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ストーリーとゲームプレイを見事に融合したゲーム It Takes Two

Jimmy Thang
Josef Fares 氏は、魅力的なストーリーが展開される Co-op (協力型) ゲーム Brothers:A Tale of Two SonsA Way Out の開発を指揮し、ゲーム ディレクターとしてその名が知られるようになりました。その結果、Josef Fares 氏は独自のビジョンを持つゲーム ディレクターと評価され、瞬く間に熱狂的な支持者を獲得しました。

スウェーデンのストックホルムを拠点とするゲーム デベロッパー Hazelight を設立した Fares 氏とこのスタジオは、Co-op (2 人以上のプレイヤーによる協力プレイ) に特化したストーリーを重視したゲームのパイオニアを目指しています。このインタービューで Fares 氏 は、近日発売予定の Co-op アクション アドベンチャー プラットフォーム ゲーム It Takes Two の開発において、ゲーム デザインの新境地を開拓することを目指して、大胆かつ没入感のある手法で、タイプの異なるゲームプレイ メカニズムとストーリーの緊密な統合をどのようにして実現したかについてお話くださいました。また、これからゲーム制作を行う人に向けて、刺激的かつ有効なアドバイスもいただきました。
 
 
映画を何本か監督して成功を収めた後に、ゲーム開発に転向した理由について教えてください。

Fares 氏: それは、私が昔から熱狂的なゲーマーだったからです。小さい頃からゲームに親しんできました。6 歳か 7 歳のときに初めて当時のゲーム機 Atari を手にして以来、ずっとゲームをプレイしています。ゲーム制作は私の長年の夢だったのです。10 年前に Brothers のデモを実際に制作するチャンスがあったとき、思わず飛びつきました。私は決めたことは必ず実行する性格なのです。

BrothersA Way Out の開発から学んだ経験で、 It Takes Two の開発に役だったものはありますか?

Fares 氏:実に多くのことを学びましたね。もちろん、チームをより良いものにすることができましたし、どうすればより優れたゲームを制作できるか、技術的にエンジンをどのように操作すればよいということも理解できました。ただし、一番重要なのは、ストーリーとゲームプレイ メカニズムをどう組み合わせるかを学んだことです。チームの全員がさらに経験を積むことができました。
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これまで制作されたゲームは、それぞれどれもトーンがまったく異なりますね。Brothers はもの悲しい、苦難に満ちた長旅を、A Way Out は映画のような演出を、It Takes Two はよりカラフルで遊び心のあるビジュアルを表現しています。なぜ、It Takes Two にはこのトーンが適していたのでしょうか?また、スタジオ内で異なる性質の要素を盛り込みたいという制作者本来の希望があったのでしょうか?

Fares 氏: 実のところ私たちチームはさまざまな要素を盛り込むのが好きなんです。私自身、単なる続編を作ることにはほとんど興味がありません。絶対に続編を作ることはないとは言いきれませんが、通常は、まったく違うことをやってみるのが楽しいと感じます。それに、It Takes Two では、パブリッシャーと協力して開発を進めていたので、できたのです。つまり、やりたいことは何でもやってみることができました。何か違うことを試すのは常に面白いですね。それこそが、私がゲーム業界について、そして自分たちの取り組みで気に入っている点です。完全にユニークなもの、メカニズムや、トーンなどすべてにおいて新鮮で、新しい何かを毎回試すことができます。これからもできる限り、新しいものを試していきたいと思っています。ただ、続編を制作しないとは言いませんが、現時点では、あらゆるものを変えていくことが大切だと思っています。仕事は新しことに取り組む方が楽しいですから。同じようなゲームを何度も制作していては飽きてしまいますよ。

ラブコメのゲームを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

Fares 氏: 当初からラブコメにしようと考えていたわけではありませんが、これは今までになかったジャンルです。つまり、ゲームの世界に本格的なラブコメのタイトルはほとんどありませんでした。これまでにないものに挑戦するのは楽しかったですね。ただし、映画でもラブコメを制作するのはとても難しいのです。にもかかわらず、今回はラブコメをインタラクティブなゲームとして制作しました。一般的に、ゲームでストーリーを語ることは、インタラクティブなメディアであるために、映画に比べてストーリーやペースをコントロールすることが非常に難しいのです。しかし、このゲームではとてもうまくいったと自負しています。
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It Takes Two は、ゲームプレイとストーリーの要素を融合させ、インタラクティブなストーリーテリングの新境地を切り開くことを目指したとのことでしたが、そのために、どのようなアプローチを採用したのか詳しく教えてください。

Fares 氏: ライターとデザイナーが 2 つの異なるゲームを作成することもありますが、私はストーリーで起こるすべてのことをゲームプレイに反映すること、つまり、ストーリーでキャラクター同士が出会い、何かを見るといった状況が描写されていれば、それをゲームプレイで再現することを重視するというアプローチにこだわりました。[独立した] 1 つだけのメカニズムを使用したわけではありません。ユーザーは、「どんなゲームプレイ ループか」や「このゲームのゲーム メカニズムはどのようなものか」、「どんなところが面白いのか」といったことを話題にしますが、私たちゲーム制作者ではそういったことはあまり問題になりません。実現しなければならない要素は楽しさだけではありません。もちろん、ゲームは楽しいものである必要があります。しかしながら、楽しさがすべてというわけではありません。ゲーム制作者は「ストーリーの方向性」、「実際にストーリーをプレイするためには、どのようなデザインやメカニズムを作成すればいいのか」といったことを考えなければなりません。そこでゲーム制作者はストーリーによりマッチしたメカニズムを作成するように努め、またその逆に、ストーリーがメカニズムによりマッチするようにも努めます。ゲームプレイ メカニズムに合ったストーリーテリングを目指しているのです。It Takes Two では、こういった要素が融合されていることをおわかりいただけると思います。つまり、プレイヤーはゲームの中で起こるすべての出来事をゲームプレイで体験するのです。

スタジオが Co-op に特化したゲームに力を入れている理由を教えてください。

Fares 氏: 映画館に行ったり、物語を語るときは、まず、ストーリーを伝えてから、そのストーリーを一緒に体験していきますね。しかしながら、現在の Co-op ゲームのほとんどは、ストーリーを重視していません。キャラクターのレベル アップなどを目的としたゲームが大半を占めます。クリエイティブな側面から見ると、Co-op ゲームは多くの可能性を秘めていると考えています。そして、まだ試されていない要素がたくさんあるのです。Hazelight は、Co-op に特化したストーリー ゲームを専門に制作している世界で唯一のスタジオです。つまり、シングルプレイヤーのゲームに Co-op モードがあるのは普通ですが、最初からパーソナリティもメカニズムも違う 2 つのキャラクターをデザインして開発するゲームは他にありません。これこそが、Hazelight が取り組んでいることなのです。クリエイティブな側面で探求すべきことがまだたくさんあるので、これからもこの取り組みを継続していきたいと考えています。
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Co-op に特化したゲームを制作することで、Hazelight スタジオは、他のオプションで Co-op モードを搭載するゲームにはない、新鮮でユニークなゲームを制作することができていると思われますか?

Fares 氏: ある意味では、そうだといえます。なぜなら、私たちは最初から Co-op に特化したゲームを制作しているためです。このようなゲームの制作では、デザインの観点では他のゲームとは異なる考え方をしなければなりません。このことが、プレイヤーに新鮮でユニークだと感じてもらえる内容につながっているのだと思います。最初から Co-op に特化していない場合は、シングルプレイヤー ゲームを作成して、そのゲームに Co-op の要素を追加しなければなりません。あるいは、キャラクターをレベルアップさせたり、ドロップイン、ドロップアウトさせるシステムを備える 4 プレイヤーの Co-op プレイゲームを作成する必要があります。そのため、おっしゃる通り、Co-op に特化したゲームでは、すぐにユニークな新鮮さを実現することができます。

It Takes Two は、ストーリー性を重視したゲームであるにもかかわらず、プラットフォーム、シューティング、パズル、ダンジョン クロウルなど、ジャンルを超えた圧倒的なゲームプレイを備えていますね。これほどまでにタイプの異なるゲーム要素を盛り込むことは、どれくらい重要だったのでしょうか?

Fares 氏: 先程も触れましたが、ストーリーに話を戻すと、私たちは、ゲームプレイが常に変化することだけを望んでいたわけではありません。つまり、ゲームは非常に反復的なものだと思います。そのため、あらゆるゲーム要素を盛り込まれているのはその反復性が理由のひとつであることは間違いありません。もう一度ストーリーに戻ると、私たちはこれからもストーリーをより良いものにしていくつもりですが、ストーリーで起こることはすべて、プレイヤーがプレイすべきことなのです。つまり、プレイヤーの行動によって実際にストーリーが決まるのです。これが、私たちのストーリーが非常にダイナミックである理由の 1 つです。前作の A Way Out を例に挙げると、キャラクターがボートを見つけたら、乗ります。車を見つけたら、運転します。A Way Out では、一貫して新しい要素を提供し、ストーリーの体験にうまくフィットさせているのです。なぜなら、プレイヤーを常にストーリーに関わらせたいためです。
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以前、本作では、困難だけれどもやりがいのあるゲームプレイを提供すると発言されていましたね。パートナーと一緒にプレイするようなそれほどハードコアではないゲーマーにも楽しんでもらえるようにするために、プレイヤーにはどのような形式でチャレンジを提示していますか?

Fares 氏: チャレンジの提示は繊細な部分です。ただし、繰り返しますが、このゲームは、ストーリーと体験が中心となります。チャレンジはいくつかありますが、コントローラーをテーブルに投げ出してしまうようなチャレンジではなく、エキサイティングで魅力的な、本当に冒険したり、映画を見たりしているような感覚を覚えるチャレンジを提示します。ただ、もちろん、プレイヤーが長い間クリアできないことがないよう、スタジオ内で繰り返しテストしています。そうしないと、ストーリーの進行に影響するからです。ですから、繊細な部分ですが、私たちはチャレンジを完璧な形で提示できたと考えています。

本作では、幻想的な風景が広がる多彩な環境が用意されていますが、その背景にはキャラクターの感情が反映されているのではないでしょうか。It Takes Two の世界観を構築するために採用したアプローチについて、詳しく教えてください。

Fares 氏: まず、お伝えしたいのは Hazelight チームの素晴らしさです。チーム メンバー全員が本当に有能です。私は常々「ゲームがゲームの方向性を示してくれる」と言っているのですが、チームのメンバーはとても積極的で、さまざまなアイデアを試し、最終的には制作しているゲームに本当に合ったものを突き止めてくれます。そうすることで、アートに変化をもたらし、新しいことに取り組むたびに、新鮮でユニークな感覚を保つことができるのです。しかしながら、多くの人は、分割画面のゲームでは、アプローチの方法をまったく異なる方法で考える必要があることを忘れています。まったく異なる方法で考えないと、同じ画面に 2 つの異なるゲームを描くことになってしまうからです。技術的なあらゆる側面についても検討しなければなりません。もちろん、毎秒 10 フレームでゲームを動かすといったことはできません。ただ、分割画面のゲームであることを考えると、It Takes Two は申し分のない完成度だと考えています。
It Takes Two の開発チームの規模と、ゲーム制作にかかった期間を教えてください。

Fares 氏: そうですね。現在、約 60 名です。開発期間は約 2 年半~ 3 年です。結構時間がかかりました。大変なこともありましたが、自分たちが本当に作りたいと思ったゲームを制作することができて、とても満足しています。また、ゲームが成熟するまで時間を取って、ゲームがゲーム自身の方向性を示してくれるまで待つようにしています。ゲームがゲームの方向性を示すことは本当によくあることだからです。

It Takes Two は、PlayStation 5 や Xbox Series X に加え、最新のコンソールでも発売されますが、次世代プラットフォームでのゲーム開発で最も嬉しいと感じるのは何でしょうか?

Fares 氏: To 正直なところ、嬉しいと思うのは次世代コンソールの性能が向上した点だけですね。私が本当に重視しているのはゲームです。現時点で、さらにパワフルなコンソールを利用できるのは嬉しい限りです。そう思うのは、ゲームのグラフィックの忠実度をどれだけ高められるかは、コンソールによって決まるからです。なぜなら、よりパワフルなコンソールでは、ゲームでより美しいビジュアルを実現できるだけでなく、前世代のコンソールでは不可能だった、さらに複雑なメカニズムのゲームを制作できるためです。
ゲーム制作者を志す人たちに何かアドバイスをお願いできますか?

Fares 氏: 「自分のやるべきことをする」ということですね。「ゲームはこうでなければならない」などという意見に振舞わされないようにしてください。従来のデザイン ルールにとらわれてはいけません。そのルールを忘れなさいとまでは言いませんが、ルールから少し外れたことにも挑戦してみましょう。「すべてのゲームは楽しいものでなければならない」ということにとらわれて、楽しみだけに重点を置かないようにしましょう。人の意見を鵜呑みにしないで、自分ならではのトーン、自分ならでは意見を追求しましょう。もちろん、従来のルールなどを取り入れることもできますが、耳を傾けるべきなのは、自分の心の声なのです。ありきたりに聞こえるかもしれませんが、これは大事なことです。そして、これを実行している人は驚くほど少ないのです。

貴重なお話をありがとうございました。It Takes Two の詳細はどこで確認できるでしょうか?

Fares 氏: 私がナレーションを担当し、ストーリーやゲームプレイを詳しく説明したゲームプレイ トレーラーを是非ご覧ください。また、It Takes Two’s Web サイトにもアクセスしてください。

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