従来のパイプラインからリアルタイムの革新へ
『いっしょにあそぼう!くまのプーさん』の最初の 2 シーズンは、従来の CG 手法を使って制作されました。このとき、OddBot は番組の CG 要素そのものからは 1 歩離れた立場にありました。
OddBot はアセットを作成し、アニメーションのブロックアウトをし、最終的なレンダリングの納品をするのではなく、クリエイティブ スーパーバイザーやアート ディレクションの立場でアニメーションに対するフィードバックやドローオーバー (文字どおりフレーム上に修正や変更案を描くこと) を行い、提携する CG スタジオにその変更指示を送り返して反映してもらう作業をしていました。
その作業はシーズン 3 で一変しました。
パイプラインを Unreal Engine に移行したことで、チーム規模を拡大できるようになりました。それに伴い、新しいチーム メンバーを受け入れて、自社内でできる制作作業が格段に増えました。OddBot 創設者の Chris Hamilton 氏は次のように述べています。「今では、クリエイティブ コントロールが大幅に向上し、より自由にいろいろなことを試せるようになりました。Unreal を使うと、ほとんどリアルタイムでフィードバックを得られ、レンダリングが終わるのを長時間待つことなく、アニメーションの見た目を確認できます。」
この移行により、パイプラインの性質 (ビデオ ゲーム ワークフローに近い) とチームのダイナミクスが完全に変わりました。各部門が順番に作業するのではなく、同時並行で作業できるようになったのです。
3D アーティストがストーリーボードを配置しているのと並行して、ライティング作業も同時進行し、チームはフレームのみならずシーン全体をレンダリングして、全体的な進捗を評価できました。
OddBot の共同エグゼクティブ プロデューサー兼クリエイティブ ディレクターの Elise Fachon 氏は次のように話します。「常に最終的な見た目をストーリーボードで確認していました。全工程で調整を重ね、私たちの期待により近い最終成果物を、スケジュールより早い段階で仕上げることができました。」
ストーリーボードとアニメーション、ライティングとレンダリングまで、複数の作業を同時に行っているため、レビュー セッションはかつてなく協調的な作業になりました。
「今シーズンのライティングは、チーム全員にとってまったく新しい体験でした」(Sammy Rivkin 氏、OddBot のライン プロデューサー)
チームではアニメーションをリアルタイムで調整するライブ ライティング セッションを週 2 回開催しています。セッション中にシーンを評価し、必要に応じて調整すると、変更が即座に確認できます。
「ビューポートを見ながら『これをちょっと調整する?リアルタイムでリム ライトを調整しながら、どうなるか見てみない?』といったやり取りができるんです。これが非常に驚きを受けた瞬間でした。ほとんど何でもできるのです。」(Fachon 氏)
OddBot にとってこの制作方法は、ある部門の作業が終わるのを待ってから別の部門が次の工程に進むという従来のパイプラインというより、むしろチーム全員が貢献できる、共有されたダイナミックなクリエイティブ空間で作業している感覚に近いものでした。
モコモコしたキャラクターとグルーム システム
くまのプーさんは柔らかでフワフワしています。ティーガー、イーヨー、ピグレットも同じく、愛らしくて抱きしめたくなるキャラクターですが、それぞれ微妙に違いがあります。この違いを出すことが、『いっしょにあそぼう!くまのプーさん』特有の課題でした。
「作品にはこれらのフワフワしたキャラクターが登場します。彼らをとても柔らかく、魅力的に表現するのに加え、すべてのキャラクターを異なる質感にする必要がありました」(Fachon 氏)
チームでは、シーズン 1、2 で描かれたさまざまなキャラクター スタイルを実現すべく、Unreal Engine でさまざまな毛皮や容貌、毛皮のシミュレーションすべてを再現する作業に着手しました。
作品を超えて: マルチプラットフォーム向けコンテンツ制作
ソーシャルメディア時代において、アニメーション スタジオの仕事は、作品を納品して終わりではありません。プロジェクトの一部として、Instagram や YouTube といった複数のプラットフォーム向けに、専用コンテンツの制作も求められることが増えてきています。
Unreal Engine は、こうしたソーシャルメディア チャンネル用の関連コンテンツを短時間で簡単に制作できるようにします。
「従来のパイプラインでは、レンダリングと各種レイアウトの段階まで戻って、まったく異なるカメラパスを用意する必要がありました。これには非常にコストと時間がかかります。しかし、Unreal Engine を使えば、カメラのセットアップはずっと簡単で、バックアップして、縦型用に必要なものを、はるかに短時間で用意できます。」(Fachon 氏)
これほど速く、機敏にコンテンツを納品できると、副次的なメリットが 3 つ生まれます。マーケティング施策の後押し、コンテンツのアクセシビリティの拡大、オーディエンスのエンゲージメント向上です。
これらのメリットは IP パブリッシャーにとって大きな成果ですが、OddBot にとっても、リアルタイム パイプラインへの切り替えは同様にプラスの影響がありました。制作がスムーズになっただけでなく、士気も高まったのです。Unreal Engine の導入で、OddBot チームは子どもたちがアニメを観て楽しむように制作を楽しむようになりました。
「チームが一丸となり、非常にうまく連携できるようにすること、また、アニメーション作品の制作を楽しめるようにすることが、プロデューサーである私にとって昔からの大きな目標です。私たちはアニメーション作品を作って生計を立てているわけですから。従来の流れ作業的なパイプラインでは必ずしも必要とされなかった、美しい連携がUnreal によって引き出されました。」(Rivkin 氏)
思い切った挑戦が報われた
『いっしょにあそぼう!くまのプーさん』の第 3 シーズンを振り返り、Unreal Engine への移行は OddBot にとって賭けだったことを認めています。「このシーズン全体が、OddBot と Disney の両方にとって思い切った賭けでした」と Hamilton 氏は言います。
幸い、スタジオの賭けは報われました。「Disney は初期段階で私たちが見せた内容にとても熱意を示してくれました。ストーリーボードには最終レンダリングと思えるほどの仕上がりのものもあり、実現可能な内容について全員の共通認識を形成するのにとても役立ちました」(Hamilton 氏)
Unreal Engine をパイプラインの中枢に据えたことで、OddBot が20 年近くかけて培ってきた、楽しんで協力する文化は保ちながらも、アニメーションの制作プロセスをより柔軟で包摂敵、かつクリエイティブなものへと進化させました。
くまのプーさんと仲間たちにとって、遊びの時間はいつも想像力豊かです。彼らに命を吹き込むツールも、同様に想像力豊かに活用されています。「Unreal Engine によって、チームがもっと楽しく、もっとクリエイティブになりました。本当にワクワクします。」(Hamilton 氏)