Image courtesy of Square Enix Co., Ltd.

『オクトパストラベラーⅡ』は、その見事な HD-2D スタイルで、より大きく、より大胆な世界を創り上げる

Mike Williams
株式会社アクワイア (ACQUIRE Corp.) は、1994 年設立のゲーム会社です。主な代表作には、「天誅」シリーズ、『勇者のくせになまいきだ。』、『ロード・トゥ・ドラゴン』があります。また、『オクトパストラベラー』に引き続き、『オクトパストラベラーⅡ』の開発を担いました。
株式会社スクウェア・エニックス (SQUARE ENIX CO., LTD.) は、「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」シリーズなど、世界的な超大作 RPG ゲームのパブリッシャーです。これらのシリーズが、素晴らしい 3D グラフィックスとテンポの速い戦闘アクションで進化を続けている一方、時にはもっとシンプルな時代に戻ってみるのもいいものです。

そのような思いから、スクウェア・エニックス社と『勇者のくせになまいきだ。』や『天誅』で知られる株式会社アクワイア (ACQUIRE Corp.) は、共同で『プロジェクト オクトパストラベラー』を制作しました。ディレクターの宮内継介氏によると、ドット絵を「現代の技術でリッチに見せる」ということを目標に制作が始まりました。その結果、2D ピクセルを豊かな 3D 環境で表現する「HD-2D」が実現し、8 人のキャラクターとそれぞれの物語をプレイヤーが自由に体験できるようになりました。
 

2018 年にリリースされたとき、タイトルは単に『オクトパストラベラー』と短縮されました。Polygon は、オリジナルの『オクトパストラベラー』を「Nintendo Switch が必要とする魔法の RPG」と表現し、ING は、HD-2D スタイルによって、「現代的なテイストがある一方、古き良き時代の魅力を楽しめる」ゲームになったと述べました。

それから 5 年後、スクウェア・エニックス社とアクワイア社は、PC、Nintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5 で『オクトパストラベラーII』を発売し、HD-2D に戻ってきました。『オクトパストラベラーⅡ』は、GameSpot が「理想的な続編」、VG247 が「およそあらゆる面で前作より優れている」と評価するなど、すでにオリジナルを超える称賛を浴びています。HD-2D スタイルの改善、8 人の新ヒーローのデザイン、そして胸躍る冒険ゲームの制作に Unreal Engine がどのように役に立ったか、スクウェア・エニックス社とアクワイア社にお話を伺いました。
 
Image courtesy of Square Enix Co., Ltd.

続編に向けて、何か目標や達成したい点があったのでしょうか?

アクワイア社:
開発初期から「変化ではなく進化」というのを続編のコンセプトに掲げていました。SFC 時代のドット絵 RPG で遊んだ思い出を現代風にアレンジした前作から、『オクトパストラベラーⅡ』では、遊んでいた思い出をさらに進化させることが目標でした。

1 作目の『オクトパストラベラー』は HD-2D のアートスタイルで先駆的な存在でした。2 作目のアートスタイルを改善するために心がけたことはありますか?

アクワイア社:
『オクトパストラベラー』の印象は守りつつ、ドット絵のゲームに見えるギリギリの高い密度での絵作りを目指しました。例えばキャラクターは顔のドットの印象は前作と近いですが、等身が高くなっていることにより、前作よりもイベントやバトルで密度の高いアクションをすることが可能になっています。マップは前作よりドット密度が上がったことにより、画面一つひとつがユニークなドット絵で描かれたような有機的な絵作りとなりました。この密度の高い画面に対して本作から昼・夜などの動的ライティングが行われることで、『オクトパストラベラーⅡ』はグラフィック進化を大きく印象付けていると思います。
 
Image courtesy of Square Enix Co., Ltd.

2.5D のゲームと従来の 2D や 3D のゲームを比較した場合、デザイン上の難しい点はありましたか?

アクワイア社:
キャラクターは 2D のドット絵なので、厚みのない紙のような状態です。一方、背景はほとんど 3D で制作されているので、キャラクターとの親和性の高い背景表現を考えることが、このタイトルの難しい点だと思います。

特に本作では 3D 的なカメラワークを多く使っているため、どの程度までなら絵を破綻させずにカメラ回転を入れられるかが課題でした。90 度近いカメラ回転があるバトル中演出や、180 度近いカメラ回転があるイベントなど、かなりギリギリまで攻めています。

ビジュアル面以外に、『オクトパストラベラーⅡ』は前作を超えた部分はありますか?

アクワイア社:まず世界の規模感が大きく進化しています。今作では海を挟んだ2大陸の構成になっており、大陸間を船で自由に移動することも出来ます。同時に各主人公のストーリーも、海を跨いだスケールの大きいものになっています。また各マップは前作よりもさらに、探索のしがいがあるものになっています。

『オクトパストラベラーII』の世界観は、前作と比べていかがでしょうか?

スクウェア・エニックス社:
『オクトパストラベラーII』では、より広大な世界・時代をテーマにしました。

前作では中世ヨーロッパを模した、わりと限られた世界が舞台になっていましたが、本作では分かつ海を隔て東西に大陸を有する「ソリスティア」と呼ばれる大地が舞台となり、航路が開拓され大型船が海を往来したり、蒸気を使った新技術の発明に沸いたりしている時代になっています。

文明がかなり進んでいる都会の街がある一方で、これまでになかったアジアンテイストの国があったり、獣人が住む島国があったりと、より多彩な文化・風景を楽しめる世界観になっています。

ちなみに、前作『オクトパストラベラー』と物語のつながりはありませんので、本作から初めて遊ぶという方でもお楽しみいただける内容になっています。

探索の余地を残すために、どのようにマップをデザインしたのでしょうか。

アクワイア社:
前作に続いて本作も移動中はカメラ固定になるので、1 画面の中にプレイヤーが行きたくなる場所がなるべく入るように意識しています。遠くに見える宝箱への行き方を考えたり、次のマップが雪国なのか砂漠なのかを想像させたり、タウンやダンジョンがありそうな気配を感じさせたり…本作ではカヌーやはしごでの移動があり、船を使って大海も移動もできるので、前作よりも探索の幅は広がっています。「え?こんなところにも行けるの?」と思うような場所もあるかもしれません。

『オクトパストラベラーⅡ』では、鉄道や蒸気機関車などの追加により、より現代に近い世界を実現しています。なぜこのようなタイムジャンプにしようと決めたのでしょうか?

アクワイア社:
前作とは異なる世界観、ストーリーであることが一目で伝わるように、より近代的な時代をベースとして世界を構築しました。ただ、単にすべてが新しくなったというわけではなく、前作のような中世の時代感を残したタウンやフィールドも存在します。新しい時代感と古い時代感、両方を楽しめるように世界全体をデザインしました。
 
Image courtesy of Square Enix Co., Ltd.

新たに追加された昼夜のサイクルで、ゲームに変化が生じることはありますか?

アクワイア社:
新たに導入された昼夜の概念は見た目の変化だけでなく、街に存在する NPC の行動パターンが変化し、主人公が使用できるフィールドコマンドも異なるものになります。たとえば扉の前にいる NPC に退いてもらいたい場合、狩人の「けしかける (昼の FC)」だと難易度が高いが、盗賊の「闇討ち (夜のFC)」であれば簡単に気絶させることができるなど、攻略性にも幅が出ています。
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『オクトパストラベラーⅡ』は単独のゲームですが、前作とのストーリー上のつながりはあるのでしょうか?

アクワイア社:
基本的にはほぼ存在していません。ただ前作をプレイしている方に喜んで頂ける要素が、少しだけ盛り込まれています。

新キャラクターのデザインはどのように進められたのでしょうか?

スクウェア・エニックス社:
まずはシナリオチームと各キャラクターのディティール情報をまとめ、それを元にキャラクターデザインを担当する生島 (直樹) さんに鉛筆でさっと描いていってもらい、荒彫りしていくところから始めました。

全員の体格や特徴のバランスを確認し、そこから詳細を詰めていったのは、剣士と踊子からだったと思います。例えば、剣士ヒカリは、前作の剣士オルベリクが屈強な剣士然としたキャラクターだったので、今回は力よりも技や速さで勝負するようなイメージにしたらどうなるだろう、などといった感じです。

前作のキャラクターとの違いも意識しつつデザインしていってもらいました。盗賊ソローネと商人パルテティオなどは、衣装に文明・時代を表しやすい設定だったので、そのあたりも差別化しやすかったと思います。
Image courtesy of Square Enix Co., Ltd.
前作では、キャラクター同士が交流できる場面がありました。続編では、キャラクター同士がもっと交流できるようになるのでしょうか?

アクワイア社:
本作では、キャラクター同士での物語が展開する「クロスストーリー」が用意されています。そこで巻き起こるイベントや掛け合いを通して、メインストーリーとは異なるキャラクタたちの一面に触れられる内容になっています。また、もちろん前作にもあった「パーティチャット」も健在です。

「底力」は戦闘システムに追加された新システムです。その仕組みや設計の経緯について詳しく教えてください

アクワイア社:
「底力」は、戦闘中に蓄積されるゲージを消費し、発揮する能力です。キャラクターごとに異なる「底力」を持っており、そのどれもが戦闘において危機を突破する力を秘めています。

この「底力」は、戦闘におけるプレイヤー独自のドラマを生みだしたく追加したシステムになります。強大なボスと戦っているなか、絶妙なタイミングで「底力」を発揮し、窮地を脱することができたり、あるいはゲージがたまりきらずにヤキモキしたり。パターン化してしまいがちな戦闘に、そういったエッセンスが加わることで、特にボス戦においてより白熱した展開を生み出すことができました。
Image courtesy of Square Enix Co., Ltd.
前作では各キャラクターに独自のフィールドコマンドがありました。特に注目したいフィールドコマンドがあるでしょうか?

アクワイア社:
夜のフィールドコマンドは、すべて本作で追加された新しい要素となるため、まずそれらに注目してもらいたいというのと、昼のフィールドコマンドについても、そのいくつかが前作からアレンジされています。たとえば剣士は「試合」で勝利した相手の技を覚えることができ、踊子は「誘惑」で連れている人と、戦闘中にセッションをすることができます。

Unreal Engine がゲームに適している理由は何ですか?

アクワイア社:
アーティストが、やりたい表現を自身で試せるところです。本作では時間帯変化を Unreal Engine のシーケンサーを使用して実現しています。『オクトパストラベラー』ではライティングでウソをつかないとキャラクターと背景のマッチングが破綻する箇所が出てくるため、2D、3D 両方からのさまざまなアプローチを検討する必要がありました。アーティスト主導による多くのトライ & エラーができたのは、Unreal Engine だったからだと思います。

コンソールコマンドをはじめ、プロファイラーなど標準のデバッグ機能が豊富で、ブループリントによってゲーム開発のイテレーションを素早く繰り返し行える点です。ゲーム開発中は仕様変更などにより、しばしばプログラムの組み換えが発生しますが、ブループリントの組み換えなどで簡単かつ素早く試すことができ、またデバッグ機能の拡張も容易かつ柔軟に対応できるため、ゲーム開発に適していると思います。

チームで特に役に立った UE ツールや機能はありますか?

アクワイア社:
本作ではシーケンサーを多く使用しました。時間帯変化だけではなく、イベントのカメラワークやバトルのアビリティ、エンカウント演出などです。プレビューが容易に行え、パラメータもリアルタイムで変更できるため、演技の確認もしやすく、プログラムからの制御の幅も広がり、演出に厚みを出すことができました。

前作の Switch のみでの発売とは異なり、『オクトパストラベラーⅡ』は Switch、PC、PlayStation 4、PlayStation 5 で発売されます。Unreal Engine が、さまざまなプラットフォームへの開発に役立った点はありますか?

アクワイア社:
プラットフォームごとの設定をリアルタイムで変更できる点が非常に役に立ちました。設定変更のたびに再ビルドを行う必要がなく、コンソールコマンドからリアルタイムでクオリティ変更・反映が行えるため、パフォーマンスやクオリティのチューニングなど画面を見ながら調整することができ、マルチプラットフォームにおける開発効率が上がりました。

お時間ありがとうございました。お忙しいなか、ありがとうございました。『オクトパストラベラーⅡ』の詳細はどこで見られるでしょうか?

スクウェア・エニックス社:公式サイトをご覧ください。 まだちょっと迷っているという方も、製品版にセーブデータを引き継ぎ可能な無料体験版『オクトパストラベラーⅡ プロローグデモ』も配信されていますので、ぜひお試しください!

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