Image courtesy of Cosmo AV

2019年4月、パリの象徴であるノートルダム大聖堂で壊滅的な火災が発生しました。軒下から出火した炎は、すぐに尖塔や木造屋根の大部分を飲み込み一晩中燃え続け、火災は翌朝まで続きました。

その後、1,200 人以上もの人々が 5 年以上の月日を費やして、さまざまな問題に直面しながら損傷の修復に取り組んだ、壮大な修復プロジェクトが始まりました。

12 世紀の建設当時と同じ材料と技術で大聖堂を再建するために、採石職人、大工、モルタル職人、石工の親方などの熟練の職人が雇われました。

2024年12月、大聖堂は灰の中からよみがえり、盛大な再公開の式典がゴールデンタイムのテレビ番組で放送されました。

フランス テレビジョンは、かつての輝きを取り戻した大聖堂を披露するため、ビデオ マッピング会社 Cosmo AV に協力を依頼しました。そこでCosmo AV は、プロジェクション マッピングの専門家である Antoine Bourgouin 氏に、このイベントのための壮大な建築照明の制作を依頼しました。

UE5-powered lighting on Notre Dame cathedral.
Image courtesy of Cosmo AV

Unreal Engine によるプロジェクション マッピング


Antoine Bourgouin 氏は、2010年に建築物を巨大なトロンプ・ルイユのキャンバスとして使用することに興味を持ち始めました。

トロンプ ルイユ (フランス語で「目をだます (だまし絵)」) とは、2D 表面で 3D の空間や物体が実在すると思わせる、きわめてリアルな錯覚を指す芸術用語です。

これは、絵画の技法の 1 つで、見る人をだまし、描かれた物体や空間が実在していると認識させます。

初期の頃は、このようなだまし絵を制作するためのツールは、市場にありませんでした。建物の輪郭を拡大/縮小して一致させるようなビジュアルを制作したい場合は、自分でコンピューター プログラムを作成しなければなりませんでした。

今日、Bourgouin 氏は、そういった作業を Modulo Player の専門家に依頼することができます。Modulo Player は、ビデオ プロジェクターのコントローラーのように動作するソフトウェアです。このソフトウェアを使用すると、壁や建物などの表面に複雑なビデオ プロジェクションを行い、それぞれの表面に合わせて映像を正確に歪めたり、調整することができます。

Bourgouin 氏は、このプロセスにリアルタイム技術を導入することで、プロジェクション マッピングのアートをさらに進化させつつあります。

従来のビデオマッピングでは、事前に録画したビジュアルを投影していましたが、Bourgouin 氏は、多くの場合、Unreal Engine を使用して映像を開発し、リアルタイムに建物に投影しています。

この革新的な取り組みのきっかけとなったのは、Bourgouin 氏が、プレイヤーのスマートフォンがゲームパッドの役割を果たす、画期的なビデオ ゲームを制作するというアイデアで MegaGrants に応募したことでした。これが、Cosmo Av の CEO であり、IntensCity の共同創設者である Pierre-Yves Toulot 氏との出会いでした。
3D model of Notre Dame cathedral in UE5
Image courtesy of Cosmo AV

3D モデルに照明をマッピング


Cosmo Av は、フランスの国営公共テレビ局、フランス テレビジョンから、ノートルダム大聖堂の再公開のためのプロジェクションマッピング ビジュアル制作の依頼を受けていました。

その依頼の 1 つが、大聖堂のファサードを美しく見せる光の演出の制作でした。

Toulot 氏と Bourgouin 氏は以前にも同様のプロジェクトでコラボレーションした経験があり、特に優美さが求められる作業は、才能豊かな伝統的な建築照明デザイナーである Jean-François Touchard 氏のスキルを頼りました。

ノートルダム大聖堂のプロジェクトに Bourgouin 氏と Touchard 氏に加わってもらうことは、Toulot 氏にとって理にかなったことでした。
はじめに、Bourgouin 氏はノートルダム大聖堂を 3D スキャンしたモデルを Unreal Engine に取り込みました。これは、FBX ファイルをインポートするのと同じくらい簡単なプロセスです。

Bourgouin 氏は次のように話します。「Unreal と Nanite 技術を使用すると、インポートしたメッシュのポリゴン密度を気にする必要がありません。ノートルダム大聖堂のモデルは、400 万個のトライアングル メッシュでしたが、現在の Unreal では、このような膨大なポリゴン数でも簡単に処理できます」

Nanite は、Unreal Engine 5 の仮想化ジオメトリ システムで、パフォーマンスへの影響を最小限に抑えながら、大量のポリゴンで構成される非常に詳細な 3D モデルを作成することができます。Nanite は、きわめて細かいディテールに至るまでの、大聖堂の非常に正確なメッシュのレンダリングに使用されました。

チームは、大聖堂のすべてのディテールを強調するために、3D モデル上に 500 個のライト (オムニ、スポット、矩形) を配置しました。これらのライトの強度、温度、色を調和させる必要がありました。

Bourgouin 氏は次のように説明します。「このプロジェクトでは、操作するライトの数が最大の課題でした。ですが、即興で作成したブループリントを使用し、Light アクタにタグを付けて、異なるグループに分けることで、非常にスムーズに作業を進めることができました」

Pierre-Yves 氏が芸術監督を務め、Jean-François 氏が大聖堂のディテールの照明の実践的な実装に関する専門知識を提供しました。 

各彫像には、2 ~ 3 個のスポットライトを配置し、影を慎重に操作することで、彫像の形状や大きさを際立たせました。

北米照明学会 (IES) のライト プロファイルを使用して、現実の照明が各アーチ、バルコニー、その他の建築要素のディテールを際立たせ、3D 照明が厳密に一致するようにし、奥行きを強調するために光温度を調整しました。 

照明の設定は画像としてレンダリングされ、Modulo Player システムと組み合わせた 30 台のパナソニックの高輝度ビデオ プロジェクターを使ってノートルダム大聖堂に投影されました。

MegaLights と Lumen を活用する


ノートルダム プロジェクトでは、事前に録画したビジュアルを大聖堂に投影する予定でしたが、リアルタイム技術を使用することで、照明をデザインする際に多くのメリットがありました。 

実際の建物で照明がどのように見えるかをテストするため、チームは現場で Unreal Engine の 3D モデルを即興で更新し、大聖堂ですぐにその結果を確認し、必要に応じて調整を行うことができました。 

Bourgouin 氏は、この作業を実行するために Unreal Engine を使用した主な理由として、Nanite を併用した照明システムの優れた性能を挙げています。

Bourgouin 氏は、次のように話します。「ハイポリゴン メッシュで、多数のライトを、WYSIWYG (画面で見たとおりのものが出力結果に反映される) 方式で、スムーズに処理することができました。従来の 3D モデリング ソフトウェアのように、レンダリング結果を想像する必要はありませんでした」

また、Bourgouin 氏は、先日 UE 5.5 でリリースされた強力な新機能である、MegaLights についても言及しています。

MegaLights は、アーティストがシーンに数百個の動的なシャドウをキャストするライトを追加できる、実験的機能段階のツールです。この機能は、Unreal Engine のダイナミック グローバル イルミネーションおよび反射機能を Lumen と組み合わせて使用することで、きわめてリアルなライティングを実現することができます。

Bourgouin 氏は次のように述べています。「MegaLights は、最も便利な機能の 1 つでした。リアルタイムで影を妥協することなく、何百ものライトを処理することができました。MegaLights は、Lumen を補完する素晴らしい機能です」

ノートルダム大聖堂の輝きを取り戻す


Bourgouin 氏の照明作品は、Toulot 氏、Touchard 氏とともに、パリで最も有名なモニュメントの 1 つであるノートルダム大聖堂のグランド リニューアル オープンにおいて重要な役割を果たしました。 

Unreal Engine を活用して、チームは修復作業に携わった人々の素晴らしい取り組みに光を当て、ノートルダム大聖堂の輝きを披露しました。

Bourgouin 氏は次のように述べています。「パリのノートルダム大聖堂は、プロジェクション マッピングに携わる者にとって、憧れの建物です。このプロジェクション マッピングに携わることができて、本当に光栄です」