The Third Floor はエンターテインメント業界で注目を集めるビジュアライゼーション会社です。エミー賞を 5 回受賞するなど様々な賞を獲得し、Marvel Studios の Avengers: Endgame といった映画から、Disney+ でストリーミングされているマンダロリアンといったスター・ウォーズシリーズまで今話題の作品でのビジュアルストーリーテリングに貢献しています。
2004年に生まれた The Third Floor は映画やテレビ、ビデオゲーム、テーマパークエンターテインメントなどの様々なコンテンツ制作者のデザインプロセスを助けています。The Third Floor のチームは、バーチャル世界を使うことで撮影前の計画や問題解決を行うエキスパートであり、バーチャルプロダクションの未来の流れを切り開いています。
The Third Floor は超人気テレビシリーズのゲーム・オブ・スローンズで様々な記憶に残るシーンを手掛けました。可能性の限界に挑み続けることにより、スタジオのパイプラインも変化することになりました。バーチャルプロダクション スーパーバイザーの Kaya Jabar 氏は以下のように述べています。「ゲーム・オブ・スローンズでの経験により、会社全体で Unreal Engine を取り入れることに確信を持ちました。」
大規模アクション向けのバーチャルセットの構築
The Third Floor がゲーム・オブ・スローンズに関わるようになったのはシリーズ初期で、特に複雑になると思われたシーンでのプリビジュアライゼーションを行いました。様々な部門、VFXベンダーやチームがショーに関わるので、番組制作者の創造的、技術的ビジョンを定義し伝える上で The Third Floor のモックアップが役立ちました。シーズンごとに視聴者の求めるビジュアルの期待が跳ね上がったため、デザインと計画における中核となる The Third Floor の役割はさらに重要になっていきました。ビジュアライゼーションの利点をさらに増やしていく必要がありました。新しいツール、新しいアプローチが必要になりました。

追加したツールの一つはバーチャルスカウト ツールセットです。The Third Floor が Unreal Engine を使用して作ったこのツールによって、さらに野心的なものとなったシーズン 8 の環境を検証し作り上げることが可能になりました。まだ建築中であったり、デザイン途中のセットに対して撮影を計画する上で必要不可欠な道具になりました。早い段階でベルファストにアーティストを複数配備し、アート部門と協力してスカウティング作業を可能にするバーチャルセットを Unreal Engine で作り上げました。

プロダクションチームによるリアルタイムツールの検証を実現
ロケーションを評価する時も、まだ作られていないセットを想像する場合も、バーチャルスカウトによって検証や議論に時間を使って、ショットの計画を洗練させることが可能になります。アート部門の作業から数秒で環境を反映させることができます。現実世界のカメラ設定を使って様々なレンズやライティング、キャラクタの動きのパスをテストしてクリエイティブなイテレーションを行うことができます。
プリレンダリングすることに比べて、リアルタイムワークフローは柔軟で高速なイテレーションを可能にし、フィードバックを常に得られることでよりクリエイティブになります。制作部門間のコミュニケーションも促進されます。The Third Floor のシニア リアルタイム テクニカルアーティストの Adam Kiriloff 氏は以下のように述べています。「リアルタイムの拡張であるバーチャルリアリティは環境への没入を可能にし、アート的な思考を助けるとともに、技術的決断にもよい影響を与えます。例えば、キングズ・ランディングの大通りに何匹馬を並べることが可能でしょうか?この壁の上からのショットにクレーンは必要になるでしょうか?部屋の巨大なドラゴンをフレーミングするにはどうしたらよいでしょうか?」

The Third Floor が内製したバーチャルスカウトツールセットでショットの計画を VR で行えます。このツールが目指したのは、プレビス環境をより没入的に見ることで、カメラショットの計画を助け、レンズを仮想的にテストし、プロセスを加速することです。タブレットで環境を見ることも、ヘッドセットで完全に没入することもできます。
「バーチャルレンズ」が鍵となる機能です。VR のコントローラーにバーチャルスクリーンがアタッチされ、スクリーンをかかげて仮想環境でショットを計画することができます。バーチャルレンズは実世界のカメラとフィルムバック設定を模倣しています。レンズの設定を事前に準備して、VR で選択リストをスクロールしてレンズを簡単に交換することができます。3D アノテーションで、メモを残し、グループレビューができます。様々なレーザー計測ツール、ポイント間計測ツールを使って、距離の測定や計算も行えます。

The Third Floor のバーチャルスカウトソリューションはゲーム・オブ・スローンズシーズン 8 でカメラショットの計画や、キングスランディングのセット内でのキャラクタの動きの意思決定に使用されました。セットの構築をはじめたころから使用できました。王座の間のように、既に存在するセットに対しても、バーチャルスカウトは使用されました。破壊状況やライト設定の違いなどをビジュアライズするためです。
The Third Floor のアーティストはアート部門の一部としてデジタル 3D アセットを作り Unreal Engine に注入し、ウィンターフェル、赤の王城、黒の城といった環境を作り上げました。Kiriloff 氏は説明します。「Substance Designer で環境マテリアルを作り、Substance Painter で特別なプロップをペイントし、Unreal Engine でライティングや霧や灰などの環境エフェクトをセットアップしました。鉄の王座など鍵となるプロップの一部については、フォトグラメトリも使用しました。」

様々なソースを活用し、実世界のスケールを反映した環境が忠実に再現されました。Unreal Engine 版のセットが利用できるようになると、ビジュアルエフェクトチームからアート部門まで制作チームの全員が HTC Vive ヘッドマウントディスプレイを使い The Third Floor のバーチャルスカウトツールセットでスカウトを開始できるようになりました。このアプローチがシリーズ最終話のシーズン 8 第 6 話で重要なものになりました。撮影監督と The Third Floor チームは共同で、アクションとカメラ範囲を確認し、ブロッキングを行いました。

この最終回でジョン・スノーが赤の王城の階段を上がり女王デナーリスに会いに行くシーケンスがありました。女王デナーリスはキングスランディングの廃墟を確認し軍に命令しています。このシーケンスはまず撮影監督の Jonathan Freeman がThe Third Floor の VR セットスカウトを使いバーチャルカメラチームと協力して作り上げたアニマティクスとして生まれました。

アニマティクスが承認されると、プリビスのプロセスがはじまります。The Third Floor のアーティストはバーチャルカメラチームからのファイルを直接受け取り、それをガイドとして使って、ショットにアニメーションとカメラの動きを追加していきます。
極めて重要な王座の間のシーンについては、エピソード撮影技師は The Third Floor が作成したバーチャル版の王座の間でスカウトを行いました。環境をリアルタイムで確認できるため、物語に適したショットや角度の可能性を迅速に見つけ出すことが可能になりました。静止画をその場で撮影して洗練されたショットリストを作り出すこともできます。巨大な CG キャラクタと現実のセットを組み合わせるシーンでは、バーチャルスカウティングは効率的な方法になります。どのエリアにドラゴンが現れ、そのアクションをとらえるにはどのフレーミングが効果的かを評価することができます。

リアルタイム技術にはインタラクティブ性があり、ビジュアライズと評価を行うと同時に、制作チームの進化し変化するデザインを正確に反映し、情報を使えることも可能にしています。待ち時間が削減され、シーンの別のライティング設定や時間帯を試すことも大きな問題ではなくなりました。プロジェクトがより柔軟に、クリエイティブな方向性を試せるようになります。
クリエイターに力を与える新しいバーチャルツールセット
クライアントはリアルタイムレンダリングで即時に結果が得られることを喜びますが、同時にビジュアル品質で妥協しないことも求めます。The Third Floor がリアルタイムワークフローで Unreal Engine を採用した理由はそこにもありました。The Third Floor の CEO である Chris Edwards 氏は以下のように説明しています。「最高のライティングに最善のユーザーインターフェイスを求める撮影技師、ディレクター、デザイナーに応えようと思うなら、Unreal Engine を使ったワークフローが必要になります。」最終的に重要なことは、創造性を支える能力になります。Edwards 氏は以下のように述べています。「私にとって、Unreal Engine は究極の聖杯のようなものです。やりたいことすべてを一つにまとめることを助け、ディレクター、デザイナーやビジョンを持つクリエイターにこれまで想像できなかったような力を与えることを可能にするのです。クリエイターは好きなものを作れる、これまでにない自由を手に入れることができます。」
The Third Floor は、これから小規模制作においても、さらに多くのエンターテインメントクリエイターがこうした技術の恩恵を受けるようになると予見しています。Edwards 氏は述べています。「これは規模が大きく、高価なものだと皆は考えていると思います。私達の仕事はハリウッドの超大作映画に関連しているので。ただ、実際のところ、超大作以外の多くの映画やプロジェクトに対しても可能性があります。Unreal Engine はこうしたツールセットや機能を一般に広く開放していくことになると私は考えています。」
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