担当チームは、昔ながらのゲームへのオマージュとすると同時に、現代のプレイヤーに革新的なメカニクスを提供することを目指しました。開発中には当然、多くの課題に直面しました。アクワイアを訪れ、プロジェクトの当初の目標について詳しく話を聞くと、新旧のバランスが難しかったことが窺われました。スクウェア・エニックスのプロデューサー、髙橋真志氏は次のように述べています。「ドット絵のゲームを作ろうというコンセプトだけでは、よく言うと古き良きゲームになりますが、悪く言うと古臭いゲームになってしまうということは目に見えていたので、ではどういうアプローチができるかと考えました」
インスピレーションを得るため、チームはまず未来よりも過去に目を向けることにしました。アクワイアのリード アーティスト、飯塚三華氏は次のように述べています。「たとえば PlayStation 1 の時代では、キャラクターが 2D で背景が 3D であったり、プリレンダーの 1 枚絵であったりといった表現があったので、そのあたりの作品を参考にしました」
そう言うと単純に聞こえるかもしれませんが、このようなビジュアルを現代風にするのは容易なことではありません。プロジェクトで使用するエンジンを選択するとき、アクワイアの主な目標は、イメージしていた融合アート スタイルを実現すると同時に、開発期間中、少人数のチームがすばやくイテレーションできるようにすることでした。
高橋氏は次のように述べています。「UE4 が得意としている 3D 表現やエフェクトを使い、それとドット絵を融合した絵作りができないか、というところで試行錯誤したものが今回の HD-2D です」
プレイしたことのある方ならご存じのように、OCTOPATH TRAVELER の戦闘シーンは、独自のビジュアル手法が特に異彩を放っている領域ですが、ここに到達するまでには時間がかかっています。飯塚氏は次のように述べています。「戦闘中のエフェクト表現では、まずは普通に攻撃をしてエフェクトが出て、というようにしてみたのですが、それでは物足りないということになって、エフェクトの発生と同時にポイント ライトによるライトの表現を追加しました。エフェクトにポイント ライトを加えることで、その発光により、キャラクターの影を背景に落とすことができます。光と影の演出を加えることで、戦闘中のエフェクトがよりきれいに表現できます」
独自のビジュアル スタイルを確立したあと、その目標を効率的に達成するために、チームは Unreal Engine のツールやワークフローを活用する必要がありました。「OCTOPATH TRAVELER は比較的人数の少ないチームで制作し、プログラマーの人数はピーク時でも 6 人しかいませんでした」と、アクワイアのリード プログラマーである渡邊裕氏は言います。「この規模のタイトルにしては小規模のチームで制作しました。UE4 には、基本的なツール、エディタ、機能が備わっています。特に、ブループリントや最適化のためのツールが非常に役に立ちました」
アクワイアとスクウェア・エニックスのチームが新しいコンセプトを開拓し、新しいアート スタイルを確立し、最終的に記憶に残るエクスペリエンスを提供するうえでは、コンソールとモバイルまで対象を広げる取り組みを進めながら、楽しむことも忘れないよう心に留めておくことが重要でした。アクワイアのディレクターである宮内継介氏は次のように述べています。「美しい表現ができました。この絵が完成したときに、自分の使命としては、この絵をより広い人に見てもらいたい、世界中の人にこの景色の中での旅を楽しんでもらいたい、と思いました。ゲーム システムは、その旅をさらに楽しくするものであって、邪魔をしてはいけない、ということが心の中にありました」
従来の JRPG のメカニクスを最新のグラフィックとうまく融合させるという課題は克服できましたが、アクワイアのチームにとって、これはまだ始まりにすぎません。高橋氏は次のように述べています。「来年、再来年、その先と、UE4 でゲームを作り続けていますので、ぜひご期待ください。これからも頑張ります」