フィンエアーはフィンランドのフラッグ キャリアです。ヘルシンキ・ヴァンター国際空港に拠点を置き、先進的な考え方を取り入れていることに誇りを持っています。機械学習と AI の最先端テクノロジーを長期にわたって利用していて、分析からカスタマー サービスまで、すべての改善に活用しています。
先日、フィンエアーは、エクスペリエンス ベースのサービスに特化した VR スタジオ、ZOAN と提携して、AI とデータのビジュアライゼーションの活用をシミュレートして業務をシームレスに行えるようにするシステムのパイロットを実施しました。ZOAN は、Unreal Engine を活用して、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港とフィンエアーの航空機のデジタル レプリカが登場する VR と AR のインタラクティブなエクスペリエンスを複数開発しました。
整備中の状況認識の改善
メンテナンスと保守のプロセスを監督するスタッフには、高度な状況認識が求められます。そのためには、空港の環境と航空機についてよく知っているだけでなく、手続きとその影響についても深く理解する必要があります。状況認識を支援するために、ZOAN とフィンエアーは、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港で運航を監視するオンサイトのスタッフ向けに、デジタル ツイン システムのデモを開発しました。デジタル ツインは、仮想的なレプリカであり、リアルタイムのデータに基づいて更新されます。現実のアセットの最新情報を知ることができるので、組織は設備の管理を改善し、意思決定のための情報を獲得できます。 AI や VR など、各種のデータ ビジュアライゼーション テクノロジーの利用をシミュレートすることで、フィンエアーのスタッフは、デモでさまざまな活動を監視して、水面下で活動に影響を与えることで、業務を円滑にできます。デジタル ツイン システム自体は、厳密にはデモ用のものですが、業務を合理化することの最終的な目標は、フィンエアーを利用する顧客に可能なかぎり最高のエクスペリエンスを提供することです。
航空機のメンテナンス スタッフの仕事を体験
Slush 2018 カンファレンスで、フィンエアーはインタラクティブな VR/AR のデモを展示しました。システムについて紹介するデモで、シナリオのビジュアライズ、判断の改善、カスタマー エクスペリエンスの改善のためにそのシステムをどう利用しているかを示しました。フィンエアーのデジタル トランスフォーメーション リード、Patrik Etelävuori 氏は次のように述べています。「フィンエアーのインタラクティブな VR/AR デモは、状況認識への取り組みを示すためのすばらしいツールでした。来訪者は、空港スタッフがデータに基づいて業務を行うことの意義について、包括的かつ現実的に理解することができたでしょう」
AR のシミュレーションでは、ユーザーは、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港の運航管理者として業務を行う感覚を味わうことができ、航空機のターンアラウンド タイムを短縮するための作業を実行できます。VR のエクスペリエンスでは、地上での業務の一員となり、航空機の離陸準備に関する作業を実行します。
デモを作成するうえで ZOAN のチームにとって最大の課題となったのは、コンセプトの定義でした。エクスペリエンスは、フィンエアーに関連するだけでなく、世間の人々にとって魅力的なものでもある必要がありました。そこで、エクスペリエンスに含めるものを業務のなかで生じる作業から慎重に選び出す必要がありました。
ZOAN の CEO、Miikka Rosendahl 氏は次のように述べています。「非常に多くの作業のなかから選ぶことができましたが、楽しいものを作るにはどうすればいいか考える必要がありました。さまざまなエクスペリエンスから、いくつかプロトタイプまで作って、結局はユーザー フレンドリーなものに落ち着きました」
ただし、2 か月弱しか時間がなかったので、チームには実験を行う余裕はあまりありませんでした。状況認識と VR/AR の両方のプロジェクトを並行して進めていましたが、状況認識のデモ用に作成したアセットの多くは、ディテールの差異を解消するため、VR のデモに使用するには再作業が必要でした。状況認識のデモは遠距離から見られるように作成されていましたが、VR エクスペリエンスのアセットは至近距離から見られることになるため、よりディテールに富んだものにする必要があったのです。つまり、実質的には VR エクスペリエンスのために仮想的なレプリカをもう 1 つ作ることになりました。
「このようなものを作るのは初めてで、ゼロから作成する必要がありました」と Rosendahl 氏は述べています。チームでは、3D ライブラリを活用して、リアルタイム用にモデルを改善し、フィンエアーのアセットらしく見えるようにしました。モデリングの作業には主に Blender を使用して、OBJ と FBX のファイルをエクスポートして Unreal Engine に取り込みました。
リアルタイムの VR シミュレーションを作成するには Unreal Engine が自然な選択肢であったとして、Rosendahl 氏は次のように述べています。「ツールと連携が提供されていたことに加えて、Unreal Engine は、VR で忠実度の高いビジュアルを作成し、インタラクションを調整するための最も簡単な手段でした」
その印象的な成果は、フィンエアーにとって画期的なもので、イマーシブなメディアの導入に弾みをつけることができました。Slush でのデモから、VR をさまざまな分野で利用できることを社内でアピールするためのアセットが手に入り、最終的に ZOAN とのいくつものコラボレーションにつながっていきました。
キャビンのクルーを VR 環境でトレーニング
ZOAN と協力して実施したプロジェクトの 1 つでは、作業手順や航空機の内部レイアウトの詳細を ZOAN に確認させて、キャビンの新人クルー用の実習環境を作成しました。デジタル レプリカによって、従業員のトレーニング費用を低減しつつ、ナレッジ トランスファーを改善できます。ユーザーはシミュレーション内で失敗を重ねることで、現実に影響を及ぼすことなく貴重な経験を積むことができます。
ZOAN は、フィンエアーの航空機 A320 の機内をベースに、Finnair Flight Academy (FFA) のために VR トレーニング シミュレーションの概念実証を作成しました。そのプロジェクトの目標は、キャビンの新人の教育とトレーニングを行いやすくすることでした。新人が航空機について自由に調査し、運航中の重要な作業を行う方法を学べるようにしました。
ZOAN のチームはわずか 3 か月でそのプロジェクトを完了させました。インチ単位の精度が求められることを考慮すると、驚くべきスピードです。「機能面と技術面からは、航空機全体のモデルを 2 か月で作成することが大きな課題の 1 つでした。ディテールに富んでいて、コンパートメントがつながっていて、精度の高い環境を目指していたので、なおさら難しくなっていました」と Rosendahl 氏は述べています。
コックピットの内装など、3D モデルの一部については、既製のものを最適化して利用しました。しかし、機内の小さく詳細なオブジェクトなど、大半は ZOAN のチームがモデリングしました。そのほとんどに 3ds Max を使い、FBX フォーマットにエクスポートしました。
Rosendahl 氏は次のように述べています。「このプロジェクトで UE4 を使用したのは、エクスペリエンス内のエフェクト、仕組み、機能をより優れたものにするためでした。過去のプロジェクトの機能を UE4 のプロジェクトでいくつか再利用して、プロセスを円滑なものにしました」また、ZOAN のチームは Perforce を使ってプロジェクトをオンラインで同期しました。そうすることで、ブラジルにいるプログラマーがプロジェクトをリモートでサポートできました。
既存のアセットを将来のプロジェクトで活用
ZOAN はさらに、フィンエアー社内用の新人向けビデオを作成しました。フィンエアーのスピーディなターンアラウンドの概念について説明するビデオで、すでに作業中だったデジタル ツイン プロジェクトの 3D モデルの一部を使用しました。トレーニング方法の改善を目指したこのビデオは、トレーニング用の文書やプレゼンテーションにあった各種の情報をうまく簡潔にまとめています。フィンエアーは、この方面にも投資することで、トレーニング方法を最適化しつつ、トレーニング システムへの支出を抑えることもできました。プロジェクトの最終的なビジュアルと環境のディテールに感銘を受けたフィンエアーは、初期の概念実証を拡大して完全に機能する教育ツールにする可能性について検討しています。これまでに作成した複数のアセットを、トレーニングと PR で使用できるようになっています。このことからも、リアルタイム レンダリングをシミュレーションのエクスペリエンスに活用することの費用対効果と柔軟性がわかります。
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