし、美しいアートの作成に集中することができるでしょう。Rōnin Trail のライティングも Lumen を使用するとさらにリアルになり、生き生きとするでしょう。

次はどのようなステップをお考えですか?プロジェクトをフォローしたりサポートしたりするには、どうすればよいでしょうか?

次のステップは、Kickstarter キャンペーンを終了し、オープンワールドでの新しいコンテンツの作業を続けることです。資金を調達し、ボクセル アーティストたちと協力してゲームの美しい建物や村をデザインするつもりです!ゲームの歴史的背景やアイディアについての詳細は、Kickstarter  のページでご確認ください。

Rōnin Trial の最新情報については、Twitter をご覧ください。また、Rōnin TrailSteam でリリースされる予定ですので、ぜひウィッシュリストへの追加をご検討ください!

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