この度は、お時間をいただきありがとうございます!早速ですが、NITRO GEN OMEGA の概要を教えていただけますか。
Gian Paolo Vernocchi 氏、CEO 兼 クリエイティブ ディレクター:名目上、NITRO GEN OMEGA は、サンドボックス タクティカル RPG です。プレイヤーは傭兵部隊とメカを率いて、冷酷な機械によって蹂躙された終末後の世界を生き抜きます。ただし、ジャンルのキーワードやマーケティング コピーには、アニメへのラブ レターが隠されています。本作は日本のアニメを彷彿とさせながらも、イタリアの情熱が脈打つゲームです。私たちはこれを「スパゲッティ アニメ」と呼んでいます。革新的なタイムラインベースの戦闘システムを採用し、プレイヤーはまるで自分が作ったアニメの監督になったかのような感覚を味わえます。すべての行動を事前に計画し、まるで手描きの日本のテレビ アニメのエピソードを見ているかのような感覚でゲームを楽しめます。本作は、わずか 14 名の小規模チームによって、愛着を持って開発されました。
DESTINYbit の拠点であるイタリア、ラヴェンナのゲーム開発事情について教えてください。
Vernocchi 氏:おそらく DESTINYbit がラヴェンナで唯一のゲーム開発スタジオなのではないでしょうか。イタリアのゲーム開発は過去 10 年で大きく成長し、今ではより大規模で成熟したスタジオが複数あります。とはいえ、ゲーム開発業界はまだ比較的小規模であるため、より多くの開発スタジオと連携するには、ボローニャまで出向く必要があります。
開発の主要な目標を教えてください。また、NITRO GEN OMEGA に Unreal Engine 5 を選んだ理由はどのようなものだったのでしょうか?
Vernocchi 氏:NITRO GEN OMEGA は、DESTINYbit が Unreal Engine を採用して開発した 3 作目の作品で、UE3 の頃から Unreal Engine を使用しています。アート スタイルの観点から、できる限りアニメに近いビジュアルにしたいと考えていました。そのため、最初の目標は、プロシージャル キャラクターとモジュール式メカをサポートする必要があるということを考慮しながら、アニメーターができるだけ自由に作業できるようにすることでした。Unreal Engine はソース コードにアクセスできるので、解決策がまだない場合でも、常に解決策を見つけることができると確信することができました。たとえば、膨大なコントロールと調整機能を備えた Maya できわめて複雑なキャラクター リグを作成し、2D のビジュアルをできる限り維持しています。また、Maya で作成したものと一致するように、アニメーション ブループリント用にカスタム ノードをいくつか作成しました。
デザイン面では、当初は複雑なサーバーサイド要素を計画していたため、ブループリントの使用を最小限に抑えながら、
デザイナーが自由に作業できるようにしたいと考えていました
。そのため、カスタムビルドのエディタ ユーティリティ ウィジェットを使用して複雑な構成を編集できる、データ主導のパイプラインを採用しました。
開発中に最も印象に残った Unreal Engine の機能はどれでしょうか?
Vernocchi 氏:この答えは予想に反するものかもしれません。最もよく使用した機能はおそらくシーケンサーですね。シーケンサーでは、ランタイム時にカスタマイズされたキャラクターやメカに動的に置き換えられる「プロキシ アクタ」のサポートを拡張するために多くの作業を行いました。もちろん、2D スタイルのカメラ ワーク (パン、ズームなど) のサポートも追加しました。
ですが、最終的に最も役に立った機能はおそらく PCG でしょう。PCG を使用して、オープン ワールドの陸地を作成しました。数日で、アーティストが作業の多くをコントロールしながら、スクリプトで簡単に修正、調整できる、人が住む島を完成させることができました。これは、今後の制作活動でもさらに活用していきたい機能ですね。
NITRO GEN OMEGA はまるでアニメのエピソードを見ているような感覚になりますね。「スパゲッティ アニメ」について、そして本作ならではのアート スタイルを作り上げていくうえで最も影響を受けた要素について教えてください。
Vernocchi 氏:スパゲッティ アニメとは、日本の作品のようなビジュアルでありながら、イタリアの情熱が脈打つゲームです。でも、それ以上は何ともいえません。特に意識的にこのスタイルになったわけではなく、イタリアのクリエイター集団がアニメ ゲームを制作し、アニメへの深い愛情を注いだ結果このスタイルになりました。最終的には、私たちの「イタリアらしさ」が無意識のうちに表れてしまうのです。
ビジュアル面では、主に Studio Trigger、Gainax、そして Studio Bones の作品からインスピレーションを受けています。Trigger のアニメを彷彿とさせるというコメントを多くいただいており、大変光栄に思っています。
このアート スタイルを実現するために、Unreal Engine をどのように使用したのか教えてください。生き生きとしたビジュアルを制作するために、カスタム ツールやシェーダーを開発されたのでしょうか?
Vernocchi 氏:漫画またはアニメ スタイルのシェーディングは、マテリアル面では現時点でほぼ解決済みの問題です。もちろん、多数のパラメータとキャラクターごとのライティングなどに対応したカスタム マスター マテリアルを作成しましたが、本作にアニメらしさを加える「ちょっとした工夫」に多くの労力を費やしました。
何より重要なのは色です。アーティストが Photoshop で行うように自由に色を選択できるようにし、ライティングやポストプロセスに関係なく、これらの色が一定に保たれるようにしたいと考えました。そこで、トーンマッパを完全に置き換え、アーティストがすべての色を個別に選択できるだけでなく、そのシャドウやスペキュラも選択できるようにしました。私たちはこれを「カラー セット」と呼んでいます。キャラクターやメカには明確なテクスチャがほとんどなく、マスクで定義されたセクションがあり、そのセクションはカラー セットで塗りつぶされています。
さらに、アニメーターが Maya で見ているものと完全に一致する、きわめてクリーンなアウトラインも必要でした。キャラクターの表情の多くは、メッシュを伸ばしたり、ねじったりして、特に口、頬、眉などの美しいアウトラインを「描く」ことで表現しています。
これに加え、すべてのメッシュに影を落とす位置を制御するカスタム スカルプティングの頂点法線があるということもあり、思い通りのアウトラインを作成するのは非常に困難な作業でした。最終的には、デフォーマー グラフを使用してキャラクターの法線をオン ザ フライで再計算し、Maya で作成していたような滑らかなアウトラインを作成することができました。これらは、「ビデオ ゲームをプレイしている」のではなく「アニメを見ている」という没入感を生み出すうえで重要な要素となる、ほんの 2 つの「ちょっとした工夫」に過ぎません。
NITRO GEN OMEGA は、DESTINYbit の過去の 2 作品 Empires Apart と Dice Legacy のビジュアル スタイルとトーンから大きくかけ離れていますね。当初から意図的にビジュアル スタイルとトーンを切り替えたのでしょうか?また、これらの作品で得た経験から NITRO GEN OMEGA にどのようなことを活かしましたか?
Vernocchi 氏:以前のプロジェクトからの変更は、ある意味では意図したものでありますが、意図したものでないともいえます。DESTINYbit は、「比べるもののないゲーム」と呼ぶ作品、つまりこれまで見たことのないようなゲームを作ることを目指しています。これはアート スタイルにも当てはまります。Dice Legacy では、ミニチュア風のセミリアルなレンダリング手法を採用しつつ、これをリングワールドで実現しました。
NITRO GEN OMEGA では、アニメ ゲームを制作したいと考えたときに、100% アニメ、つまり 3D でありながら 2D のビジュアルに仕上げることに決めました。これは、以前の 2 つの作品で学習した多くのツールを、まったく異なる方法で活用する必要がありました。ある意味、ゼロからスタートだったともいえます。
ただし、Dice Legacy からは確実に多くのことを学びました。特にコンソール向けの開発、ロード時間の最小化、データ主導アプローチの採用などについて学習することができました。
今のところ、私たちは同じレンダリング スタイルやゲームプレイを 2 度使用したことはありません。そのため、開発作業はより困難になります。ですが、それが Unreal Engine の素晴らしい点でもあります。どんなスタイルやジャンルを追求する場合でも、強力なツールセットがサポートしてくれるのですから。
NITRO GEN OMEGA は、ダイナミックなカメラ アングル、サウンド エフェクト、そしてダイナミックなアニメのインパクト フレームを備えた、独自のタイムラインベースの戦闘システムを装備していますね。これを実現するうえで Unreal Engine はどのように役立ったのでしょうか?
Vernocchi 氏:戦闘アニメーションはすべてシーケンサーを使っています。まず、Maya ですべてのキャラクターとカメラ アニメーションを作成して、それをインポートし、カスタム Python スクリプトを使ってシーケンスを自動的に作成しました。その後、VFX アーティストが Niagara で作成されたすべての VFX を手動で追加し、シーケンスとアクタに適宜配置します。私たちは、シーケンスにドラッグアンドドロップして、アクタに接続し、ボーンにアクタを接続することで、すべての 2D ビジュアルのエフェクトを制御できる VFX ライブラリを作成しました。
最後に、インパクト フレームなどのポストプロセス エフェクトを複数追加しました。
これらは、マテリアル パラメータ コレクション内のパラメータをアニメートすることで、シーケンサー内で再度手動でアニメートされます。
アニメっぽいビジュアルに役立つ細かい工夫も随所に施しました。たとえば、CineCameraComponent を拡張して「フレーム パンニング」、つまりカメラを固定したままフレームを移動できるようにしました。アニメで行われる「カメラ アニメーション」の多くは、実際には合成時に行われる 2D パンであり、アニメっぽいビジュアルを実現するために必要でした。「あまりにも 3D らしく見える」ものはすべて削除しました。
メカの重要性と、メカのカスタマイズやプレイ スタイルがゲームプレイに及ぼす影響に関するデザイン理念について教えてください。
Vernocchi 氏:興味深いですね。というのも、私たちは常に「メカはキャラクターのストーリーを伝えるためのツールに過ぎない」という視点でメカにアプローチしてきました。アニメにおけるメカの役割と似ています。つまり、メカは非常に重要ですが、メインの焦点ではありませんでした。
とはいえ、プレイヤーを表現するための乗り物にしたいと考えていました。そのため、キャラクターが戦闘ごとに組み立て、チューニングするラリーカーによく例えていました。一方、Airship は巨大なガレージのような役割を果たしています。
ビジュアル面では、メカは 60 年代と 70 年代のイタリア車やバイクからインスピレーションを得ています。ランチア、アルファ ロメオ、フィアット、ランボルギーニなどです。ゲームプレイのインスピレーションの主な源は格闘ゲームです。それぞれのメカのプレイスタイルに違いを持たせ、戦闘システムの多様性を活かしたさまざまなビルドの可能性を備えたものにしたいと考えていました。
本作では、プレイヤーはプロシージャル生成されたパイロットを雇って、クルーを増やすことができますね。NITRO GEN OMEGA のこういった側面を実現するうえで特に役立った UE5 の機能はありますか?
Vernocchi 氏:キャラクターは、アート パイプライン全体の中で、技術的にきわめて難しい部分です。アニメーターが最大限自由に作業できるようにしたいと考えたため、パイプラインは Maya で構築し、それを Unreal Engine に取り込む作業を進めました。
幸にも、これは非常に簡単でした。特に、多くのエフェクトがアニメートされたマテリアル パラメータとブレンド シェイプによって制御されており、最小限の設定で動作していたためです。
その後、アニメーション ブループリント用の一連のカスタム ノードを作成し、さまざまなスライダーとコンストレイントを操作して、キャラクターにさらなる多様性を加えました。
Unreal Engine を使用したことで、開発の時間や予算の面でどのようなメリットがありましたか?可能であれば、節約時間やコスト削減の面でのメリットを定量化して教えてください。
Vernocchi 氏:Unreal Engine の使用にはメリットがありましたが、特に私たちのような規模のスタジオ、そして Unreal Engine を使ったゲームが 3 作目であることを考えると、メリットを定量化するのはとても難しいですね。というのは、Unreal Engine がイテレーションごとに大幅な改善だけでなく新機能も導入されたことにきわめて大きなメリットがあり、プロジェクト期間全体にわたって新しいワークフローと機会がもたらされたからです。
Epic の開発コミュニティ、Unreal Engine のドキュメント、Fab マーケットプレイス、その他 Epic のエコシステムのコンポーネントは、開発時に役立ちましたか?
Vernocchi 氏:本作は Unreal を使用して制作する 3 作目となるので、エコシステムについても良く知っています。Epic は、特に YouTube で多くの学習教材を常に提供してくれています。特に難しい問題が発生した場合は、Pro Support に頼ることができると知っていますし、Fab マーケットプレイスで入手可能なプラグインを組み込むこともあります。
特に、Pro Support はこれまでにおいて非常に役立っています。わかりにくいエンジンのバグを解決したり、使用しているシステムの専門家である Epic のエンジニアに尋ねることができるからです。たとえば、NITRO GEN OMEGA の場合、タグも管理しながら、Python を使用してシーケンサー シーケンスを自動的に生成する必要がありました。自分たちが調整して使用している機能の作成元のチームの人に直接尋ねることができるということは、詳細で十分な情報に基づいた信頼できる回答が得られることを意味します。