Unreal Engine が Dune: Part Two の砂漠の制作を効率化

2024年9月10日
Denis Villeneuve 監督の SF 超大作 Dune: Part Two は、技術とストーリーテリングの傑作です。本作は、継承、裏切り、愛、復讐などが交錯する物語で、過酷な砂漠の原始的環境 (サンドワームなど) と未来のテクノロジーを融合させた世界で展開されます。宇宙の運命を懸けて戦う Paul Atreides (Timothée Chalamet) が、記憶に残る旅へと観客をいざないます。Frank Herbert の小説 Dune を原作とするこの映画は、2024年3月に公開され、現時点で今年最高の興行収入を記録しています。

これほど複雑な映画の実現は、決して容易な作業ではありませんでした。特に、ヨルダンのワディ・ラムやアラブ首長国連邦アブダビのリワ砂漠など、世界で最も荒涼とした人里離れた砂漠で何週間も撮影し続けなければなりませんでした。Villeneuve 監督の主要なクリエイティブ チームとプロダクション チームでは、撮影監督の Greig Fraser 氏と共同制作者の Jessica Derhammer 氏が中心的な役割を担い、ハンガリーのブダペストにある制作拠点で、Unreal Engine を革新的な方法で活用する、砂漠での撮影が事前に計画されました。Unreal Engine を使用することで、制作チーム全員が Villeneuve 監督のビジョンと、ロケ地到着後に何が必要になるかを正確に把握することができました。

「Dune: Part Two がどれほど複雑なプロジェクトになるかを理解したとき、Unreal Engine を活用して、プリプロダクションの段階ですべての光の演出さえコントロールできれば、撮影プロセスを迅速化できると気づきました」と、Fraser 氏は説明します。「Unreal を使用した主な目的は、実現したいショットを事前に計画することでした。また、デジタル キャラクターを仮想のロケ地に配置し、影の中からデジタル キャラクターが現れる箇所や、デジタル キャラクターが影で隠れる箇所を事前に計画することができました。プリプロダクションで活躍してくれた Unreal は、まさに天の恵みでした」
Derhammer 氏は、次のように語ります。「私たちはヨルダンで 1 か月、アブダビで 1 か月、合計約 2 か月ほど砂漠に滞在する予定でした。私たちロジスティクス担当は、Denis と Greig のビジョンを理解し、彼らが撮影を行うために必要なツールを提供できるよう、クリエイティブ陣の思考を素早く把握する必要がありました。映画制作では、クリエイティブとロジスティクスの連携がうまくいかないことが多々あります。私たちにとって、Unreal Engine は、誰もがクリエイティブなビジョンを明確に見て理解し、共通認識を持つことができる完璧なツールでした。そのため、連続性、照明、シャドウの面ですべてがうまく機能することを確認できました」

The Mandalorian、The Creator などの作品のバーチャル プロダクションに Unreal Engine を使用した豊富な経験を持つ Fraser 氏は、さまざまなライティング シナリオを事前にスケッチするために Unreal Engine を使用する価値を深く理解していました。プリプロダクションの間、チームはヨルダンとアブダビのロケ地でテック スカウティングを実施し、ドローンでフォトグラメトリ データを撮影しました。ブダペストに戻った Fraser 氏は、バーチャル映画撮影技術者の Tamás Papp 氏と協力し、フォトグラメトリ データを Unreal Engine に入力してバーチャル シーンを作成し、撮影予定日に基づく各ロケ地の太陽の軌道データを適用して、MetaHuman キャラクターをシーンに追加しました。次に、光と影がシーン内のさまざまなキャラクターにどのように当たるかを試し、ライティングの追加や連続性の確保など、クリエイティブな判断に役立てることができました。
MPC and Wylie Co. も参加し、本作のプリビジュアライゼーションを主導しました。Fraser 氏は照明に集中し、Villeneuve 監督は、MPC and Wylie Co. とともに、視覚効果に焦点を絞ってアクション シーケンスを構築しました。制作チームは並行して、砂漠のロケ地で生じる多くの課題を考慮しながら、6 か月後にこれらのシーンを実際どのように撮影するかという、現実的かつ財政的な問題に焦点を絞って作業を進めました。たとえば、暑さのために撮影時間が毎日厳しく制限される場合、必要なシーンを撮影して、その連続性を維持するためにはどうすればいいのか?また、この砂丘と切り立った岩の峡谷で、大型クレーンやシャドウ メーカーなどの機材をどのように操作すればいいのか、といったことです。Fraser 氏の綿密な準備と Unreal Engine のおかげで、制作チームは、撮影現場での成果を確保するために、情報に基づいた決定を下すことができました。

Derhammer 氏は、次のように語ります。「これほどの機能を搭載しているシステムを Unreal Engine の他に、私は知りません。私たちが実行したことの多くは、太陽の軌道やライティング、そしてその場所に滞在する時間に基づく決定を下すことでしたが、Unreal がそれをすべて視覚化してくれました。2 分間のシーケンスの撮影であっても、実際には何日もかかることがあります。そのため、Denis と Greig が望むとおりの連続性を確保する必要がありました」
ブダペストにいる主要なプリプロダクション・クルーとのコミュニケーション メディアとして Unreal Engine を使用することで、Villeneuve 監督と Fraser 氏は VR 内でシーンを模索でき、他のスタッフは外部モニターで 2 人が見ているシーンを見守ることができました。屋外の砂漠のロケーションからオーニソプターの内部まで、すべてを網羅するこのバーチャル スカウティングによって、全部門の責任者がクリエイティブ ビジョンを共有し、それをクルー全員に伝え、適宜計画を立てることもできました。 

Derhammer 氏は、次のように説明します。「これはすべての部門にとって非常に有益なことでした。美術部門や音響部門にも参加してもらって、どのように配線するかを視覚化しました。砂漠でキャストが涼しく過ごせるように、フレーム外にエアコンのファンを隠して配置できる場所まで把握できました。このような細かい点は、通常、撮影現場に到着するまで解決できないため、撮影後に VFX チームにペイントしてもらう必要があるのです。Unreal を使えば、こういったことにも事前に対処できるので、とても便利です」

ワディ・ラムのあるロケ地 (スタッフは「UFO キャニオン」と呼んでいる) では、Villeneuve 監督は、シーンの一部を完全に影の中で撮影したいと考えていました。しかし、太陽の軌道から、自然な影を撮影できる時間は限られることをチームは把握していました。目的のショットを実際に撮影するには、シャドウ メーカーを備えるクレーンを搬入する必要がありましたが、急峻な砂地環境のため、その搬入はほぼ不可能でした。Unreal Engine でさまざまな機材シナリオを操作することで、Fraser 氏、主たる照明技師 Jamie Mills 氏、そして制作チームは、わずか 3 台のクレーンで撮影する解決策を考案しました。機材の台数が少ないほど撮影の妨げにはなりにくいため、これは制作側にとって、コスト面でもロジスティクスの面でも、さらにはクリエイティブの面でも大きく功を奏しました。
「私は、UFO キャニオンのロケで初めて Unreal の素晴らしさを知り、Unreal のテクノロジーのパワーと、私たちの映画にもたらす可能性を実感しました」と、Derhammer 氏は語ります。「このシーンはとても複雑でしたが、私たち (制作チーム、Greig、Jamie) は、この特殊なタイプのクレーンを、特殊なフォーメーションで配置し、太陽の軌道に合わせてシャドウを生成する装置 (シャドウ メーカー) をこのように傾けることで、UFO キャニオンでの撮影時間をより長く確保できることを突き止めました。これは非常に大きな成果でした。UFO キャニオンに 9 台ものクレーンを搬入することは無理だったからです。事前にこれがわかっていたことで、時間もコストも節約できました」

このような話はプリプロダクションではよくあることでした。というのも、クルーは、特定のシーンで適切な照明が得られる時間は限られるということを知っていたからです。Unreal Engine を使用することで、シャドウ メーカーを導入してその時間を延ばすことが有益か、シャドウ メーカーによって新たな影が生じてショットが台無しにならないか、などを検討することができました。インスタンスごとに、そのインスタンス固有の変数に基づいて、撮影現場で必要なものを正確にキャプチャする方法を数か月前に適宜決定することもできました。これは、制作において非常に大きなメリットになります。
「突き詰めると、Unreal は、ビジョンを理解すべきすべての人がそれを理解できる、私たちにとって非常に強力なツールだったのです」と、Derhammer 氏は締めくくりました。「他のプロダクションにも、監督を可能な限りサポートする技術として、Unreal を活用することをお勧めします。映画制作に必要なあらゆる機能がそろっているからです」

映画とテレビでの Unreal Engine の活用方法を確認する

魅力的なキャラクターを作成し、まだ語られていない物語を紡ぎましょう。まったく新しいワールドをオーディエンス自身に探索してもらうこともできます。Unreal Engine を使用すれば、制作プロセス全体をかつてないほどクリエイティブにコントロールすることができます。

関連ブログ


映画&テレビ

Catch up on the big news from Unreal Fest Seattle 2024

Dive into Epic Games’ announcements from Unreal Fest Seattle 2024 to find out about Unreal Engine royalty rate savings through the Epic Games Store, new features in UE 5.5, Teenage Mutant Ninja Turtles in UEFN—and much more.

ラーニング

Epic Developer Community に Epic for Indies が新設されました

大きな夢のある小さなゲーム開発チームの方ですか?インディーズ デベロッパーに特化した新しいハブをご紹介します。ここでは、同じ考えを持つ人たちとつながり、最新ニュースやイベントの最新情報を入手し、学習リソースを見つけたり、共有したりすることができます。 

機能

コンテンツ マーケットプレイス、Fab が 10月中に運用開始!パブリッシング ポータルは本日オープン

このたび、Fab の運用開始が 10月中旬に決定したことをお知らせします。Fab の導入により、今後はアセットの検索、購入、販売、共有をすべてワンストップで行えます。