Image courtesy of Arc System Works | Cygames
独創的な戦闘システムで親しみやすさと奥深さを融合したグランブルーファンタジー ヴァーサス
Jimmy Thang
2020年6月4日
Arc System Works
UE4
Unreal Engine
cygames
granblue fantasy: versus
アート
インタビュー
ゲーム
デザイン
Cygames
はこれまで対戦格闘ゲームの開発経験はありませんでしたが、人気のモバイル RPG、
グランブルーファンタジー
をベースにしたものを制作したいと考えていました。この夢を実現するため、Cygames は、対戦格闘ゲームの開発で名高い
アークシステムワークス
に協力を求めました。アークシステムワークスは
Guilty Gear
シリーズや
ドラゴンボール ファイターズ
などを手がけている会社です。2 社が共同で開発した
グランブルーファンタジー ヴァーサス
を、ゲームのレビュー サイト
GameCrate
は「誰もが楽しめる対戦格闘ゲーム」と評価しています。
このジャンルに対する新鮮な視点を持った Cygames は、これを対戦格闘ゲームの特定のメカニクスを作り変えるチャンスととらえました。そうした根本的な変更の成果として、
グランブルーファンタジー ヴァーサス
が生まれました。本作の戦闘システムは、初心者にとっては理解しやすく、上級者にとっては独創的な奥深さを加えたものとして、高く評価されています。Cygames とアークシステムワークスがどのようにこの快挙を成し遂げたかについて、また、両社の間の協調的なワークフローについて、Cygames のクリエイティブ ディレクター、福原哲也氏、アークシステムワークスのリードバトルディレクター、関根一利氏、アークシステムワークスのデベロップメント マネージャー、安部秀之氏、アークシステムワークスのアート ディレクター、澤田秀明氏、アークシステムワークスのリード モデラー、川崎壮一氏、アークシステムワークスのリード プログラマー、和仁大樹氏に話を伺いました。
Guilty Gear
、
ドラゴンボール ファイターズ
など、アークシステムワークスのこれまでの作品と比べると、
グランブルーファンタジー ヴァーサス
は、規律正しい地上ベースの対戦格闘ゲームになっていて、膨大なコンボの記憶や空中コンボよりもポジショニングに重点が置かれています。このようなスローなペースが本作に合っていたのはなぜでしょうか。
Cygames、クリエイティブ ディレクター、福原哲也氏:
この対戦格闘ゲームは、モバイル ゲームの
グランブルーファンタジー
がベースになっています。
グランブルーファンタジー
のプレイヤーはゲーマーですが、多くのアクティブ プレイヤーは、家庭用ゲーム機を持っていないか、とても長い間家庭用ゲーム機でゲームをプレイしていません。このため、ボタン入力をシンプルにし、スローなペースを目指したほうが、こうしたプレイヤーが初めて、あるいは久しぶりに格闘ゲームを楽しめると考えました。そういった
グランブルーファンタジー
特有の事情は抜きにしても、最近の格闘ゲームは全般的にスピードと複雑さが増し、初心者にはハードルが高くなっています。本作がこうした状況をリセットするチャンスだと考えました。
多くの必殺技は従来のようにコマンド入力で実行できるほか、ワンボタンでも実行できます。ただし、ワンボタンで実行した場合はクールダウン時間が長くなります。このため、初心者は攻撃を仕掛けやすくなり、上級者は溜め技の予備動作が見えなくなることを戦略的に活用できます。この新しい戦闘のメカニクスはどのように考案されたのですか。
福原氏:
戦闘のメカニクスについては、アークシステムワークスさんからさまざまな提案を受けました。ただ、スキル、その使い方、クールダウンの仕様は、開発当初から決まっていました。これが
グランブルーファンタジー
に最も即した表現と思われたからです。別の見方をすれば、タイトルが
グランブルーファンタジー
でなければ、このシステムには違和感があったはずです。このシリーズの格闘ゲームが本当に可能なのか議論はありましたが、結果的には成功だったと思います。
本作は、シンプルなオートコンボや専用のガード ボタンがあるという点では
ソウルキャリバー
など、必殺技の操作が簡単という点では
大乱闘スマッシュブラザーズ
などと比較されています。ほかの対戦格闘ゲームから着想を得ることはありましたか。
福原氏:
ほかのゲームから着想を得るというよりも、最初は社内に目を向け、スタッフから意見を集めました。格闘ゲームを専門とする会社ではないため、格闘ゲームに馴染みがなかったり、この分野に熟練していなかったりする従業員がたくさんいました。集まった意見のなかで特に多かったのは、コマンドが難しすぎること、そしてガードができないことの 2 点でした。そこで、こうした側面に対処することがベストと判断しました。大部分の着想はこのように得られました。
グランブルーファンタジー ヴァーサス
の戦闘システムは、初心者にとっては理解しやすく、上級者にとっては奥深さをもたらすと高く評価されています。この微妙なバランスの実現について教えていただけますか。
福原氏:
スキル システム、ガード、ほかのさまざまなアクションのルールはうまく調和していると考えています。特にスキルとガードのメカニクスはシンプルですが、ほかの 2D 対戦格闘ゲームではこれまでフルに活用されていないものです。この点で、本作には再評価、再定義できるルールがいくつかあります。このジャンルには長い歴史と定着したスタイルがあるため、1 つのミスでもプレイヤーを困惑させてしまうことがありえるとわかっていました。しかし、両社は、目指す開発のコンセプトをよく理解し、あまり躊躇することなく一緒に前進を続けました。最終的に、こうして誰もが楽しむことができるゲームが完成しました。
アークシステムワークス、リードバトルディレクター、関根一利氏:
プレイヤーが新しいゲームを始めるときには、初心者であるかどうかに関係なく、どうすればいいかがすぐにわかるものを求めがちです。もっと熱心なプレイヤーは、複数の選択肢から最適なものを自らが選べることを重視する傾向があります。そこで、本作で最初に行ったのは、入力方法を 2 通りに分けてから、プレイヤーが状況に応じて最適な方法を選択できるようにすることでした。
格闘ゲーム、あるいは全般的に対戦ゲームは、ゲームプレイが状況への反応によって常に変化します。ですから、選択肢についてよく考える必要があるようにすることで、より長く楽しめるゲームになります。少なくとも私はそう考えます。たとえば、対空技で反撃する場合、その状況でその技を使用することを選択する必要があったはずです。この判断は簡単ですが、上達を目指す場合、その判断ができたことに上級プレイヤーでも満足感が得られます。システムはこのコンセプトを念頭に開発しました。
別の点として、スキルに簡易入力ではなくテクニカル入力を使用した場合、テクニカル入力が有利になりすぎないように注意しました。格闘ゲームはテクニックに左右されるため、わずかに有利であるだけで大きな差になります。今回は、ゲームの一部を習得しやすくし、テクニック面では少しの練習で追いつけるようにしました。高いテクニックを必要とするゲームを制作するよりも、対戦相手の行動を読むことを優先させました。
ゲームのキャラクターは、近距離攻撃、遠距離攻撃を得意とするもの、投げキャラなど、多岐にわたります。楽しくバランスよくプレイできるキャラクターのラインアップはどのように決めましたか。
福原氏:
格闘ゲームのリリース時には、多様な戦闘スタイル、性別をバランスよく組み立てます。キャラクターのラインアップを含め、すべての背後にセオリーがあると思っています。私たちは初期段階で、そのセオリーに基づき、ゲームに含めるキャラクターの構想、選択についてアークシステムワークスさんに相談しました。この段階で、当然のことながら、スピードタイプ、投げキャラなど、それぞれ異なる分類に当てはまるキャラクターがたくさん見つかりました。たとえば武術を使うキャラクターなら、最終的にリリース時のファスティバと DLC のソリッズに落ち着きました。
アークシステムワークス、デベロップメント マネージャー、安部秀之氏:
最初に、Cygames さんに使用したいキャラクターのリストを作っていただき、それぞれが近距離攻撃か遠距離攻撃か、そのパワー レベル、スピード、テクニカル レベルについて大まかに設定していただきました。その後、キャラクターをバランスよくデザインできるよう、このリストを使ってキャラクターと戦闘スタイルを対応づけました。
この時点で、最終的なリストにまだ入っていなかったキャラクターもいます。膨大な数のキャラクターから選べたため、誰もが満足のいくキャストを揃えることができました。
キャラクター デザインと戦闘スタイルの対応づけは簡単だったため、リストが決定したら、各キャラクターのスタイルを決めるのに時間はかかりませんでした。最初はカタリナから、その後、ほかのキャラクターに取り組みました。新しいキャラクターを実装するたびに、プレイテストを繰り返し、バランスを調整しました。また、バランスを保つためのルールがいくつかありました。たとえば、画面端でのダメージの変化やヒット硬直の長さなどです。こうしたルールを通して、キャラクターの個性がにじみ出ていれば、私たちは満足です。
グランブルーファンタジー ヴァーサス
には、フル ボイスで展開され、戦利品のアップグレード システムを備えた、ベルト アクションの新しい RPG モードがあります。この辺りのデザイン目標について教えていただけますか。
福原氏:
最近は、勝敗が関わるゲームは不快に思われることがあります。格闘ゲームは対戦に限定されませんが、闘争心を楽しくかき立てながら、キャラクターの魅力に光をあて、さまざまなアプローチからゲームの魅力を最大限に高めることが重要であると考えています。格闘ゲームに興味があるが、うまくプレイできない人や、あるいは格闘ゲームを今までプレイしたことがない人のフィードバックから、人々が格闘ゲームに抵抗を示す最大の理由は負けたくないからだという結論に達しました。
個人的に、以前プレイしていた格闘ゲームがありました。ほかのプレイヤーとオンライン対戦する気分ではなかったときは、アーケード モードにしていました。アークシステムワークスさんの BLAZBLUE のシングル プレイヤー モードはかなり作り込まれていて、よくプレイしていました。それはとても楽しく、同じようなものを本作にも加えられたら最高だと考えました。
本作は
グランブルーファンタジー
であるため、両社とも RPG を軸として展開することに異論はありませんでした。RPG モードの意義は、RPG のようなストーリーを進みながら、その過程で格闘ゲームのメカニクスを学べることです。最初のほうの基本的なメカニクスに加え、ボス戦は特定のメカニクスのチュートリアルとしての役割を果たします。アレス戦では上段と下段のガード、コロッサス戦ではジャンプと回避のテクニックが主体となります。RPG モードの終わりまで、プレイヤーは対戦モードに応用できるスキルを覚えていきます。
本作は、見た目は優れた 2D 格闘ゲームですが、実際にはスタイルに沿った 3D 格闘ゲームで、アート アセットによって 2D のように見せています。このデザインの判断が
グランブルーファンタジー ヴァーサス
に合っていたのはなぜでしょうか。
福原氏:
グランブルーファンタジー
のアート スタイルやモデリングを変換するには、
Guilty Gear Xrd
のすばらしいリミテッド アニメーションとアート スタイルを使用するのが最適な方法だと考えました。たとえば、3D 物理演算を使用してマントの動きを作り出すことはできますが、リミテッド アニメーションでは、少し時間はかかりますが、フレームごとにかっこいい動きやシルエットを加えることができます。これは 3D 物理演算では不可能です。この方法なら、パフォーマンスを下げることなく、原作のイラストレーションの美しさを表現することができます。
アークシステムワークス、アート ディレクター、澤田秀明氏:
その理由として、原作のアートに、ある種の暖かみがあり、
Guilty Gear Xrd
で使われているアニメのような人気の 2.5D スタイルによくマッチしていたことが考えられます。背景アートに使われていたモデルは、直線的な部分が非常に少なく、手描きであるかのようないびつさが見られます。キャラクターのモデルも、モーションと角度に応じて顔の表情や体の動きの描写が変わるように作成されました。全般的に、こうした点を強く意識して、手描き風になるように心がけました。
攻撃は満足感、手応えが感じられます。この点はどのように実現しましたか。
アークシステムワークス、リードバトルディレクター、関根一利氏:
本作は連続コンボを中心とするゲームではないため、全体的にヒット ストップを長めに設定しました。ただし、格闘ゲームではテンポが特に重要であるため、スピード感を失わない範囲で最大のしきい値となるヒット ストップにしています。
本作は Cygames とアークシステムワークスの共同開発ですが、連携はどのように行われたのか、また開発チームのワークフローについて詳しく教えていただけますか。
福原氏:
全般的な作業の分担については、Cygames が、コンセプト アート、2D イラストレーション、対戦中の会話、音楽の制作の監修を担いました。テクニカル面、3D モデルの作成、シーンの制作 (台本、エフェクト、サウンド エフェクトなど) はアークシステムワークスさんが担当しましたが、各要素と全体的な方向性は Cygames が統括しました。
アークシステムワークスさんのスタッフは、
グランブルーファンタジー
への愛、理解が強く、対戦の仕様やキャラクターの動きについて、よく提案を受けました。Cygames 側の人間として、そして
グランブルーファンタジー
IP 全体の責任者として、私自身は窓口の役割を果たし、開発が順調に進むように、可能な限りの具体的なフィードバックを提供しました。
安部氏:
今回のワークフローでは、密に連携を取り合い、その都度、ゲームのクオリティを高めることができました。Cygames さんの返信、そして開発中にシーンごとに必要な情報、相談、確認が早いことにいつも驚かされました。返信は具体的でわかりやすく、開発チームはストレスなく作業を進めることができました。Cygames さんからのフィードバックは、より良いプロジェクトのためであることがわかっていたため、困難もありましたが、開発チームは常に Cygames さんの要望に応え、それを超えることを目指しました。Cygames さんの提案が当社にとって負担になりそうなものであったとしても、一緒に仕事ができるのは光栄なことであり、開発中にスタッフのやる気が削がれることはありませんでした。この反復プロセスの結果、クオリティの高いゲームを開発できたと感じています。
Unreal Engine が
グランブルーファンタジー ヴァーサス
に合っていたのはなぜでしょうか。
アークシステムワークス、リード モデラー、川崎壮一氏:
Unreal Engine が適切だった理由は次のとおりです。
編集のハードルが低く、必要に応じて簡単にマテリアルを作成できました。
プログラマーを介さなくても、マテリアルをインポートし、ゲームに実装するのが簡単でした。
ボーンの追加など、モデル データの更新が簡単で、こうした変更が既存のデータに大きく影響しませんでした。
アークシステムワークス、リード プログラマー、和仁大樹氏:
さらに次の点を加えます。
ゲーム開発の開始時に、UE を使った開発経験があったため、習得が簡単というメリットがありました。
無料で利用できるプログラムであるため、ユーザーが多く、実装したい具体的な機能がある場合や、問題が発生した場合などに、インターネット上で情報がすぐに見つかることがよくあります。
グラフィック データを実装し、画面に反映したあと、プログラマーなしでデザインを簡単に変更できます。
ほかの開発者向けに、ゲーム デザインに関するアドバイスはありますか。
関根氏:
私自身は次のことを常に念頭に置いています。
ゲームプレイに対して一貫したコンセプトを持つようにします (どのようなやり取りを作成したいか、プレイヤーにどのような経験をして欲しいか)。
ゲーム内のルールを決めます (プレイできること、できないこと)。
そうしたルールに従って、できることを増やし、プレイスタイルにバリエーションを持たせます。
以上を踏まえたうえで、ルールによって消耗することなく、自然な流れに任せます (ルールにとらわれすぎると、プレイ可能な範囲が狭くなる)。
ゲームを自分でプレイテストする場合も、批判的な見方を忘れないようにします。
前日に正しいと思ったことが今日も正しいとは限らないので、検討し直します。
オリジナル IP に取り組むかどうかに関係なく、作品に敬意を示します。
たまには自分に優しくしてもかまわないでしょう。
本日はありがとうございました。
グランブルーファンタジー ヴァーサス
について詳しく知りたい場合はどうすればいいですか。
福原氏:
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