画像提供:Minakata Dynamics

経営シミュレーション ゲーム RAILGRADE の開発で Unreal Engine が活用される

人類が長い年月をかけ、地球外の惑星に入植するようになれば、資源を輸送するインフラストラクチャが必要になります。これは、日本を拠点とするスタジオ Minakata Dynamics が開発した新しい SF 鉄道経営シミュレーション ゲーム、RAILGRADE のバックグラウンド ストーリーです。

プレイヤーは、Nakatani Chemicals 社の一員として監督者の任務を遂行します。プレイヤーのミッションは、惑星インフラの壊滅的な崩壊によって打撃を受けた工業生産を復興させることです。

ただし、この鉄道経営シミュレーション ゲームで行うのは、資源の運搬や線路の敷設だけではありません。鉄道経営シミュレーション ゲーム RAILGRADE は、経営シミュレーション ゲームのファンの間で高い人気を誇る建設や物流の仕組みはそのまま保持しながら、経営シム ジャンルを刷新する内容になっています。

鉄道ゲームとしてはこれまでにない舞台設定 (世紀末前後のアメリカ中西部ではない) や、ストーリーを重視するアプローチで本作はこれまでの常識を覆そうとしています。Epic MegaGrant を利用して開発資金の一部を調達したアートワーク パイプラインを併用し、たまらなく面白く、視覚的にも圧倒されるゲームとなっています。
 


経営シミュレーション ゲームの新しい形

90 年代初頭の経営シミュレーション ジャンルの全盛期には、あらゆる世代の子供たちが Theme ParkRollerCoaster Tycoon といったゲームでお金のやりくりから株式市場の仕組みまでを学びました。

コンソール人気の爆発的な上昇に伴い、このような PC 向けタイトルの市場は縮小の一途をたどりましたが、このジャンルのゲームは忠実で豊富な見識を備えるコアなファン層を維持しました。

現在も、このジャンルを復活させようとするゲーム開発スタジオが複数存在します。中でも特に革新的なスタジオは、単に旧作のリメイクではなく、人気が衰えていなかったら、これらのゲームはどのような進化を遂げていたのか?このジャンルに新風を吹き込むには、どのような新しい要素を取り入れればよいのか?といったテーマを追求し続けています。

Minakata Dynamics もそのようなスタジオの 1 つです。Daniel Dressler 氏は Minakata の創設者であり、過去 3 年間にわたり RAILGRADE を開発してきた 7 人のチーム (フルタイムのスタッフ、コントラクター) を率いています。

Dressler 氏は、このプロジェクトに参加するにあたり、経営シミュレーション ゲームというジャンルにこれまでとは違う要素を取り入れる必要があるということを十分認識していました。Dressler 氏は次のように述べています。「私たちが追求したかったのは、ゲームプレイの立体感、ジオラマのようなワールドを実現する高忠実度のグラフィック、プレイヤー主導の産業育成、そしてバラエティに富んだ 5 つの気候 (北極、サバンナ、砂漠、北方、温帯) です。また、魅力的なストーリー キャンペーンを持つ初のタイクーン/トレイン ゲームにしたかったのです」
画像提供:Minakata Dynamics
経営シミュレーションのルーツは、60 年代にまで遡ります。女性初のビデオ ゲーム デザイナーである Mabel Addis 氏が、古代シュメールの都市国家ラガシュをモチーフにしたテキストベースの初期メインフレーム ゲーム、The Sumerian Game を制作したのが始まりです。

それ以来、このジャンルは、Caesar をはじめとする都市建設ゲーム、Dwarf Fortress のようなコロニー管理ゲーム、The Sims などのライフシミュレーション ゲームなど、いくつかのサブジャンルに分かれています。

鉄道をテーマにした経営シミュレーションである RAILGRADE は、複雑な鉄道網を構築し、列車で重要な工場群とそこに必要な資源を繋げることに焦点をあてています。成功するには、プレイヤーは資源の消費量と生産量を効率的に管理して生産を最適化し、何重にも折り重なる鉄道と多種多様でユニークなエンジンを活用して合理的なサプライ チェーンを構築しなければなりません。
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ニッチなテーマと思われるかもしれませんが、Minakata は、鉄道ファンであるかどうかにかかわらず、誰もがこのゲームに親しめるように工夫を重ねました。Dressler 氏は次のように語ります。「RAILGRADE は、ファクトリー オートメーションというジャンルの奥深さと、玩具の鉄道セットのような親しみやすさを併せ持っています。 

列車を見て親しみを覚えながら、魅力的なゲームプレイに夢中になっていただきたいと考えています。このゲームのコアなプレイヤー ベースとなるのは子どもの頃に列車で遊んだ記憶があるプレイヤーだと想定していますが、私は、自分の作品を自ら制作したいという欲求は誰にでもある普遍的なものだと確信しています」

その普遍的な魅力を高めるために、相互に接続された複雑な鉄道網を構築、管理するという基本的な作業の他にも、このゲームではたくさんの興味深い作業を実行できるのも魅力です。Dressler 氏は次のように述べいます。「プレイヤーは列車に乗ることができます。高さ 8 メートルを超える橋を架けることもできます。交差駅を構成することもできます。組み立てた部品を使用して地上からロケットを発射することもできます」
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Dressler 氏は次のように続けます。「これらすべてを結びつけるのがストーリーです。タイクーン ゲームや都市開発ゲームは、これまでは PC サンドボックスでした。プレイヤーは、サンドボックス中で機械式の玩具を組み立てて、災害を発生させ、飽きたら、次に進みます」

これに対して、Minakata チームは、RAILGRADE のナラティブを開発するために、かなりの時間と労力を費やしました。崩壊した惑星の経済を立て直すという明確な目標と、地域ごとに進捗状況がわかるロードマップにより、単に複雑な鉄道システムを構築する以上の体験が得られます。Dressler 氏は次のように続けます。「ストーリーによって、惑星でプレイヤーがなぜ作業を行っているのかということに対する明確な理由を示す基盤が構成されます。また、その基盤により、このワールドをよりリアルに感じることができるのです」
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シミュレーション ビデオ ゲーム用の Unreal Engine

Unreal Engine が経営シミュレーション ゲームの制作に使用されるのはあまり一般的とはいえません。ただし、Dressler 氏にとって、このゲームの制作に Unreal Engine を使用するのはごく自然なことでした。Dressler 氏は語ります。「Unreal は、ファミコンをターゲットにしたものを除いて、あらゆるゲームに適しています」

Dressler 氏は、Unreal Engine の 1 つの機能だけで、アーティストの開発期間が約半年も短縮されたと明かし、次のように続けます。「Unreal が提供する機能はすべてきわめて優れています。私たちは、Unreal が提供するもの以外に、ミドルウェアは一切使用していません。機能を 1 つ挙げるとすれば、自動 LOD 生成システムでしょうか。LOD を使用して、ハイポリゴンの産業用アセットを表示距離に合わせて最適化しました。Unreal の自動 LOD システムがなければ、LOD を手作業で作成しなければならないため、アーティストがこの作業にさらに 6 か月費やさなければならなかったでしょう。

自動 LOD 生成システム では、スタティックメッシュのポリゴン数を自動的に削減できます。これは、カメラ ビューポートからのメッシュの距離に応じて異なる LOD (詳細度) をレンダリングすることで実現します。この機能は、最も効率的な LOD レベルで画像をレンダリングし、画像のレンダリング時間とデバイスのエネルギー使用量を削減するために不可欠です。
 
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Dressler 氏は、経営シミュレーション ゲームの開発を検討されている方に向けて、Unreal Engine のデリゲート/イベント駆動型ゲームプレイ ループのメリットについて具体的に次のように指摘しています。「Unreal Engine 以外のエンジンでは、当スタジオのようなゲームは通常、ティック/更新時に実行される過剰なコードによってパフォーマンスの問題が生じます。これは、他のエンジンが、ゲーム コードに対して更新時/ポーリング時のアプローチを推奨しているためです」

Unreal Engine では、ゲームプレイ プログラマーは、デリゲートまたはイベントベースの制御フローで作業することが推奨されています。Dressler 氏は次のように続けます。「このことによって CPU の負荷が大幅に軽減され、Unreal 以外のプロジェクトで頻発する、更新順序に関する問題が解消されます。RAILGRADE のすべての開発において、更新順序に関して発生した問題は 1 つだけでした。ティック上でロジックを実行する複数のシステムの 1 つに問題があっただけです」

Minakata では RAILGRADE の制作に Unreal Engine の複数のコア システムを使用しました。Minakata チームは、ランドスケープ ツール を活用して、惑星のオーバーワールドを構成する没入感の高い屋外向けのテレイン パーツを作成しました。
画像提供:Minakata Dynamics
レンダー ターゲット (特定のオブジェクトやエフェクトをレンダリングする箇所を Unreal Engine に指示する機能) は、ゲームのインエディタ アイコンでのベイクに使用されました。また、プロシージャル メッシュとランタイムのスタティックメッシュ生成を使用して、ジオメトリの生成を最適化しました。

さらに、ゲーム デベロッパーが Epic Online Services で入手可能なたくさんの無料リソースの 1 つである Achievements インターフェース を使用して、プレイヤーの進捗状況を追跡および記録するシステムを統合しました。

Epic Games の専任スタッフが質問に答える Epic Games のプレミアム サポート リソース、Unreal Developer Network (UDN) も活用しました。Dressler 氏は次のように述べています。「UDN は、オンコンソールのコンピュート シェーダーのデバッグに大変役立ちました。サポートが必要なシステムを実装した Unreal のエンジニアに直接質問できたことは、110% 価値のあることでした」

このゲームのサウンドスケープを作成するために、Minakata は Unreal Engine のオーディオ サブシステム、Quartz を活用しました。Dressler 氏は次のように述べています。「日本の多くのスタジオおよび SFX アーティストは、2 つの主要なオーディオ ミドルウェアのどちらかを好んで使用します。このプロジェクトでは、外部依存をゼロにすることが重要な技術的目標でした。そしてこの目標は達成されました。このプロジェクトでは、Unreal 以外のミドルウェアを一切使用していません。そのため、迅速かつ安価で、よりストレスの少ない方法でコンソールを移植でき、開発リスクも軽減されました」

また、環境テクスチャと小道具には、Quixel Megascans を使用しました。Megascans は急成長を遂げている世界最大の 3D スキャン ライブラリで、フォトリアルな 3D スキャン済みのタイリング可能なサーフェス、テクスチャ、植生、欠陥、アトラス、デカールなどが満載されています。Minakata チームにとって、このようにすぐに使える高品質のアセットを使用することで、アーティストはテクスチャやバックグラウンド アイテムを完成させるのに膨大な時間を費やすことなく、ハードサーフェス モデリングに集中できるようになったのです。
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最後に、Dressler 氏は、ゲーム開発における縁の下の力持ちとして、Unreal Engine のパフォーマンス プロファイラ システムを挙げています。このエンジンには複数のプロファイリング ツールが搭載されており、CPU および GPU が実行する負荷が大きい部分を確認したうえで、コンテンツやコードを最適化して必要なパフォーマンスを実現することができます。Dressler 氏は次のように語ります。「Unreal のパフォーマンス プロファイラ システムは、パフォーマンスとビジュアルのバランスを取るために不可欠なものでした。これは、Unreal の本当の強みでありながら、あまり評価されていないように思います。Unreal Engine は、他のどのエンジンよりも、各パスが行っている処理を把握し、そのデータを直接視覚化することができるのです」

従来、経営シミュレーションの主要プラットフォームは PC であったものの、このジャンルの常識を覆すという当スタジオの理念に沿って、Minakata では、PC と Nintendo Switch の両方で RAILGRADE をリリースします。Dressler 氏は「私たちは最初から Switch と PC を同時にターゲットにして開発しました」と説明しています。 
「タイクーン ジャンルが PC メインになっているのは、開発サイクルの副産物であって、意図的に PC を選択しているわけではありません。そのため、コンソールを念頭に置いて設計すると、後付けでコンソールに移植する競合他社よりもプレイもフローもスムーズなゲームになると考えました」
 

ゲーム プロジェクトに対する Epic MegaGrant のサポート

Minakata では、早い段階から Epic MegaGrant に応募しており、絶好のタイミングで資金を得ることができました。Dressler 氏は次のように述べています。「MegaGrant には大いに助けられました。MegaGrant で得た追加資金で、はるかに多くのアートを制作できるようになったのです。一夜にして、実現可能な範囲が 3 倍に広がりました。MegaGrant の資金は、開発の最も重要なステージである初期段階にもたらされました。実現可能な範囲が広がったことで、プレイヤーやパブリッシャーに RAILGRADE をより優れたゲームとして見せることができるようになっただけでなく、Epic から得たお墨付きを足掛かりとして、パブリッシャーとの交渉に臨むことができるようになりました」


Dressler 氏は次のように続けます。「一般的には、リリース後に得られるすべての資金をあてにして開発を進めます。そのため、開発初期段階の資金調達の重要性が過小評価されています。MegaGrants のような資金提供は、最も資金が必要なときの資金源となるため、資金の調達先を探し回らずに済みます」

RAILGRADE の詳細については、Web サイトにアクセス してください。RAILGRADE は好評配信中です。

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