画像提供: Digital Confectioners

非対称型マルチプレイ & サバイバルホラー ゲーム Dread Hunger の開発者がその制作秘話を語る

Brian Crecente |
2021年12月29日
今年初めに早期アクセス版がリリースされた Dread Hunger は、サバイバルホラーとソーシャル ゲームマンシップ (人狼ゲーム) を巧みに組み合わせたゲームです。プレイヤーは、他の 7 人の探検隊と協力して北極圏を探検し、生き残りを目指します。しかし、極寒の中では腹を空かせた野生生物がいるだけではなく、悪魔崇拝を行う共食い人種が探検隊のメンバーの中に 2 人紛れ込んでいることがプレイヤーの生き残りを難しくしています。

このインタビューでは、デベロッパーである Digital Confectioners と Slowdrive Studios に、ゲームにおけるフィクションの部分と現実世界のアイデアはどこから得たのか、彼らのデザインがゲーム内における混乱やパラノイアをどのように強めたのか、そして Unreal Engine がゲーム製作にどのように役立ったのかを伺いました。

Alex Quick 氏

Alex Quick 氏のゲーム歴は 30 年で、ゲーム デザインについては約 18 年間取り組んでいます。彼はゲーム Killing Floor の元デザイナーであり、Depthand Maneater を作り上げた 1 人でもあります。カナダ出身で、現在はパートナーと 2 匹の犬と一緒に古き良きアメリカに住んでいます。Dread Hunger は彼の 4 番目の商業タイトルです。

Neil Reynolds 氏

Neil Reynolds 氏は、Kiwi Studio、Digital Confectioners のエグゼクティブ プロダクト デザイナーです。インディーと AAA の両方の分野で 10 年以上の経験に加えて、ゲーム デザインとバランス感覚における優れた才能を持っており、自分自身が楽しくプレイできるようなゲームを作っています。
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Digital Confectioners スタジオはどのようにして生まれたのですか?また、ゲーム開発において、同スタジオは他とどのような点が違うとお考えでしょうか?
 
Neil Reynolds 氏:
Digital Confectioners は、オリジナルの Unreal Tournament のような、とりわけ Unreal Engine で作られたゲームの MOD 製作をバックグラウンドに持つ 2 人で立ち上げたチームです。正式な会社の設立は 2007 年で、これは Epic Games との契約から始まりました。

設立以来、他のさまざまなスタジオと協力して Unreal Engine を用いたゲーム制作を行った後に Depth の開発に取り掛かりました。Depth は、Alex Quick 氏と一緒に 2012 年から制作し始め、そのリリースはその 2 年後となります。

私たちが自分たちで初めて作ったゲームとして、Depth は Digital Confectioners の成長を促しました。その後は、エンジニアリングに焦点を当てていた初期のチームを拡大してクリエイティブなアーティストをメンバーとして招き、完全なゲーム スタジオになりました。

これまで、小規模なインディーゲームから大規模な AAA  タイトルまで、20 を超えるゲームに取り組んできました。

創業のルーツから見て分かる通り、私たちはエンジニアリングとデザインを等しく重要なものとして扱っています。くわえて、私たちは、特にこれらの分野では Unreal Engine のスペシャリストでもあります。マルチプレイヤー タイトルの配信に関して長い歴史を持っていることから、そうしたゲーム制作も得意です。そして、私たちはプレイヤーと一緒にダイナミックにプレイが可能なゲームが大好きです。

Dread Hunger の背後にある元々のコンセプトは何ですか?

Alex Quick 氏:
素晴らしい AMC ショーである The Terror からアイデアを得ました。アイデアを得た後は、ショーの元ネタである「フランクリン遠征」について調べ始め、実際に起きた歴史的な出来事やショーに関する伝承を読みふけるようになりました。当時、私は Maneater に取り組んでいましたが、気分転換にマルチプレイヤーに焦点を合わせたゲームを作ろうと考えていました。そして、フランクリン遠征とマルチプレイヤー ビデオゲームを掛け合わせるというアイデアをぜひ実現したいと思ったのです。
画像提供: Digital Confectioners
サバイバル ホラーとソーシャル ディダクションを組み合わせるというアイデアはどのようにして思いついたのですか?
 
Quick 氏:
Secret Hitler が大好きで、友達とよくプレイしていたのですが、当時、PC で同じようなことを再現した Project Winter のようなゲームが登場し始めているのを目にしていました。なので、人狼的な要素とサバイバル体験と組み合わせたら面白いものができるのでは、と思ったのです。普通のサバイバルゲームはすでにありふれていたので、同じようなものは作りたくないと考えていました。しかし、それに人狼的な要素を組み込めばユニークなものができると考えました。チーム協力型のサバイバル ゲームでは、仲間プレイヤーを信頼しなければなりません。しかし、もし仲間の中に裏切り者がいる場合、ゲームはより複雑でスリルのあるものとなります。
 
このゲームのデザインや制作に影響を与えた特定のゲームはありますか?
 
Quick 氏:
芸術的な側面からは、Dishonored におけるゲームの美学から大きく影響を受けました。これらのゲームに見られる残酷で絵画的なスタイルは、私たちが伝えようとしているストーリーにぴったりだったからです。そして実は、Dread Hunger の多くのキャラクターが、Dishonored 12 のキャラクター アーティストによって制作されています。

ゲームの物語はどのように思いつきましたか?北極圏の探検、裏切り者、血の魔法、共食いのアイデアはどこから来たのでしょうか?

Quick 氏:
物語は、19 世紀における大きな謎の 1 つである、フランクリン遠征と呼ばれる実際に起きた歴史上の出来事に大まかに基づいて作られています。2 隻の船がイギリスから北西航路を航海するために出航しましたが、氷河に閉じ込められてしまいます。乗組員は自分たちが乗ってきた船の放棄を余儀なくされ、その後彼ら全員が死亡していることはわかっているのですが、その死の詳細についてはいまだ不明です。共食いしたのではないかという説が立てられていましたが、これはイギリス海軍がずっと否定しています。この出来事は、北極圏での旅の途中、乗組員の心をゆっくりと歪めていく何らかの存在がほのめかすといったように、ゲームを作る上で自分たち独自のストーリーを織り込むのに最適だと考えました。

Dread Hunger は、説得力のあるバックストーリーと鮮やかなグラフィックがゲームにより雰囲気を与えており、プレイヤーがまるでキャラクターと同じような体験をしているように感じられます。開発者として、ゲームのプレイヤーがよりリアルさを感じ、よりゲームが楽しいものになるように、どのような工夫をしましたか?

Quick 氏:
このゲームには、プレイヤーが互いに協力して信頼しなければクリアできない状況であると同時に、裏切り者による混乱とパラノイアが発生するような仕組みも用意しています。この良い例は、ゲーム内におけるシチュー作りでしょう。シチューは非常に栄養価の高い食べ物ですが、これを料理するには他のプレイヤーと協力しなければなりません。もしシチュー作りに成功すれば、何日も生きながらえることができます。しかし、もし裏切り者が毒のある肉をたった一欠片でも入れてしまったら、作ったシチューすべてに毒が広がります。つまり、これを食べることは死を意味します。
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今のところ、ゲームは早期アクセス版でリリースされています。早期アクセス版でゲームをリリースすることにした理由と、それがゲームの開発にどのような影響を与えたのかについて教えてください。

Reynolds 氏:
2019 年当時は、まだ開発初期の段階でチームも小さく、ゲームを具体化しているところでした。なので、早期アクセス版のリリース直前には、プレイテストを毎週スケジュールし、プレイヤーを無料でゲームに招待するクローズド ベータの期間を設けることにしました。コミュニティの皆と一緒に楽しくプレイでき、素晴らしい時間を過ごすことができました。また、この際、ゲームを完全に公開する前に行いたいと考えていた、デザインに関する多くの決定をアナウンスするための良い方法について、多く学ぶこともできました。そして今年の 4 月下旬ごろには、リスポーン システムとゲームの一般的な状態について十分な完成度を得られたと思ったため、早期アクセス版を配信するに至りました。

早期アクセス版を出す過程で、ゲームはどのように進化し、変化しましたか?

Reynolds 氏:
早期アクセス版では、修正すべきエラーがいくつか見つかりました。そのため、パッチを当てる必要がありました。早期アクセス版のおかげで、プレイヤーからのフィードバックを得ながら開発を行うことができましたが、これが非常に良かったです。なぜなら、モデレート ツールの重要性がわかったからです。私たちは、開発や設計に関する問題については認知していたものの、モデレーションにもフォーカスすべきであるということを知らなかったのです。

また、最初は PVP 形式のゲームとして開発を始めましたが、時が経つにつれてソーシャル ディダクション的な要素も含まれるようになり、最終的には、その要素を中心にしたものとなりました。したがって、早期アクセス版では、Dread Hunger は PVP というだけでなく、ソーシャルディダクション的な要素にもこだわった作りとなっています。
画像提供: Digital Confectioners
ゲームの完全版はいつリリースされる予定ですか?

Reynolds 氏:
今年後半にリリース予定です。遅くなるのは、早期アクセス版でコミュニティが大いに盛り上がり、彼らの意見に耳を傾けるのに十分な時間が必要だったためです。コミュニティのフィードバックを検討して実装し、可能な限りゲームの完成度を上げて正式なゲームとしてリリースするには、1 年程度かかるといって差し支えないでしょう。

ゲームの公開後は、どのような種類のアップデートとサポートを提供する予定ですか?

Reynolds 氏:
流れに身を任せ、臨機応変に対応します。ゲームは常に進化しており、現在はまだ初期段階です。早期アクセス版の終了は、これから始まる長い旅の始まりにすぎません。

Unreal でゲームを開発しようと思った理由は何ですか?

Reynolds 氏:
Unreal Engine が私たちにとって一番馴染み深いツールだったからです。チームのほぼ全員が元々 Unreal Engine に詳しく、その汎用性の高さを気に入っていました。Unreal で作業すると、効率的かつ自信を持って良い仕事ができると思ったのです。

Dread Hunger を制作する中で、Unreal Engine の機能でとりわけ便利だったものはありますか?

Quick 氏:
ネットワーキングです。面倒な設定がなくそのまま使えたので、マルチプレイヤー テストの起動と実行が非常に迅速に行えました。マーケットプレイス は、プロトタイプ アセットに最適でした。これにより、まだ制作中のアートの完成を待たずに開発を続けることができました。
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Unreal Engine 5 の今後の進化についてどう思いますか?また、将来のゲームで Unreal Engine 5 を使う可能性はありますか?

Reynolds 氏:
現在は、 Dread Hunger の完成に向けて集中しているところですが、Unreal Engine 5 の進歩した機能や新機能はぜひ試したいと考えています。特に興味があるのは、新しいライティング システムである「Lumen」です。ボクセルのテレインやワールドをよく調整するので、Lumen でグローバル イルミネーションを処理させられるようになると便利です。また、時間ができたら、「Nanite」で非常にポリゴン数の多いアセットをリアルタイムで使用したいと思っています。
画像提供: Digital Confectioners
ゲームを作成する際に苦労したことで、ここで話しておきたいものはありますか?

Reynolds 氏:
プレイテスト初期から、近接 VOIP モードは絶対に必要だと感じていました。しかし、これを実現するためにサードパーティのプロバイダを利用したところ、それをゲームに適応するのは難しいとわかりました。

現在は、ゲーム内ボイスチャットを実装するために Epic Online Services に切り替える作業を行っています。VOIP の問題をより適切に切り分けて解決できるようにするためです。これで安定性が向上することを期待しています。

Digital Confectioners と Dread Hunger に関する詳しい情報は、どこで確認できますか?

Reynolds 氏:
ありがたいことに、Discord には Dread Hunger の素晴らしいコミュニティがあります。詳細については、ウェブサイト をご確認ください。Digital Confectioners の詳細については、同社のウェブサイト から確認できます。

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