2020年4月30日
Ore Creative が教える、Editor Utility Widgets を使ってゲームをスタイライズする方法
みなさん、こんにちは。私は Zachary Downer です。近々リリース予定の、独特の雰囲気に満ちたアドベンチャーゲーム『Ira Act 1: Pilgrimage』の制作者です。なお、このゲームについては、こちらをご覧ください。
このテックブログでは、『Ira』のブループリント ベースのアセット スタイライズ パイプラインを紹介します。なぜ、そのようなパイプラインを作ったのか?どのようにして、Unreal Engine の Editor Utility Widgets をご自分のプロジェクトに利用できるか? ― ということについても説明します。
スタイライズのメリット
ゲームのスタイライズは、限られたリソースを利用してビジュアル面に多大な効果をもたらすことができる、非常に有効な方法です。『Ira』を制作している側としては、スタイライズによって、アセット ストアからほぼどのようなアセットでも利用できるようになるとともに、開発時間が短縮し、ビジュアル的に特徴づけが可能になり、格段に少ない作業量で全体的にリッチなエクスペリエンスを作成することができるようになりました。
私はソロのデベロッパーなので、インディー系の例にもれず、一人で 3D モデルやテクスチャを作成し、ブループリントを利用し、さらには…という状況にあります。いくつかの分野で危険であることは十分承知していますが、『Ira Act 1: Pilgrimage』では必ずしもすべてのアセットを独力で作成することはありません。あまりにも多くの時間とリソースが必要となってしまうからです。『Ira』のあらゆるものを自力で作成しようとすると、このゲームは一生リリースできないかもしれません。時間に制約があるということは、既製のアセットを Unreal Engine マーケットプレイスのようなところから得て、それらを利用する必要があるということになります。そして、ゼロから自分で作成する必要のあるものはどれで、既存のアセットを改変すべきものはどれなのかを戦略的に見極める必要があるということにもなります。汎用的なアセットがオンラインで広く利用可能である今 (しかも無料で商用利用できる場合もあります) 、それをモデリングするために多大な時間を費やす必要はないのです。
Unreal Engine マーケットプレイスには、ハイクオリティなアセットが才能あふれる人たちから出品されています。プロジェクトに利用できる素晴らしいリソースです。
既製のアセットを利用するメリットは明らかですが、その一方で、ある種の制約と課題もついて回ります。たとえば、これらのアセットの多くは、さまざまなスタイルで作成されています。マテリアルの体裁もいろいろであり、クリエイターの癖も多様です。上手く利用しなければ、 (どんなにゲームが楽しいものであっても) ユーザーは興味をもたないかもしれません。ゲームの第一印象が「単なるアセットの使い回し」となるかもしれないからです。リアルさを追求したアセットであっても、やはり、クリエイター個人のスタイルというものがにじみ出ることがあります。その場合、ビジュアル的に不統一感が生じてしまいます。『Ira』でこのような問題に対処するために私がとった方法は、 (もうお分かりだと思いますが) アセットのスタイライズなのです。あらゆるものがスタイライズされると、もうそれらのアセットをどこからもって来たのか誰も分からなくなります。ゲームの世界にシームレスに統合されるのです。実際、その手法によって私は、非常に多くの時間とエネルギーを節約でき、最高のゲームに仕上げることに注力できるようになりました。
スタイライズにはもう一つの大きな利点があります。それは、スタイルがほぼ無数にあるということです。つまり、デベロッパーは、エクスペリエンスのムードや雰囲気に合った独自のスタイルを作り出すことができるということになります。しかも、さまざまなゲームの中で自分のゲームだけを目立たせることが可能になります。現代では、ビジュアル的に目立たないゲームは、そのポテンシャルを発揮することができません。プロジェクトのアート スタイルを定めることに慣れていなくても、大丈夫です。ポストプロセスやマテリアルのスタイライズを始める場合に役立つチュートリアルやライブストリーミングが多数公開されています。ぜひ、Epic によるこのライブストリーミングをご覧になって、ポストプロセス エフェクトのスタイライズを始めてみましょう。
このように、開発プロセスでスタイライズを上手く利用すると、そのメリットはかなりのものとなります。
『Ira』ではどのように Editor Utility Widgets が使われてアセットのスタイライズ パイプラインができたか
Editor Utility Widgets を利用すると、アセット パックを『Ira』に合うスタイルに変えるのにかかる時間を大幅に短縮できます。Editor Utility Widgets は、これまでのゲーム開発過程において膨大な時間を節約してくれました。これから、私が作り上げたシステムを詳しく見てみてみましょう。どのようなことが可能になるのか分かってしまえば、その考え方をいくつか借りて、あなた自身のプロジェクトで便利に使うことができるようになります。このパイプラインはいくつかのパートに分割しています。
マテリアルのグループを分割する
アセットの中には、ちょっとした準備をしてから、『Ira』のアセット変換ツールを使って変換しなければならないものもあります。最初のステップでは、アセット マテリアルのグループを、それ独自のマテリアル スロットに分割します (必要に応じて)。そうすることによって、『Ira』のビジュアル スタイルに合ったソリッドカラー グループを素早く作成することが可能になります。 Part 1: マテリアルを分割する ビルトインされているメッシュ編集プラグインを使ってマテリアルのグループを (必要に応じて) 分割する
アセットを加工する
適切なマテリアル グループが割り当てられたら、私は、Editor Utility Widgets を利用して、エディタ内の反復的な作業をブループリントで自動化します。今回の例では、『Ira』で使われるアセットの変換作業です。アセットが変換されたら、マテリアルの若干の設定項目を調整するだけです (必要に応じて)。これでアセットはゲームで使えるようになります。
Part 2: 『Ira』の Utility Widget ツールでアセットを加工する 『Ira』のアセット変換ツールでアセットを加工して、ゲームで使えるようにします。
シーン内スタイライズ ツール
アセットを加工したら、私は、自分のビジュアル スタイライズのためのツール (カスタムのポストプロセス アクタが基になっています) を使って、シーンのライティングと雰囲気を上手く調整します。このツールを使うと、いちいちロジックを組み直すことなく、シーンとアクタのスタイライズを制御できるようになるとともに、比類のないレベルでの制御が可能になります。これもまた時間を節約してくるツールであり、スタイライズを迅速かつ容易に行うことができます。
Part 3: シーン スタイライズ ツール カスタムのポストプロセス ボリューム アクタとカスタムのステンシルを使って、シーンのビジュアル スタイルにより精密な影響を与える。
最後に
この動画クリップでは、件のメッシュ/シーンがアセット パイプラインで最終的にどのようになったのかが分かります。Editor Utility Widgets を利用することによって、『Ira』のスタイライズ パイプラインを自動化できたため、私は時間やお金、リソースを節約できただけではなく、無用なストレスからも解放されました。みなさんも、この『Ira』ビジュアル パイプラインが有意義なものであると認めてくれれば嬉しいです。そして、新たなテクニックと考え方をみなさん自身の Unreal プロジェクトに生かしていただければと思います。
Part 4: 最後に みなさん自身のプロジェクトで Editor Utility Widgets をどのように利用できるか調べてみましょう。このリンクを開いて、Editor Utility Widgets を作成するライブのデモンストレーションをご覧ください。
『Ira Act 1: Pilgrimage』に関する情報を得るには、Twitter で @IraGameをフォローするか、私たちのウェブサイトを訪れてください。