最新技術を先取りチェック:間もなく実現、アンリアルのリアルタイム レイトレーシング
2018年5月21日

最新技術を先取りチェック:間もなく実現、アンリアルのリアルタイム レイトレーシング

作成 Ken Pimentel

GDC 2018 で我々はアンリアル エンジンのエキサイティングな新技術:リアルタイム レンダリングと組み合わせたレイトレーシングの世界を垣間見ました。エピック ゲームズは NVIDIA と ILMxLAB との 共同発表 においてリアルタイム レンダリングに至高の品質目標を実現するこの技術を明らかにしました。

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オフライン レンダラーでは、レイトレーシングは厚いガラスなど反射が多かったり複雑な透過マテリアルのあるシーンを中心にフォトリアルな結果を実現するために長年使われてきた技法です。技術系企業数社の試みを活用して、Microsoft の DXR API とレイトレースされたエリアのライトシャドウに対するサポートが 2018 年末までにアンリアル エンジン 4 のメインブランチで利用可能になります。エピック ゲームズはアンリアル エンジン 4.22 でこれらの機能に対するバイナリサポートをリリースします。リリース版にはさらに多くの機能が追加されます。

どのような点が重大なのでしょうか?

レンダラーはラスタライズとレイトレーシングのいずれかの方法を使ってピクセル カラーを決定します。ラスタライズの場合は特定のピクセルに対して「このピクセルは何色にすべきか?」を考えます。レイトレーシングの場合は視野角と光源を使って「光はどうなっているのか?」を考えます。

レイトレーシングはシーンの周辺でバウンスする際のライト光線のパスをトレースして処理します。光線がバウンスするたびに前のオブジェクトの色を配色しで現実のライトを模倣します。強度も弱くなります。この配色によって反射が鮮明かつ自然となり本物のようなカラー バリエーションになります。マテリアルとエフェクトの中にはレイトレーシングでしか実現できないタイプのものもあります。
 
 
レイトレーシングは本物のライトの挙動を模倣するので、エリアシャドウとアンビエント オクルージョンの作成にも優れています。 

逆にラスタライズはレイトレーシングに比べて高速かつ低負荷です。多数の近似値を使ってライティングを計算します。アンリアル エンジンのラスタライズは高速 GPU 上でミリ秒単位の 4K 解像度のフレームを提供します。ラスタライズは物理的に正しくなくてもかなりフォトリアリズムに近づけることができます。アンリアル エンジンのほとんどのカスタマーにとっては速さのためのトレードオフに価値があります。

ただし、フォトリアリズムがパフォーマンスよりも重視されるライブアクション映画と建築ビジュアライゼーション プロジェクトの場合は、不可能ではないにせよ実現は難しいとされる一段上の忠実度をレイトレーシングが提供します。これまで、レイトレーシングは莫大な計算量が必要なためオフライン レンダリングでのみ実行されました。レイトレーシングで計算されたシーンは 1 フレームの計算に数分から数時間かかります。映画アニメーションの場合は 1 秒間に 24 フレームが必要になります。

「これまでずっと、レイトレーシングはプロダクション パイプラインでいろいろな方法で使用されてきました」と説明するのはエピック ゲームズで Senior Rendering Programmer を務める Juan Canada です。高解像度でのリアルタイムをラスター レンダリングで実現する予定であっても、静止画とアニメーションをレイトレーシングを使ってレンダリングすることがあります。それらを参照として、アーティストラスター レンダリングでの目標や比較対象として与えたり、場合によっては最終ピクセルでも使用したりします。

「レイトレーシングをリアルタイムで処理できるようなれば、グラウンド トゥルースのリファレンスデータのレンダリング速度が格段に速くなります。つまり、数枚の画像を数時間から数日かけてレンダリングしなくても、もっと多くの画像を処理したり数回のイタレーションで確実に処理することができます。」

さらに Canada は、レイトレーシングにアクセスできれば「最終結果がより簡単に手に入るため制作パイプライン全体を扱いやすくなる」と付け加えました。

技術

リアルタイム レイトレーシングは、最新の GPU と機械学習技術を用いて莫大な演算能力を集結し、レイトレーシングの必要がない時にはそれらをラスタライズ技術と融合させることで実現しました。これまでは利用できなかったハードウェアとソフトウェアのコンビネーションによるもので、献身的な数社の努力によって今こうして実現したのです。

Windows 向けデベロッパー達は、長い間ゲーム エンジンなど高負荷の Windows アプリケーションでグラフィックスのディスプレイ最適化のために使用されてきた Microsoft の Direct API を熟知しています。Microsoft は最近になって、現在の DirectX 12 で稼働する API の DXR (DirectX Raytracing) フレームワークを新たに開発しました。

同じ頃 NVIDIA も NVIDIA の Volta GPU 上で稼働するレイトレーシング技術であるNVIDIA RTXを発表しました。NVIDIA は Microsoft の DXR API を RTX フル対応にするために Microsoft と提携しました。

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Microsoft DXR と NVIDIA RTX 技術の両方を使って、エピックはこのパイプラインを使ってリアルタイム シネマティックスの『Reflections』を製作しました。

デモ

GDC 2018 での発表に向けて、エピックはリアルタイム レイトレーシングの素晴らしさをお披露目するためにデモを作成しました。エピックは NVIDIA のレイトレーシング エキスパート、およびルーカス フィルムのイマーシブ エンターテイメント部門である ILMxLAB と連携しました。

デモを作成するために、チームは ILMxLAB の高品質リファレンス フッテージから着手し力を合わせて必要なモデルを作成しました。アーティストは、ストームトルーパーの装甲服の傷からファズマのマントの織目のディテールに至る隅々に細心の注意を払って再現しました。マテリアルはライトに自然に反応するように作成しました。 

セットの建築と撮影作業はアンリアル エンジンで直接組み立てられました。俳優 / 監督は仮想現実の中で動き、エピックは独自のバーチャルプロダクション技術を使ってそのパフォーマンスを撮影しました。 

この技術のほとんどはもうアンリアル エンジンに搭載されています。ここで、レイトレーシング技術によって新しいエフェクトがシーンで命を吹き込まれることになりました。湾曲した鏡のような表面になっているキャプテンファズマの装甲服にある動的かつ正確な反射もレイトレーシングで生み出されたものです。

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『Reflections』はアンリアル エンジンで解像度 24 FPS / 1080p で実行されます。反射、アンビエント オクルージョン、テクスチャ化したエリアライトからのシャドウの計算はリアルタイムでレイトレースされます。レイトレーシングを使うと、ソフトシャドウや光沢のある反射など難しいエフェクトを自然に表現し、シーンのリアリズムが大幅に向上します。 

エピック チームは NVIDIA のエンジニアと協力して、反射のデノイズとディテールの削減を始めとする数多くの技術を活用してレイトレーシングによるリアリズムを実現しました。これらの技術、難題、妥協点を深く掘り下げたセッションが GDC 2018 で行われました。 
 
 

未来

初回リリースでは、アンリアル エンジンのレンダラーはラスタライズだと再現が最も困難であるものの、レイトレーシングならとても簡単にできる処理について対処します。 

「我々はGDC で紹介した機能の中で、正確なエリア シャドウのレイトレーシングと DOF の新たなシネマティック ポストプロセスから統合を開始します」と Canada は述べます。「そして、屈曲など他のエフェクトのレンダリングを可能にする新しいコンポーネントを追加して、さらに前進し続けます。」 

未来の映画制作にとってこれは何を意味するのでしょうか。レイトレーシング技術は長年、映画と建築ビジュアライゼーションで使用されており、フォトリアルな画像生成の標準になっています。こういった画像はオフライン レンダラを使うとレンダリングに数時間かかりますが、アンリアル エンジンに装備されているレイトレーシングならばリアルタイムでのレンダリングが可能です。

ディレクター、アーティスト、デザイナーはイタレーションを高速で行い、新しいライティング シナリオとカメラアングルを試すことができます。結果として制作費用を抑え、よりインタラクティブなコンテンツの作成が可能になります。

GDC の『Reflections』デモは 4 個の Volt GPU を搭載した DGX Station 上で NVIDIA RTX 技術を使って実行されていました。今のところ、リアルタイム レイトレーシングの使用にはこれと同等のパワーが必要です。今後は、ムーアの法則を頼りにしてこの技術パッケージと実行環境の費用および複雑さは削減されていくでしょう。DXR のパフォーマンスはオフライン レンダリングと同様に解像度に依存します。ただし、アンリアル エンジンは独自のレンダリングを行うので、パフォーマンスはシーンに大きく依存したものになるでしょう。

『Reflections』デモは非常に大掛かりなハード上で行われましたが、エピックはこのデモをゲームの終わりではなく始めの一歩ととらえています。現在 NVIDIA がリアルタイム レイトレーシング デモ用に DXR 対応のハードウェアを提供していますが、AMD もある時点で DXR ドライバーに対応すると発表しました。 

「さらに軽く入手しやすいものにするための努力を続けています」とエピック ゲームズの  Director, Enterprise Engineering である Sebastien Miglio は説明します。「まだ始まったばかりですが、スタジオにあるような汎用機でレイトレーシングを動かせる日がそう遠くないことを期待しています。」

「『The Reflections』の成果はエピック ゲームズが未来へつなぐ責務を果たそうとしていることの証です。それはゲームだけではなく、忠実度の高いイマーシブ体験を必要とするすべての場合に対して言えます」と Miglio は言います。「アンリアル エンジンはずっと以前に忠実度とパフォーマンスの基準を設けました。DXR によってその基準をさらに上げています。アンリアル エンジンのカスタマーは、エピックと共に進む道は未来への最短ルートであるという自信があります。」

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