2019年8月5日
Zaha Hadid Architects が VR ビジュアライゼーションを利用して新しい視点の獲得と提供を実現
残念ながら、ZHA の名前の由来となった創業者、ザハ・ハディッド氏は亡くなってしまいましたが、400 人の強力なチームがハディッド氏の革新の精神を引き継いでいます。ZHA は、2014 年に ZHVR Group を創設しました。このグループは、すでに完全にデジタル化されている 3D の設計プロセスに、新しい VR テクノロジーを導入することに取り組んでいます。
イマーシブな VR 建築ビジュアライゼーション
現在、ZHVR Group は、ZHA による建築設計のために、できるだけ多くイマーシブな VR エクスペリエンスを制作しています。標準的なプレゼンテーションの代わりになることもあれば、それと併せて提供されることもあります。VR エクスペリエンスが制作されたプロジェクトの 1 つが、台湾の台北に建設された淡江大橋です。台北で開催された展示会、Global Design Laboratory で公開されたエクスペリエンスでは、参加者が、ユニークな視点から、さまざまなライティングのシナリオで橋を体験できました。
ZHA のシニア アソシエイトで、ZHVR Group の責任者でもある Helmut Kinzler 氏は、VR ビジュアライゼーションを目にしたクライアントや観衆の典型的な反応について、次のように述べています。
「クライアントは、おおむねとてもいい反応を見せてくれます。私たちのアイデアを、すぐに、より個別のレベルで理解してもらえるようです。新しいメディアに感動してもらえるだけでなく、私たちの提案をより良くしっかりと理解してもらえています。クライアントが空間についてずっと理解しやすくなり、意思決定プロセスがスピードアップし、設計の変更が必要な点をプロセスの早い段階で明らかにすることができます」

リアルタイム レンダリングによって可能になるビジュアルの品質と没入感のレベルを示すために、ZHVR Group は、Epic Games および Line Creative と協力して、アゼルバイジャンのバクーにある、象徴的なヘイダル・アリエフ・センターの VR エクスペリエンスを作成しました。

ZHVR Group のチームは、大半のプロジェクトで Unreal Engine を使用しています。ZHA のリード デザイナー兼リード VR デベロッパー、José Pareja Gómez 氏は、Unreal Engine を選択するにあたっては、ビジュアルの忠実度とパフォーマンスが主な要因となっているとして、次のように述べています。
「Unreal を使うことで得られているパフォーマンスとビジュアルの成果にはとても満足しています。リアルタイム レイ トレーシングによって、イマーシブなビジュアライゼーションでできることが拡がり、さらにいい方向に進んでいます」

プレゼンテーション段階における最大の課題の 1 つは、モデルの複雑さです。ZHVR Group は、社内で複数のツールを開発し、アセットを整理しやすくしています。Unreal Engine は、C++ のソース コード アセット全体にアクセスできるだけでなく、ビジュアル スクリプティング言語ブループリントを使っても拡張できます。この拡張性も高く評価されています。
「私たちは、ほかのソフトウェア パッケージで、ビジュアル スクリプティングにはよく慣れています。同様のアプローチで Unreal を使えるおかげで、私たちにとっては使いやすいものになり、プロトタイプ作成や完全なアプリケーションの開発を速やかに行えるようになっています」と Gómez 氏は述べています。

アートと研究のための実験的な VR プロジェクト
Epic Games との別のコラボレーションでは、HP、NVIDIA、HTC VIVE も関与して、Project Correl を作成しました。Project Correl は、メキシコシティの University Contemporary Art Museum (MUAC) で開催された展示会、Design as Second Nature で公開されました。この実験的なプロジェクトでは、訪問者を招いて、協働による、複数の場所にわたる建築設計を行い、数か月にわたって仮想的な建造物を集団で構築しました。イテレーションを通じて徐々にできあがる建造物は、キャプチャされ、縮尺を調整して 3D プリンターで作られたモデルとして、ギャラリーに展示されました。
Kinzler 氏は、Unreal Engine を継続して利用している別の理由として、ZHVR Group と Epic の関係と、ZHVR Group のチームに提供されているサービスとサポートのレベルを挙げています。
「Epic は私たちの取り組みにとても協力的で、必要なときには支援してくれています。単なるソフトウェアのユーザーとしてではなく、戦略的なパートナーとして扱ってくれています」と Kinzler 氏は述べています。
ZHVR Group は、建築設計のために VR エクスペリエンスを作成するだけでなく、VR 専用の設計も行っています。Unreal Engine を使ったプロジェクトの 1 つが、Google Arts and Culture との協力で作成された、2016 年の Zaha Hadid Paintings: Virtual Reality Experiences です。一連のエクスペリエンスは、Zaha Hadid: Early Paintings and Drawings の展示会に伴って作成されました。

VR 専用の別のプロジェクトとして、Spatial Matrix Prototype 01 があります。これは、ZHVR Group が「Virtual Spatiality」と名付けたものの基礎をなす研究です。このプロジェクトで制作された VR エクスペリエンスは、建築の枠組み、空間性、美的感覚を VR にどう対応付けるか評価するうえで役立っています。

VR ビジュアライゼーションの未来:最初のコンセプトから最終プレゼンテーションまで
ZHVR Group は、建築設計の用途ではすでに、設計を評価するためのコンセプトの段階で Unreal Engine を使用しています。コンセプトは、通常 Maya でモデル作成され、FBX を使って Unreal Engine に取り込まれます。コンセプトがより明確になったら、Rhino での作業に移ります。この段階では Datasmith を使ってアセットを取り込んでいます。Datasmith は Unreal Engine に含まれており、CAD データのシームレスな変換と集約を可能にします。将来的には、ZHA は、イマーシブなコンテンツ作成から、VR 内での設計、最終的なプレゼンテーションまで、ワークフロー全体で VR を導入する予定です。Kinzler 氏は今後の見通し、特にテクノロジーの発展に期待を寄せています。
「リアルタイムのイマーシブなシミュレーションにアクセスできることによって、空間の制作者である私たちが、デジタル領域内で初めて専用のインターフェイスを手に入れることができます。この新しい世代のテクノロジーが登場し、忠実度を向上させ、エンジニアリングを重視した機能を実現する様子を目にするのは、とてもわくわくすることです。このような全体的な発展の最前線に立ち、新しい領域に自分たちの分野の特性を追加できるということは、重要であり、とても満足しています」
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