Tales of Arise™ & 🄫BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

バンダイナムコはどのように世界のアワードで認められた Tales of ARISE を開発したのか

2016年、長い歴史を持つ RPG シリーズである『テイルズ オブ』シリーズで新しい取り組みを行うと決めたバンダイナムコは大きな責任を負うことになりました。『テイルズ オブ』シリーズは1995年の1作目のリリース以来、16 のメインタイトルに、数多くのスピンオフ、そしてマンガ、アニメ、オーディオ ドラマでも展開が行われています。新作の制作にはバランス感覚が求められます。新しいゲーマーを呼び込みつつ、長年のファンにも馴染みやすいものにする必要があります。

バンダイナムコは時間をかけて開発に取り組むことにしました。5年間にわたってチームのベテランと若手の両方が協力し、完璧な新作を目指して Tales of ARISE の開発を行いました。このゲームの舞台は、中世のような世界ダーナと、発達した世界レナです。二人のキャラクターが出会い、圧制者に立ち向かいます。ファンが愛するアニメから影響を受けたデザインとキャラクターを重視した物語に加えて、次世代コンソール互換性、広大な世界、まったく新しい戦闘体験で、これまで以上に没入感のある作品になりました。その開発の努力はThe Game Awards での 2021年のベスト RPG の受賞として実を結びました。

この成功の背景にさらに迫るために、バンダイナムコ スタジオ、及び、親会社のバンダイナムコ エンターテインメントの開発チームに話を伺いました。究極の『テイルズ オブ』体験の制作においてどのように Unreal Engine を活用したのか見てみましょう。
 

Tales of ARISEの開発には何人が携わり、開発期間はどのくらいだったのでしょうか?

富澤 祐介氏、プロデューサー、バンダイナムコ エンターテインメント:
開発期間は前作『テイルズ オブ ベルセリア』の開発終了後から段階的にスタートしていましたので2016年の後半からとなります。最終的に2021年の前半に開発を完了するまで、ちょうど5年かかったことになります。

その間関わった延べ人数はカウントが難しく、エンドロールの長さから想像していただければと思いますが、常に 100 名を超える関係スタッフが動き続けていたのではないでしょうか。決して敢えて5年の期間を開けたわけではありません。ただ、終盤の一年はこれまで以上にじっくりとクオリティアップと次世代機対応に費やすことができたことは結果的にプラスになったと考えています。

『テイルズ オブ』シリーズの新作は、新しさと親しみやすさのバランスをどのように考えて作られましたか?

富澤 祐介氏:
その二つの両立は本作の重要な課題でした。 『テイルズ オブ』への経験は薄い新規のJRPGファンには、このシリーズが持つ特徴を まさに「親しみやすくかつ新鮮なもの」と感じてもらいたいというイメージがありました。ブランドの持つ親しみやすい安心感や風格は維持しつつも、今の時代にプレイすべき同時代性を感じさせるJRPGが求められているはずだ、という方向性を実現すること。そのためにはシリーズの伝統が持つ価値を再評価しつつも、その提供の仕方や見せ方を新たな時代に向けて工夫する必要がありました。

そうした課題や方向性をブラさないために、開発テーマとして「継承と進化」という言葉を掲げましたが、それを開発内部だけでなく既存ファンのみなさんにも共有しながら開発を進めていきました。開発チームとしても本作の幾多のチャレンジが本当にファンや新規のユーザーに受け入れられるのか不安も大きかったと思います。そうした中でも長期にわたって諦めずに作りきることが出来たのは、それを信じて走り続けてくれた開発チームと、同じく信じて応援してくれたファンの皆さんの声には深く感謝します。
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シリーズで初めて Unreal Engine を採用したタイトルです。今作に適していた理由を教えてください。

香川 寛和氏、ディレクター、バンダイナムコ スタジオ:
マルチプラットフォーム対応のエンジンであること、ソースコードのカスタマイズが可能なため、絵作りを始めとしてプロジェクトにあったシステムを構築しやすいこと、エディタ環境の機能が豊富で作業がしやすいこと、社内の Unreal Engine を使用している別プロジェクトの知見などを活用しやすいこと、が主な利点かと思われます。

Tales of ARISE では、各エリアが過去のゲームよりもはるかにオープンであることに加えて、変化に富み、視覚的にもユニークです。各エリアが新鮮でワクワクするような探索ができるように、どのようなプロセスで世界をデザインしたのでしょうか?

岩本 稔氏、アートディレクター、バンダイナムコ スタジオ:
世界全体を設計し、物語的役割やゲーム的な役割を表現しつつ、地域ごとに特色がでるよう絵的なアイデア足しながらをデザインしていく流れとなります。

世界デザインとしては、対立するレナとダナの構造がわかるように、上空に惑星レナを配置しました。各地域ごと、各領将の城が高い位置にあり、忌々しく見下ろしてきます。

物語的役割として、『壁』が一つのキーワードでした。隷属されたダナの人々を物理的に、心理的にも閉じ込める壁を、主人公アルフェンが解放者として壊し、解放していく物語。これらをデザインに取り入れています。カラグリア、行動の自由がなく閉鎖的な空間を、『物理的な壁』と炎の門で表現。シスロディア人々が他人を信じられなくなる猜疑心という障壁、『心理的な壁』を口を紡ぐ極寒の地、光のない地として表現しています。

また地域の地水火風光闇などの星霊力などをモチーフに風土やキーカラーを決め、バリエーション豊かなになるように調整しています。細部の配置物や動線などはマッププランナーと遊びの内容を合わせて設計し、仮配置をしてデザインし、細部を詰めていきます。最終的には実際に何度もゲーム内を歩き、モンスターやアイテムの配置、各種イベントや見た目の変化を確認しつつ細かく調整して作成していました。
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キャラクターの個性的で細かいデザインから、変化に富んだロケーションまで、Tales of ARISE はとても豪華です。本作のセル画調のビジュアルスタイルの制作過程を教えてください。

岩本 稔氏:
テイルズファンの方はもちろん、RPGファンの皆様や世界中の皆様に興味をもってもらえるような表現スタイルはなにかを考え、セルルック、CG映像表現、イラスト表現、などが候補に残りました。

それぞれ検証をすすめていく上でテイルズが培ってきたアニメ・漫画的なデザインや省略と誇張、暖かな色彩表現からくる『親しみやすさ』を持ちつつ、今の時代のゲームの『品質向上』としてライティング、質感表現、大気感などが表現できる『絵画調』という表現に大きな可能性を感じました。

このアートスタイルはテイルズと親和性がありつつ、他タイトルと比べても独自性も持っていたためこちらを突き詰めていく事を決断し、研究を重ねていき今の形となっています。

シリーズの戦闘を前作よりも改善するために、チームはどのように取り組んだのでしょうか?

香川氏:
Tales of ARISE ではユーザーが直感的にバトルを楽しめるように「分かりやすさ」を重要視しました。
弱点は属性では無く、弱点部位を用いてアクション的に立ち回り、敵を見てブーストアタックで有利になるように出来るだけその状況を見て判断出来るような仕組みにしています。敵の攻撃も分かりやすくして、回避出来るように前動作を入れつつも、ギリギリで回避するような快感を味わえるように調整しました。また、開発の途中ではメンバーから回避のみにしよう、回避は出来るだけストレス無く出来るようにしようと快適性も上げていっていました。直感的なバトルや快適性、爽快感を高める事で Tales of ARISE のバトルが生まれたと思います。  
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戦闘中のスペルやコンバットには、目を見張るようなビジュアル エフェクトが施されています。このようなアクション性の高い瞬間にパフォーマンスを維持するために、チームはどのようにゲームを最適化したのでしょうか?

岩本 稔氏:
主に以下の3種類の最適化を行っています。描画処理的な部分の高速化、アセットの最適化、エフェクトデータの最適化です。描画処理的な部分の高速化に関しては、エフェクト(半透明)の描画解像度を2段階に分けて描画・コンポジットする仕組みを導入しています。

これによって、画面の情報量の変化が大きいところは解像感などの品質を維持しつつ、それ以外の領域を低解像度で描画することで、半透明の描画負荷を抑える仕組みとなっています。

また、半透明エフェクトはデプスフェードや屈折系の表現を使うことが多いのですが、それらの表現で使うデプステクスチャやカラーバッファは事前に縮小バッファ化しておくことで テクスチャアクセスの負荷を減らす対策なども導入しています。また、半透明エフェクトと同時に使用されるポストエフェクト類についても 専用に実装することでパフォーマンスのチューニングを行っており、描画負荷を少しでも下げるように工夫しています。

アセット最適化ですが、半透明エフェクトでは主にテクスチャ周りに関して、テクスチャ解像度が過剰なサイズになっていないか、テクスチャの圧縮設定が適切か、これらに気を付けて開発を行いました。開発期間中にアセットの静的解析によって随時確認を行うことで最適なテクスチャ設定を目指しました。また、バトルでは専用のフィールドにてバトルが行われる仕様であるためバトル専用フィールドの最適化を別途行うことで描画負荷を下げておく対応も行っています。
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このゲームは、そのキャラクターとキャラ相関が評価されています。キャラクターはどのようなアプローチで作成されましたか?

香川氏:
『テイルズ オブ』シリーズはキャラクターに力を入れている作品です。物語でも、キャラクターの成長や意思の強さなどに共感し憧れになるようにしています。また、旅の道中にどの様な会話がなされているのか、真面目な話からギャグっぽい話しまで四六時中一緒に居るなら、そういった会話も有るだろうという所を表現し、親近感が有りつつもファンタジックなキャラクター達に魅力を感じてもらえる様になっています。

今作の Tales of ARISE では、仲間キャラクターは身寄りが無く帰るべき場所が無い中で仲間たちが家族の様に思え、自分の帰るべき場所になると良いなと思いを込めております。最初は色々な思惑が有りつつ一緒に行動していた仲間が帰る場所となるような変化を物語や道中の会話などから感じて貰えると嬉しいです。

今日はありがとうございました。Tales of ARISE の詳細を知るにはどうしたら良いですか?
香川氏:
Tales of ARISE公式ウェブサイトをご覧ください。

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