Image courtesy of Codemasters/Electronic Arts

REALTIME、Codemasters の新しいゲーム F1 2021 のシネマティクスを記録的に短い時間で完成

Ben Lumsden |
2021年8月19日
有名なスポーツ ゲーム フランチャイズのメディアへの取り組みは、複雑な課題の連続です。その中でとりわけ大きいのは、ファンからの期待の重みです。熱狂的サッカー ファンからレーシング カー マニアに至るまで、愛好家は、スポーツ ゲームのコンテンツに可能な限り最新の状況が反映され、プレイヤーやキット、スポンサーなどが現行シーズンに対応していることを期待します。

こうしたフランチャイズを支える最高品質のコンテンツを提供するスタジオには敬意を払わずにいられません。必要な情報が納期の数週間前まで手に入らないこともあるからです。

REALTIME は最近、1 つのプロジェクトでまさにこの課題に直面しました。それは Codemasters からの依頼で、新しいゲーム F1® 2021 の一部となるストーリー モード「ブレーキング ポイント」のコンテンツを制作するプロジェクトでした。参考資料がレース シーズンの開始直前まで届かなかったため、わずか数週間で 2 時間半のシネマティクスを完成させる必要がありました。
 


Unreal Engine によるワークフローの効率化 

REALTIME は、これまで自動車業界向けにイマーシブでリアリティに富んだカー コンフィギュレーターを開発してきたため、リアルな CG 車両を作り上げることに関しては、豊富な知識や経験を持つクリエイティブ スタジオです。

このような点が評価され、REALTIME はレーシング ゲーム F1 2021 のストーリー モード「ブレーキング ポイント」のために 35 分間のシネマティック カットシーンを 5 バージョン制作することを依頼されました。各バージョンは、チーム、ブランド、色、ユニフォームが異なり、プレイヤーが選べるようになっています。
 
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REALTIME のプロジェクト ディレクター、Ian Jones 氏は次のように述べています。「柔軟性を確保し、プロジェクトの最終段階でアセットの見た目を根本的に変更できる体制を整える必要がありました。結局のところ、これらのカットシーンは、数か月後まで始まらない F1 シーズンを反映したものにする予定でした。納期の 2 か月前まで、車両やスーツなどがどのようなものになるのかわからず、すべてがトップ シークレットでした」

作品の約 3 分の 2 は、CG のレーサーが登場するキャラクターベースのドラマです。残り 3 分の 1 はトラックでのアクションで、カーレースや衝突のシーンでした。
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Jones 氏は、2020 年 3 月のプリプロダクションから 2021 年 5 月の完成までプロジェクトに携わっていました。「スクリプトが到着するとクリエイティブ プロセスが本格的に動き出し、私はその時点からこのプロジェクトにフルタイムで関わるようになりました」と Jones 氏は述べています。

レーシング ゲームのデベロッパー Codemasters からは、各キャラクターのプロフィールとともに、性格や外見に対する指示があり、最初の作業はキャスティングでした。REALTIME は、主要キャラクターの配役を決め、実際の撮影には実写映像の監督を採用しました。その間、Jones 氏自身はプロジェクトの技術面に重点的に取り組みました。
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撮影が順調に 4 日半で終了すると、その内容に応じてブロックアウトやプリビジュアライゼーションを作り直す必要がありました。代理のキャラクターにデータを読み込んでレイアウトを行ってから、すべてのカメラを更新して 3D で編集を行いました。このときからほかの全員が関わるようになりました。キャラクターは適切に配置され、カメラは正しく調整され、編集が完了しました。この時点で作業に使用していたのは 3ds Max と Premiere だけでした。

シーンはアニメーターに渡され、アニメーターが修正やクリーンアップを始めるときにデータが Unreal Engine に取り込まれました。「パブリッシュしたキャラクターがスケルタル メッシュとともにエンジン内に取り込まれ、体と顔の形状を含め、モーション キャプチャを適用できる状態になりました」と Jones 氏は説明します。

モデラーは、当初は従来のパイプラインに従ってプロジェクト全体を 3ds Max と Z-Brush でモデリングしてから、レイアウト全体を 1 つの大きなシーンとして Unreal Engine にインポートしていました。「彼らは、Unreal Engine なら、シーンの適用やセットへの小道具の配置にかかる時間を大幅に短縮できるとすぐに気づきました」と Jones 氏は言います。

モデラーは最終的に、シーンの基本部分を 3ds Max で組み立ててから、セットへの小道具の配置に Unreal Engine を使い、テーブル、チェア、アンブレラなどのプロップをさまざまなシーンに配置するようになりました。「Unreal Engine は彼らにとって非常に便利なツールでした」と Jones 氏は述べています。
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チームは、ゲーム エンジンを使えば、キャラクターのテンプレートを効率よく作成できることにも気づきました。「Unreal Engine の構造と、ゲーム デザインがベースになっていることにより、同じスケルタル メッシュを共有するキャラクターのライブラリを構築できました」と Jones 氏は言います。「そのあとは、キャラクターを選び、シーンに配置し、そこにパフォーマンスを読み込むだけです。これによって、Unreal Engine のプロセスへの対処とシーン開発が本当に簡単になりました」

これはつまり、1 つのレーシング チームで 1 つのバージョンを完成させたら、それを比較的簡単に交換できることも意味しました。

「UE4 で代替アセットをすべて作成し、パブリッシュしたら、数回クリックするだけで、あるチームのキャラクターを、同じアニメーションを持たせたまま別のチームへと入れ替えることができました」と Jones 氏は言います。「唯一の問題点として、各チームの背景となるガレージが明るい白からダークグレーや黒に変わったため、多くのシーンでキャラクターへのライティングを調整する必要が生じましたが、これもすべてリアルタイムで行うことができました」


パフォーマンス キャプチャとリアルタイム レンダリング 

プロジェクトのプロセスの多くは、REALTIME にとってなじみのあるものでしたが、30 分を超えるアニメーションのカットシーンは、規模の面でこれまでと大きく異なりました。

Jones 氏は次のように述べています。「シーン開発、ライティング、キャラクター作業、レンダリングの量だけを考えても、Unreal Engine なしでは無理でした。この量のレンダリングを完成させることはできなかったはずです」
 
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チームは、納期の 6 週間前に 1 バージョンを完成させ、残り 4 バージョンを納期までに仕上げる必要がありました。各バージョン 35 分です。Jones 氏にとって、これをリアルタイム レンダリング以外の方法で行うのは考えられないことでした。「2 時間半の追加映像を最後の数週間でレンダリングしました」と Jones 氏は言っています。

「また、レンダリングを操作する必要がなく、合成プロセスが複雑にならないようにすることができました。CPU レンダリングを使用していたとしたら、レイヤーに分けてレンダリングする必要があり、合成の段階で大量のレンダリングが必要になっていたはずです。UE4 では単に全体をビューティ パスとしてレンダリングできました」

プロジェクトのもう 1 つの重要な要件は、パフォーマンス キャプチャの質を可能な限り高めることでした。「最高の結果を得るためには、卓越したパフォーマンス キャプチャが必要だと Codemasters に提案しました」と Jones 氏は説明します。

チームは、体と顔のモーション キャプチャが可能な配役が求められることと、この両方を同時に行う必要があることを理解していました。また、フェイシャル パフォーマンス キャプチャで世界をリードする DI4D がヘッドマウント型カメラ (HMC) システムを開発していることも知っていたので、連絡をとってその状況について確認しました。

「DI4D はちょうど PURE4D という新しいシステムをテストしたいと思っていたようで、私たちにとっては、コラボレーションの絶好のチャンスでした」と Jones 氏は言います。

俳優は演技を一度に収録したため、椅子に座り、以前に演じた動きをなぞる必要はありませんでした。Jones 氏は次のように説明します。「DI4D HMC を使用しました。頭にフィットし、ぶれを防ぐヘルメット型になっており、前面から突き出たポールに 2 台のカメラとライトが付いています。2 台のカメラは医療用グレードの高解像度デジタル カメラです。モーション キャプチャ スーツの場合、通常は体の複数のポイントに動きを表すためのマーカーがありますが、このカメラなら毛穴まで捉えられます」

カメラの出力は非圧縮の 2K raw ファイルです。システムは 2 台のカメラの間で各ポイントを使って顔の三角測量を行い、60 fps でスキャンを完了します。

「DI4D の従来のシステムではポイント キャッシュが出力されていました。これはプリレンダリング データには適していましたが、Unreal には重いものでした」と Jones 氏は説明します。「DI4D がテストしたいと思っていた新技術は、スキャン データと顔認識を組み合わせ、モーフ ターゲットを操作するハイブリッド技術でした」

このモーフ ターゲットをベースとするシステムは Unreal Engine と互換性があったため、巨大な Alembic キャッシュ ファイルを 3ds Max からエンジンへ移動させる必要はなく、アニメーション データをインポートして任意の数のブレンド シェイプ、つまりモーフ ターゲットを Unreal Engine 内で操作、結合し、各フレームに求められる表情を実現できました。「Alembic から、キー設定されたブレンド シェイプへと抜本的に変化したことにより、プロセス全体が管理しやすくなりました。Unreal のパイプライン全体が機能したのはそのおかげです」と Jones 氏は述べています。 
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迅速で柔軟なワークフロー 

2021 年のフォーミュラ 1 シーズンの主要情報は、このプロジェクトのリリース予定の数か月前まで手に入らないことになっていました。REALTIME は、この最後の数か月には大きなプレッシャーがかかると予想していました。シーンの追加バージョンの提出については最初からわかっていたからです。ほかの多くのプロジェクトとは異なり、デザインやビジュアルをプロジェクトの早い段階でロックすることはできません。

土壇場になって正しいアセットと入れ替えるためには、柔軟性が不可欠でした。車両が最終的にどのようなものになるのかは納期直前までわからなかったため、レースのアクションはハイブリッドの汎用車を使って開発されました。
 
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「スーツについては、Codemasters の予想は伝えられましたが、メーカーが 2021 年 3 月に車両とブランディングを発表するまで確信はありませんでした。そのときまで、物理的に正確なバージョンを作ることはできませんでした。プロジェクト開始から最終的な参考資料を手にするまで 10 か月かかったことになります」と Jones 氏は述べています。

作業を期日までに仕上げるには、リアルタイム レンダリング テクノロジーのスピードと柔軟性が不可欠となりました。「UE4 のツールセットは、このような作業ができるよう設計されています」と Jones 氏は言います。「アセット ライブラリとアセット プールにキャラクターを取り込み、キャラクターにアニメーションを読み込み、リアルタイムのフィードバックを受け取れることが非常に有用でした。UE4 でプロジェクトを構築し、それをシーン開発やライティングに使用し、瞬時にフィードバックを受け取れたおかげで、この仕事が可能になりました」
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チームはシーケンサーを広く活用し、Python を使って各ショットに設定しました。Python を使って ShotGrid と通信し、各シーケンスの構築に必要な情報を取得し、最新のアニメーションが使われているかどうかをチェックしました。ショットはすべて Unreal Engine 用の Deadline プラグインの早期バージョンを使用してレンダリングしました。「レイ トレーシングも多用しました。車体には光沢があり、環境をリアリティのあるものにしたかったからです」と Jones 氏は言います。 
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また、カラーリングを交換できるコンポーネントベースのキャラクターの組み立てや、車体の組み立てから、観衆の作成や管理に至るまで、あらゆるものにビジュアル スクリプティング システム ブループリントを使用しました。「チーム内のプログラマーが少なかったため、ブループリントで定義する共通のルールに従うようにアーティストがキャラクターを設定できることが貴重でした」と Jones 氏は言います。

たとえば、ブループリントにより、キャラクターを事前に設定できたため、ショットを担当するアーティストは必要に応じてカラーリングや衣服を交換でき、何かを忘れたり置き間違えたりする恐れはありませんでした。

「これは、プロジェクト終盤で、さまざまなカラーリングのレンダリングを短時間で行う必要があったときに特に役立ちました」と Jones 氏は言います。「また、UE4 のヘアとグルームのシステムがなければ、このプロジェクトを計画することはできませんでした。このシステムは、プロジェクト開始時には実験段階でしたが、ありがたいことにプロジェクトの進行中に開発が進みました」

現在は実制作に使えるようになっている Unreal Engine のヘアとファーのシステムがどれだけ進化したかは、Weta Digital のショート フィルムでご確認ください。 
 

限りない質の追求 

REALTIME は、これまでも質の高いレンダリングを誇りにしてきました。Unreal Engine を初めて使ったのは、ゲームの見本となるビジュアルを作成するためでした。たとえば、RARE 向けの作業の多くは、ゲーム デベロッパーのゲームとシームレスに融合することが求められたため、Unreal Engine を選んだのは、どちらかと言えばクライアントのソリューションに合わせるためでした。

「F1 2021 は CPU レンダラーの代わりに UE4 を使用した初めての大規模な映像制作プロジェクトでした。この決断ができたのは、ヘアとレイ トレーシングが可能になり、画質が素晴らしく高いからです」と Jones 氏は言います。「ゲームであっても、Codemasters の質の追求に限界はありませんでした」

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