画像提供: Scavengers Studio

Unreal Engine を使用した Season のイラストレーション表現の作成

Scavengers Studio |
2021年8月11日
モントリオールで 2015年に設立した Scavengers Studio は、斬新なクリエーターたちの多様性に富んだチームで結成された独立系ゲーム スタジオです。製作するすべてのビデオ ゲームをデザインし想像するこの多面的なグループは、プレイヤーにユニークな世界を通してユニークな体験を提供することを目標としています。このスタジオは、慣例にとらわれることなく、視点の多様性が注目を集める遊び場であり、挑戦と協力が創作の基本となる場所です。
2020 Game Awards でのお披露目以来、Scavengers Studio には新作ゲーム Season の美術演出に対する良い評価が寄せられています。チームは、プレイヤーが自転車に乗って、表面下に秘密が隠されている美しい風景を探索する、温かみのある世界を作成することを目指しています。Season の世界はやがて押し流されることになっているので、この美術演出はその世界のささやきを記録するためにプレイヤーを迎え入れるという重要な役割を担っています。
 

Season の美術演出はイラストレーター、画家、自然光の映画カメラマンからインスピレーションを得ています。当スタジオのミニマリスト的なリアリズムに対するアプローチは、日本の浮世絵師や Norman Wilkinson 氏などの 20世紀半ばのポスター作家に似ています。ディテールを追加するのではなく取り除くという単純化の考え方によって、全体的な見た目を開発する際に意識したガイドラインを設定しました。念頭にあったアートスタイルのインスピレーションは 2D アートで、それを 3D の世界に落とし込んだことにお気づきかもしれません。

そこで次のような疑問が生じます。3D 空間に 2D のアートスタイルをどうやって作り出したのか。

この疑問に答えるため、キャラクターやテクニカル アートを担当する Felix “Feu” Arsenault、環境アーティストの Geneviève Bachand、3D プログラマーの Irwin Chiu Hau の 3 人のアーティストやデベロッパーに話を聞きました。

私たちの 3D の世界は、Unreal Engine に用意されたツールから始まります。正直なところ、始めたばかりの頃は Unreal Engine に慣れないアーティストもいました。でも、ブループリントの利便性とノードをベースとしたツールが学習プロセスを容易にしたとアーティストたちは述べています。Felix は「Unreal Engine には驚くほど簡単なツールが備わっています。」と述べて、「中でもランドスケープ、フォリッジ、詳細度 (LOD) が特に役に立ちました。」と付け加えています。
 
絵画のような美術演出を探検可能な 3D の世界に移行するため、チームにはカスタム ツールを作成しイテレーションする柔軟性が必要でした。Felix は、「すべてがノード ベースなので、従来のプログラミングの知識が無くてもビジュアル プログラミング ノードを使ってツールやカスタム シェーダを素早く作ることができました。」と述べています。当スタジオのアーティストたちは、他のエンジンのノード ベースの同等の物を参照しましたが、Unreal Engine に勝るものは見つかりませんでした。

Geneviève は、「Unreal Engine の機能によって可能となる創作の自由度の高さによって、美術演出に集中することができました。エンジンに既にあるもので作業することを強いられるのではなく、Unreal Engine の機能を使って Season の固有の見た目を実現するためにカスタム シェーダを作成しました。」と説明しています。Unreal Engine の中で創造性を発揮できる柔軟性はチームの自由度を高め、「アーティストとして、他のエンジンでは成しえなかった」と Felix は付け加えています。

Season のチームは、さまざまなイテレーションを頼りに、雰囲気にぴったりのゲームの特性を探します。アートも例外ではありません。Unreal Engine の柔軟性によってツールを他の既存の特性と連携するよう実装することができ、アーティストは実験的に新しい特性を追加することができます。
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アーティスティックなイテレーションの 1 つでは、世界の美しさを表現するためにディテールを取り除くという、このアイデアに注力しました。しかし、Unreal Engine のライティングやシェーディング ソリューションは物理ベース レンダリング (PBR) やレイ トレーシングなどの忠実さとディテールに重点を置いた機能を使用することを目的としています。

Unreal Engine やマーケットプレイスにあるポストプロセス ソリューションは、私たちが目指す特性や見た目ではなかったので、ここではちょっとした作業が必要でした。

美術演出が目指す、制限された詳細度に合わせるため、伝統的な絵画にローカル カラーがどのように使われているか、デジタル ペインターがこの手法をどのように再現するかに重点を置くことにしました。Artifact5  の Mohannad Al-Khatib 氏と Ramy Daghstani 氏が、アルベド (ローカル カラー) をイラストのように使うことに注力したシェーダを作成してくれました。
 
すべてはアルベド、つまり画家がローカル カラーと呼ぶものをマテリアルごとに選んでから、オブジェクトの種類に応じた影の色合いを選ぶところから始まります。その後、シェーダは自動的に影の色合いとアルベド カラーを取得して、最終的な影付きの色を計算します。そして、エンジンは光の入射角を使って影付きの色かアルベドかを選択します。 

シェーダは色と影の錯覚を使ってイラスト作品の奥行きや質感を再現します。このようなシェーダの作成は、「アーティストにコントロールさせることとエンジンにほとんどの作業をさせることとのバランス」だと Mohannad 氏は述べています。Unreal Engine によって、アーティストが最終結果をコントロールするために変更できる特定のパラメータを簡単に公開することができました。すべてはマテリアル ノード エディタを使って個別に編集可能でした。これにより、マスター マテリアルを作成して、カスタム ツールを開発したりカスタム ツールに接続したりすることができました。
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しかし、この美術演出によって技術的問題が発生しました。すべてを個別に編集できるようにすることで、グローバル ライティングでエリアを統一することが難しくなりました。各オブジェクトには特定の影付きの色合いとアルベド カラーがあるため、テクスチャ カラーを含むことがあり、テクスチャ全体の影の色を異なるライティング シナリオの中で統一することが難しくなりました。つまり、ゲーム内の時間帯が変わると、この変更を反映してすべてのオブジェクトを個別に編集しなければいけません。昼間の青い寒色のライティングを反映するためには、ゲーム内のすべてのオブジェクトにおいて早朝の黄金色の日の光を個別に変更する必要があります。異なった外観を持つオブジェクト、異なった色やコントラストにできないオブジェクトがある、美しくスタティックな世界ができました。

美術演出は、標高や生物群系など、時間や場所の変化に合わせて世界を移動できるように変えました。そのため、Unreal Engine の PRB モデルに戻らざるを得ませんでしたが、少し調整しました。これによって、入射光に基づいた「現実的な」ライティングを受けられるようになりました。つまり、空からにしても揺らめくキャンドルからにしても、光はいつも自然なところから差します。このライティングができたら、輝度しきい値か入射光角しきい値を決定して、光の色に基づいて各画素の影の色を計算します。

トゥーン シェーダがマテリアルの色の変化に注力する一方で、新しい美術演出はライティングの変化を利用してシーンをさらに美しくすることに注力しました。例えば、シーンのコントラストを高めたい場合、直射日光を強めて空からの柔らかい光を消すことで、太陽からのハード ライトを直射させます。さらにコントラストを制御したい場合は、ポストプロセス ツールを使うことができます。

新しいライティングを決定したことによって、静的ライティングに天球を使うという新しい特性がもたらされました。スカイ ライティングは、空からの光を元にシーン全体のセルシェーディングを均一にするための光の近似値です。スカイライトは、シーン内のすべてのオブジェクトに投じられるライト カラーとシェーディング カラーを作ります。また、空にシーン全体の雰囲気に付け加えるトーンや色合いを与える設定もいくつかあります。例えば、安全で親しみのある場所では、すべてのアセットにスカイライトから暖かい光を少し当てるかもしれません。

また、すべてのライティングには近似的サブサーフェス スキャタリングが組み込まれています。それによって光が散乱するように、光がオブジェクトに吸収されたり跳ね返ったりします。緑の中に吸収されてより鮮やかに見える、明るい夏の日の葉っぱから差す光を考えてみてください。他の例は、眩しさに目がくらむけれど、暖かい、白い舗道から跳ね返って目に入る太陽の光です。また、このライティング シェーダはエネルギーが持続します。つまり、シーンにどれだけライトを加えても一貫性のあるものになります。同じオブジェクトに 2 つのライトを加えると、2 倍の明るさになります。このリアルな瞬間がきっかけで、プレイヤーにとって世界をより身近に感じられるような Season のライティング デザインに変わりました。

ルック デベロップメント マネジャー

別の障害は、シェーダを受け取ってマテリアルやさまざまなカスタム ツールを作り始めると、自動化や使いやすさが欠けていたことです。たくさんの特性が使えるようになりましたが、すべてが複数のレベルにまたがっていて手動で実装しなければなりませんでした。

その解決策として、「ルック デベロップメント マネジャー」というものを作りました。「これはブループリントがベースのツールで、ビジュアル プログラミングでなければ絶対に作れなかったと思います。」と Felix は説明しています。これは、ゲームのどのレベルでも使える、シンプルなドラッグアンドドロップ ツールです。アーティストが必要とするすべてのカスタム シェーダ、ポストプロセス、ツールなどを緊密に連携したパッケージとして接続し、制御します。
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Unreal ライティング シナリオとも連携し、ライティング、雲、スカイボックス、フォグ、シャドウなどムードや雰囲気に関係するすべてに影響するライティング シナリオのサブレベルのロードやデロードが可能になります。

機能も充実していて、メンテナンスも簡単です。必要な特性の削除や追加に柔軟に対応していて、アーティストは簡単に制作、使用できます。

すべてビジュアル プログラミングで作成されたルック デベロップメント マネジャーに搭載された機能の一部をご紹介しましょう。

キーフレームのシーケンス 

時間帯別にライティングをコントロールするには、ルック デベロップメント マネジャー内のレベル シーケンサーを使用します。これは、1日の太陽の色や位置の変化を制御します。レベル シーケンサーは、時間と太陽の位置の変化のキーフレームを制御し、時間とキーフレーム番号が進むとその日の時間が進みます。すべての自然光はリンクしていて、時間帯のキーフレーム内で制御できます。

ライティング アニメーションを使って異なる時間や気象システムを融合して、2 つの異なるライティング シナリオ間の移行が緩やかになるようにすることもできます。
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Season のムードと雰囲気

Season のムードと雰囲気の作成に関連した課題はもう 1 つあります。プレイヤーが丘を見渡すと、周囲の環境の大気と比べて空の色やテクスチャをどのように感じるでしょうか?今回も 2D の媒体からインスピレーションを得ました。

遠くの景色は大気の累積層を通して見え、空の色に染まっています。チームは、雲や風景などの上に大気層を作るために画家が行う色使いを再現するために絵画の風景を調べました。

外光表現の画家の作品が大気づくりに欠かせない資料でした。画家たちは明るい部分よりも影に情報を集めて、その詳細を早く省略し、より高い詳細度やテクスチャを保つ傾向があります。

繰り返しになりますが、 Unreal Engine にはデフォルトの優れた大気やフォグツールがありますが、私たちの思い描いたようには動作せず、Unreal Engine がデフォルトで使用するさまざまなライティング システムに影響を受けすぎていました。私たちのイラストレーション表現にはもっと単純で柔軟なソリューションが必要でした。幸いなことに、ビジュアル プログラミングを用いて代替のイタレーションや開発を開始するのは大変ではありませんでした。

デジタル ペイントの画家が伝統的な技法の画家の空気遠近法を再現する方法の 1 つに注目しました。ゲームの雰囲気をコントロールするには、指向性ライト (太陽/月)、自然なスカイライト、スカイ環境、フォグを使います。

「結局 2 種類のポストプロセスを作りました。空気遠近法と高さベースのフォグのポストプロセスです。」と Felix は述べています。

カスタムの空気遠近法のポストプロセスは距離ベースです。フォグの動作をさらに制御する、明るさと光のフィルタリング システムを使っています。シーンの雰囲気をカスタマイズして制御するために使用するさまざまなパラメータをアーティストに用意しました。その一方で、カスタムの高さベースのフォグ ポストプロセスには、選べる複数のブレンド モードがあり、アニメーション化やカスタマイズできるテクスチャ ベースの風に対応しています。

アーティストが自由に使えるように、これもほとんどのデフォルトの自動システムから除外されています。

このポストプロセスはスタックやブレンドすることができ、ルック デベロップメント マネジャーの中でも外でも使うことができます。そして複数のバージョンを重ねて使用することで理想の結果を得ることができます。この 2 種類のアトモスフェリック ポストプロセスによってゲームのムードや雰囲気に必要な深みや正確さを実現することができます。

ルック デベロップメント マネジャーはできるだけ柔軟性とモジュラー性を保つようにしました。これは個々の特性が柔軟でモジュール化されていることも意味します。
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Season の次の展開

私たちはまだこの世界を Unreal Engine で実現するためのプロセスの途中なので、これは現在 Season で取り組んでいることのほんの一部です。このようなカスタム ツールは日を追うごとに作成され、改良されています。カスタム ツールのおかげで、これまで見たことのないムードや環境を構築し、ビデオ ゲームの美術演出の限界に挑戦することができます。

この世界を開いてプレイヤーが探検することができるのを楽しみにしています。Season は、Steam または Epic Games のウィッシュリストに追加することができます。

私たちはこの美術演出を実現するためにチームを拡大中です。このプロジェクトへの参加に興味があれば、 採用情報のページ から募集を確認してください。

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