Image courtesy of Carolina Biological Supply Company

次世代の生物学者を育む仮想的な実験室

2021年4月22日
生物学を学ぶ学生にとっては、実際に手を動かしての経験に匹敵するものはほかにありません。教科書や講義も重要ですが、生物学的反応を作り出し、結果を見届けることの代わりになるものはありません。たとえその反応が仮想的なものであってもです。

学校のクラスの規模が大きくなり、学校内の空間が高価になるなか、全員が実際に実験室を使うための資材を提供することは、まったく不可能というわけではありませんが、ますます非現実的になっています。オンラインの実験室を準備して、物理的な実験室を訪れる代わりとすることができるとしたらどうでしょうか。さらに、ゲームの要素を少し取り入れて、新しい世代の学生を生物学に引き付けることができるとしたらどうでしょうか。

それこそが、生物学の教授である Dr.Baktybek Asanakunov 氏とノース カロライナ州の企業 Carolina Biological Supply Company が Carolina Biotechnology Simulator で目指したことです。Carolina Biotechnology Simulator は生物学の実験室をリアルなオープン ワールドとして再現したもので、Unreal Engine で作成されています。壁には安全を呼び掛けるポスターが貼られ、石の床にはスタイルが適用されています。シミュレーターは資材が揃った実験室の代わりになるもので、学生は自宅にいながら実験を行うことができます。
 

失敗する自由

学生がリモートでアクセスできる仮想的な空間を作り出すだけでなく、Asanakunov 氏と Carolina Biological Supply Company は、Epic Games の Unreal Engine 内のツールセットを活用して、個人の選択を反映できるユニークな授業計画を提供できるようにしました。厳密に管理された一連の手順に従うよう学生に強いるのではなく、オープンなデジタル空間に固有の自由を提供するレッスンとなっています。たとえば、失敗する自由があります。

物理的な実験室では、学生は手順を定めたガイドラインに従う必要があります。これは、自分たちの安全のためであるとともに、資材が限られているためでもあります。皮肉なことに、実験を思い留まらせるような環境となっているのです。経験を積んだ科学者に尋ねれば、失敗はプロセスの一部であると答えてくれるでしょう。学生向けの実験室の多くでは、失敗を許容できるほどの余裕はありませんが、Carolina Biotechnology Simulator では失敗することが推奨されます。実験はうまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれませんが、仮想的な環境では、学生はいつでもやり直すことができます。
Image courtesy of Carolina Biological Supply Company
Carolina Biological Supply Company のプロダクト マネージャー、Dhani Biscocho 氏は次のように述べています。「実験室での失敗は、時間の面でも金銭的な面でも、高くつくことがあります。しかし、失敗することは学習プロセスにおいてとても重要です。Unreal Engine によって、高いレベルの自由度と柔軟性を実現できました。これは、学生に自信をつけさせ、成功に向けた心構えができるようにするうえで役に立つでしょう」

ハイスコアと高い評価

Carolina Biotechnology Simulator を使用する学生は、まず「ツアー」セクションを開始します。ここでは、実験の段階を不自由なくこなすために必要なツールとコンセプトを紹介します。ツアーが完了したら、一連のインタラクティブなテストを受けます。どの問題を正解したか学生にはわからないようになっているので、先に進むには、レッスンの内容をしっかりと理解していることを示す必要があります。テストというよりもスキルを示す課題として感じられるように設計されています。これはゲーマーには馴染みのあるコンセプトです。失敗したらやり直して、成功したら次のレベルに進みます。
Image courtesy of Carolina Biological Supply Company
テストのセクションを完了したら、学生は演習のエリアに進み、実験を行います。Carolina Biotechnology Simulator ではバクテリアの形質転換に取り組み、インスリンの生産に似たプロセスを扱います。現実の世界では、学生は基本的にはお客さんのような立場で指示に従うのに対して、Carolina Biotechnology Simulator では積極的な参加者となり、パズルを解くような感覚で実験に取り組むことができます。

Biscocho 氏は次のように述べています。「Carolina Biotechnology Simulator は、ゲームをベースとするアプローチで学習すればモチベーションと認知能力が向上するという考えに基づいて開発されました。学習プロセスがゲームに似ていると、親しみやすいものになります。また、教師が科学的な難しい概念を未来の生物学者を触発するような形で伝えることを支援できます」

仮想的な実験室では、学生はまず、使用するバクテリアのコロニーを選択します。それから実験の各段階を進めていきます。熱のショックを加え、培養して、観察します。物理的な実験室で実験を行う際にすることはすべてシミュレーションにも存在し、学生はそのすべての手順を行う必要があります。
Image courtesy of Carolina Biological Supply Company
オープンワールドの学習には、成功の基準が明確に定められていて、目標が設定されていますが、学生がたどる必要がある 1 つの具体的な道のりが存在するわけではありません。それぞれの手順を好きな順序で実行できます。有効なショートカットを発見できることもあれば、大失敗につながることもあります。直線的ではない教育のスタイルで、学生は自由に成功したり失敗したりすることができます。学生が後ほど物理的な実験室で実験を行いたいと考えた場合は、教師が実際の演習を準備できます。

Carolina Biotechnology Simulator は、追加の作業や手順を学生に示すためにも利用できます。たとえば、新しい語彙や用語を紹介したり、バクテリアの形質転換について実用的な理解を深めたりすることができます。あるいは、難しくて近づきにくいと考えられがちな分野の楽しく簡単な導入として使うこともできます。 
Image courtesy of Carolina Biological Supply Company

これまでにないレベルの教育の創出 

Carolina Biotechnology Simulator のアイデアは、実際のニーズと革新的な考えの組み合わせから生まれました。キルギス国立総合大学で生物学を教える Asanakunov 氏は、教室での授業を高度なものにしつつ、生物学的反応よりもゲームのロジックに馴染みがある世代の学生たちにアピールするにはどうすればいいかを考え始めました。そのニーズに適したものを見つけられなかった Asanakunov 氏は、自分で作ることを決心しました。 
Image courtesy of Carolina Biological Supply Company
Asanakunov 氏の目標は、教室や物理的な実験室での実験を置き換えることではなく、それらを強化することでした。そこで、アクセシビリティが重要になりました。仮想的な実験室は、学生が簡単に触れられるものである必要があり、また、ゲーマー世代にとってインタラクションが自然に感じられるものでもある必要がありました。そのようなニーズに応えるには、Epic Games の Unreal Engine を選ぶのが自然なことでした。そこで、Asanakunov 氏は Unreal Engine について自分で学ぶことにしました。

Asanakunov 氏は Unreal Engine の使い方を学び、それからビジュアル スクリプティング システム ブループリントを重点的に使いました。コーダー以外が使うことを念頭に作られているブループリントによって、仮想的な実験室を作ることができました。個人的な経験に基づいて、自由に動き回ることができる機能も追加されました。しかし、メカニクスと実験室ができ上がったところで、デジタルのマテリアルを作成するために Asanakunov 氏は助けを必要としました。Carolina Biological Supply Company は、実習キットや学生向けの製品を通じて、Asanakunov 氏にとって馴染みのある企業でした。同社の Web サイトを確認してから、Asanakunov 氏は連絡を取り、協力できるかを確認しました。何度か話し合いを行ったあと、パートナーシップが結ばれました。
Image courtesy of Carolina Biological Supply Company
Asanakunov 氏が作った仮想的な実験室と仕様に基づいて、Carolina Biological Supply Company は手順と実験を作成しました。テストを行うために必要な基本的な動きと動作、たとえば試験管、ペトリ皿、培養器のドアを扱うところをシミュレートするために、手のアニメーションが使われました。それから Carolina Biological Supply Company は、トランスイルミネーター、ウォーター バスの蓋、タイマーのアニメーションを作り、これまで作られたなかで最もリアルなリモートの実験室のエクスペリエンスを仕上げました。

その努力が認められ、Asanakunov 氏は Epic MegaGrant を授与されました。また、Carolina Biological Supply Company の助けを借りて、Carolina Biotechnology Simulator を市場に送り出すことができました。Asanakunov 氏の教え子を対象とした 2 年間のベータ期間を経て、Carolina Biotechnology Simulator はリリースされました。個々のユーザーおよび教室単位で 1 年間のライセンス契約を結ぶことができ、特に高校と大学向けに作られています。現在はバクテリアを扱う 4 つのレッスンを利用でき、教師が利用できる 6 時間分の動的なコンテンツがあります。 

次の新しい試み

多くの面で、Carolina Biotechnology Simulator 自体が 1 つの実験であると言えます。しかし、成功を重ねるなかで、包括的で仮想的な実験室プログラムというアイデアは期待が持てるものになってきています。

Biscocho 氏は次のように述べています。「教師からのフィードバックはとても好意的です。Carolina Biotechnology Simulator は、レッスンがゲームのような性質を持つことから、学生の興味を引くことができています。有効であることがわかったので、今後より多くのレッスンを作成したいと考えています。仮想的な実験室には多くの可能性があります。すでに Unreal に強力な基盤があるので、本当に問いかけるべきことは、次はどうしたいか、ということです」

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