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人気漫画「ONE PIECE」の 25 周年を記念する、熱い RPG アドベンチャー『ONE PIECE ODYSSEY』

Mike Williams
1997 年 7 月、尾田栄一郎先生は週刊少年ジャンプで「ONE PIECE」の第 1 話を公開しました。シリーズは、モンキー・D・ルフィと増え続ける麦わらの一味が、究極の財宝「ひとつなぎの大秘宝 (ワンピース)」を求めて航海に乗り出す、大胆不敵な快挙を詳細に語っています。25 年にわたり、漫画 1076 話、アニメは 892 エピソードというとてつもない数を経て、「ONE PIECE」はいまだに順調です。

シリーズの 25 周年を記念するため、バンダイナムコエンターテインメントは RPG の『ONE PIECE ODYSSEY』を開発しました。シリーズのこれまでへの愛情あふれるオマージュでもあります。プレイヤーは、大きな謎に包まれた島「ワフルド」で、麦わらの一味の全員を制御でき、「ONE PIECE」の歴史の中の傑作シーンに触れることができます。尾田先生自身がデザインしたまったく新しいキャラクターを中心とする、このユニークな冒険の中で、これらのシーンは互いに結びついています。

バンダイナムコエンターテインメントと開発パートナーのイルカに、麦わらの活気あふれる能力を RPG で実現すること、この海賊アドベンチャー向けに新しい島を作成すること、尾田栄一郎先生の不朽の名作の精神を捉えることについて、お話を伺いました。
「ONE PIECE」シリーズが 25 周年を迎えるなかで、このゲームでの主な目標は何でしたか?

『ONE PIECE ODYSSEY』のメイン プロデューサー、都築克明氏:
『ONE PIECE ODYSSEY』は、「ONE PIECE」の連載 25 周年を記念するタイトルとして、開発がスタートしました。それにあたって、世界中のファン皆さんがワクワクする「ONE PIECE」のゲームの形を考えていたところ、ファンの方々から「ONE PIECE の冒険要素をもっと楽しみたい」という声を多くいただいたんです。

今までの「ONE PIECE」のゲームは、アクションが多く、キャラクターのカッコよさや、アクションの気持ち良さを重視していたと思いますが、 対する『ONE PIECE ODYSSEY』では、「ONE PIECE」の世界をもっとしっかり作り込んで、麦わらの一味の冒険を RPG として描いていくことを主な目標にしたプロジェクトです。

「ONE PIECE」のビデオゲームには長い歴史があり、RPG もいくつも作られてきました。『ONE PIECE ODYSSEY』を以前の作品と差別化するために、どのようにしましたか?

都築氏:
「2 年後の麦わらの一味の冒険」を RPG として描いたことは無かったと思いますし、 ハードのスペックや技術面も含めて、今の技術でそれをしっかり描けていると思います。

また、「ONE PIECE」では、麦わらの一味が新たにたどり着いた島でいろいろな謎に触れたり、ドラマティックな冒険を繰り広げたりしますが、 それをゲームとしてしっかり体験できるものを作れたら、25 周年記念にふさわしいタイトルとなるのではないかと思いました。「ONE PIECE」の世界に触れる冒険、そして「ONE PIECE」 World Seeker の後の麦わらの一味の冒険を体験できることが本作ならではの特徴になっているのではないかと思います。
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「ONE PIECE」はアニメと漫画が長く続いています。『ONE PIECE ODYSSEY』では、まだ継続中の麦わらの一味の冒険の後半、新しい能力と新世界に慣れてからしばらく経ったころを舞台にしています。特にこの時期を舞台とした理由は何ですか?

都築氏:
2017 年ごろに開始したのですが、そこから 2 年を掛けてまずは RPG として重要なメインエピソードの物語を制作していきました。そのメインエピソードの大枠を制作していたタイミングというのが、原作ではホールケーキアイランド編が連載されていた頃でして、そのくらいの時系列をイメージして遊んでいただくと齟齬が無い作りにしています。

というのも、本作は当初から開発が長期間になることは想定していましたので、本作で描かれる冒険譚は時系列をしっかり意識したうえでドラマを作り込んでいます。ですので、ホールケーキアイランド編の前後で起こった物語である、というイメージを持っていただければ、その後に原作やアニメで描かれている展開とも齟齬は無く、1 つの物語としてしっかりエンディングまで楽しんでいただけるものになっていると思います。

これほど長く続いているシリーズを元にストーリーに富んだ RPG を作成するうえでの課題について教えていただけますか?

都築氏:
やはり、原作・アニメで描かれたエピソードをどうゲームとして取り込むかの部分だと思います。プレイヤーからするとどの章も魅力的な内容です。ただし、既に知っている物語をそのままゲームにした場合には、先の展開が分かってしまいます。それをどう避けながら、原作・アニメで描かれていた魅力をゲームで体験できるようにするかは大きな課題だったと思います。
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『ONE PIECE ODYSSEY』をターン制 RPG にしたのはなぜですか?

都築氏:
本作はより多くの方々に楽しんでいただけるように、慣れ親しんだ王道のコマンドバトルを採用しています。ただし、それはあくまで基盤として採用しているに過ぎず、本作のコンセプトでもある「ONE PIECE の世界に触れる冒険」を成り立たせるための、『麦わら一味との遭遇』を感じられるものにするためにもコマンド バトルは相性が良かったという理由もあります。どうしてもアクションゲームですと 1 キャラクターだけを使ったアクションにフォーカスされてしまいますが、ターン制のコマンドバトルの魅力は、複数のキャラクターの活躍を同時に描きやすいということにあると思います。その意味で、麦わらの一味の冒険を体験するというコンセプトにターン制のコマンド バトルは相性が良かった。

ただし、オーソドックスなコマンドバトルを作っていくうちに、“味方と敵が一列に並んで攻撃を繰り返していく”という形が、「ONE PIECE」のバトルらしくないという意見が出てきて、 そこからより「麦わらの一味の戦いを体験する」ための本作オリジナルの戦闘システムがいくつも生まれました。

『ONE PIECE ODYSSEY』では、4 つの記憶の世界をめぐってストーリーが展開され、プレイヤーは 「ONE PIECE」ユニバースの過去のストーリーを再訪します。4 つのストーリーはどのように選んだのですか?

都築氏:
RPG として非常に大事なのは「ドラマ」と「世界の体験」だと思っています。ドラマに関しては 1 つのゲーム作品として「エンディングにたどり着いた時にしっかり満足感が得られて、物語のテーマに共感できること」だと思いました。

ですので、本作の基本の物語は麦わらの一味が伝説の島“ワフルド”で冒険をするような内容になっています。ただし、「ONE PIECE の体験」を考えた際に、やはり「ONE PIECE」の世界を体験するのであれば、漫画やアニメで描かれた魅力的な世界が良いだろうというところからアラバスタやウォーターセブンを訪れるような展開を用意しています。

結論が分かっている物語は RPG としての「次はどんなことが起こるんだろう」という楽しみを奪ってしまうため、「2 年後の一味がかつてのアドベンチャーに行ったら」という展開にしています。そして、それらの体験は 1 つ 1 つが分断されたものになってしまうと RPG の物語になりませんので、テーマを持った 1 つの物語に帰結するような作りにする必要がありました。今回設定した 1 つの物語のテーマに合う原作のストーリーとして、この 4 つを選定しています。

グランドログというアニメーション シーケンスで、『ONE PIECE ODYSSEY』のアートスタイルを維持しながら「ONE PIECE」シリーズの過去の歴史を再度伝えています。なぜこの要素をゲームに加えたのですか?

都築氏:
グランド ログでは、これまで麦わらの一味がマンガやアニメで体験してきた出来事を、本作ならではの表現で復習できるものとして入れさせていただきました。というのも、「ONE PIECE」は世界中で多くの方々に愛されており、それが故に作品に対する知識はそれぞれ異なると思ったからです。ですので、作品に詳しくないプレイヤーも安心して楽しんでいただけるよう、そして本作をクリアした後に、「もう一度マンガやアニメを読み直したい」と思っていただけるように、このグランドログを入れています。
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アディオとリムという 2 人の新キャラクターは、原作者の尾田栄一郎先生と共同で制作されたそうですね。「ONE PIECE」の世界に加わるこの 2 人の新キャラクターはどのような経緯で誕生したのでしょうか。

都築氏:
この 2 人は麦わらの一味が伝説の島「ワフルド」で出会う新たなキャラクターとなっております。アディオはこの島に流れ着いた兄貴肌の探検家、リムはアディオと共に暮らす海賊嫌いの少女です。本作のドラマはオリジナルストーリーを軸としつつも、記憶の世界という形で「ONE PIECE」のマンガやアニメで描かれた舞台で冒険できる作りになっております。上述の通りそれらの体験を麦わらの一味の一貫した行動原理を元に 1 つの物語のテーマに収束させる必要がありました。

アディオとリムは物語のテーマを体現する役割を持っている非常に重要なキャラクターとして当初から想定はありました。メイン シナリオのプロットが完成した段階で、尾田先生に相談させていただきました。その結果、尾田先生から非常に魅力的なデザインをご提供いただいた次第です。その後、いただいたデザインを元にメインストーリーのライティングで実際のキャラクター性を固めたり、周辺のサイドストーリーで性格を深掘りしていったりしながら 2 人のキャラクター像をさらに深めていきました。

麦わらの一味ならではのチームワークをターン制 RPG のフォーマットに適応させるために、どのように取り組みましたか?

都築氏:
「ONE PIECE」の戦いを改めて振り返り、彼ら「麦わらの一味」がどういった特徴のある戦いを過去してきたか、に向き合い続けました。たとえば、これまで原作アニメで描かれてきた戦いは、船長のルフィを筆頭にそれぞれのクルーが自らの役割を果たすという形が多い。ゾロは強大な敵を倒すという役割があったり、たとえばナミとチョッパーは 2 人で問題解決にあたって、ウソップは援護射撃をする。どの長編でも麦わらの一味は自分たちの役割をそれぞれが担いながら、ルフィの道を作って前に進んでいったりしている。そういった特徴をゲームに落とし込むというアプローチをしています。
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スクランブル エリア バトルシステムにより、エンカウントして戦闘が発生した際にパーティと敵をさまざまなエリアに配置するようになっています。この戦闘システムはどのように考え出されたのですか?

都築氏:
上述の「麦わらの一味の戦いをもう一度捉える」というアプローチの中でチームで話し合った結果、バトルのエリアを 4 つに分けて戦うという現在の形になりました。これにより、クルー 1 人 1 人の属性やスキルという特徴を活かし自らのエリアで役割を果たしながら、時には他のエリアに移動したり援護したりしながら戦うという、 麦わらの一味らしい戦いが表現できたと思っています。

プレイヤーは麦わらの一味のメンバー全員を操作できますが、島を探索するときには 1 人を選ぶ必要があり、戦闘のパーティに入れるのは一度に 4 人までとなっています。プレイヤーがすべてのキャラクターを使うよう促すために、どのように能力のバランスをとりましたか?

都築氏:
今回は麦わらの一味の戦いを楽しんでほしいため、敵との相性や状況を考えてある程度狙って交代を推奨するような仕組みやバランスになっていたりします。ですので、バトルのフィールドに最初に誰を出すか、相手のタイプによっていつどこで交代させるかをという遊びが楽しめます。この遊びに加え、突発的なイベントが発生するドラマティック・シーンや、キズナ ゲージなどの各種システムも、すべてのキャラクターを上手く切り替えて攻略する遊びに寄与してくれています。
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『ONE PIECE ODYSSEY』にはドラマティック シーン システムがあり、特定の戦闘でキャラクター固有の課題が加えられています。全体的なエクスペリエンスにドラマティック シーンを加えるにあたり、どのように設計しましたか?

都築氏:
ターン制のコマンド バトル自体は「ONE PIECE」と相性が良いと思いましたが、そのまま実装するのではなく、より「ONE PIECE」らしいアプローチはないかと常にチームのメンバーとは考えを巡らせていました。その中で、RPG での戦闘を飽きさせないために、突発的に「ONE PIECE」らしいイベントが発生するドラマティック シーンというシステムも用意するに至りました。さらにそこで巻き起こる麦わらの一味の会話劇もふんだんに用意することで、本作のバトルを構成しています。

『ONE PIECE ODYSSEY』はワフルドという新しい島が舞台となっています。この環境の設計とアート スタイルのために、どのようなアプローチをとりましたか?

株式会社イルカ リードコンセプトアーティスト 茂木コーキ:
ワフルドはオリジナル要素であるため、原作マンガ・アニメの世界観と地続きであると感じられるように意識して設計しました。ワフルドには原作を参考にしたアセットがいつくか配置されています。徘徊するモンスターのデザインも含め、ワフルドは「ONE PIECE」の世界に登場しても破綻のない設定とデザインになっています。アニメや原作マンガの絵柄をスタート地点にしつつ、どういったルックが今作にふさわしいかチーム内で多くの検討をしました。

原作マンガのフリーハンドのイメージを 3D CG で表現するのにハッチングを取り入れました。影にハッチングが入る事で厚みと温かみのあるルックを実現できました。ハッチングの入れ具合はアセットごとに丁寧に調整しました。同時に尾田栄一郎先生の描く独特な雲の形も再現する事で「ONE PIECE」の世界観を表現しています。
Image courtesy of Bandai Namco Entertainment, Inc.
『ONE PIECE ODYSSEY』に Unreal Engine が適していたのはなぜですか?

株式会社イルカ テクニカルアーティスト 黒川イサナ:
社内で UE4 での RPG の開発経験があります。弊社はその経験を生かして、クライアントに求められるクオリティを実現するための道筋が Unreal Engine で想像できたことがまず大きいです。Enlighten と Unreal Engine を組み合わせてのライティングのイテレーションの速さや絵を作るための知見がたまっていたからです。

また規模の大きいタイトルとして、Unreal Engine は国内、国外ともにノウハウの共有や Unreal Developer Network (UDN) での情報共有が活発に行われていて、特に Unreal Fest や Deep Dive などの情報を広く公開してくれるスタンスにはとても助かりました。

個人の知見ではどうしようもできない大規模開発に対しての知見が活発に公開されていたのが最終的には Unreal Engine が適した部分だと思います。内部開発のゲームエンジンも利点は多いと思いますが、エンジンが広く公開されていることで個々人が学びやすい環境を手にできているところも大きいと思います。

Unreal Engine のツールまたは機能で気に入ったものはありましたか?

黒川氏:
チームとして助かったなと思うのは Editor Utility Widget です。自分はテクニカル アーティストとしてデザイナーをサポートする立場にありまして、ユーザー インターフェースを自作するほどのプログラミングの知識はないのです。Editor Utility Widget の機能を使えば簡単に作業を効率化するツールが UI とともに提供できたのでとても気に入っています。

もう一つ特に気に入ってるのはコレクション機能です。最初 Editor Utility Widget でコンテンツブラウザーのアセットを条件でピックアップするツールを作ろうとしたのですが、 コレクション機能に条件付きの検索結果を保存できるのに気が付きそちらに切り替えました。検索結果をほかのチーム メンバーと共有するのも簡単で地味に便利でとても気に入ってます。

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