2019年6月20日
ダース・ベイダーと対面できる VR エクスペリエンス「Vader Immortal」
Unreal Engine で作成されたこのエクスペリエンスは、スター・ウォーズに関する空想として最も爽快なものを実現したことで、熱狂的なレビューを獲得しています。超空間にジャンプしたり、ライトセーバーを振るったりできるだけでなく、何よりも、プレイヤーは完全にイマーシブな環境で、ダース・ベイダー当人の独特な威圧感を体験できるのです。 Vader Immortal のエクスペリエンスでは、プレイヤーがストーリーの中心に置かれていますが、当初からそうだったわけではありません。プロジェクトの開始直後に考えられていたストーリーはより直線的なもので、プレイヤーは傍観者となる予定でした。
ILMxLAB のエクスペリエンス デザイナー、Colin MacKie 氏は次のように述べています。「何種類かのストーリーを試してみました。ほとんどは映画の伝統にのっとったものでした。そのうちの 1 つでテストをしてみたところ、いいストーリーで、ビジュアルも美しかったのですが、エクスペリエンスとしては、必ずしも自分がストーリーの一部であるとは感じられないものでした」
そこでチームは一歩下がって、自分たちに問いかけました。スター・ウォーズに関する空想として究極と言えるものは何でしょうか?「超空間に飛び込んだり、ライトセーバーを振ったりしたいですし、何よりベイダーに会いたい!」と言って笑った MacKie 氏は、次のように続けました。
「ベイダーを実際にプレイヤーの目の前に立たせて、プレイヤーに話しかけさせたいと考えました。それだけではなく、ベイダーから何か実際の行動を促されるようにして、プレイヤーがストーリーに参加できるようにしたいと考えました」
ILMxLAB は、ストーリー全体のアクションや会話すべてがスター・ウォーズの世界観に沿ったものとなる必要があるという点にも気を配りました。MacKie 氏は次のように述べています。「プレイヤーを中心に据えたストーリーでありながら、スター・ウォーズのストーリーとしても適切なものとして、どの映画とも食い違いのないものを作ることが重要でした」
そこでチームは、監獄の小部屋を舞台にしたシーンのプロトタイプを Unreal Engine で手早く作成しました。ベイダーがプレイヤーの前にそびえ立ち、1 対 1 で語りかけてくる場面でした。MacKie 氏は次のように述べています。「まさに求めていたものでした。それがストーリーの推進力となり、Vader Immortal を生み出すことにつながりました。ほとんど変更のないまま、最終バージョンでもそのシーンを使うことになりました」
Oculus Quest のテスト
Vader Immortal の完成に向けては、スター・ウォーズのストーリーラインを守りながら物語に適したインタラクティブ性を付け加えるために、多くのイテレーションやテストが必要になりました。さらに、最新のハードウェアでも作業を行い、当時はまだ発売されていなかった Oculus Quest でエクスペリエンスが動作するようにしていました。ILMxLAB のリード背景アーティスト、Steve Henricks 氏は次のように述べています。「Unreal を使えば、Quest 用のテスト ビルドはすぐ簡単に作ることができました。Unreal は変更を容易にしてくれます。制作を進めるうちに、ストーリーのなかでうまく作用している点とそうでない点を見つけて、急速に変化を加えていきました。Unreal のおかげで、プレビューをすばやく作成して簡単にテストできました」
ストーリーとシーンについてのイテレーションを行っていくなかで、チームは重要なことを発見しました。それは、イマーシブなエクスペリエンスでは、従来の映画における「第 4 の壁」が存在しないということです。たとえば、ストーリーに登場する 2 人のキャラクターが会話するとき、2 人はその場でのビューアの存在を認識しているということをボディ ランゲージやアイ コンタクトで示す必要があります。プレイヤーに直接話しかけることがない場合でも同様です。これは従来の映画とは異なります。従来の映画では、キャラクターはビューアがまったく存在しないかのように振る舞います。
この発見は Vader Immortal の最終バージョンに大きく影響しました。「コミュニケーションをとっている 2 人が自然な形でプレイヤーの存在を認識し、プレイヤーに視線を送るということが重要になりました。映画では、キャラクターは普通カメラを真正面からは見ませんが、VR ではそうすることが重要です」
と MacKie 氏は述べ、さらに次のように続けました。
「ストーリーの伝え方が異なるということです。そのために一度台本を大幅に書き換えることになりましたが、台本を作り始めたときにはその発見についてわかっていなかったのです」
チームは振り返って、Vader Immortal のすべてのシーンで、直接であれ間接であれ、何らかの形でプレイヤーが含まれるようにしました。そうすることで、プレイヤーが最大限にストーリーに没入できるようになりました。
家庭用 VR エクスペリエンスの誕生
Vader Immortal より前に、VR のベイダーのファンはすでに、はるか彼方の銀河系を探検するチャンスを得ていました。それは、ILMxLAB が The VOID と協力して制作したロケーション ベースの VR エクスペリエンス、Star Wars: Secrets of the Empire です。このプロジェクトでは、仮想的な環境とキャラクターを、物理的なセットおよび熱や風などの物理的なエフェクトと結び付けました。Vader Immortal は、それとは対照的に、家庭用のエクスペリエンスとして設計されています。必要なのは、Oculus のヘッドセットと、ライトセーバーを振るためのスペースだけです。家庭用であるということを意識した Vader Immortal のチームは、最適化を重視して、スター・ウォーズ ファンが期待する詳細なディテールと、無線ヘッドセットである Quest のパフォーマンス要件との間でバランスをとりました。
Henricks 氏は次のように述べています。「VR 内で多くの時間を過ごして、シーンを装飾しました。VR プレビューは Unreal のツールのなかでとても役立ったものの 1 つです。ヘッドセットを装着して、シーン内でプレイヤーが立つであろう場所に立ちながらシーンを装飾できます。とても便利な機能です」
また、Unreal Engine の自動 LOD ツールを多用して LOD を生成してから、Quest 用にカスタマイズしました。
「そのハードウェアで可能なかぎり優れたビジュアルでストーリーを伝えるということが重要でした。エクスペリエンスの隅々まで、制作に長い時間をかけて、プラットフォームの機能を最大限に引き出しました」と Henricks 氏は述べています。
皮肉なことに、ILMxLAB が Vader Immortal に着手したのは、Star Wars: Secrets of the Empire に着手するよりも前のことでした。Secrets of the Empire の制作から学んだことが Vader Immortal の作業に活かされています。
2 つのエクスペリエンスの間では人材が大幅に重複していました。David S.Goyer 氏は両方のプロジェクトでライターとエグゼクティブ プロデューサーを務めました。ほかにも、Mark Miller 氏はエグゼクティブ クリエイティブ プロデューサーを務め、Henricks 氏も両方のプロジェクトに参加していました。ILMxLAB は、この継続性と Unreal Engine のテクノロジーによってこれらの特別なエクスペリエンスを作り出すことができたとしています。
最終的に、Vader Immortal: エピソード I のチームは、かつてないレベルのエンゲージメントを実現する家庭用 VR エクスペリエンスを作り出すことができました。ILMxLAB は、これらのプロジェクトから学んだことを将来の取り組みに活かしてくことを期待しています。それには Vader Immortal の残り 2 エピソードも含まれます。
Unreal Engine は将来のプロジェクトでも主要なツールであり続ける見込みです。Henricks 氏は次のように述べています。「Unreal を使うと、マテリアル、各種のオーバードロー ビュー モード、パフォーマンス キャプチャ ツールなど、たくさんのメリットがあります。すべてが最初から使いやすくなっています」
MacKie 氏は次のように述べています。「私は Unreal のファンです。ツールのパッケージ全体が直感的で理解しやすくなっています。1 人で作業を始めてプロトタイプを作成できるところがとても気に入っています」
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