その問題を解決するのが SkyReal です。パリを拠点とするこの会社は、Unreal Engine をベースとするカスタム VR ソリューションを開発し、Airbus、ArianeGroup、STELIA Aerospace など、航空宇宙分野のクライアントに提供しています。SkyReal のソリューションを使用すると、技術者は、特殊なトレーニングを受けなくても、自然な形でデザインの編集、実験、コラボレーションを行うことができます。SkyReal の CEO 兼創業者、Hugo Falgarone 氏は次のように述べています。「大規模プロジェクトでは、物理的なプロトタイプが複雑で高コストになることがありますが、技術者やその他の関係者は、デザインに触れ、感じたいと思っています。VR では、プロトタイプがなくても同様のエクスペリエンスが可能です」

VR による自律型イテレーション
複雑で大規模な仮想デザインに効果的で、かつ使いやすいツールを開発するのは至難の業です。Falgarone 氏は、SkyReal の CTO を務める Benjamin Ray 氏とともに、Airbus で社内プロジェクトに取り組んでいたときに VR ソリューションの開発を始めました。その 10 年後に別会社として独立し、Airbus 系列以外の企業にも提供できるスタンドアローン製品、SkyReal Suite の開発に乗り出しました。
Falgarone 氏は次のように述べています。「発射装置、自動車、船舶などを設計する場合、複雑な VR システムの開発や運用に時間をかけたくはないでしょう。ただデザインの変更点を確認できて、クリックして再生できて、同僚と協力してイテレーションができればいい、そう考えるはずです。それを可能にするのが SkyReal Suite です」
SkyReal Suite は 3 つのモジュールから構成されます。CAD データの準備とインポートのモジュール、ユーザーが確認できる「部屋」にデータを格納するモジュール、そして VR のインターフェイスと環境を提供するモジュールです。システムはモデルを 1:1 のスケールで確認できるようになっています。

Unreal Engine のインポート ツールセット Datasmith が登場してからある程度時間がたっているので、CAD データを Unreal Engine アセットに変換するというのは新しい概念ではありません。SkyReal Suite には、エンジン内で複雑なシステムを高レベルの VR エクスペリエンスにシームレスに変換でき、そしてそれを再び CAD データに変換できるという特長があります。複雑な構造の抽象化は、大規模デザインをリアルタイムで行う場合に特に重要です。こうしたプロジェクトでは、オブジェクト数が 10 万以上になることも珍しくなく、ポリゴン数は日常的に 200 万を超えています。
おそらく最も重要なのは、技術者が VR の中で一部を変更すると、その変更点が自動的に CAD ソフトウェアに反映され、エクスポートとインポートのサイクルを手動で行う必要がない点です。目指したのは、ユーザーが自律的に作業できるソフトウェア スイートを作ることでした。つまり、データ管理や VR 開発のトレーニングを実施したり、デザインを更新するたびに外部やカスタム サービスに助けを求めたりする必要がないということです。
Falgarone 氏は次のように述べています。「私たちは、技術だけを提供するのはではなく、デザインのイテレーションを作り出す能力も提供しています。これはつまり、毎週でも、毎日でも、チームが自分たちでエクスペリエンスを作り直せることを意味します」

航空宇宙分野のデザインを超えて
SkyReal のワークフローには、デザイン プロセス用に作成されたアセットを製造チームが利用できるというメリットもあります。アセットはその後、さらに営業、サポート、トレーニングにまで再利用できます。アセットはすべて Unreal Engine 内にあるため、トレーニング ツールでゲームのロジックを利用して、実際のデザインに基づいて充実した VR トレーニング環境を整えることができます。また、マテリアルやライティングを適用して広告品質のモックアップを作成し、マーケティングや営業に活用できます。
SkyReal Suite はモデルを 1:1 のスケールで表現するため、あらゆる大規模デザイン プロジェクトに利用できます。これまでに、地上の車両、船舶、工場機械などのエンジニアリングのビジュアライゼーションに使われています。
さらに重要な点として、技術者がデザイン上の問題点を早期に発見できるため、コストがかかるようになったり、デザインそのものが失敗に終わったりする事態を回避できます。SkyReal を造船に使っている ÅKP でシニア アドバイザーを務める Jan Børre Rydningen 氏は次のように述べています。「SkyReal を使うと、パートナーはミスをごく早期に発見し、影響を抑えて、最終的には直面した問題の解決策を見つけることができます。プロジェクトに致命的な打撃を与えかねないエラーが多数発生するような事態を回避したり予測したりすることができます」

Unreal Engine:完全なソリューションのためのツール
SkyReal Suite を開発するとき、リアルタイム エンジンの候補は複数挙がりました。Falgarone 氏と Ray 氏が Unreal Engine を選んだのは、機能が豊富であるという理由からでした。「SkyReal 内ではコラボレーションが重要です。Unreal では、レプリケーション グラフなどでこの点が手厚くサポートされています」と Ray 氏は言います。「リモートでのアクセスとコントロールをサポートする機能も必要でした」Ray 氏はさらに、物理特性を正確にシミュレーションできる機能が多くのプロジェクトにとって重要であると加えます。また、SkyReal の顧客の多くは、VR のために、パワーウォールや CAVE など、複数のスクリーンあるいはプロジェクターを使ったディスプレイを利用します。Unreal Engine の nDisplay テクノロジーをそのために利用できます。
SkyReal はソース コードの独自のカスタム ブランチを作成することも可能でした。これはすべての Unreal Engine デベロッパーに無料で提供されるオプションです。それでも、SkyReal は常に最新の出荷バージョンを使って、エンジニアリング業界専用のエクスペリエンスを提供すると決めています。そのメリットは、常に最新の機能を利用できること、さらに Unreal Engine のマイナー リリース後すぐに、その機能を自社のソフトウェアに反映できることです。
SkyReal Suite の最も重要な目標を尋ねると、Falgarone 氏は即答しました。「信頼性です。プロジェクトの規模にかかわらず、100% の信頼性を確保したいと考えています。お客様は常に限界を押し広げようとしています。同じシミュレーションの中に、より多くのモデルを取り込もうとしています」
Falgarone 氏はさらに続けて、次のように述べました。「ニーズに応え続けるには、独創性が必要です。Unreal Engine なら、独創性を発揮するために必要なものが手に入ります」
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