RealityCapture と Unreal Engine でヨーロッパの王室の遺産を保存する

未来に備えるには、過去から学ぶ必要があります。実際の場所から遺物や個人的なコレクションまで、重要な世界遺産を確実に保存することは、次世代が世界の歴史に触れ、理解するために重要です。現在の技術には、これに対する完ぺきなソリューションがあります。デジタル化です。
 
スロバキアを拠点とする Artzenal では、初期の 2D ドラフトから高品質の 3D コンテンツやキャラクター アートまで、幅広いデジタル アート サービスを提供しています。同社は、この歴史を保護するための文化保存プロジェクトに取り組んでいます。
 

オーストリア皇后、ハンガリー王妃、シシィ

Artzenal の最新プロジェクトでは、RealityCaptureUnreal Engine を使用してオーストリア皇后エリザベートのプライベート コレクションをデジタルで再現しました。家具、アート、衣類、その他の私物を含むコレクションとともに、ウィーンのシェーンブルン宮殿ホーフブルク王宮にあった彼女の部屋を 19 世紀後半当時のように再現しました。
 

バイエルンのエリザベート女公爵として生まれたシシィは、1854 年にフランツ・ヨーゼフ皇帝と結婚してオーストリア皇后になりました。その後、オーストリアとハンガリーの二重君主制の樹立を支援し、1867 年にはハンガリー王妃にもなりました。

オーストリアで最も長く皇后の座にいたシシィは、世界で最も美しい女性の 1 人と言われていますが、反抗的で自由奔放な性格だったことでも有名です。100 年以上経った今も、1800 年代後半の女性としては非常に珍しい数々の偉業や功績により、彼女は人々を魅了しています。
 

歴史をキャプチャする

最初の構想の時点から、このプロジェクトの動機は、「エデュテインメント」として知られるようになった手段である教育的要素とのインタラクティブな体験を提供することにより、皇后が生きていた時代についての洞察を提案することでした。

この公式パイロットプロジェクトは、コレクションを所有し、その展示をキュレーションするシェーンブルン宮殿、ドイツに拠点を置くライセンス スペシャリストの  Culture XR、そして複数の新しいテクノロジーを組み合わせてデジタルソリューションを実行・開発した Artzenal のパートナーシップによるものです。

コレクションをデジタル化し、王宮の部屋を再現するためには、高品質のフォトグラメトリ ツールや、リアルタイムに体験することができる細部まで本物そっくりな 3D 環境を構築できる機能が必要でした。

RealityCapture は、非常に詳細にテクスチャリングされた 3D メッシュを写真や LiDAR スキャン、あるいはこの 2 つを組み合わせたものから自動的に作成できる最先端のフォトグラメトリ ソリューションです。Artzenal では、このシシィ皇后のプロジェクトに取り組む何年も前から、ゲームや映画制作で RealityCapture を使用して高品質な AAA コンテンツを作成していました。そのため、大規模な遺産プロジェクトに必要とされる細やかさが求められる精度も、このソフトウェアであれば処理できることがわかっていました。
「長く RealityCapture を使用してきた経験から、フォトグラメトリの選択は簡単に決まりました。より大きなアセットを再現するにはそれぞれ何千枚もの写真が必要になることがあり、私たちの考えではこれが最善のソフトウェアです」と Artzenal のビジネス開発およびマーケティング マネージャーである Milan Kubinec 氏は語ります。また、チームではこの結果が市場で最高の品質になると感じており、プロセス全体の速度や CLI (コマンドライン インターフェース) スクリプティングによる自動化の可能性についても高く評価していると付け加えました。

Artzenal のチームでは、部屋の LiDAR スキャンとアセットのフォトグラメトリを組み合わせる手法を使用しました。最初に LiDAR を使用して環境全体をスキャンし、次にすべての家具、アート、衣類をそれぞれ、高解像度のカメラや場合によってはマクロ レンズを使用して細部までキャプチャしました。光沢のあるオブジェクトには、可能であり必要な場合は交差偏光を使用しました。また、クリーンなワンショット写真を撮影し、Unreal Engine の多くの領域で使用されるタイル処理が可能なマテリアルを作成しました。
「フォトグラメトリのプロセスでは、最もリアルで高品質な結果を達成するため、(より多くの画像が必要になる) すべての詳細と特定のマテリアルを重要視し、すべての面がカバーされるようにオブジェクト全体とその環境を撮影していきます」と Milan 氏は語ります。「スキャンのフェーズでは、特定の手順に従う必要があります。まずは参照用にスケールを撮影し、次にカラー チェッカーを撮影してから、スキャン自体を行います」
 

超リアルな環境を作成する

RealityCapture によってこのデータから自動的に構築された 3D メッシュを Unreal Engine に取り込み、シシィ皇后の住居の部屋を彼女が暮らしていた頃のように再現することができました。「リアリズムを達成する Unreal Engine の類を見ない機能により、デジタル化したコンテンツに命を吹き込むことができました」と Milan 氏は語ります。「これにより、アセットが本来あった場所に存在しているかのように本物らしく見えるのです」

「19 世紀後半のシェーンブルン宮殿で、シシィ皇后が暮らしていた時代の実際の設定を体験することができます。家具の配置や環境、建物の構造から彼女の私物を見る機能まで、その結果には本当に驚かされます」
 
プロジェクトとして、すべてが順調に進んだわけではありません。チームは、技術面ではなく環境面で予想外の課題に直面しました。

「厳格な規則が提示され、本当に驚きました」と Milan 氏は説明します。「キャプチャするアセットの大半にはフラッシュを使用することができず、いつでも必ず付き添いの人が付いていましたし、汚したりすることがないように撮影現場への飲食物の持ち込みが禁じられていました。また、一部のアセットはガラス ケースを通して撮影する必要がありました。RealityCapture と Unreal Engine がなければ、撮影できたものの品質は、ライティング、反射、カラー マッチング要素の面で使い物にならなかったでしょう」
 

未来をキャプチャする:RealityCapture と Unreal Engine

RealityCapture と Unreal Engine を組み合わせることにより、Artzenal は現在、業界で公開されているシーンの中で最もリアルに感じられるものを作り出すことができ、インタラクティブで調整可能なコンテンツの豊富なリソースをプロセス内で提供することができました。

この VR ショーは、リヤドで開催された LEAP 2023 カンファレンスでデビューしました。数千人の訪問者がデジタル化された部屋を歩き回り、コレクションのオブジェクトを体感し、バーチャルツーリズムを始めて経験しました。

Artzenal はこれらのツールをフレームワークにしっかり組み込み、すべてのプロジェクトでこの技術を使用するようになりました。Nanite の仮想化マイクロポリゴン ジオメトリLumen の動的なグローバル イルミネーションおよび反射などの Unreal Engine 5 の最新機能により、最適化プロセスは大幅に向上し、作業にかかる時間は数か月から数週間に削減され、リアルタイムでのフォトリアリズムの実現が今まで以上に容易になりました。

「この効果的な技術の組み合わせを使用することにより、リアリティの本質が正確に捉えられます」と Milan 氏は語ります。「それにより、現状のアセットについて忠実度の高いコピーを作成するだけでなく、かつて最高の状態にあったものを想像し再現できます。RealityCapture と Unreal Engine を一緒に使用することで、ストーリーを語り出しそうなシネマティックな雰囲気をつくり出し、スキャンしたデータを別のレベルへと引き上げるのです」
Epic Games のエコシステムにおける RealityCapture や Unreal Engine、その他のツールについてこちらで学びましょう。

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