英国で広範囲にわたる鉄道網を管理する公営企業 Network Rail は、こうした状況に対応するために、線路の更新プログラムを入念に策定し、運行の大きな混乱を避ける必要があります。
線路の更新プログラムを策定する技術部門は、サルフォード大学の THINKlab が開発した、UE4 を活用する 4D シミュレーションツールを使用してこの目的を果たそうとしています。このツールでは、仮想シミュレーション環境で線路工事について評価できるため、Network Rail はプロジェクト実施の効率、コスト、所要時間を大幅に改善できます。Network Rail South Alliance のトランスフォーメーション担当責任者、Steve Naybour 氏は次のように述べています。「これまでは、週末の作業計画を立てるのに 1 週間かかっていました。新しいツールを使えば、これを数時間に短縮できます」
BIM とリアルタイム シミュレーションを活用
THINKlab は、サルフォード大学の School of Science, Engineering & Environment (理工学および環境学部) の一部である、最先端の「フューチャー センター」です。都市再生、エンジニアリング、スマートシティのための ICT プラットフォームを含む、複数の分野の研究をリードし、産業界や異分野との連携に力を入れています。THINKlab が開発したシミュレーション ツールにより、Network Rail は幅広いデータ ソースから任意の現場の 3D モデルを構築できるようになりました。CAD データやレーザースキャンした鉄道データから仮想的な線路が作られ、3D のデジタル地形に置かれます。架線設備、砂利、枕木、レール、信号装置のビルディング インフォメーション モデリング (BIM) モデルをインポートすれば、物理的な現場をより正確に表現できます。また、工場設備のアセットのライブラリから、ショベルや掘削機をシミュレーションに含めることもできます。
ユーザーは、プロジェクトを完了するために必要なリソースを定義し、アクティビティのタイムラインを作成して、タスクの依存関係を指定できます。ソフトウェアには原価計算機能もあるため、各選択肢のコスト面の影響を正確に把握できます。計画に関するさまざまな決定を行い、データを入力すると、ソフトウェアが作業のシミュレーションを自動的に行います。結果は複数のカメラアングルから異なる倍率とスピードで確認できます。
計画の入力に変更があった場合は、シミュレーションにすぐに反映されるので、コンピューター モデリングへの従来のアプローチと比較してフィードバック ループが大幅に短縮されます。技術者、設計者、計画者は、コンピューター モデリングの専門家に頼らずに、計画を変更した場合の影響を確認できます。
このツールは、Network Rail の線路の更新プログラムに適切な量のリソースを割り当てるためにとても役立つということが実証されています。S&C Alliance South East の開発担当責任者を務める Stephen Kearney 氏は次のように述べています。「ある作業に 5 台の機器を使用していても、本当は 2、3 台で済むということもよくあります。このパッケージなら、必要なものを事前に確認し、検証できます」
ブループリントを活用してワークフローの効率を向上
Unreal Engine は、THINKlab のほとんどすべてのビジュアライゼーション作業に使用されているソリューションです。THINKlab のリード デベロッパー、Michal Cieciura 氏は次のように述べています。「UE4 が公開されてからすぐに、ほとんどのプロジェクトの UE4 への移行に取りかかりました。UE4 は、初期設定で優れた画質を実現でき、すばやく簡単にシーンのイテレーションを行うことができたからです。ライセンス モデルも良心的で、最高水準のエンジンをただ同然で使用できました」エンジンのソース コードにアクセスできるため、チームのデベロッパーは短期間でフレームワークを理解でき、その結果、メカニクスの高度な最適化を早期に行うことができました。
THINKlab は、ビジュアル スクリプティング システム、ブループリントも活用しました。このスクリプト言語により、通常はプログラマー向けに用意されているツールをデザイナーやプログラマー以外でも使用できるようになります。「ブループリント システムにより、プロトタイプの作成や実験的な設計がプログラマーにとって容易になっただけでなく、プログラミング担当以外のメンバーも、必要な機能の要素を人に頼らずに自分たちだけで作成できるようになりました」と Cieciura 氏は言います。「その結果、ワークフローの効率が全体的に向上しました」
それぞれのモデリング パッケージでノードベースのインターフェイスを操作していたプロジェクトのチーム メンバーは、Unreal Engine のマテリアル エディタをわかりやすいと感じました。「さらに、PBR のマテリアルと、Unreal Engine のライティング ソリューションとの組み合わせにより、リアルタイムでのビジュアルのリアリティが高まっただけでなく、オフライン レンダリングの必要がなくなりました」と Cieciura 氏は述べています。
インタラクティブなワークフローで ROI と納期を改善
Network Rail のインフラ更新プログラムの変革と同じ時期に、英国政府は、デジタル テクノロジーを活用して英国の建設業界を再活性化させるために、一連のプログラムを開始していました。そのプログラムの主な目標の 1 つは、BIM の導入を促進し、インフラの計画、建設、保守、利用を改善することでした。THINKlab が開発した仮想シミュレーション環境は、リアルタイム シミュレーションと BIM モデルを併せて活用し、このデジタル トランスフォーメーションの未来に光を当てています。
Network Rail にとって、このイノベーションは大きな価値があることがすでに実証されています。Network Rail のプログラム マネージャである Ameet Masania 氏は次のように述べています。「このツールにより、作業中に追加のコストや時間が発生するリスクが減ります。鉄道の仕事を進めるうえで、なくてはならないツールになりつつあります」
ご自身の業界でのシミュレーションに Unreal Engine をどう利用できるか関心をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。